ビタミンB12の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法

16408views

栄養素

ビタミンB12の基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響と原因、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。

ビタミンB12とは

ビタミンB12は、エネルギーの代謝を助けるビタミンB群のひとつであり、水溶性ビタミンに分類されます。

ビタミンとしては特殊な構造をしており、金属イオン(コバルト)を含む化合物です。ビタミンB12の種類には、アデノシルコバラミン・メチルコバラミン・ヒドロキシコバラミン・シアノコバラミンがあります。

その他のビタミンB群と同じように、酵素をサポートする補酵素(コエンザイム)として、タンパク質や核酸の生合成、アミノ酸や脂肪酸の代謝に関わっている栄養素です。

神経機能・DNA合成に必須なほか、葉酸と協力して赤血球中のヘモグロビンを生成する働きがあるため、欠乏すると貧血などを引き起こすことも。

ビタミンB12は動物性食品に多く含まれており、野菜や果物には一般的に含まれていないため、ヴィーガンなど菜食主義者は不足しないよう栄養強化シリアルやサプリメントで積極的に摂取することが推奨されています。

ビタミンB12の効果・働き

ビタミンB12が持つ効果・効能・働きについて解説します。

エネルギー増強・持久力増幅

ビタミンB12はタンパク質・アミノ酸・脂肪酸などの代謝に関わっているため、エネルギーのもととなるそれらの栄養素に加えて、ビタミンB12をしっかり取り入れることで、エネルギー増強に繋がります。

さらに、ビタミンB12の欠乏を原因とする倦怠感・筋力低下・めまいなどの症状が改善されることによって、持久力増幅も期待できるでしょう。

心血管疾患予防

ビタミンB12と葉酸は、ホモシステインが代謝するうえで非常に重要な栄養素です。

血中のホモシステイン濃度が高くなると心血管疾患のリスクを高めることから、ビタミンB12を摂取することが心血管疾患の予防に繋がるということができるでしょう。

睡眠の質向上・不眠症の緩和

ビタミンB12は、メラトニンという睡眠ホルモンの生成に関わっています。

メラトニンは、セロトニンを原料としてビタミンB12が働きかけることで合成される神経伝達物質で、その役割は睡眠の質の向上や不眠症の緩和です。

睡眠の質が向上することにより、睡眠不足による肌荒れや口内炎の予防・改善も期待できます。

耳鳴り・難聴の改善

ビタミンB12は、神経細胞を修復する働きを持っているため、耳鳴りや難聴の治療薬としても用いられます。

ビタミンB12が不足・欠乏すると起こる症状

ビタミンB12が不足・欠乏すると、次の症状を引き起こします。

  • 巨赤芽球性貧血
  • ハンター舌炎
  • 末梢神経炎
  • 亜急性連合脊髄変性症
  • 疲労感
  • 衰弱
  • 便秘
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 手足のしびれや刺痛
  • 平衡機能障害
  • うつ症状
  • 錯乱
  • 認知症
  • 記憶力低下
  • 口や舌の痛み

ビタミンB12が不足・欠乏する原因と対策

次に該当する人は、ビタミンB12欠乏症のリスクが高まります。

  • 60歳以上の高齢者
  • 悪性貧血の人
  • 消化肝疾患を有する人
  • 消化管手術を受けたことがある人
  • 菜食主義者

ビタミンB12欠乏症は人口の1.5~15%に及ぶとされますが、ビタミンB12は一般的な食事を摂取している健康な人が不足することはほぼなく、欠乏の原因の多くは腸の吸収不全だと考えられます。

ビタミンB12を食事から十分に摂取していたとしても、胃・膵臓・小腸といった消化器官の機能が正常でなければ吸収されません。

また消化器官が正常だったとしても、ビタミンB12は動物性食品に多く含まれることから、ヴィーガンなどの菜食主義者は一般的な食事を摂取する人より欠乏リスクが高い傾向にあります。

対策としては、サプリメントや注射によって高用量のビタミンB12を内服するとよいでしょう。

なお、葉酸を大量に摂取している場合、ビタミンB12の欠乏が分かりにくくなるため、健康な成人は1日1,000μgを超える葉酸を摂取すべきではないとされています。

ビタミンB12を過剰摂取すると起こる症状

ビタミンB12は過剰に摂取しても吸収されないため、過剰摂取による健康上のリスクや副作用はほとんどありません。

米国医学研究所IOMは、「健康な人で、食品やサプリメントから過剰なビタミンB12を摂取した場合の有害事象は見られていない」と明言しました。

ただし、一部では次のような報告もあります。

  • ビタミンB6・ビタミンB12を共に過剰摂取した場合において、股関節骨折のリスクを高める恐れがある
  • 人によってはビタミンB12サプリメントの服用がニキビの原因となる
  • 虚血性心疾患患者における葉酸とビタミンB12の補給は、癌(がん)発生リスクと全死因死亡率を増大させる

ビタミンB12は水溶性ビタミンに分類はされるものの、その他の水溶性ビタミンと比べるとやや水に溶けにくい性質を持つため、マルチビタミンサプリメントなどでまとめて摂取する場合は摂取量に注意した方がよいでしょう。

