記憶力向上が期待できる脳に良い食べ物・飲み物
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記憶のメカニズムについて解説したうえで、脳が十分に働くために役立つ栄養素を含んだ脳に良い食べ物や飲み物を紹介します。
記憶力を向上させるには
まず、記憶のメカニズムについて解説します。脳のなかで記憶をつかさどっているのは海馬という部分です。記憶のメカニズムは未だ謎が多いですが、記銘・保持・想起の3ステップを踏むと考えられており、海馬が覚えるべき情報だと判断した情報だけが大脳皮質に保存されます。
物忘れは記銘・保持・想起のステップがうまく機能しないために生じるものです。つまり記憶力をアップさせるには、脳の働きを鈍らせないことがひとつの方法と考えられます。
脳は、1日で身体全体の基礎代謝量のおよそ20%分を消費するほどエネルギーの消費量が激しい部位です。そのためまずは、脳のエネルギーとなる栄養素を十分に摂取すること欠かせません。
それに加えて、脳の働きを加える効果が期待される栄養素を摂取することが記憶力の向上には重要と考えられます。
脳に良い栄養素
脳の発育に良い栄養素を紹介します。
ブドウ糖:脳の栄養になる
ブドウ糖は脳にとって重要なエネルギー源です。脳は1日の基礎代謝量の約20%を消費するため、基礎代謝が1,500kcalほどある成人男性においてはおよそ75gのブドウ糖が必要になります。
ブドウ糖は肝臓からも供給されますが、脳へしっかり栄養を届けるためには食事から炭水化物(糖質)を摂取することが重要です。
炭水化物の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品 | NANIWA SUPLI MEDIA
タンパク質:脳の成長をサポート
タンパク質は人間の細胞を構成する主要な成分で、身体の生体機能を維持するのに役立ちます。もちろん脳の成長にも欠かせない栄養素です。
さらにタンパク質を構成するアミノ酸は神経伝達物質を作り、脳の活動を支えています。タンパク質の欠乏は集中力の低下を招くため、積極的に摂取しましょう。
タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品 | NANIWA SUPLI MEDIA
カルシウム:脳の活動をスムーズに
カルシウムは骨の発育に役立つ栄養素として知られますが、脳にとっても重要な栄養素です。
カルシウムの一部はカルシウムイオンとなって神経内にも存在しており、脳の情報伝達をスムーズにする働きがあるため、脳の活性化にもつながります。
カルシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンB群:脳に必要な代謝を促進
ビタミンB群は補酵素としての働きや、代謝促進に携わっている栄養素です。特に脳と関係が深いのは、ビタミンB1・ビタミンB6・ビタミンB12です。
ビタミンB群の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品 | NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンB1:脳のエネルギー源確保に
ビタミンB1は脳の働きに必要なブドウ糖をエネルギーに変換するのを助けます。脳が正常な働きを維持するためには欠かせない栄養素です。
疲労物質を排出する作用から、疲労回復に効果的な栄養素としての一面もあります。身体の疲労は脳の働きを鈍らせる要因となりますので、ビタミンB1は脳のスムーズな活動に役立つでしょう。
ビタミンB1の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ | NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンB6:タンパク質代謝を促進
ビタミンB6はタンパク質の代謝をサポートする補酵素です。脳の成長に関わるタンパク質を効率よく利用できるよう働きかけます。
神経伝達物質の合成にも関与し、セロトニン・ドーパミン・アドレナリンなどの生成を促進します。集中力アップや睡眠にも関わる栄養素です。
ビタミンB6の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンB12:脳の機能維持に
ビタミンB12はアミノ酸の代謝やタンパク質の合成に関わる栄養素です。神経機能やDNAの合成にも欠かせない存在なので、脳が正常な機能を維持するのに役立ちます。
さらにビタミンB12は睡眠ホルモンの生成に関わっています。質の良い睡眠は疲労を解消し、脳の活動にも影響を与えるため重要です。
ビタミンB12の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
DHA:脳の働きを向上
オメガ3脂肪酸の一種であるDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳に取り込まれる性質がある栄養素です。
脳の働きを活性化し、認知機能を改善する効果が期待されており、ある研究ではDHAの摂取で動物の学習機能障害が改善したという事例もあります。
DHAは人間の体内で合成されない必須脂肪酸のため、定期的に食品から摂取することが推奨されます。
オメガ3の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
レシチン:伝達物質を生成
レシチンはリン脂質の総称で、別名ではホスファチジルコリンと呼ばれます。ホスファチジルコリンは、脳内伝達物質であるアセチルコリンの生成に必要な成分です。
アセチルコリンは記憶のメカニズムにかかわっており、生成量が減ると記憶力低下につながります。そのため記憶力アップにはレシチンの摂取が重要と考えられます。
ヨウ素:子供の認知機能発達に
ヨウ素は子供の認知機能において、重要な役割を担っている栄養素です。
ヨウ素が欠乏している学童は、摂取量が十分な学童に比べIQが低いという報告もあります。ヨウ素不足で学習障害の発生率が高くなるなどの研究結果もあるため、子供には十分な量のヨウ素を摂取させるようにしましょう。
