免疫力を高める食べ物・飲み物と心がけたい生活習慣
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免疫力が低下する原因について解説したうえで、風邪やインフルエンザの予防・改善に役立つ免疫力を高める食べ物や飲み物を紹介します。
免疫力とは
免疫力とは、人間が持つ自然治癒力のことです。免疫システムが働くとマクロファージやT細胞などあらゆる免疫細胞が連携して、異常が起きた細胞や細菌を破壊します。例えばインフルエンザや食中毒の予防、病原菌の退治に役立っている機能です。
ただし、免疫力は強ければ良いというものではありません。過剰に働けば、身体に影響のない物質に対しても反応してしまいます。花粉症などのアレルギー症状がその一例です。
免疫力を高めるには、正常な免疫システムを維持することが重要になります。
免疫力が低下する原因
免疫力が低下してしまう主な原因は次の通りです。
加齢
一般的に、年齢を重ねると免疫力は低下すると言われています。
加齢により免疫力が低下する原因のひとつは、免疫細胞の能力が弱まってしまうためです。細胞は定期的に新陳代謝されることで正常な働きを維持しますが、加齢により免疫細胞が作られる胸腺などが委縮すると、免疫機能が劣化してしまいます。
ほかにも基礎代謝の低下や免疫物質であるIgA抗体の減少も、高齢者の免疫低下に関わっていると言えるでしょう。
睡眠不足
睡眠不足も免疫と深い関わりがあります。
原因は自律神経の乱れです。睡眠時は副交感神経が優位に働き、免疫細胞の回復や免疫システムの強化を行います。睡眠が不十分になると自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になるため免疫力が低下してしまうのです。
研究では睡眠時間が6時間以内の人は、唾液中の免疫物質が減少していたという研究報告もあります。質の良い睡眠が免疫機能の向上に役立つのは、間違いないと言えるでしょう。
ストレス
身体の機能は、交感神経と副交感神経の2つの自律神経がバランスよく機能することで動作しますが、精神的なストレスはこのバランスを崩す要因となります。免疫システムは自律神経の支配を受けているため、自律神経のバランスが崩れると免疫力低下につながるのです。
ストレスがかかり続ければ交感神経が優位な状態が続き、副交感神経への切り替わりを妨げます。副交感神経はリンパ球を増やし免疫力を高める作用もあるため、自律神経のバランスは非常に重要です。
冷え
冷えと免疫力低下の関係は血行不足によるものです。血流が悪化すると異常が起きた細胞や細菌に対しての防御反応が遅れてしまいます。
体温が高い人のほうが、免疫に関わる白血球の一種が活性化するという研究結果もあるようです。体温が1度下がるだけで免疫力は30%近く低下すると言われているため、冷え性の人は注意が必要でしょう。
腸内環境の悪化
免疫と深い関わりがある臓器は腸です。腸は食べ物の消化や吸収を行うため、ウイルスや細菌が体内に入りやすい場所でもあります。免疫細胞の多くが腸に集中しているのは、感染や発病のリスクが高い部分だからでしょう。
免疫力を高めるには、正常な腸内環境を維持しなければなりません。健康な腸を保つために食事から必要な栄養素を摂取し、腸内細菌のバランスを整えましょう。
免疫力を高める栄養素
免疫力を高める栄養素について解説します。
亜鉛:免疫システムの活性化
亜鉛はマクロファージやナチュラルキラー細胞などの免疫細胞を活性化させます。正常な免疫システムを維持するには重要な栄養素です。
軽度の亜鉛欠乏症でも、免疫細胞の活性低下リスクがあるため注意しましょう。亜鉛の1日の摂取目安量は成人男性が11mg、成人女性は8mgです。
亜鉛の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
食物繊維:腸内環境を整える
食物繊維は胃で消化・吸収されずに腸まで届く物質です。便のかさを増やして腸のぜん動運動を促すため、整腸作用が期待されます。
食物繊維の特に優れた機能は、大腸内での発酵性です。発酵した食物繊維は腸内細菌の一種である善玉菌のエサになります。腸内細菌のバランスを整えるには善玉菌を増やすことが重要なため、食物繊維は腸の健康状態を維持するのに役立つでしょう。
食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法|NANIWA SUPLI MEDIA
乳酸菌:免疫機能の向上
