わけぎの栄養と効果効能・調理法・保存法

11795views

Scallions

わけぎの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、わけぎに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

わけぎとは

わけぎ(Scallions)は、ネギ科野菜の一種で、玉ねぎの仲間のエシャロットとねぎの雑種です。漢字では「分葱」と書きます。

ねぎ特有のにおいや辛味が少なく、甘みがあるのが特徴です。ねぎのように薬味として使われるほか、酢味噌で和える「ぬた」や炒め物など、わけぎ特有の甘みを活かしたレシピの材料としても人気があります。

わけぎは、先端の青い葉の部分と、根元の白い部分のどちらも食べることができます。

地方によって呼び名が異なり、熊本県では「一文字(人文字/ひともじ)」、大分県では「千本(ちもと)」、南九州では「千本(せんもと)」、沖縄県では「ビラ」と呼ばれています。

わけぎの旬は年に2回あり、3月~5月上旬と9月~11月に多く流通します。

わけぎと葉ねぎの違い

わけぎと葉ねぎは、見た目がよく似ていて区別の付きにくい野菜です。

葉ねぎ(青ねぎ)や長ねぎ(白ねぎ)が種で増えていくのに対し、わけぎは玉ねぎと同じように球根で増えていくという違いがあります。

また、一般的な葉ねぎと比較して、わけぎは根元の白い部分の膨らみが大きい傾向にあります。味は、わけぎの方が葉ねぎよりも辛味が少なく、甘みが強いのが特徴です。

なお、わけぎは、浅葱(あさつき)や万能ねぎ、九条ねぎとも異なる種類のねぎです。

その他のねぎの種類や栄養価の特徴などは、以下の記事で詳しく紹介しています。

ねぎの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

わけぎとニラの違い

わけぎとニラは、どちらも香りを楽しめる香味野菜ですが、わけぎはネギ科に、ニラはニラ科に分類される別の種類の野菜です。

わけぎの葉は丸みがあり、ニラの葉は平べったい形をしていることでも見分けられます。

ニラには、わけぎを含むねぎ類とはまた違った独特のスパイシーな香りがあります。また、ねぎ類は生で食べられることが多いのに対し、ニラは加熱調理されることが多いのも違いです。

栄養価の面では、わけぎにビタミンCや葉酸が多く含まれるのに対し、ニラはβ-カロテンやカリウムをより多く含みます。

ニラの詳しい栄養価や食べ方について興味がある方は、以下の記事も参考にしてください。

ニラの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

わけぎに含まれる成分・栄養素

わけぎ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食 品 名単位わけぎ 葉 生わけぎ 葉 ゆで
廃 棄 率%40
エネルギーkJ128122
kcal3029
水 分g90.390.4
たんぱく質アミノ酸組成によるたんぱく質g-1.1-1.3
たんぱく質g1.61.9
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g--
コレステロールmg00
脂質g00
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g--
g
利用可能炭水化物(質量計)g--
差引き法による利用可能炭水化物g5.14.4
**
食物繊維総量g2.83.1
糖アルコールg--
炭水化物g7.46.9
有機酸g--
灰分g0.70.8
無機質ナトリウムmg11
カリウムmg230190
カルシウムmg5951
マグネシウムmg2323
リンmg2525
mg0.40.4
亜鉛mg0.20.2
mg0.040.04
マンガンmg0.230.28
ヨウ素μg--
セレンμg--
クロムμg--
モリブデンμg--
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg00
α|カロテンμg00
β|カロテンμg27001800
β|クリプトキサンチンμg6826
β|カロテン当量μg27001800
レチノール活性当量μg220150
ビタミンDμg00
α-トコフェロールmg1.41.5
β-トコフェロールmgTr0
γ-トコフェロールmg0.50.4
δ-トコフェロールmg00
ビタミンKμg170120
ビタミンB1mg0.060.05
ビタミンB2mg0.10.08
ナイアシンmg0.30.3
ナイアシン当量mg-0.7-0.8
ビタミンB6mg0.180.13
ビタミンB12μg00
葉 酸μg120110
パントテン酸mg0.210.2
ビ オ チ ンμg--
ビタミンCmg3721
アルコールg--
食塩相当量g00
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

