バナナの栄養と効果効能・調理法・保存法
5683views
バナナの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、バナナに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
バナナとは
バナナは、バショウ科バショウ属の果実です。総務省の調査によると、2005年から2019年まで15年連続で、日本でよく食べられる果実第1位になりました。このことから、日本人にとって、もっとも親しみのある果物と言えるでしょう。
バナナの歴史は古くおよそ4万年前に遡ります。バナナの原種であるフィリピン原産の「ムサ・バルビシアーナ」は、固くて黒い種がぎっしり詰まっているのが特徴でした。
その後、マレー半島原産の「ムサ・アクミナータ」と交配をしていく中でさまざまな品種が作られ、現在のような種のないバナナが誕生します。
日本にバナナがやってきたのは明治36年。台湾航路の貨客船の船員が、神戸港にバナナを商業的に輸入したのが始まりです。当時、一般庶民はなかなか手が出せない高価な果実でしたが、大正時代後半〜昭和に入ったころから、庶民も口にできるようになりました。
バナナはその甘さや栄養価の高さから太ると思われがちですが、カロリーは1本約86kcal。ご飯だとお茶碗半分、6枚切りの食パン半分とほぼ同量です。
また、バナナには糖質が数種類含まれており、即効性・持続性のあるエネルギー源になるため、体が疲れていたり弱っていたりする際に適した果実と言えます。
ほとんどのバナナは通年安定して輸入され店頭に並ぶため、旬はありません。しかし、沖縄や奄美大島・石垣島など国内で生産されているバナナは収穫時期が限定されており、旬は7〜9月の夏とされています。
バナナの品種
バナナの代表的な品種について解説します。
ジャイアント・キャベンディッシュ:さっぱりとした甘み
一般的によく見られるバナナが、ジャイアント・キャベンディッシュです。
フィリピンから輸入されるため、フィリピンバナナとも呼ばれています。皮は厚く、果肉はなめらかでさっぱりとした甘みがあります。日持ちするのも特徴の1つです。
台湾バナナ:ねっとりした舌触りと強い甘み
主に、台湾で栽培されている品種です。
フィリピンバナナに比べて少し短く、やや太めの形をしています。香りが強く、果肉はねっとりした舌触りで、濃厚な甘みがあります。
モンキーバナナ:小さくて柔らかく濃厚な甘み
別名「セニョリータ」と呼ばれる品種です。
長さは7〜9cmで、太さ2.5cmと小ぶりなサイズ。薄い皮と、柔らかい果肉、濃厚な甘みがあり、デザート用として用いられることがあります。
レッドバナナ:独特な赤茶色の果皮
フィリピンやエクアドルで栽培される品種です。「モラード」とも呼ばれています。
最大の特徴は、赤茶色の果皮。果肉はほかの品種と同様に黄白色です。もっちりとした食感と控えめな甘さがあります。
バナップル:リンゴのような酸味
バナナなどの輸入をしている会社「株式会社スミフル」が、2012年4月に開発・発売し始めたブランドバナナです。
「バナップル」とは、「バナナ」と「アップル」をかけ合わせた名称で、名前の通りリンゴのような酸味とフルーティーな甘みがあります。
島バナナ:小ぶりで濃厚な味わい
おもに沖縄県や奄美諸島で栽培されている品種。長さは10~15cm、太さは約3cmの比較的小ぶりなバナナです。
輸入もののバナナと違い、熟してから収穫するので、甘みも酸味も強く、濃厚な味わいを持っています。台風の影響を受けやすいため生産数が安定しなく、本州ではあまり流通していません。
バナナに含まれる成分・栄養素
バナナ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | バナナ 生 | バナナ 乾 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 86 | 299 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 360 | 1251 |
水 分 | g/100 g | 75.4 | 14.3 |
たんぱく質 | g/100 g | 1.1 | 3.8 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 0.7 | -2.4 |
脂 質 | g/100 g | 0.2 | 0.4 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -0.1 | -0.2 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.07 | -0.12 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.02 | -0.03 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.04 | -0.07 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 22.5 | 78.5 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 19.4 | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.1 | 2 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1 | 5 |
