乳酸菌の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法

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栄養素

乳酸菌の基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。

乳酸菌とは

乳酸菌とは、発酵によって、炭水化物などの糖類を消費して乳酸を作り出す微生物の総称です。

乳酸菌というと、ヨーグルトや乳酸菌飲料などに添加された乳酸菌のイメージが強いですが、乳酸を作り出す菌は自然界にも広く存在し、その数は数千種類以上と言われています。

乳酸菌には腸内フローラ(※)を整える働きがあり、便通改善・便秘解消に効果を発揮するだけでなく、中性脂肪やコレステロール値の低下、免疫機能の向上などにも効果的です。

また乳酸菌は発酵食品を作るうえでも欠かせない細菌で、ヨーグルト、味噌、醤油、ぬか漬け、キムチ、チーズなど、さまざまな食品の製造に用いられます。

※腸内フローラ……腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)。腸内の細菌群のこと、およびそのバランスのこと。

乳酸菌の種類と効果

乳酸菌には、現在分類されているものだけでも380以上もの種類があり、種類によって得られる健康効果も異なります。

代表的な乳酸菌の名称と特徴を紹介します。

乳酸菌の名前の読み方

代表的な乳酸菌を紹介する前に、まず乳酸菌の分類の仕方、名称の表記について説明します。

乳酸菌は、属・種・株、の順で名前がつけられており、「ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株」の場合、ラクトバチルス属カゼイ種のシロタ株、となります。

一方で、乳酸菌は別の名前で呼ばれることも多くあるため、特定の乳酸菌について調べる際は注意が必要です。

たとえばラクトバチルス・カゼイ・シロタ株は、一般的にはヤクルト株やLCS、L.カゼイ・シロタ株とも呼ばれています。

これらの点も踏まえたうえで、代表的な乳酸菌の名称や別名、その働きなどを続いて紹介します。

ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株(ヤクルト菌)

別名ヤクルト菌。略してLCS、L.カゼイ・シロタ株などとも呼ばれます。名前の通り、ヤクルト社の製造する乳酸菌飲料「ヤクルト」に主に用いられています。

ヤクルト400・ヤクルト300Vなど製品名末尾の数字は、ヤクルト菌が入っている個数(億単位)のことです。ヤクルト400なら、ヤクルト菌が400億個入っていることになります。

耐酸性で、胃液や胆汁でも死滅しないため、生きたまま腸まで届くプロバイオティクス(※)のひとつです。

※プロバイオティクス……胃液や胆汁に耐えて生きたまま腸まで届き、人の健康に具体的な好影響を与える微生物の総称。安全・安価かつ容易に取り扱える・有効な菌数の維持が可能、などの条件がある。

ラクトバチルス・アシドフィルス・L-92株(L-92乳酸菌)

L-92乳酸菌は、カルピス社独自の乳酸菌です。

カルピス社や第三者機関の行った研究から、アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・花粉症といったアレルギー症状への有効性が明らかになっているほか、インフルエンザの感染を抑制する可能性があることも確認されています。

ラクトバチルス・ブルガリクス・OLL1073R-1(R-1乳酸菌)

R-1乳酸菌は、株式会社 明治が保有する乳酸菌のひとつです。

明治の行った研究によれば、NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化することによる免疫力向上効果や、インフルエンザ予防効果があることが報告されています。

ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(ビフィズス菌)

別名ビフィズス菌。乳酸菌の一種ですが、乳酸菌が主に小腸で働くのに対し、ビフィズス菌は大腸で働くことから、分けて取り扱われることも多い乳酸菌です。

大腸における乳酸菌とビフィズス菌の比率は、乳酸菌0.1%に対しビフィズス菌99.9%となっています。

しかし一般的に酸素や酸に弱いものが多く、生きて腸まで届くことはおろか、生きたまま食品に添加することも難しい菌です。

乳酸菌の効果・働き

乳酸菌の持つ効果・効能・働きを紹介します。

便秘・下痢の改善

乳酸菌は、悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。

腸内に乳酸菌が増えると、乳酸や酢酸といった有機酸が作られます。有機酸により腸内が弱酸性に傾くことで、悪玉菌が住みにくい環境を作ることができるのです。

また有機酸には、腸のぜん動運動を促す働きもあります。

そもそも便秘や下痢は、善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れ、腸内フローラの状態が悪化することによって起こります。