わけぎの効果・効能

わけぎに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

がん・生活習慣病の予防に効果的なβ-カロテン

β-カロテンは、植物に含まれるカロテノイドの一種で、強力な抗酸化作用を持ち、酸化ストレスから体を守る栄養素です。抗酸化作用とは、がん・生活習慣病・老化の原因となる活性酸素を除去・抑制する作用のことを言います。

また、β-カロテンを摂取すると体内で必要な量だけビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康を維持する作用も発揮します。ビタミンAは、眼の健康や眼精疲労の予防にも関わっている栄養素です。

β-カロテンは、野菜類の中でも特に緑黄色野菜に豊富です。わけぎは葉ねぎの1.8倍のβ-カロテンを含んでおり、動脈硬化や高血圧などの心血管疾患の予防効果が期待できる食材と言えるでしょう。

β-カロテンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

ビタミンCで美容にもうれしい効果

ビタミンCは、美容成分として化粧品に配合されることも多い栄養素です。しみやそばかすを引き起こすメラニン色素を抑制したり、肌にハリを与えるコラーゲンの生成を助けたりといった効果があります。

また、ビタミンCには抗酸化作用があり、アンチエイジングに効果的なのもポイントです。

わけぎのビタミンC含有量は、ねぎ類の中でもトップクラスの多さを誇ります。ビタミンCは、水に溶けやすく調理の過程で失われやすいため、多く摂りたいときは生のわけぎを食べるのがおすすめです。

ビタミンCの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

骨粗しょう症の予防に有効なビタミンK

わけぎは、葉ねぎの約1.6倍ものビタミンKを含んでいます。ビタミンKは、骨と歯の健康維持や、血液を凝固させる作用のある脂溶性ビタミンです。

ビタミンKには、カルシウムの骨への沈着を助けて流出を抑える役割があります。コラーゲン生成を促して骨質を改善する効果もあるため、骨粗しょう症の治療薬にも用いられる栄養素です。

ビタミンKは、女性ホルモンの影響で骨粗しょう症のリスクが高い女性や、骨格が発達する成長期の子どもにとって、カルシウムと共に積極的に摂っておきたい栄養素と言えるでしょう。

疲労回復や生活習慣病に効果的なアリシン

わけぎなどのねぎ類には、硫化アリルの一種であるアリシンという香り成分が含まれています。アリシンには、疲労回復に効果的なビタミンB1の吸収率を高め、効果の持続を助ける働きがあります。

また、アリシンは、悪玉コレステロール値を改善し、高血圧や動脈硬化といった生活習慣病を予防する効能も持ち合わせています。

強い殺菌作用・抗菌作用があり、風邪やウイルス性の疾患が流行する季節にも摂っておきたい成分です。

アリシンの効果・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

カリウムでむくみ・高血圧を予防

わけぎは、カリウムが豊富な食材です。必須ミネラルの一種であるカリウムは、体内の水分バランスを調整し、余分なナトリウムを体外に排出する作用があります。過剰な塩分が原因で起こる、むくみや高血圧の改善に効果が期待できます。

カリウムを含んだわけぎは、体に水分をため込みやすくなる生理前や妊娠中の女性の体にとっても有益な野菜です。

カリウムの効果効能・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

便秘解消に効果を発揮する食物繊維

食物繊維は、整腸作用や血糖値・コレステロール値の上昇抑制などの効能を持つ栄養素です。人間の体にとって多くの有用な働きをすることから、「第6の栄養素」と呼ばれることもあります。

食物繊維は、腸内の善玉菌のエサとなってその働きを助けるほか、腸を刺激してぜん動運動を活発にして排便を促す効果があります。

茹でたわけぎ100gを食べると、3.1gの食物繊維を摂取できます。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、食物繊維の1日の摂取推奨量を成人男性で21g以上、成人女性で18g以上と定めています。