食物繊維総量 | g/100 g | 1.1 | 7 |
灰 分 | g/100 g | 0.8 | 3 |
ナトリウム | mg/100 g | Tr | 1 |
カリウム | mg/100 g | 360 | 1300 |
カルシウム | mg/100 g | 6 | 26 |
マグネシウム | mg/100 g | 32 | 92 |
リン | mg/100 g | 27 | 84 |
鉄 | mg/100 g | 0.3 | 1.1 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.2 | 0.6 |
銅 | mg/100 g | 0.09 | 0.25 |
マンガン | mg/100 g | 0.26 | 1.31 |
ヨウ素 | µg/100 g | 0 | - |
セレン | µg/100 g | 1 | - |
クロム | µg/100 g | 0 | - |
モリブデン | µg/100 g | 7 | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 28 | 330 |
β-カロテン | µg/100 g | 42 | 670 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 | 9 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 56 | 840 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 5 | 70 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.5 | 1.4 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | Tr |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.05 | 0.07 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.04 | 0.12 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.7 | 1.4 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.38 | 1.04 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 26 | 34 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.44 | 1.13 |
ビオチン | µg/100 g | 1.4 | - |
ビタミンC | mg/100 g | 16 | Tr |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - |
有機酸 | g/100 g | 0.7 | - |
重量変化率 | % | - | - |
備考 | 廃棄部位: 果皮及び果柄 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
バナナの効果・効能
バナナに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
糖質
バナナは、単糖類のブドウ糖と果糖、少糖類のショ糖とオリゴ糖、多糖類の食物繊維とデンプンなど、多くの種類の糖質を含んでいます。
糖の種類によって体内で吸収されエネルギー源に変わるスピードが違うため、バナナを食べると即効性と持続性の両エネルギー源を得ることができます。
なかでもブドウ糖は、脳が利用できる唯一のエネルギー源として働きます。
さらに不溶性食物繊維を豊富に含んでいるため、腹持ちが良く、血糖値が緩やかに上昇するため、脂肪がつきにくいことからダイエット効果も期待できるでしょう。
ポリフェノール類
バナナに豊富に含まれるポリフェノールは、強い抗酸化作用があり、活性酸素を取り除くことで動脈硬化、高血圧、悪性腫瘍、糖尿病などの生活習慣病を予防したり、細胞を若々しく保ったりといった効果があります。
熟したバナナほどポリフェノールの含有量が多くなるので、シュガースポット(甘くなった目印になる黒い斑点。スウィートスポットとも)が出てきてある程度熟したバナナを食べると良いでしょう。
アミノ酸(トリプトファン)
果物の中でも、バナナはトリプトファンを多く含みます。アミノ酸の一種であるトリプトファンは、脳の神経伝達物質「セロトニン」を合成するために欠かせません。
合成されたセロトニンには、神経を落ち着かせる効果や、睡眠を促進する効果があります。
タンパク質
バナナは、果物の中でも比較的多くのタンパク質を含みます。
タンパク質は、細胞や筋肉のもとになる構造タンパク質のほかにも、体を動かす収縮タンパク質、栄養や酸素を運搬するタンパク質、成長を促すホルモンとしての働きなど、さまざまな役割を発揮する重要な栄養素です。
ビタミンB群
バナナにはさまざまなビタミンB群が含まれています。
ビタミンB1
ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変換するのを助ける補酵素として働く、水溶性のビタミンです。中枢神経や末梢神経の働きを正常に保つ、疲労回復を助けるなどの効果があります。
ビタミンB2
ビタミンB2は、脂質の代謝を助ける水溶性のビタミンです。口内炎の予防、皮膚・爪・髪の毛の健康を維持するなどの効果があります。