微生物の一種である乳酸菌は、悪玉菌の発生を抑える作用があります。悪玉菌は偏った食生活や便秘などにより増え過ぎると、腸内細菌のバランスを崩してしまう存在です。
乳酸菌は腸内を弱酸性に維持することで、悪玉菌が住みにくい環境を作ってくれます。ナチュラルキラー細胞の活性化にも役立つため、乳酸菌は免疫力を高めるにはぴったりの栄養素です。
乳酸菌の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
オリゴ糖:腸内フローラの改善作用
オリゴ糖には2種類ありますが、難消化性のオリゴ糖は腸内で善玉菌のエサとなることで腸内フローラの改善作用が注目されています。
腸内フローラとは腸内細菌の集団を指す言葉です。腸内フローラのバランスが整えば腸のバリア機能が高まり、免疫細胞の活性化につながります。
オリゴ糖の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
タンパク質:抗体のもととなる
タンパク質は体内でさまざまな働きをしますが、免疫に関わるタンパク質を抗体と呼びます。タンパク質名としてはγ-グロブリンと言い、血液中や体液中に存在する物質です。病原菌やウイルスなどと結合して体内から除去する機能があります。
タンパク質は抗体のもとになるだけでなく、体内で筋肉に変わる栄養素です。筋肉量を増やせば身体全体の基礎代謝が高まるため、免疫力を上げるには効果的と言えるでしょう。
タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンA:免疫の正常機能をサポート
ビタミンAは抗感染性ビタミンとも呼ばれる栄養素で、免疫細胞が本来の機能を発揮するためには欠かせません。皮膚や粘膜のバリア機能を高める働きもあり、病原体の侵入を防いでくれます。
積極的に摂取するために、ビタミンAと同様の働きをするβ‐カロテンにも注目しましょう。プロビタミンAのなかでは吸収効率がもっとも高いため、効率的に栄養を摂取できます。
ビタミンAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ | NANIWA SUPLI MEDIA
β-カロテンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンC:白血球の働きを強化
水溶性ビタミンであるビタミンCは、免疫システムの強化が期待できる栄養素です。免疫細胞である白血球の働きをサポートするため、免疫力の向上が見込めます。
ステロイドホルモンを構成する物質のひとつでもあるため、ストレスに強い身体作りにも役立つでしょう。
ビタミンCの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンD:ウイルスや細菌から守る
ビタミンDには、体内で抗菌ペプチドを作る働きがあります。抗菌ペプチドはウイルスなどの除去や皮膚のバリア機能向上に役立つ免疫機能のひとつです。特にインフルエンザや気管支炎の予防に効果が期待できるでしょう。
ビタミンDは免疫力を高めるだけでなく過剰な免疫反応を抑制するため、免疫機能を整えるのに重要な栄養素です。
ビタミンDの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ | NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンE:抗老化や自律神経の安定化
体内に過剰な活性酸素が発生すると免疫細胞を傷つけ、機能を衰退させてしまいます。ビタミンEは高い抗酸化作用を持つため、活性酸素の発生を抑制し体内の老化を防いでくれるのです。
さらに自律神経を安定させる作用もあります。免疫力を高めるには積極的に摂取したい栄養素と言えるでしょう。
ビタミンEの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンB群:代謝を促進
ビタミンB1やビタミンB2をはじめとするビタミンB群は、体内の代謝や酵素の働きをサポートするために欠かせません。代謝が高まれば、免疫細胞の活性化にもつながります。
特に免疫機能に関わりのある栄養素はパントテン酸とビオチンです。
ビタミンB群の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
パントテン酸:ストレス抵抗力アップ
パントテン酸は代謝サポートに加え、副腎の機能を強化するビタミンです。
副腎は抗ストレスホルモンを分泌し身体を守るため、パントテン酸はストレスへの抵抗力を高めるのに役立ちます。