悪玉菌が増えると、腸のぜん動運動が低下することで便秘がちになったり、産生された有害細菌を排出するために下痢気味になってしまったりするのです。

免疫力向上

乳酸菌には、免疫力を向上する働きもあります。

たとえばカスピ海ヨーグルトの乳酸菌であるクレモリス菌FC株には、インフルエンザ感染後の重症化を抑制する作用があると認められました。

乳酸菌によってNK細胞が活性化し、免疫力をアップさせるのです。

花粉症の抑制

乳酸菌には、花粉症の症状を抑える働きも報告されています。

花粉症は、免疫機能の司令塔の役割を果たすヘルパーT細胞のうち、1型ヘルパーT細胞(Th1細胞)よりも2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)が優位になることで発症します。

これに対し乳酸菌は、腸内フローラを整えることで1型ヘルパーT細胞を増やし、花粉症の原因物質であるIgEというタンパク質が生成されるのを抑制します。

乳酸菌による花粉症治療はあくまで民間医療ではあるものの、厚生労働省の資料によれば、一般医療機関を受診しているアレルギー性鼻炎患者の30%以下に効果ありと判断されたとのことです。

アトピー性皮膚炎の改善

乳酸菌の1型ヘルパーT細胞を増やす働きは、アトピー性皮膚炎の改善にも効果を発揮します。

ある調査によれば、両親がともにアレルギー体質だった場合の子どものアトピー発症率が46%だったのに対し、一定期間乳酸菌を服用した場合では、アトピー発症率が23%まで低下したそうです。

血中コレステロールの低下・血中脂質の改善

乳酸菌のうち、プロバイオティクス細菌には、血中のコレステロール低下などの血中脂質改善効果が認められています。

調査研究によれば、プロバイオティクスは医薬品のような劇的な効果を持つものではないものの、特に血中脂質が高めの人にはある程度の改善効果が期待できると報告があります。

