米ぬかの栄養と効果効能・調理法・保存法

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米ぬかの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、米ぬかに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

米ぬかとは

米ぬか(Rice bran)は、玄米の表面にある糠層(ぬかそう)や胚芽を削ったもので、精米したときに発生する粉です。玄米の重量の約10%を米ぬかが占めています。

米ぬかの原料である玄米の糠層と胚芽には、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富で、米の栄養の9割以上が存在するとも言われてます。

米ぬかは、漬け物用のぬか床や米油の材料として利用されるほか、炒って食べたり、菓子やふりかけの材料にしたりすることもできます。食用以外の用途も広く、食器を洗う洗剤や、床・家具のツヤ出し剤、きのこの培地、有機肥料にもなる万能な食材です。

米ぬかは、新陳代謝を活発にするビタミンB群やエイジングケアに有効なビタミンEが豊富なことから、化粧品や洗顔石鹸にも使われています。

米ぬかの種類

米ぬかは、削り取られる部分によって、赤ぬか・中ぬか・白ぬかの3種類に分類されます。それぞれの概要や特徴は次の通りです。

赤ぬか

精米歩合90%くらいまでのぬかを、赤ぬかと呼びます。精米歩合とは、精米して残った米の割合です。赤ぬかは、主に玄米の表皮の部分を削り取ったもので、きな粉のような黄色~薄茶色っぽい色をしています。

中ぬか

中ぬかは、精米歩合85%くらいまでのぬかのことを言います。赤ぬかと白ぬかの中間に位置する部分で、色味は赤ぬかよりやや薄めです。

白ぬか

白ぬかは、精米歩合75%程度までのぬかです。75%以下の部分は、特上ぬかや、特白ぬかと呼ばれることも。白米である胚乳に最も近い部分であり、赤ぬかや中ぬかより白っぽい色をしています。

白ぬかは、玄米1粒から取れる量が少なく希少です。化粧ぬかとも呼ばれ、洗顔・肌の手入れなど美容の分野でも活用されています。

米ぬかに含まれる成分・栄養素

米ぬか100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。なお、各栄養素の比較のため、玄米・半つき米・七分つき米・精白米の栄養素を並記しています。

食 品 名単位米ぬか玄米半つき米七分つき米精白米 うるち米
廃 棄 率%00000
エネルギーkJ15561472147014831455
kcal374346345348342
水 分g10.314.914.914.914.9
たんぱく質アミノ酸組成によるたんぱく質g10.96-5.6-5.45.3
たんぱく質g13.46.86.56.36.1
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g17.52.5-1.7-1.40.8
コレステロールmg00000
脂質g19.62.71.81.50.9
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g27.578.481.583.383.1
g****
利用可能炭水化物(質量計)g25.371.374.175.875.6
差引き法による利用可能炭水化物g32.972.475.776.878.1
*
食物繊維総量g20.531.40.90.5
糖アルコールg-----
炭水化物g48.874.375.976.677.6
有機酸g-----
灰分g7.91.20.80.60.4
無機質ナトリウムmg71111
カリウムmg150023015012089
カルシウムmg359765
マグネシウムmg850110644523
リンmg200029021018095
mg7.62.11.51.30.8
亜鉛mg5.91.81.61.51.4
mg0.480.270.240.230.22
マンガンmg152.061.41.050.81
ヨウ素μg3TrTr00
セレンμg53222
クロムμg500Tr0
モリブデンμg6565767369
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg00000
α|カロテンμg00000
β|カロテンμg01000
β|クリプトキサンチンμg00000
β|カロテン当量μg01000
レチノール活性当量μg0Tr000
ビタミンDμg-0000
α-トコフェロールmg101.20.80.40.1
β-トコフェロールmg0.50.1TrTrTr
γ-トコフェロールmg1.20.10.100
δ-トコフェロールmg0.10000
ビタミンKμg00000
ビタミンB1mg3.120.410.30.240.08
ビタミンB2mg0.210.040.030.030.02
ナイアシンmg356.33.51.71.2
ナイアシン当量mg388-5.1-3.22.6
ビタミンB6mg3.270.450.280.20.12
ビタミンB12μg00000
葉 酸μg18027181512
パントテン酸mg4.431.3710.840.66
ビ オ チ ンμg3863.52.91.4
ビタミンCmg00000
アルコールg-----
食塩相当量gTr0000
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

米ぬかの効果・効能

米ぬかに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

便秘解消に役立つ食物繊維

米ぬかには、精白米の40倍以上の食物繊維が含まれています。食物繊維は、腸のぜん動運動を活発にしたり、腸の善玉菌の働きをサポートして腸内環境を整えたりと、便秘・下痢に悩む人にとって重要な栄養素です。

食物繊維には、便秘解消だけでなく、脂質・糖・ナトリウムなど生活習慣病を引き起こす成分を体外に排出するのを助ける機能もあります。

野菜やきのこ類に豊富な食物繊維ですが、1日の必要量を食事だけで補うのは大変です。パウダー状にした米ぬかを毎日の食事や飲み物に混ぜることで、手軽に食物繊維を補うことができるでしょう。

