ヨウ素の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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ヨウ素の基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
ヨウ素とは
ヨウ素(iodine)は、原子番号53、元素記号Iの第17族ハロゲン元素に属する非鉄金属元素です。
人を含む脊椎動物にとって、健康を維持するうえで必須の微量ミネラルであり、人の体内では70~80%が甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンを合成・構成しています。
甲状腺ホルモンは、生殖機能・成長機能・発達機能などの生理機能を制御し、エネルギーの代謝(新陳代謝)においても重要な役割を果たすホルモンです。
特に子どもの場合では、成長ホルモンとともに成長を促進する働きを持っており、ヨウ素が不足すると正常な成長に支障をきたします。妊娠中にヨウ素が欠乏すると、死産・流産・胎児の先天異常などのリスク増加につながります。
ヨウ素は世界的に見て摂取不足が危惧される栄養素のひとつですが、海藻類、特に昆布に高濃度で含まれているため、日本人は世界でも稀なヨウ素摂取量の多い集団です。
諸外国では、食塩や飲料水にヨウ素を添加することでヨウ素の摂取不足解消を試みています。
ヨウ素の効果・働き
ヨウ素の持つ効果・効能・働きについて解説します。
甲状腺ホルモンの主原料となって新陳代謝を活発にする
ヨウ素は、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンの主原料として機能します。甲状腺ホルモンは、血液から全身の細胞に働きかけて新陳代謝を活発にします。
骨・神経の発育、精神の安定にも
さらに甲状腺ホルモンは、骨や神経の発達・成長を促進したり、精神状態を安定させたりといった働きのある、生命活動を維持するうえで非常に重要なホルモンです。
胎児および乳児の発育
ヨウ素は胎児および乳児の正常な発育に不可欠であり、欠乏すると先天性の甲状腺機能低下症に陥るほか、精神遅滞、脳の発達異常、知的障害などを引き起こす可能性があります。
子どもの認知機能に重要な役割を果たす
ヨウ素は、小児期や青少年期の子どもの認知機能にも重要な役割を果たしており、ヨウ素が欠乏している地域の学童は、ヨウ素が十分に摂取できている地域の学童に比べて、IQが低く学習障害の発生率が高いという報告があります。
この研究については、その後のメタ分析によってヨード欠乏症を要因として平均して13.5%もIQが低下したと結論づけられています。
ヨウ素が不足・欠乏すると起こる症状
ヨウ素が不足すると、ヨウ素(ヨード)欠乏症といわれる重大な病気に陥ります。ヨウ素欠乏症によって引き起こされる症状は主に次の通りです。
- 出生前:先天性甲状腺機能低下症(重度なものはクレチン病とも)
- 新生児および乳児:脳の発達異常
- 子どもおよび青少年:知的障害、甲状腺腫(学習障害など)
- 成人:甲状腺機能低下症(疲労、体重増加、寒冷不耐性、便秘など)
- 妊娠および授乳中:流産、死産、先天性異常、神経認知欠損
ヨウ素が不足・欠乏する原因と対策
ヨウ素が不足・欠乏する原因は次の通りです。
- ヨウ素添加塩、魚、および海藻を摂らない
- セレンの欠乏
なおヨウ素は、昆布をはじめとする海藻類や魚介類に多く含まれているため、一般的な食生活を送る日本人において欠乏することは多くありません。
ヨウ素を過剰摂取すると起こる症状
ヨウ素を過剰摂取すると起こる症状は次の通りです。
- 甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが作られなくなる)
- 口、喉、胃の灼熱感
- 発熱
- 吐き気、嘔吐
- 下痢
- 弱脈
- 昏睡
上記のうち、甲状腺機能低下症以外の症状は、すべて急性のヨウ素中毒としての症状です。急性のヨウ素中毒が起こることは非常に稀で、通常は何グラムものヨウ素をいっぺんに服用した場合にのみ起こります。
ただし、次に当てはまる人は、健康な人にとって安全な摂取量でも敏感に反応することがあるため注意が必要です。
- ヨード(ヨウ素)欠乏症
- 結節性の甲状腺腫
- 自己免疫性甲状腺疾患を持つ人
- 嚢胞性線維症を持つ子ども
ヨウ素の過剰摂取と甲状腺がんの関係
観察研究によると、ヨウ素摂取量の増加が、甲状腺乳頭がんの発生と関連することがわかりました。