その他の効果・働き

整腸作用や免疫力向上作用がほとんどの乳酸菌に認められるのに対して、乳酸菌のなかには、特徴的で独自の働きを持つものがあります。

たとえば、脂肪燃焼を促すことによって体脂肪を減らす、血糖値の上昇を抑制する、がんを予防する、といったものです。

ただし、こうした効果のなかには、動物実験で確認されたものの人では確認されていないものや、とても限定的な状況においてのみ効果が認められたものなども含まれています。

また前述の通り、乳酸菌は種類によって得られる健康効果が異なります。目的の効果を満たす乳酸菌がどれなのか、摂取前に確認しましょう。

乳酸菌を過剰摂取すると起こる副作用

乳酸菌を過剰摂取したことによる副作用は、特に報告されていません。

そもそも、腸内フローラは3歳ごろまでに形成されるため、一時的に乳酸菌を摂取しても腸に留まることはなく、その量が過剰だったとしても2~3日で排出されます。

そのため、腸内フローラを良いバランスに保つには乳酸菌の継続的な摂取が欠かせません。

なお、乳酸菌そのものの過剰摂取による副作用はないものの、乳酸菌を摂取するために食品の摂取が過剰になる可能性には注意が必要です。

特に乳酸菌が豊富な食品は糖分や脂質が高いものが多いため、ヨーグルトや乳酸菌飲料を毎日摂取すると、糖分や脂質が過剰になる恐れがあります。

主なヨーグルト製品・乳酸菌飲料に含まれる糖分、脂質、カロリーは、下記表の通りです。

乳酸菌自体に過剰摂取の害はありませんが、そのほかの栄養素が過剰になることを防ぐためにも、過度な摂取は控えた上で継続的な摂取を心がけましょう。

食品名エネルギー(kcal)たんぱく質脂 質コレステロール炭水化物備考
単位kcal/100 gg/100 gg/100 gmg/100 gg/100 g
ヨーグルト(全脂・無糖)623.63124.9別名:プレーンヨーグルト
ヨーグルト(低脂肪・無糖)453.7155.2
ヨーグルト(無脂肪・無糖)4240.345.7
ヨーグルト(脱脂・加糖)674.30.2411.9別名: 普通ヨーグルト
飲むヨーグルト652.90.5312.2
乳酸菌飲料(乳製品)711.10.1116.4無脂乳固形分3.0 %以上(100 g: 92.9 mL、100 mL: 107.6 g)
乳酸菌飲料(殺菌乳製品)2171.50.1252.6無脂乳固形分3.0 %以上希釈後飲用(100 g:81.0 mL、100 mL:123.5 g)
乳酸菌飲料(非乳製品)430.40.1110無脂乳固形分3.0 %未満(100 g:95.9 mL、100 mL:104.3 g)
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

乳酸菌の1日の摂取目安量

乳酸菌は栄養素ではないため、日本人の食事摂取基準(2020 年版)で必要量は定められていません。

ただ、乳酸菌による健康効果を得るための摂取量はある程度の目安があり、国立健康・栄養研究所の見解によると、およそ1日100億個程度の摂取が必要とのことです。

また同報告によれば、1日ではなく毎日継続して摂ることが重要と強調されています。

乳酸菌を多く含む食品

乳酸菌は、次のような発酵食品に多く含まれています。

  • ヨーグルト
  • 味噌
  • 醤油
  • ぬか漬け
  • キムチ
  • チーズ、など

その他にも、乳酸菌を添加した機能性ヨーグルトなどに豊富に含まれます。

乳酸菌を効率よく摂取する方法

乳酸菌を効率的に摂取する方法について解説します。

乳酸菌サプリがおすすめ

乳酸菌を、効率よく、継続的に、かつその他の栄養素が過剰にならないよう無理なく摂取するためには、乳酸菌を配合した乳酸菌サプリメントが便利です。

前述の通り、乳酸菌による十分な健康効果を得るためには1日100億個摂取する必要がある一方で、過剰に摂取すると糖分や脂質、カロリーの摂り過ぎが気になります。

それに対し乳酸菌サプリメントなら、乳酸菌以外の栄養素の過剰摂取を気にすることなく、大量の乳酸菌を摂取することができるのです。

乳酸菌を摂取するタイミング

食品にせよ、乳酸菌サプリメントにせよ、摂取するタイミングはいつでも構いません。乳酸菌はタイミングよりも、継続して腸内に乳酸菌がいる状態を保つことが重要です。

そのため、飲み忘れないよう時間を決めて摂取することをおすすめします。毎朝なら毎朝、寝る前なら寝る前に、必ず摂取するようにしましょう。

なお、なるべく生きて腸に届けたい場合は、胃酸の弱まる食後がおすすめです。

ただ、乳酸菌は死骸もまた腸内細菌のエサとしての役割を果たすため、プロバイオティクスの働きをより高めたいといった場合を除き、あえて意識する必要はないでしょう。

乳酸菌といっしょに摂取したい食品

乳酸菌の活動を助ける食物繊維やオリゴ糖といっしょに摂取することで、より効果を高めることができます。

これらの栄養素を含んだおすすめの食品は、大豆や牛乳、ごぼうなどです。

これらを取り入れたメニューを摂取し、食後に乳酸菌サプリメントを飲むことで、さらなる効果が期待できるでしょう。

参考文献

乳酸菌 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

GB 3rd edition final|eJIM|厚生労働省

花粉症の民間医療について|厚生労働省

乳酸菌とは | もっとくわしく乳酸菌 | ビオフェルミン製薬

プロバイオティクス細菌による血中脂質改善作用|J-STAGE

ビフィズス菌と乳酸菌の違い|森永ビヒダスヨーグルトBB536|森永乳業

乳酸菌を摂りすぎるとどうなる?副作用の心配は?|乳酸菌の健康と美容LABO 菊正宗

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