便秘を解消したいなら、わけぎを含む野菜類と、海藻・きのこなど食物繊維が豊富な食品を組み合わせ、推奨量の摂取を目指しましょう。

食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法|NANIWA SUPLI MEDIA

わけぎの食べ方

わけぎの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

β-カロテン・ビタミンCが豊富な緑色の葉を食べる

β-カロテンやビタミンCは、わけぎの先端から中心部にかけての緑色の葉の部分に特に多く含まれています。二つの栄養素には抗酸化作用があり、がん・生活習慣病の予防やアンチエイジングには欠かせません。

わけぎは、根っこが生えているお尻の部分から約1cmほどを切り落とせば、全ての部分を食べることができます。長ねぎ(白ねぎ)のように、青い部分を捨てる必要はありません。

わけぎに含まれる栄養素を余すことなく摂るには、葉先から根元まで全て利用するのがベストです。

加熱調理すると甘みが増す

もともと甘みの強いわけぎですが、加熱調理することでより甘みを感じやすくなります。

ねぎ特有の辛味や刺激臭が苦手な人や、子どもやお年寄りの食事に取り入れるときは茹でる・炒める・焼くなど、一度火を入れるようにしましょう。

わけぎの代表的なレシピであるぬたも、軽く茹でたり、電子レンジで加熱したりしてから酢味噌で和えて作ります。

葉ねぎ・ニラはわけぎの代用になる

わけぎを切らしてしまったときや、手に入りにくいときは、葉ねぎやニラを代用することもできます。

わけぎの代用品には、見た目や風味が似ている葉ねぎ・あさつき・万能ねぎ・九条ねぎなどがおすすめです。ねぎとは異なる風味のニラも、味にこだわりがなければ、わけぎの代用品になります。

ただし、葉ねぎやニラを生で食べる場合、わけぎよりも辛味が強く感じられる場合があります。辛さが苦手な人は、加熱してから食べると安心です。

疲労回復・スタミナ増強には豚肉・納豆と組み合わせる

わけぎに豊富なアリシンは、疲労回復に役立つビタミンB1と結びつき、吸収率や効果の持続性を向上させる働きがあります。

ビタミンB1は、豚肉・納豆・うなぎなどに多く含まれています。わけぎと豚肉の炒め物や、わけぎと納豆の和え物は、家にある食材で手軽に作れるレシピで、疲れやすさや夏バテの症状があるときにおすすめです。

アリシンは、空気に触れることで発生する成分です。わけぎをできるだけ細かく刻むと、より多く摂取することができます。

β-カロテン・ビタミンKは油と調理して多く摂る

わけぎに豊富なβ-カロテンやビタミンKは、脂溶性の栄養素です。そのため、サラダ油・オリーブオイル・ごま油などの油を使って調理するか、肉や魚など脂肪分の多い食材と組み合わせることで吸収率がアップします。

わけぎをぬたに調理する場合は、基本的には油を使わないため、具材に油あげをプラスするのがおすすめです。

わけぎの保存方法

わけぎの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

新聞紙やキッチンペーパーで包んで冷蔵庫で保存

わけぎは、冷蔵庫の野菜室など涼しい場所で保存します。傷みやすい食材なので、冷蔵庫で保存するときは、わけぎを新聞紙や湿らせたキッチンペーパーで包んでおくと安心。密閉できる容器や袋に入れて保存し、2日~3日以内に食べきります。

冷蔵庫が小さくて長いわけぎを入れるスペースがないときには、カットしたり刻んだりしてから密閉できる容器に入れて保存するのがおすすめです。刻んだわけぎは、1日~2日で使い切ってください。

刻んでから冷凍すると便利

わけぎを長期間保存しておきたい場合、冷凍することもできます。冷凍する場合、わけぎを細かく刻んでおくと、調理するときに使いたい量だけ使えて便利です。刻んだわけぎには水分が付かないように注意し、冷凍用の保存容器に入れて冷凍庫に入れてください。

また、わけぎを一度加熱してから冷凍することもできます。加熱したわけぎは、水気をよく切ってから凍らせると、解凍したときの食感が損なわれにくくなります。

冷凍したわけぎは、凍ったまま調理に使うことができます。冷凍保存の目安期間は1ヶ月です。

参考文献

LINE公式アカウントを追加
LINEお友達追加