理由ははっきりとしていませんが、もともとヨウ素不足だった人は、食塩に要素を添加することによって、甲状腺乳頭がんが増加し、甲状腺濾胞がんが減少したのです。
なお甲状腺濾胞がんに比べ、甲状腺乳頭がんの方が、一般的に侵攻性が弱く予後もよいとされています。
ヨウ素の過剰摂取と橋本病の関係
橋本病とは、甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気で、慢性甲状腺炎とも呼ばれます。
ヨウ素の過剰摂取により症状が引き起こされる場合がありますが、ヨウ素の摂取をやめることで元に戻ります。
ヨウ素とバセドウ病の関係
ヨウ素が欠乏したときに、ヨウ素を補給するための薬(ヨウ化カリウム)があり、ヨウ素欠乏による甲状腺腫などの治療に用いられます。
一方でヨウ素薬は、甲状腺腫やバセドウ病などが原因の甲状腺機能亢進症に対しても効果があります。
甲状腺機能亢進症では、食べても痩せる、汗をかく、微熱、ふるえ、イライラといった症状が見られますが、ヨウ素薬によりヨウ素を補給することで、甲状腺ホルモンの過剰な分泌が抑えられ諸症状が改善されます。
ヨウ素の1日の摂取推奨量
ヨウ素の1日の摂取推奨量は、成人男性・成人女性ともに130μgで、耐容上限量は3,000μgです。
これは刻み昆布で摂取した場合、およそ50~60mgで推奨量を満たします。
なお、日本人の中でも特に海藻を多く食べる北日本の海岸地域に住む人は、1日あたり50,000~80,000μg(50~80mg)のヨウ素を摂取しているという報告もあります。
ヨウ素の食事摂取基準(μg/日)
性 別 | 男 性 | 女 性 | ||||||
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
0~5 (月) | ─ | ─ | 100 | 250 | ─ | ─ | 100 | 250 |
6 ~11(月) | ─ | ─ | 130 | 250 | ─ | ─ | 130 | 250 |
1~2 (歳) | 35 | 50 | ─ | 300 | 35 | 50 | ─ | 300 |
3~5 (歳) | 45 | 60 | ─ | 400 | 45 | 60 | ─ | 400 |
6~7 (歳) | 55 | 75 | ─ | 550 | 55 | 75 | ─ | 550 |
8~9 (歳) | 65 | 90 | ─ | 700 | 65 | 90 | ─ | 700 |
10~11(歳) | 80 | 110 | ─ | 900 | 80 | 110 | ─ | 900 |
12~14(歳) | 95 | 140 | ─ | 2,000 | 95 | 140 | ─ | 2,000 |
15~17(歳) | 100 | 140 | ─ | 3,000 | 100 | 140 | ─ | 3,000 |
18~29(歳) | 95 | 130 | ─ | 3,000 | 95 | 130 | ─ | 3,000 |
30~49(歳) | 95 | 130 | ─ | 3,000 | 95 | 130 | ─ | 3,000 |
50~64(歳) | 95 | 130 | ─ | 3,000 | 95 | 130 | ─ | 3,000 |
65~74(歳) | 95 | 130 | ─ | 3,000 | 95 | 130 | ─ | 3,000 |
75 以上(歳) | 95 | 130 | ─ | 3,000 | 95 | 130 | ─ | 3,000 |
妊婦(付加量) | +75 | +110 | ─ | ─ 1 | ||||
授乳婦(付加量) | +100 | +140 | ─ | ─ 1 |
ヨウ素を多く含む食品
ヨウ素を多く含む食品を、全食品・海藻類・魚介類・肉類・卵類・調味料の順で、それぞれランキング形式で紹介します。
ヨウ素を多く含む食品ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 藻類/(こんぶ類)/刻み昆布 | 230000 |
2 | 藻類/(こんぶ類)/ながこんぶ/素干し | 210000 |
3 | 藻類/(こんぶ類)/まこんぶ/素干し | 200000 |
4 | 藻類/ひじき/ほしひじき/ステンレス釜、乾 | 45000 |
4 | 藻類/ひじき/ほしひじき/鉄釜、乾 | 45000 |
6 | し好飲料類/昆布茶 | 26000 |
7 | 藻類/(こんぶ類) まこんぶ、素干し、水煮 | 19000 |
8 | 藻類/(こんぶ類)/つくだ煮 | 11000 |
8 | 調味料及び香辛料類/<調味料類>/(だし類)/昆布だし/煮出し | 11000 |
