ビタミンB群の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品

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栄養素

ビタミンB群の基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品について解説します。

ビタミンB群とは

ビタミンB群とは、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類を指します。

ビタミンB群は、酵素の働きを助ける補酵素(コエンザイム:coenzyme)として働き、糖質・脂質・タンパク質の代謝をサポートするために必須の栄養素です。

ビタミンB群に属する栄養素はいずれも水溶性ビタミンであり、水に溶けやすく熱に弱い傾向があるため、水に浸す調理や、高温に熱する調理を行うと損失してしまいます。

ビタミンB群に属する8種類の栄養素

ビタミンB群に属する、8種類の栄養素の特徴を解説します。

ビタミンB1:脳や神経の働きを正常に保つ

ビタミンB1は、1910年に米ぬかから発見された水溶性ビタミンで、科学的にはチアミンという名前の化合物です。

ビタミンB1は、脳が唯一エネルギー源とするブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な補酵素であり、また乳酸などの疲労物質を排出する働きから、疲労回復のビタミンとも呼ばれます。

ビタミンB2:発育、成長のビタミン

ビタミンB2は、化学的にはリボフラビンという名前の化合物です。リボフラビンは黄みのある色素で、食品添加物としても利用されます。

ビタミン剤などを摂取すると尿が黄色っぽくなることがありますが、これはビタミンCではなくビタミンB2が溶け出しているため。ビタミンCというとレモンのイメージが強いことから誤解されやすいですが、ビタミンCは無色透明の栄養素です。

ビタミンB2は、補酵素として糖質や脂質の代謝に関わっており、ビタミンB2が不足・欠乏すると、糖質や脂質がうまくエネルギーとして利用されなくなってしまいます。

ビタミンB2が不足すると起こる症状としては、肌荒れ・口内炎・口角炎などが一般的ですが、特に成長期や妊娠中に欠乏すると成長障害を引き起こすことから、「発育のビタミン」「成長のビタミン」とも呼ばれる重要なビタミンです。

ナイアシン:500種以上の酵素をサポートする

ナイアシンとは、ナイアシンアミド(ニコチンアミド)とナイアシン(ニコチン酸)の総称であり、ニコチン酸ビタミン(NIcotinic ACid vitamIN=NIACIN)の略称です。

ニコチン酸という言葉が有害物質のニコチンと混同されることを防ぐために、ナイアシンと名付けられました。

ナイアシンは、以前はビタミンB3とも呼ばれていたビタミンB群の仲間であり、水溶性ビタミンとしての性質を持っています。

酵素の働きをサポートするビタミンB群の中でも、特にナイアシンは多くの酵素をサポートしており、その数は500種以上にも及び糖質・脂質・タンパク質などあらゆる物質の代謝・エネルギーづくりを支えています。

ナイアシンは水溶性ビタミンには珍しく熱に強い傾向があり、加熱調理をしても損失はほとんどありません。

なおナイアシンの一部は、必須アミノ酸であるトリプトファンを原料として肝臓で合成されます。その割合は、トリプトファン60個でナイアシンが1つ作られる換算です。

ビタミンB6:タンパク質や脂質の代謝をサポート

ビタミンB6として機能する化合物には、ピリドキシン・ピリドキサール・ピリドキサミンの3種類があります。

ビタミンB6の主な働きは、その他のビタミンB群と同様に、補酵素としてタンパク質や脂質の代謝をサポートすることです。また、神経伝達物質の合成にも関与しています。

ビタミンB6が不足・欠乏すると、摂取したタンパク質や脂質がうまくエネルギーとして利用されなくなるほか、トリプトファンを原料とするセロトニンの合成ができなくなったり、ドーパミン・アドレナリンといった神経伝達物質の合成が滞ったりして、精神の不安定をきたします。

なお、ビタミンB6は腸内細菌によって体内で一部作られることから、一般的な食生活においては欠乏しにくい栄養素です。しかし、アルコール依存や妊娠などによりビタミンB6の必要量が増加するとその限りではありません。

ビタミンB12:葉酸と協力して貧血を予防

ビタミンB12は、ビタミンとしては特殊な構造をしており、金属イオン(コバルト)を含む化合物です。ビタミンB12の種類には、アデノシルコバラミン・メチルコバラミン・ヒドロキシコバラミン・シアノコバラミンがあります。

その他のビタミンB群と同じように、補酵素としてタンパク質や核酸の生合成、アミノ酸や脂肪酸の代謝に関わっている栄養素です。

ビタミンB12の大切な機能はそれだけではなく、神経機能・DNA合成に必須なほか、葉酸と協力して赤血球中のヘモグロビンを生成する働きがあるため、悪性貧血などの予防に欠かせません。

