トリプトファンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法

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tryptophan

トリプトファンの基本情報、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。

トリプトファンとは

トリプトファン(tryptophan)とは、タンパク質を構成するアミノ酸の1種です。

20種類のアミノ酸のうち、体内で合成できない9種類のアミノ酸をまとめて必須アミノ酸と呼びます。必須アミノ酸の一つであるトリプトファンは、人間の体内で合成することはできないため、食事から摂取する必要があります。

牛乳やチーズなどの乳製品やバナナ、大豆製品に多く含まれる栄養素です。

トリプトファンは、自身が直接身体に働きかけるのではなく、セロトニンやメラトニン、ナイアシンの前駆物質として働きます。トリプトファンが前駆物質として合成に関わっている3つの物質の作用を、以下に示します。

  • セロトニン:ドーパミンやノルアドレナリンを調節する神経伝達物質。精神安定作用をもつ。
  • メラトニン:生体リズムの調節をおこなうホルモンの1種。催眠作用がある。
  • ナイアシン:ビタミンB群の一つで、皮膚や粘膜の抗炎症作用や血行促進作用がある。

トリプトファンは、生体内で重要な役割を担っていることがわかります。

セロトニンを増やす食べ物・飲み物|NANIWA SUPLI MEDIA

ナイアシンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

トリプトファンと類似成分の違い

トリプトファンと似た働きをする栄養素・成分との違いを解説します。

メチオニン

メチオニンは、トリプトファンと同じ必須アミノ酸の一つで、肉類や魚類に多く含まれる栄養素です。構造内に硫黄を含んだ含硫アミノ酸で、タウリンやカルニチンなどを合成します。

肝臓でメチオニンから合成されるS-アデノシルメチオニンは、抗うつ作用をもつと考えられています。しかし研究途中の物質であり、日本では医薬品ではなくサプリメントに利用されている成分です。

フェニルアラニン

フェニルアラニンも必須アミノ酸の1種で、抗うつ作用をもった栄養素です。肉類や卵などの動物性タンパク質に多く含まれます。

体内でチロシンと呼ばれるアミノ酸に変換されたフェニルアラニンは、主に脳内でドーパへと変わります。ドーパは、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質へと姿を変えて、抗うつ作用を発揮する仕組みです。

神経伝達物質を作るセロトニンの前駆物質であるトリプトファンとは異なり、フェニルアラニンはドーパミンやノルアドレナリンそのものの材料になります。

トリプトファンの効果・働き

トリプトファンの効果・効能について解説します。

抗うつ作用で精神を安定させる

トリプトファンから作られるセロトニンは、抗うつ作用があり精神を安定させる働きを持った神経伝達物質です。

うつ症状は脳内で合成されるセロトニンの減少により、身体的・精神的症状を引き起こします。うつ症状を緩和するときに服用する抗うつ薬には、セロトニン利用を向上させる種類もあります。

喜びや快楽を神経に伝えるドーパミンを増やし、恐怖や不安を増強するノルアドレナリンを抑制するのがセロトニンの役割です。材料となるトリプトファンを摂取するだけでなく、適度な日光浴でもセロトニンの分泌が促進されることがわかっています。

自律神経を調整してPMSの症状軽減

セロトニンは、近年の研究で、女性ホルモンと関与していることもわかってきています。女性ホルモンの減少によってセロトニンが少なくなり、イライラや抑うつ症状を引き起こします。

PMSや更年期障害は、性ホルモンのバランスが崩れて起こる症状です。神経伝達物質であるセロトニンが自律神経を整えて症状を軽減するために、トリプトファンの摂取が有効と考えられています。

体内リズムと整えて睡眠を促す

トリプトファンは、体内リズムを整えるメラトニンへと変化するアミノ酸です。メラトニンは、脳にある松果体と呼ばれる部分で合成され、人間の体内リズムを調節します。

メラトニンは日光に当たると減少し、暗さを感じると増加するホルモンです。つまり夜に分泌量が増加することで、身体を眠りへと導きます。

メラトニンの材料となるトリプトファンを摂取することで、季節や日照のリズムに身体を合わせ、自然な睡眠を促す効果があります。ただしメラトニンの催眠作用は弱いと考えられており、睡眠導入剤のような強力な作用はありません。

トリプトファンが不足・欠乏すると起こる症状

トリプトファンは、人体を調節する物質の源になる大切な栄養素です。そのため、トリプトファンが不足・欠乏すると次のような症状が起こる可能性があります。

  • ペラグラ(ナイアシン欠乏症)
  • 不安感
  • うつ症状
  • パニック障害
  • 糖尿病

トリプトファンを過剰摂取すると起こる副作用

トリプトファンを過剰摂取すると起こる症状は次の通りです。トリプトファンから合成される物質も過剰となり、人体に影響を与えると考えられます。1日摂取量が3gを超えると、副作用が起こると考えられています。