ビタミンB12の1日の摂取目安量

ビタミンB12の1日の摂取目安量は、成人男性・女性ともに2.4μg、妊婦は+0.3~0.4μg、授乳婦は+0.7~0.8μgです。

これは牛レバーで摂取した場合、およそ5gで十分な量となります。味付け海苔で摂取した場合でも、およそ2~3枚(1g)で1日のビタミンB12の摂取推奨量のうち20%ほどに達します。

不足しがちなその他の栄養素に比べ、摂取しやすい栄養素と言えるでしょう。

ビタミンB12の食事摂取基準(μg/日)

性 別男 性女 性
年齢等推定平均必要量推奨量目安量推定平均必要量推奨量目安量
0 ~ 5 (月)0.40.4
6 ~11(月)0.50.5
1 ~ 2 (歳)0.80.90.80.9
3 ~ 5 (歳)0.91.10.91.1
6 ~ 7 (歳)1.11.31.11.3
8 ~ 9 (歳)1.31.61.31.6
10~11(歳)1.61.91.61.9
12~14(歳)22.422.4
15~17(歳)22.422.4
18~29(歳)22.422.4
30~49(歳)22.422.4
50~64(歳)22.422.4
65~74(歳)22.422.4
75 以上(歳)22.422.4
妊婦(付加量)+0.3+0.4
授乳婦(付加量)+0.7+0.8
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)

ビタミンB12を多く含む食品

ビタミンB12を多く含む食品を、全食品・肉類・魚介類の順で、それぞれランキング形式で紹介します。

全食品中でビタミンB12を多く含む食品ランキング

順位食品名成分量100gあたりμg
1魚介類/(さけ・ます類)/しろさけ/めふん327.6
2魚介類/しじみ/水煮81.6
3藻類/あまのり/ほしのり77.6
4魚介類/しじみ/生68.4
5魚介類/(いわし類)/かたくちいわし/田作り64.5
6魚介類/あさり/缶詰/水煮63.8
7魚介類/あゆ/天然、内臓、生60.3
8魚介類/あげまき/生59.4
9魚介類/あかがい/生59.2
10藻類/あまのり/味付けのり58.1
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

全食品の中でビタミンB12を最も多く含むのはめふん(鮭の腎臓の塩辛)ですが、毎日の食事への取り入れやすさを考えると、味付け海苔の方が容易に摂取することができます。

ビタミンB12を多く含む肉類ランキング

順位食品名成分量100gあたりμg
1うし/[副生物]/肝臓/生52.8
2にわとり/[副生物]/肝臓/生44.4
3ぶた/[副生物]/肝臓/生25.2
4ぶた/[その他]/スモークレバー24.4
5うし/[副生物]/じん臓/生22.1
6うし/[副生物]/小腸/生20.5
7ぶた/[副生物]/じん臓/生15.3
8うし/[副生物]/心臓/生12.1
9ぶた/[その他]/レバーペースト7.8
10がちょう/フォアグラ/ゆで7.6
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

肉類の中でビタミンB12を最も多く含むのは、牛レバー・鶏レバー・豚レバーです。その他にも、全体的に内臓部位に多く含まれている傾向があります。

ビタミンB12を多く含む魚介類ランキング

順位食品名成分量100gあたりμg
1さけ・ます類/しろさけ/めふん327.6
2しじみ/水煮81.6
3しじみ/生68.4
4いわし類/かたくちいわし/田作り64.5
5あさり/缶詰/水煮63.8
6あゆ/天然、内臓、生60.3
7あげまき/生59.4
8あかがい/生59.2
9やつめうなぎ/干しやつめ54.8
10さけ・ます類/しろさけ/すじこ53.9
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

魚介類の中でビタミンB12を最も多く含むのは先述の通りめふんですが、その他ではあさりやしじみといった貝類にも豊富に含まれています。

ビタミンB12を効率よく摂取する方法

ビタミンB12は水溶性ビタミンであり、水溶性ビタミンは茹でると溶け出しやすい性質を持っています。そのため電子レンジ加熱で損失を防ぐ、というのが水溶性ビタミンを効率よく摂取する調理方法として一般的です。

ところがビタミンB12の調理損失について調査したレポートによると、焼く・蒸す・揚げる調理では94.5~97.7%とほぼ損失がなく、茹でる調理でもわずか3.4%が煮汁に溶け出しただけだったのに対し、電子レンジ加熱では残存率85.2%と最も少ない結果となりました。

この調査では魚肉(カツオ)を用いたためその他の動物性食品においても単純比較することはできませんが、ビタミンB12を意識して摂取したい場合は、電子レンジ加熱は避けて、焼く・蒸す・揚げるなどの短時間の加熱を心がけるとよいでしょう。

高齢者や菜食主義者などで、動物性食品からビタミンB12を十分に摂取・吸収することが難しい場合には、ビタミンB12を添加したシリアルなどの添加食品、あるいはサプリメントなどによって補うことが推奨されます。

参考文献

Institute of Medicine. Food and Nutrition Board. Dietary Reference Intakes: Thiamin, Riboflavin, Niacin, Vitamin B6, Folate, Vitamin B12, Pantothenic Acid, Biotin, and Choline. Washington, DC: National Academy Press, 1998.

Vitamin B12 modulates the transcriptome of the skin microbiota in acne pathogensis(ビタミンB12は皮膚細菌叢の遺伝子発現を変化させニキビ発症に関わる)|6月24日号Science Translational Medicine掲載論文

加熱調理によるビタミンB12の調理損失|東京農業大学

LINE公式アカウントを追加
LINEお友達追加