食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法

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栄養素

食物繊維の基本情報、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違い、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。

食物繊維とは

食物繊維は、人の消化酵素で消化することのできない物質の総称です。

以前は消化吸収できないことから食べ物のカスと考えられ、重要視されていませんでした。しかし近年、整腸作用などが注目され、現在では第6の栄養素と呼ばれるほど重要な栄養素として認知されています。

整腸作用によるデトックスは、美肌・美容にも効果抜群で、内臓の筋肉トレーニングとも称されるほど。

ちなみに、食物繊維のことを英語でダイエタリーファイバー(dietary fiber)と呼びますが、これは「dietary=食物」「fiber=繊維」というそのままの意味からです。

ダイエットに効果的なことからそう呼ばれているわけではありません。

食物繊維の種類

食物繊維には、水に溶ける水溶性食物繊維と水に溶けない不溶性食物繊維とがあります。それぞれの持つ特徴について見ていきましょう。

水溶性食物繊維とは

水溶性食物繊維は、昆布・わかめなどの海藻・こんにゃく・里芋・大麦・オーツ麦・果物などに含まれる食物繊維で、サラサラしたものとネバネバしたものに大きく分かれます。

特定保健用食品(トクホ)にもっともよく使われている食物繊維、難消化性デキストリンも水溶性食物繊維の一種です。

名称主に含む食品
ペクチン果物・芋類・キャベツ、大根、ごぼうなどの野菜や根菜類
アルギン酸昆布・わかめなどの海藻類
ガム質大豆・大麦・ライ麦などの麦類
グルコマンナンこんにゃく(原料。市販の食用こんにゃくは不溶性)

不溶性食物繊維とは

不溶性食物繊維は、ボソボソ・ザラザラとした食感を持っており、野菜に多く含まれるほか、穀類・豆類・きのこ類・甲殻類の殻などにも含まれています。

名称主に含む食品
セルロース大豆・穀類・豆類・ごぼう・小麦ふすまなど
ヘミセルロース大豆・穀類・ごぼう・小麦ふすまなど
リグニン豆類・穀類・完熟した野菜・小麦ふすま・ココアなど
キチン甲殻類の殻・きのこなど

食物繊維の効果・働き

食物繊維の持つ効果・効能・働きについて解説します。

水溶性食物繊維の働き

水溶性食物繊維には、粘性・吸着性・発酵性といった特性があり、それぞれ次のように効果を発揮します。

粘性:食後の血糖値の急激な上昇を抑制する

粘着性があり、消化された食物をドロドロと粘りのある状態にすることで、小腸での栄養素の消化吸収を遅らせます。これにより、食後の血糖値上昇を抑制するなどの効果を発揮。

また粘性を持った食物は消化器官内をゆっくりと移動するため、空腹状態になりにくく、ダイエットなど食事制限時の食べすぎ防止としても機能します。

吸着性:有害物質を吸着して体外へ排出する

水溶性食物繊維は吸着性があり、胆汁酸やコレステロールを吸着して体外へ排出することで、糖尿病や肥満、脂肪肝などの予防に効果的です。

肝臓では通常、脂肪の消化吸収を助けるために胆汁が分泌されており、胆汁は一部を除き小腸で吸収され、血液を通って再利用されます。

再利用を繰り返して古くなった胆汁酸が体外に排出されることで、コレステロールから新たな胆汁酸の合成が促され、血中のコレステロール値の低下、脂肪肝の抑制などに繋がるのです。

発酵性:善玉菌のエサとなり腸内環境を整える

水溶性食物繊維は人の消化酵素では消化・吸収されないため、大腸まで届き、腸内細菌によって発酵します。

発酵・分解された水溶性食物繊維の役割は、腸内環境を整えるビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌のエサとなることです。

食物繊維がもたらす効果・効能の中でも、この発酵性が最も重要とされており、水溶性食物繊維は不溶性食物繊維よりも発酵性が高く、より効果的な整腸作用が期待できます。

不溶性食物繊維の働き

不溶性食物繊維には、保水性・繊維質・発酵性といった特性があり、それぞれ次のように効果を発揮します。

保水性:腸を刺激して便秘の予防・改善を促す

不溶性食物繊維は多孔質(穴が多く開いた形状)をしており、水分保持能力がとても高いのが特徴です。

保水性の高さにより、胃や腸で水分を吸収してふくらみ、腸のぜん動運動を活発にして便通を促進します。

水溶性食物繊維の粘性が消化吸収を遅らせ、保水性の高い不溶性食物繊維が排泄を促す関係にあるため、両方をバランスよく摂取することが重要です。

繊維質:よく噛む必要があるため食べすぎを防止する

不溶性食物繊維を含む食品は、繊維質であったり、あるいは蜂の巣状やへちま状をしていたりして、よく噛んで食べる必要があることから食べすぎ防止に効果的です。

また、よく噛むことによって顎の発育も促され、歯並びがよくなる効果も期待できます。

発酵性:善玉菌のエサとなり腸内環境を整える

不溶性食物繊維も、水溶性食物繊維と同じく、大腸内で発酵して善玉菌を増やす作用があります。

食物繊維が不足・欠乏すると起こる症状

食物繊維が不足すると起こる症状は、主に便秘です。

腸内環境が悪化することで排便が滞り、肛門に過剰な負荷がかかり痔になったり、大腸がんのリスクが高まったりします。

また食物繊維を多く含む食品は低カロリーなものが多く、噛み応えもあるため食べ過ぎの防止にも繋がります。

このことから、食物繊維が不足した食生活を送っていると食べ過ぎる傾向にあり、肥満などのリスクも高まると言えるでしょう。

食物繊維を過剰摂取すると起こる症状

食物繊維を過剰に摂取すると、栄養素が吸収されにくい「吸収阻害作用」が引き起こされるほか、下痢や便秘といった逆効果に繋がる場合があります。

現代の日本人は総じて食物繊維が5~6g程度不足していると推定されており、通常の食事で食物繊維が過剰摂取されることはほぼありません。むしろ、積極的に摂取することが推奨されています。

ただし、サプリメントで大量の食物繊維を摂取している場合は、過剰摂取になり下痢などを引き起こす場合があるため注意してください。

便秘改善や血糖値の急上昇を抑えるなどの目的で食物繊維のサプリメントを摂取する人は、お腹がゆるくなったと感じた時点で服用の中止を検討しましょう。

食物繊維の1日の摂取目安量

食物繊維の1日の摂取目安量は、成人男性でおよそ21g以上、成人女性で18g以上です。

これは玄米ごはんで摂取した場合、およそ1.3~1.5kg食べなければいけない量となります。

食物繊維はその他の栄養素と比べて摂取目安量が多いため、食物繊維を豊富に含んだ食品を上手に毎日のメニューに取り入れていかなければ達成は難しいでしょう。

また、食物繊維は水溶性と不溶性のどちらか一方ではなく、両方をバランスよく摂取することが大切です。比率は、「水溶性1:不溶性2」のバランスが良いとされています。

それぞれの食物繊維を豊富に含む食品についての詳細は、続いてランキング形式で解説しますので、そちらも参考にしてください。

なお、食物繊維が十分に摂取できているかを表す指標として、「1日1回規則的に排便があるかどうか」が目安となります。

このときの理想的な排便量は1日あたりおよそ150g(Mサイズの鶏卵およそ3個分)ですので、この便量を補うための食物繊維を食事で摂取することを心がけましょう。

食物繊維の食事摂取基準(g/日)

性 別男 性女 性
年齢等目標量目標量
0 ~ 5 (月)
6 ~11(月)
1 ~ 2 (歳)
3 ~ 5 (歳)8 以上8 以上
6 ~ 7 (歳)10 以上10 以上
8 ~ 9 (歳)11 以上11 以上
10~11(歳)13 以上13 以上
12~14(歳)17 以上17 以上
15~17(歳)19 以上18 以上
18~29(歳)21 以上18 以上
30~49(歳)21 以上18 以上
50~64(歳)21 以上18 以上
65~74(歳)20 以上17 以上
75 以上(歳)20 以上17 以上
妊 婦18 以上
授乳婦18 以上
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)