食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法 | NANIWA SUPLI MEDIA

がんや脂肪肝の予防に効果的なフィチン酸

米ぬかには、フィチン酸というビタミンB群の仲間の成分が含まれています。フィチン酸は、がんや生活習慣病の原因となる活性酸素の働きを抑える抗酸化作用のある栄養素です。強い抗酸化力による、がんや生活習慣病の予防に効果が期待されています。

フィチン酸の摂取量が多いフィンランド人は、摂取量の少ないデンマーク人より結腸がんの発生数が少ないことが報告されるなど、フィチン酸の抗がん作用は世界から注目されています。

また、ラットを使用した実験では、フィチン酸に脂肪肝の発症を抑制する作用が認められています。

悪玉コレステロールを減らすγ-オリザノール

γ-オリザノールは、米ぬかに特有のポリフェノールの一種で、コレステロールを低下させる医薬品としても用いられる成分です。悪玉コレステロールを減らす作用のほか、自律神経失調症や高脂血症、潰瘍にも効果的とされて、その治療薬として使われています。

米ぬかは、コレステロール値の気になる人にとっても有益な食材と言えます。悪玉コレステロールが増えすぎることで起こる動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞の予防にも効果的でしょう。

フェルラ酸がアルツハイマー型認知症の予防に有効

ェルラ酸は、認知症やがんの予防に効果が期待されるポリフェノール類の一種です。

国内の製薬会社が行った研究で、フェルラ酸には、アルツハイマー型認知症の原因のとなる物質の蓄積を防ぐ効果が発見されています。

フェルラ酸は、イネ科の植物に豊富で、米ぬかから多く摂取することができます。フェルラ酸を豊富に含む米ぬかは、物忘れや認知機能の衰えが気になるとききにも意識して摂りたい食材です。

アンチエイジングに効果的なビタミンE

米ぬかには、抗酸化作用のあるビタミンE(トコフェロール)が豊富で、精白米の約40倍もの量を含んでいます。体の酸化を防ぐビタミンEは、老化による疾患やシミ・シワなどの肌悩み改善に効果的なことから「若返りのビタミン」とも呼ばれています。

ビタミンEは、血管の健康とも関わっており、動脈硬化や血栓の予防にも効果が期待できる成分です。

ビタミンEの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA

新陳代謝を促進して疲労回復を助けるビタミンB群

新陳代謝を活発にし、ダイエットや美肌にも良い効果が期待できるビタミンB群が豊富なことも、米ぬかの栄養組成の特徴です。ビタミンB群は、玄米の胚芽の部分に多く含まれています。

特にビタミンB1とビタミンB6が多く、ビタミンB1は精白米の約12倍も含んでいます。明治時代には、米ぬかがビタミンB1不足が原因とされる脚気の予防にも用いられていました。

ビタミンB1は、糖質をエネルギーに代謝するときに必要な成分で、疲労の回復を早める効果があります。運動量の多い人や糖質の摂取量の多い人は、特に意識して摂りたい成分です。

ビタミンB6は、たんぱく質や脂質の代謝に関わるビタミンです。ビタミンB6の不足は、皮膚炎・口内炎・貧血を引き起こすことがあります。

ビタミンB1の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ | NANIWA SUPLI MEDIA

ビタミンB6の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA

米ぬかの食べ方

米ぬかの栄養素を損なわない調理方法・食べ方などを解説します。

米ぬかの炒り方(煎り方)

生の米ぬかは、フライパンで炒って「炒りぬか」にして食べるのが一般的です。炒りぬかを作るときは、フライパンに油をひかず、弱火で2~3分程度加熱します。

ぬかが黄色味を帯びてきて、香ばしい香りが立つまでじっくりと炒り続けましょう。ぬかは焦げつきやすいため、木べらなどで良く混ぜながら炒ってください。

炒りぬかは、そのまま食べたり、料理にふりかけたりできるほか、菓子の材料にも使うことができます。なお、ぬか床の原材料には、生の米ぬか・炒りぬかのどちらも利用できます。

ぬか漬けからは乳酸菌も摂取できる

米ぬかを原料とするぬか床は、乳酸発酵しているため乳酸菌が多く存在します。ぬか床で漬けるぬか漬けからは、米ぬかの栄養素に加えて乳酸菌も摂取できます。

乳酸菌は、腸で働く善玉菌の一種で、腸内細菌のバランスを整えて腸の機能を正常にする機能を持っています。ぬか漬けは、慢性的な便秘や下痢、お腹のハリなどのトラブルに悩まされている人にとって役立つ食材と言えるでしょう。

乳酸菌の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

米ぬかの保存方法

米ぬかの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

生の米ぬかは冷凍する

発酵が進みやすく酸化しやすい生の米ぬかは、冷凍保存が基本です。ジップ付き袋など密閉できる容器に入れて空気をしっかりと抜き、冷凍庫に入れましょう。冷凍した米ぬかは、1~2ヶ月程度は保存がききます。

炒りぬか(煎りぬか)

生の米ぬかは、炒って「炒りぬか」とすることで、保存可能期間を伸ばすことができます。フライパンで炒ったぬかは、冷ましてから密閉できる容器に入れて冷蔵庫で保管しましょう。

炒りぬかの保存期間は、冷蔵で2週間程度です。生の米ぬかと同様に、冷凍保存もできます。

参考文献

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