  • 無気力
  • 吐き気
  • 頭痛

トリプトファンの1日の摂取目安量

トリプトファンの1日の摂取目安量として、明確な数字は明らかにされていません。

しかし、体重1kgあたりの1日必要量は4mg程度と考えられています。体重50kgの人は、1日200mg(4mg×50kg)が必要になる計算です。

ただしトリプトファンは食品中に多く含まれているため、過剰摂取による副作用の影響を考慮しなくてはなりません。

サプリメントからの摂取は、1日220mgまでを限度量とすることが一般的です。

トリプトファンを多く含む食品

トリプトファンを多く含む食品を乳製品と大豆製品、それ以外に分けて紹介します。

トリプトファンを多く含む乳製品

食品名成分量100gあたり(mg)
乳類/<牛乳及び乳製品>/(液状乳類)/普通牛乳46
乳類/<牛乳及び乳製品>/(液状乳類)/加工乳/低脂肪52
乳類/<牛乳及び乳製品>/(チーズ類)/ナチュラルチーズ/カマンベール240
乳類/<牛乳及び乳製品>/(チーズ類)/ナチュラルチーズ/チェダー320
乳類/<牛乳及び乳製品>/(チーズ類)/プロセスチーズ300
乳類/<牛乳及び乳製品>/(発酵乳・乳酸菌飲料)/ヨーグルト/低脂肪無糖52
出典:食品データベース|文部科学省

乳製品の中でも、チーズにトリプトファンが多く含まれています。しかしチーズには、食塩がおよそ2%と多く含まれるため、100gを1日で食べるのはおすすめできません。

一方、牛乳はコップ1杯(200g程度)摂取しても栄養素を取りすぎる心配が少なく、トリプトファンを効率的に摂取しやすい飲料と言えます。また、1食分が小分けされたヨーグルトは1個80g程度のため、こちらも普段の食事にとり入れやすいでしょう。

チーズの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

牛乳の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

ヨーグルトの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

トリプトファンを多く含む大豆製品

食品名成分量100gあたり(mg)
豆類/だいず/[全粒・全粒製品]/全粒/黄大豆/国産/ゆで210
豆類/だいず/[全粒・全粒製品]/きな粉/黄大豆/全粒大豆520
豆類/だいず/[豆腐・油揚げ類]/木綿豆腐100
豆類/だいず/[豆腐・油揚げ類]/絹ごし豆腐82
豆類/だいず/[納豆類]/糸引き納豆250
豆類/だいず/[その他]/豆乳/調製豆乳47
出典:食品データベース|文部科学省

大豆にはトリプトファンが多く含まれており、大豆を原料とする食品もトリプトファンが豊富です。とくに豆腐や納豆に多く、1食分で換算すると絹ごし豆腐1/2丁は120mg程度、糸引き納豆50gでは125mgのトリプトファンを含有します。

コップ1杯(約200g)の調整豆乳を飲むだけでも、94mgのトリプトファンを摂取できます。

大豆の栄養と効果効能・食べ方・注意点・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

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豆乳の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

トリプトファンを多く含む乳製品以外の食品

食品名成分量100gあたり(mg)
種実類/アーモンド/いり/無塩220
種実類/らっかせい/小粒種/いり280
種実類/くるみ/いり210
種実類/カシューナッツ/フライ/味付け370
種実類/マカダミアナッツ/いり/味付け97
種実類/ヘーゼルナッツ/いり180
果実類/バナナ/生10
出典:食品データベース|文部科学省

トリプトファンは、ナッツ類にも多く含まれています。とくにカシューナッツやらっかせいに多いことが特徴です。

また、果物や野菜にはあまり多く含まれていない傾向のあるトリプトファンですが、バナナ100gには10mg含有されています。

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トリプトファンを効率よく摂取する方法

効率的な食べ物の組み合わせや損失の少ない調理方法など、トリプトファンを効率よく摂取する方法を解説します。

レバーや刺身と一緒に摂取する

トリプトファンからセロトニンやナイアシンへ変化するときは、ビタミンB6が必要です。そのため、ビタミンB6を多く含む食品と一緒に摂取しましょう。

ビタミンB6が多い食品は、レバーや刺身、バナナなどです。バナナにはトリプトファン自体も豊富に含まれており、効率よく摂取したいときにおすすめです。

ビタミンB6を多く含む食品の詳細は以下の記事も参照ください。

ビタミンB6の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

炭水化物と一緒に食べるとより効果的

トリプトファンは脳内で働くアミノ酸のため、その作用に炭水化物も関与しています。

炭水化物は、脳のエネルギーを補給する栄養素です。トリプトファン単体でも効果はありますが、炭水化物と一緒に摂取することでより吸収されやすくなります。

炭水化物の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA

参考文献

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