食物繊維を多く含む食品

食物繊維を多く含む食品を、「全食品ランキング」「野菜ランキング」「果物ランキング」の順で紹介します。

全食品中で食物繊維を多く含む食品ランキング

順位食品名総量水溶性食物繊維不溶性食物繊維
1いも及びでん粉類/こんにゃく/精粉79.973.36.6
2きのこ類/(きくらげ類)/あらげきくらげ/乾79.56.373.1
3藻類/てんぐさ/粉寒天79--
4藻類/てんぐさ/角寒天74.1--
5いも及びでん粉類/こんにゃく/凍みこんにゃく、乾71.30.970.4
6きのこ類/(きくらげ類)/しろきくらげ/乾68.719.349.4
7野菜類/わらび/干しわらび、乾581048
8きのこ類/(きくらげ類)/きくらげ/乾57.4057.4
9藻類/えごのり/素干し53.3--
10藻類/ひじき/ほしひじき/鉄釜、乾51.8--
10藻類/ひじき/ほしひじき/ステンレス釜、乾51.8--
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

全食品中で食物繊維をもっとも豊富に含むのはこんにゃくですが、市販のこんにゃくではなくこんにゃくの原料となる精粉である点に注意してください。

普段の食生活に取り入れられる範囲では、きくらげや寒天といった、きのこ類や海藻類が優秀な食物繊維含有食品です。

食物繊維を多く含む野菜ランキング

順位食品名総量水溶性食物繊維不溶性食物繊維
1わらび/干しわらび、乾581048
2とうがらし/果実、乾46.45.441
3ぜんまい/干しぜんまい/干し若芽、乾34.86.128.7
4かんぴょう/乾30.16.823.3
5きく/菊のり29.68.221.4
6ずいき/干しずいき、乾25.84.821
7トマト類/トマト/ドライトマト21.76.415.3
8だいこん類/切干しだいこん/乾21.35.216.1
9らっきょう類/らっきょう/りん茎、生20.718.62.1
10つるにんじん、根、生17.110.76.4
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

野菜の中でもっとも食物繊維を含むのは、干しわらびです。その他も、2位とうがらし、3位干しぜんまい、4位かんぴょう、と毎日の食事で一定量を摂取するにはやや取り入れづらい食品が並びます。

食物繊維を多く含む果物ランキング

順位食品名総量水溶性食物繊維不溶性食物繊維
1ブルーベリー/乾17.6314.6
2かき/干しがき141.312.7
3なつめ/乾12.52.79.8
4いちじく/乾10.73.47.3
5かんきつ類/すだち/果皮、生10.12.87.3
6あんず/乾9.84.35.5
7かりん/生8.90.98
8すもも類/プルーン/乾7.23.43.8
9なつめやし/乾71.55.5
9バナナ/乾725
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

果物の中でもっとも豊富に食物繊維を含有しているのは、ドライブルーベリーでした。

重量当たりの成分量であるため、その他もドライフルーツが多くランクインする中、5位のすだちと7位のかりんだけが、生の状態でランクインするほど豊富な食物繊維を含んでいます。

食物繊維を効率よく摂取する方法

ランキングを見ると分かる通り、一口に食物繊維が豊富な食品と言っても、水溶性食物繊維を多く含んでいるか不溶性食物繊維を多く含んでいるかは食品によって全く異なります。

偏らないようにとひとつひとつ考えながら摂取するのは難しいため、手軽に効率よく食物繊維を摂取したい場合は、置き換え法が有効です。

置き換え法とはたとえば、次のような方法のことを言います。

  • 白米を玄米ごはんや麦ごはんに置き換える
  • 食パンを全粒粉パンやライ麦パンに置き換える

特に大麦は食物繊維がとても豊富で、玄米の約3倍もの食物繊維が含まれていますので、ぜひ取り入れてみてください。

その他にも、そば・しらたき・さつまいも・切り干し大根・かぼちゃ・ごぼう・たけのこ・ブロッコリー・モロヘイヤ・いんげん豆・あずき・おから・しいたけ・ひじきなどは、1食あたりに食物繊維が2~3gも含まれています。

これらを上手く組み合わせて、日本人の食事摂取基準(2020 年版)が推奨する量の食物繊維を摂取していきましょう。

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