ビタミンB12は動物性食品に多く含まれており、野菜や果物には一般的に含まれていないことから、ヴィーガンなど菜食主義者は特に不足しやすいため、栄養強化シリアルやサプリメントで積極的に摂取することが推奨されています。

葉酸:造血や細胞の生まれ変わりに欠かせない

葉酸とは、食品に含まれる天然の葉酸塩や、サプリメントや葉酸添加食品に使用される葉酸の総称です。

1914年にほうれん草の葉から発見されたため、ラテン語で「葉」を意味する「folium」から「folic acid=葉酸」と名付けられました。

名前の通り、植物の葉に比較的多く含まれる栄養素で、ビタミンB12とともに赤血球を作ることから「造血のビタミン」と呼ばれます。

細胞分裂において重要な役割を果たし、子どもの発育に欠かせないため、特に妊娠初期から授乳期に意識して摂取したいビタミンのひとつです。

その重要性を鑑みて、アメリカでは1998年に穀類に葉酸を添加して販売することが義務付けられました。その後、葉酸添加プログラムの動きは世界へ広がっていますが、2020年現在、日本に葉酸添加義務はまだありません。

パントテン酸:免疫力を強化してストレス抵抗力を高める

パントテン酸の名前には「広くどこにでもある酸」という意味があり、さまざまな生物に含まれることから名付けられました。

糖質・脂質・タンパク質と3大栄養素の代謝をサポートする働きがあり、エネルギーを生み出すのに欠かせないのに加えて、パントテン酸には副腎の働きを強化するという重要な働きがあります。

副腎皮質で産生される副腎皮質ホルモンは、抗ストレスホルモンとも呼ばれ、ストレスへの抵抗力を高める重要な物質です。

ビオチン:皮膚炎予防、脱毛予防に効果を発揮

ビオチンは、オランダの研究者・ケーグルが酵母の増殖に必要な因子として発見し、ビオチンと名付けられました。

その後、皮膚の炎症を防止する因子であることが発見され、ビタミンHと呼ばれるようになります。Hはドイツ語で皮膚を意味するHautから取ったもので、ビオチンは皮膚との関連が深いビタミンとして古くから知られ、皮膚疾患の治療薬としても使用されていました。

ビオチンは、他のビタミンB群と同じく補酵素として糖の代謝、アミノ酸の代謝、脂肪酸合成などに関与します。

補酵素として働く以外にも、抗炎症物質を生成してアレルギー症状を緩和したり、皮膚の炎症を防いだり、免疫機能を正常に保ったり、コラーゲンを合成して皮膚を健康に保ったりといった働きを見せます。