ナイアシン(ビタミンB3)
ナイアシンはビタミンB3とも呼ばれるビタミンB群の一種で、脂質やアミノ酸の代謝を助け、体内のエネルギー代謝を円滑にするビタミンです。
ナイアシンは500以上もの酵素を助ける働きがあるため、不足すると、皮膚や粘膜の健康が損なわれたり、口内炎ができたり、エネルギー代謝が低くなったり、脳神経伝達物質代謝不全による食欲不振・神経衰弱・不眠症などの症状がでたりと、健康上のさまざまな影響が出てしまいます。
ビタミンB6
ビタミンB6は、タンパク質の代謝を助けるビタミンです。髪の毛や皮膚・歯などの健康を保つ、神経伝達物質の合成を助ける、貧血を予防するといった効果があります。
葉酸
葉酸は、造血作用のあるビタミンです。
妊娠初期の赤ちゃんには、脳や脊髄の基盤となる神経管が形成されます。この際に多くの葉酸が必要になるため、妊婦や妊娠を控えた女性は積極的に取っておきたい栄養素です。
水に溶けやすく、加熱に弱いため、バナナをそのまま食べることで葉酸を損なわずに摂取できます。
バナナの色と栄養の関係
バナナの色と栄養の関係について解説します。
青めのバナナ:便秘解消に効果的
まだ熟していない青めのバナナは、腸の働きを活発にする難消化性デンプンを多く含んでいます。
難消化性デンプンは熟すにつれて糖類に変わっていくため、便秘解消効果を実感するためには青めのバナナを食べると良いでしょう。
黄色バナナ:美肌促進に効果的
黄色く熟したバナナは、栄養価が最もバランス良くそろっています。ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6といった美肌促進が期待できる成分が豊富に含まれています。
熟した茶色バナナ:免疫力向上に効果的
バナナは、熟すほどにポリフェノールによる抗酸化作用が強くなります。
そのため抗酸化作用によって、生活習慣病を予防したり、細胞を若々しく保ったり、といった効果を期待する場合は、熟した茶色いバナナを積極的に摂取するとよいでしょう。
また、シュガースポットが出ている熟したバナナは、免疫力を活性化させる「インターロイキン」という物質が増えることもわかっています。
バナナのおすすめの食べ方
バナナの栄養を効率的に摂取するための食べ方や食べるべきタイミングを解説します。
ダイエット時に食べる
バナナを食べるタイミングとしておすすめなのが、ダイエット時に食べるというものです。
バナナにはさまざまな種類の糖が含まれており、それぞれ体内に吸収されるスピードが異なります。
すべての糖が吸収されるまでに時間を要するため、血糖値の上昇は緩やかになり、その結果脂肪を溜め込むのを予防する働きがあるのです。
また、バナナに豊富に含まれるカリウムは、体内にある過剰な水分(ナトリウム)の排出を促す作用があります。生のバナナをそのまま食べると、カリウムを効果的に摂取することができます。
運動や筋トレの前後に食べる
運動や筋肉トレーニングの前後に食べるのもおすすめです。
バナナの糖質は約20分で体内に吸収されるため、運動する30分前に食べれば、吸収されやすい糖から順番に、運動をサポートする持続的なエネルギー源になります。
また、運動後30分以内に食べれば、筋肉を補修し疲れを癒やす効果もあります。
焼きバナナにする
バナナの食べ方として、焼きバナナにするのもおすすめです。
バナナは焼くことで糖質の一種「フラクトオリゴ糖」が増えます。フラクトオリゴ糖は善玉腸内細菌であるビフィズス菌のエサとなるので、腸内環境を整える効果が期待できます。
さらに、加熱すると糖度が約20%もアップするため、甘みととろみが強くなり食べやすくなります。
特に冬場など体が冷える時期は、焼きバナナを食べることで腸が温まって活発になり、免疫力向上の効果も期待できます。
赤ちゃんの離乳食にする
栄養の豊富なバナナは、赤ちゃんの離乳食としてもぴったりです。
発育を助けるビタミンB2、歯や骨の形成に関わるマグネシウム、血や肉になるビタミンB6など、バナナには赤ちゃんの成長に大切な栄養が豊富に含まれています。
加熱調理ができたり、つぶして食べられたり、と調理もしやすいバナナは離乳食に適しており、生後5〜6ヶ月頃から食べさせることができます。
ある程度熟したバナナは、冷凍保存すればいざというときにも使えて便利です。
バナナの保存方法
最後に、バナナの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
夏の暑い時期も冷蔵の必要はほぼなく、基本的に冷暗所での保存で問題ありません。新聞紙にくるんで冷暗所に置いておきましょう。冷暗所に置いておく際、重みがかかる部分が傷みやすいので、反った側を上にして置きます。
房バナナの場合は、へたの部分をバナナスタンドなどにひっかけて吊るすと、より理想的な状態で保存が可能です。ただし熟しすぎると軸からちぎれてしまうことがあるので、こまめに熟成具合をチェックする必要があります。
熟しきっていないバナナを冷蔵庫に入れると、低温障害で果肉が甘くなる前に黒くなり傷んでしまいます。冷蔵保存する場合は、バナナが熟してシュガースポットが出るまで待ちましょう。
ある程度熟したバナナは熟しすぎないように、1本ずつラップやアルミホイルに包むかポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。
完熟したバナナは冷凍保存が可能です。皮をむいて、果肉が空気にふれないようにラップを巻き、冷凍庫に入れます。
バナナは冷凍してもカチカチにならないので、解凍しきらなくても食べることができます。冷凍バナナの保存期間は約1ヶ月です。