パントテン酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品 | NANIWA SUPLI MEDIA
ビオチン:免疫機能の正常化
ビオチンは皮膚の治療薬として用いられますが、免疫機能にも力を発揮する栄養素です。抗炎症物質を生成したり、免疫の過剰反応で作られるヒスタミンを排出したりなどの働きがあります。
免疫システムが正常に働くのを助けるだけでなく腸内フローラを整える作用もあるため、あらゆる面で免疫機能を支えているのです。
ビオチンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品 | NANIWA SUPLI MEDIA
アリシン:抗菌・抗ウイルス作用
アリシンは抗菌作用と抗ウイルス作用を持つ物質です。食中毒や風邪予防に効果を発揮してくれます。
さらに体内でビタミンB1と結合し、その効果を高める作用にも注目です。酵素の働きと代謝がスムーズに行われれば、免疫細胞の活性化につながるでしょう。
アリシンの効果・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ポリフェノール:強い抗酸化作用
ポリフェノールとはコーヒーの苦味や緑茶の渋味、ワインの色素などを作る成分です。抗酸化物質でもあり、体内で活性酸素の発生を防いでくれます。
活性酸素は過剰に発生すると免疫細胞の機能低下につながるため、体内の酸化を防ぐことは非常に重要です。
ポリフェノールの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
免疫力を高める食べ物・飲み物
免疫力を高める食べ物・飲み物について解説します。
玄米
穀物類にはビタミンやミネラルなど多種多様な栄養素が含まれますが、特におすすめなのが玄米です。
玄米は白米と異なり糠層や胚芽が残っている分、ビタミンB1をはじめとしたビタミンB群やポリフェノールを豊富に含んでいます。食物繊維も多く含まれているので、健康的な腸内環境へ導いてくれるでしょう。
玄米の栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ニンジン
ニンジンは野菜のなかでもβ-カロテンの含有量がトップクラスです。特に皮部分に多く含まれるため、皮ごと食べたほうが効率的に栄養を摂取できるでしょう。
さらにビタミンCや食物繊維が含まれるので、免疫力アップに効果を発揮してくれるはずです。
ニンジンの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ニンニク
殺菌作用のあるアリシンの含有量が多いのは、ニンニクです。アリシンには血行促進作用もあるため、免疫低下の原因となる冷え予防にも効果が見込めるでしょう。
ただし、アリシンは刺激の強い成分なので食べ過ぎは禁物です。過剰摂取は腸内の悪玉菌を増やす原因にもなります。1日の摂取量目安は生なら一片、加熱したものなら二片から三片程度が良いでしょう。
にんにくの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
春菊
春菊はβ-カロテンが豊富な野菜です。ビタミンCも含まれるため、免疫力アップに向いている食材でしょう。
春菊に含まれるβ-カロテンを効率よく摂取するには、油で炒める方法がおすすめです。脂溶性のβ-カロテンは油に溶けやすく、吸収効率が高まります。
春菊の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
かぼちゃ
かぼちゃはビタミンC・ビタミンE・β‐カロテンの三大抗酸化ビタミンを多く含んでいます。ビタミンAも豊富で、免疫機能を高めるには最適な野菜のひとつでしょう。
かぼちゃは寒い時期に旬を迎える食材なので、冷えで免疫力が低下しがちな季節にはぴったりです。
かぼちゃの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
バナナ
甘味の強いバナナにはオリゴ糖が含まれています。さらに食物繊維の含有量が高く、腸内環境の改善に役立つ食材です。
抗酸化作用を持つポリフェノールも含まれているので、細胞の老化防止にも期待できます。バナナのポリフェノールは熟すと増えると言われているため、黒い斑点のあるバナナを選ぶと良いでしょう。
バナナの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