10 | 調理加工食品類/松前漬け/しょうゆ漬 | 10000 |
10 | わかめ カットわかめ 乾 | 10000 |
ヨウ素を多く含む海藻ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 刻み昆布 | 230000 |
2 | ながこんぶ/素干し | 210000 |
3 | まこんぶ/素干し | 200000 |
4 | ほしひじき/ステンレス釜、乾 | 45000 |
4 | ほしひじき/鉄釜、乾 | 45000 |
6 | まこんぶ、素干し、水煮 | 19000 |
7 | こんぶ類/つくだ煮 | 11000 |
8 | カットわかめ 乾 | 10000 |
9 | あおのり/素干し | 2700 |
10 | あおさ/素干し | 2200 |
ヨウ素を多く含む魚介類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | しめさば | 430 |
2 | まだら/生 | 350 |
3 | くろあわび 生 | 200 |
4 | めがいあわび 生 | 190 |
4 | まだかあわび 生 | 190 |
6 | あわび/生 | 180 |
7 | すけとうだら/生 | 160 |
8 | すけとうだら/たらこ/生 | 130 |
9 | さくらえび 生 | 110 |
9 | 塩さば | 110 |
9 | さば類/加工品/開き干し | 110 |
ヨウ素を多く含む肉類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | ぶた/[ハム類]/生ハム/促成 | 180 |
2 | ぶた/[ベーコン類]/ショルダーベーコン | 130 |
3 | ぶた/[プレスハム類]/チョップドハム | 100 |
4 | ぶた/[ベーコン類]/ベーコン | 60 |
5 | ぶた/[プレスハム類]/プレスハム | 41 |
6 | にわとり/[その他]/つくね | 38 |
7 | ぶた/[ソーセージ類]/フランクフルトソーセージ | 36 |
8 | かも/あひる/肉、皮なし、生 | 11 |
9 | ぶた/[ソーセージ類]/リオナソーセージ | 9 |
9 | うし/[加工品]/コンビーフ缶詰 | 9 |
ヨウ素を多く含む卵類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 鶏卵/たまご焼/厚焼きたまご | 540 |
2 | 鶏卵/たまご焼/だし巻きたまご | 450 |
3 | うずら卵/全卵、生 | 140 |
4 | うずら卵/水煮缶詰 | 73 |
5 | 鶏卵/卵黄/加糖卵黄 | 50 |
5 | 鶏卵 卵黄 生 | 50 |
7 | 鶏卵/全卵/加糖全卵 | 44 |
8 | 鶏卵 卵黄 ゆで | 39 |
9 | あひる卵/ピータン | 34 |
10 | 鶏卵/全卵/目玉焼き | 25 |
ヨウ素を多く含む調味料ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりμg |
1 | 昆布だし/煮出し | 11000 |
2 | 昆布だし | 5300 |
3 | キムチの素 | 1900 |
4 | かつお・昆布だし | 1500 |
4 | なべつゆ、ストレート、しょうゆ味 | 1500 |
6 | だししょうゆ | 750 |
7 | 和風ドレッシング | 320 |
8 | 三杯酢 | 150 |
8 | 魚醤油/いかなごしょうゆ | 150 |
10 | 魚醤油/いしる(いしり) | 61 |
ヨウ素を効率よく摂取する方法
ヨウ素は海藻類や魚介類に豊富で、特に昆布類には文字通り桁違いのヨウ素が含まれています。
最も含有量の多い刻み昆布に至っては、わずか1g強で耐容上限量の3,000μgに達しかねないほどです。
昆布だしになるとだいぶ減少するとはいえ、それでも約27gの摂取で耐容上限量に達します。
一方で海藻類以外に含まれるヨウ素は、しめ鯖100gあたり430μgや厚焼きたまご100gあたり540μgが最大であり、昆布や海藻類を普段から摂取していない場合は欠乏のリスクが高い栄養素でもあります。
実際、海藻類を食べない日本人のヨウ素摂取量は平均で73μg/日と報告されており、こうした人においては海藻を避けずに食べることに加え、マルチビタミンやマルチミネラルによって必要量を補うことも推奨されます。
参考文献
ヨウ素 | 海外の情報 | 医療関係者の方へ | 「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省