ビオチンは幅広い食品に含まれており、腸内細菌によって合成することが可能なので、欠乏する心配はほとんどありません。

また、食品単体における含有量は少なく、過剰に摂取しても尿から排泄されるため、通常の食生活を送る人において過剰症に陥る心配も少ないと考えられます。

熱、光、酸などの刺激には強い一方、アルカリに対しては不安定な性質を持っています。

ビタミンB群の働き・欠乏症・副作用

ビタミンB群がもつ働き・欠乏による症状・過剰摂取による副作用は、それぞれ表の通りです。

働き不足・欠乏による症状過剰摂取による副作用
ビタミンB1・糖質の代謝を助ける補酵素として機能
・糖質をエネルギーに変換して疲労回復を助ける
・糖質を主なエネルギー源とする神経や脳を正常に保つ
・アルコールの代謝に必要
・軽度欠乏:疲労感やイライラなど漠然とした症状
・脚気:心不全・足のむくみ・足のしびれが起こる
・ウェルニッケ-コルサコフ症候群:昏睡・眼球の震え・体のふらつき
尿中に排泄されるため過剰摂取のリスクは低い
ビタミンB2・糖質や脂質の代謝をサポートする
・成長を促進する
・皮膚や粘膜、髪の健康を保つ
・口内炎、肌荒れ、ニキビなどを予防する
・口内炎、口角炎、舌炎、口唇炎、肌荒れ
・ニキビ
・眼精疲労、充血、白内障
・脂漏性湿疹、脂漏性皮膚炎
・成長停止
・倦怠感(だるさ、疲れ)
・貧血
・頭髪のトラブル
尿中に排泄されるため過剰摂取のリスクは低い過剰に摂取している場合、色素により尿が黄色くなる
ナイアシン・代謝をサポートしエネルギーを生み出す
・皮膚、粘膜の炎症を防ぐ
・アルコールを分解して二日酔いを防ぐ
・血行を促進して冷え、頭痛、肩こりなどを改善
・神経症状の改善
・アレルギー症状の改善
・ペラグラ:日光による光線過敏症
・軽度欠乏:食欲不振、消化不良、皮膚の発疹
・そのほか:うつ症状、不安、不眠
ナイアシンフラッシュ:およそ30分~2時間程度、顔や肌が赤くなる・かゆくなるといった症状が起こる。長いものでは数日間にわたって不快感を引き起こすものの、そのほかの明確な害はない。
ビタミンB6・タンパク質や脂質の代謝を促進
・造血に関与して貧血を予防する
・神経伝達物質を生成して精神を安定させる
・脂質の抗酸化に関与し動脈硬化を予防する
・貧血
・多発性末梢神経炎
・脂漏性皮膚炎
・口角炎
・舌炎
ビタミンB6として働く物質のうち、ピリドキシンのみを大量摂取した場合、感覚神経障害・骨の疼痛・精子数の減少などの副作用が見られたとの報告がある
ビタミンB12・タンパク質や核酸の生合成に関与
・神経細胞の修復および正常な働きの維持
・睡眠の質の向上、不眠症の緩和
・赤血球中のヘモグロビンを生成する造血作用
・巨赤芽球性貧血
・疲労感、衰弱、食欲不振
・うつ症状、錯乱、記憶力の低下など
副作用がないことが明言されている。ただし一部で「ビタミンB6と共に過剰摂取した際に股関節骨折リスクを高める恐れがある」「ビタミンB12サプリメント服用がニキビの原因となる」といった報告があるそのほかの水溶性ビタミンに比べると水に溶けにくく、やや蓄積しやすい
葉酸・ビタミンB12とともに赤血球を合成する
・胎児の発育リスクを予防する
・ホモシステインの代謝を促す
・巨赤芽球性貧血
・認知機能障害に関与
・胎児の先天性異常のリスク増大
サプリメントによる合成された葉酸の摂取についてのみ過剰摂取が懸念されるが、副作用は消化不良や不眠などの報告がある程度。似た機序を持つビタミンB12の欠乏に気づきにくくなる。
パントテン酸・タンパク質、脂質、糖質の代謝を促進
・副腎皮質の機能をサポートしてストレス抵抗力を高める
・善玉コレステロールを増加させて動脈硬化予防
・皮膚を正常に保つ
・皮脂を抑制してニキビ予防
・足のしびれ、灼熱痛、刺痛
・頭痛
・疲労
・不眠
・腸の不調
唇がかさつく、肌が乾燥する
ビオチン・糖の代謝に関与
・皮膚を健康に保つ
・脱毛、白髪を予防する
・筋肉痛を緩和する
・免疫機能の正常化
・アレルギー症状を抑制する
・脱毛
・鱗屑性皮疹
・吐き気、顔面蒼白
・精神抑うつ、無気力
・四肢のしびれ
尿中に排泄されるため過剰摂取のリスクは低い

ビタミンB群の1日の摂取量と多く含む食品

ビタミンB群の1日の摂取量と、各種ビタミンB群を多く含む代表的な食品はそれぞれ下記表の通りです。

1日の摂取量多く含む食品
ビタミンB1成人男性1.4mg、成人女性1.1mg、妊婦・授乳婦の場合さらに+0.2mg豚肉・うなぎ・たらこ・ナッツ類・玄米
ビタミンB2成人男性1.6mg、成人女性1.2mg、妊婦・授乳婦の場合さらに+0.2~0.6mg豚レバー・鶏レバー・牛レバー・うなぎ・牛乳
ナイアシン成人男性11~13g、成人女性9~10g、授乳婦はさらに+3g。なお推奨量は、それぞれさらに+2~3gたらこ・かつお・レバー類・鶏むね肉・びんながまぐろ・落花生
ビタミンB6成人男性1.4mg、成人女性1.1mg、妊婦+0.2mg、授乳婦+0.3mgかつお・まぐろ・牛レバー・さんま・バナナ
ビタミンB12成人男性・成人女性ともに2.4μg、妊婦は+0.3~0.4μg、授乳婦は+0.7~0.8μg牛レバー・鶏レバー・カキ・さんま・あさり・にしん
葉酸成人男性・成人女性ともに200μg、推奨量240μg、妊娠を計画している女性(いわゆる妊活中の女性)、および妊娠初期の妊婦は+400µg摂取を推奨菜の花・枝豆・ほうれん草・からし菜・レバー類
パントテン酸成人男性・成人女性ともに5~6mgレバー類・鶏もも肉・にじます・子持ちがれい・納豆
ビオチン成人男性・成人女性ともに50μgレバー類・いわし・落花生・卵・にしん
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
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