1日の摂取推奨量は男女とも15歳から17歳で140μgです。ヨウ素を豊富に含有する刻み昆布で換算すると、50mgから60mgの摂取で推奨量を満たします。
ヨウ素は過剰摂取すると中毒を起こす可能性あるため、耐容上限量が定められています。急性のヨウ素中毒が起こることは非常に稀ですが、特定の疾患・傾向を持つ人においてはその限りではありません。ヨウ素の過剰摂取に関する詳細は下記記事をご覧ください。
ヨウ素の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ポリフェノール:脳の炎症を軽減
ポリフェノールには抗酸化作用があり、特にカカオポリフェノールは脳にとって優れた働きが期待できます。記憶形成に関わる「BDNF(Brain-derived neurotrophic factor)=脳由来神経栄養因子」を活性化させる作用があるのです。
このカカオポリフェノールにはフラバノールという物質も含まれており、認知機能の改善やストレス軽減にも効果が見込めます。
カカオの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
脳に良い食べ物・飲み物
脳の発育に良い食べ物・飲み物を紹介します。
卵
卵はタンパク質やビタミンB群を多く含む食品です。レシチンも豊富に含まれるため、記憶力アップを目指すならまず摂取したい食品と言えるでしょう。
ビタミンB群やレシチンは熱に弱い性質を持っているため、効率的に摂取するためには生食が適しています。卵かけごはんなどが手軽でおすすめです。
たまごの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
青魚
青魚の脂にはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれているので、DHAを摂取するにはもっとも適しています。スーパーで購入しやすい食材としてサバがおすすめです。サバの開き干しなら100gあたり2700mgのDHAが含まれています。
魚類はタンパク質とビタミンB群も多く含まれるので、脳に良い食品の代表と言えるでしょう。
サバの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
牛乳
カルシウムの豊富な食品といえば牛乳です。さらに牛乳に含まれるタンパク質は酵素分解されると、カルシウムの吸収効率を高めるカゼインホスホペプチドに変化します。カルシウムを効率よく摂取したい人には牛乳がぴったりです。
牛乳にはビタミンやミネラルもバランスよく含まれているので、身体の健康維持にも役立ちます。
牛乳の栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
海藻類
海藻類にはヨウ素が多く含まれます。特に含有量が多いのは昆布です。刻み昆布100gあたり230,000μgのヨウ素が含まれているので、煮物などで摂取すると良いでしょう。
そのほかにヨウ素を豊富に含む海藻類は、干しひじきやカットわかめなど。
なお前述の通り、ヨウ素には耐容上限量も定められているため、過剰摂取には注意が必要です。
わかめの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
バナナ
バナナには脳のエネルギー源となるブドウ糖をはじめ、さまざまな糖質が含まれています。脳だけでなく身体を動かすためのエネルギーとなるので、朝食に取り入れれば活動のスイッチを入れてくれるでしょう。
タンパク質・ビタミンB1・ビタミンB6など、ほかにも脳に良い栄養素が含まれています。
バナナの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ナッツ類
気軽に食べやすいナッツ類も脳の健康につながる食品です。カルシウム・ビタミンB1・ビタミンB6などの栄養素を含んでいます。
特にくるみはナッツ類のなかでも特にオメガ3脂肪酸の含有量が多い食品です。α‐リノレン酸という脂肪酸は体内でDHAに変換されるため、脳への作用が期待できます。
アーモンドもビタミンEを含み、血流改善効果が期待できるのでおすすめです。スムーズな血流は栄養素を循環させやすくするので、脳にとって良い効果をもたらすでしょう。
アーモンドの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
くるみの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
大豆製品
レシチン・タンパク質・ビタミンB群を多く含む大豆製品も、脳にいい効果が期待できる食品です。特に手軽なのは納豆。コンビニでも購入できるため、普段の生活に取り入れやすいでしょう。
納豆には独自のナットウキナーゼという成分が含まれ、血流を促進する作用もあります。脳に栄養を十分に届けるためにも、血流アップを心がけましょう。
納豆の栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ベリー類
果物のなかでもベリー類はポリフェノールやビタミンEなどの抗酸化物質を多く含み、脳の疾患予防に効果的です。
米国化学会では、1日数粒のベリーの摂取が記憶の維持に役立つという研究結果も発表されました。ベリーに含まれる抗酸化物質が、脳の保護に役立つと考えられています。
イチゴの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ブルーベリーの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ブラックベリーの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ラズベリーの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