魚介類
ミネラルの亜鉛は魚介類に多く含まれています。例えば貝の一種である牡蠣、カツオなどが代表的です。魚介類はビタミンDも豊富で、特にいわしやにしんなどに含まれています。
免疫機能の向上を目指すなら、食事に魚介類を積極的に取り入れていきましょう。
カツオの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
キノコ類
キノコにはビタミンやミネラル、食物繊維などがバランスよく含まれています。
免疫に関わる栄養素として特筆すべきはビタミンDでしょう。エリンギやまいたけに多く含まれ、特にまいたけはビタミンDの含有量がトップクラスです。
ビオチンやパントテン酸などのビタミンB群も含まれるため、意識的に摂取したい食材と言えます。
エリンギの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
納豆
栄養価の高い発酵食品といえば、納豆です。納豆はタンパク質・ビタミン・ミネラルを豊富に含んでいます。
なにより発酵食品には乳酸菌が含まれるため、腸内環境の改善に役立つ食材です。納豆は普段の生活に取り入れやすいので、まずは試してみると良いでしょう。
納豆の栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
ヨーグルト
発酵食品の代表格と言えるヨーグルトは乳酸菌の力で腸内に善玉菌を増やし、腸内フローラの改善を助けてくれます。
コンビニでも手軽に買えるため、普段の食事にちょっとプラスするのも手です。
ヨーグルトの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
免疫力を高める生活習慣
免疫力を高めるために心がけたい食生活や生活習慣について解説します。
適度な運動
免疫力を高めるには基礎代謝量を上げましょう。
身体を動かせば血流も促進されますし、身体の強化や体力の維持にも役立ちます。さらに肥満は免疫力を低下させるという説もあるため、健康的な体型の維持はとても重要です。
ただし、過剰な運動は禁物。研究では、心拍数150を超える運動がかえって免疫力を下げてしまうという結果が出ました。
鍵となるのは、運動強度よりも継続です。血の巡りを良くするようなウォーキングやちょっとした運動を続けて、免疫強化に努めましょう。
バランスの良い食事
記事内でご紹介したとおり、免疫力を高めるにはさまざまな栄養素の力が必要となります。できるだけ毎日多くの食材を使い、栄養バランスを考えた食事を意識するのが大切です。
お菓子などの間食で糖を摂りすぎると免疫力低下につながると言われますが、糖質を完全にカットするのは危険ですので気を付けましょう。
脂質と同じく糖は身体のエネルギーとなる栄養素なので、欠乏すると体力が落ち免疫機能の低下を招きます。
十分な睡眠をとる
睡眠不足は自律神経を乱すだけでなく体力の低下を招くため、免疫力を下げてしまいます。
体力を回復させるには身体をしっかり休めることが重要です。理想的な睡眠時間は1日7時間と言われますが、ただ長く寝れば良いというわけではありません。
質の良い睡眠をとるためにも、リラックスできる環境や生活リズムを整えるなど工夫をしてみましょう。
入浴習慣
自律神経を整えるために入浴を取り入れるのも得策です。入浴にはリラックス作用があり、副交感神経への切り替えをスムーズにしてくれます。
ただし、熱めのお湯は交感神経を優位にするため38度程度のぬるま湯がベスト。身体をじっくり温めることで、質の良い睡眠にもつながります。
身体を冷やさない
身体の冷えは血流悪化を招き、免疫細胞の働きを鈍らせます。入浴や衣類で身体を温めて冷えを予防しましょう。
きゅうりやナスなど夏に旬を迎える食材は身体を冷やす作用があるため、寒い時期は避けるなどの工夫も必要です。筋力の低下も冷えを引き起こすので、定期的な運動を取り入れてみてください。
参考文献
記事の監修
AYA ARAHARA
ヨガインストラクター。
ホテル、外資系化粧品メーカー、美容業の広報/PRとして業務を経て、アロマテラピーや美容業界の実用書等の、編集・執筆活動のほか、ライフワークとしてヨガインストラクターとしても活動している。
近著としては、「ママになっても美しい人の食事術」(PHP研究所)編集協力、「枯れないからだ」(河出書房新社)編集協力など多数。最新作は「寝る前5分の新習慣! 極上の眠りに導く安眠ヨガ」が好評発売中!
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