クランベリーの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
マキベリーの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ココアやチョコレート
カカオポリフェノールが豊富に含まれる食品は、ココアやチョコレートです。特にチョコレートはカカオ含有量の多い商品を選んで間食として摂取するといいでしょう。
もっと効率的にカカオポリフェノールを摂取したいなら、近年話題を呼んでいるローカカオもおすすめです。スーパーフードの一種で、パウダータイプやチョコレートの形状で販売されています。
カカオの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
セージ
セージは脳を活性化する働きがあり、記憶力を高める作用が認められているハーブです。通常、肉や魚の臭み消しとして使われます。
ある研究では、アルツハイマー病の患者にセージの抽出物を与えたところ、学習力を向上させる効果が見られました。
セージの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
認知症予防のためのMIND食とは
MIND食(マインド食)とは、2015年にアメリカの研究グループが発表した認知症予防の食事法です。高血圧予防のためのDASH食(ダッシュ食)と、心疾患予防に向いている地中海式食事法を組み合わせています。
MIND食では脳の健康維持に役立つ食材10種と、控えるべき食材5種を定めています。積極的に摂るべき食品は、全粒穀物・緑黄色野菜・ベリー類・魚・鶏肉・豆類・ナッツ類などです。
控えるべき食品は、ファストフード・赤身肉・バターなどが該当します。完全に排除するわけではないので、比較的続けやすい食事法といえます。
アメリカの研究グループの調査では、15項目のうち9項目以上を達成した人はアルツハイマー型認知症の発症リスクが減少したとのことです。
脳に良い生活習慣
記憶力を高めるには普段の生活習慣が重要です。脳に良い生活習慣を紹介します。
質の良い睡眠
睡眠不足は記憶力の低下につながります。睡眠時間が不足している子供は、記憶をつかさどる海馬の体積が小さくなっているというデータもあるほどです。
さらに記憶力低下だけでなく、睡眠不足はアルツハイマー病の発症リスクにも関わります。原因は、脳の神経細胞を攻撃する物質が睡眠不足で蓄積されてしまうためです。
十分な睡眠をとれば、脳は休息できて脳内物質の処理も進みため、1日6時間半以上は睡眠を取るようにしましょう。
定期的な運動
運動は記憶力を向上する効果が期待できることがわかっています。
スイスの研究によると、運動でエンドカンナビノイドという化学物質が活性化され、海馬への伝達能力が変わることが解明されました。運動量によって活性化の度合いは異なり、最大心拍数80%を記録する強度の運動でもっとも記憶力の高まりが見られています。
また、さまざまな研究で肥満はアルツハイマー病や認知機能低下のリスクを高めることがわかっています。定期的な運動習慣は、脳のパフォーマンス維持や向上に役立つと考えられます。
脳を積極的に使う
脳は使うことでその働きが強化されると言います。脳細胞間のつながりが強まることで、記憶力が向上するというメカニズムです。
例えば語学を勉強したり、習い事をはじめたりなどいつもと違う習慣を取り入れれば、普段使わない脳細胞が強化されます。
いつもと違う道で帰宅する、初対面の人と話すなどのささいなことでも脳細胞間のつながりは増えるので、まずはちょっとした変化を加えてみると良いでしょう。
よく噛んで食べる
食事の際によく噛んで食べる行為は、脳にとっても重要です。咀嚼は脳の中枢器官の活性化に役立ち、思考をつかさどる前頭前野や情報を処理する海馬を活性化してくれます。
さらによく噛むことで満腹中枢を刺激し、食べ過ぎの予防にもつながります。満腹状態では脳の働きが鈍り記憶力が低下してしまうため、普段の食事では一口につき30回以上咀嚼することを意識しましょう。
ストレスを溜めすぎない
過度なストレス状態が続くと体内に活性酸素が発生し、身体の老化を進めてしまいます。活性酸素は神経伝達物質や免疫機能としての働きもありますが、過剰に生成されると細胞を傷つけてしまうのです。
脳の老化を進行させないためにも作業中は適度な休息をとりつつ、十分な睡眠で身体を休ませましょう。
バランスの良い食事
脳に必要な栄養素を中心に、バランスの良い食事を心がけましょう。不要な分は身体からその都度排出されてしまう栄養素もありますので、毎日の食事に気を遣うことが重要です。
脳にとっては適度な間食も効果的ですが、糖質を摂るタイミングに注意してください。糖質を摂取すると血糖値が上がったあとに降下し、血糖値が下がる瞬間は頭がボーっとして集中力が欠如しやすくなります。
そのため、食べるタイミングは仕事中や勉強中ではなく、作業をはじめる前がおすすめです。
参考文献
- 加齢とエネルギー代謝 | e-ヘルスネット
- たんぱく質 | e-ヘルスネット
- カルシウム | e-ヘルスネット
- 学習障害(限局性学習症) | e-ヘルスネット
- 活性酸素と酸化ストレス | e-ヘルスネット
- ドコサヘキサエン酸による脳機能改善作用と神経疾患への応用 | CiNii
- 鶏卵黄ホスファチジルコリンとビタミンB_<12>併用による脳機能障害に対する改善効果 | CiNii
- 運動シーケンス記憶に対する急性運動の効果 | NatureResearch
記事の監修
AYA ARAHARA
ヨガインストラクター。
ホテル、外資系化粧品メーカー、美容業の広報/PRとして業務を経て、アロマテラピーや美容業界の実用書等の、編集・執筆活動のほか、ライフワークとしてヨガインストラクターとしても活動している。
近著としては、「ママになっても美しい人の食事術」(PHP研究所)編集協力、「枯れないからだ」(河出書房新社)編集協力など多数。最新作は「寝る前5分の新習慣! 極上の眠りに導く安眠ヨガ」が好評発売中!
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