認知症の予防に効果のある食材・食事方法・生活習慣
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認知症の症状や定義、原因について解説したうえで、認知症の予防・改善に役立つビタミンを豊富に含む食べ物や飲み物を紹介します。
認知症とは
まずは、認知症の概要・症状・定義・似た症状との違いといった基本情報について解説します。
認知症の概要
認知症とは、脳神経がダメージを受けることで、身体活動や精神活動に障害が起きている状態です。さまざまな疾患に起因する症状のことを指し、医学的な病名ではありません。
2012年の認知症患者数は、462万人と報告されており、これは65歳以上の高齢者のうち15%にあたります。2025年までに、認知症患者数は700万人に増加すると予想されており、高齢者人口の約5人に1人が認知症を発症する可能性があると考えられています。
認知症の症状
認知症の症状は、主に次のとおりです。認知症の原因疾患によって、症状の程度や種類に違いがあります。
- 記憶障害:もの忘れ
- 見当識障害:今いる場所や状況、日付を忘れる
- 判断力の低下:料理の手順などいつもできていたことができなくなる
- 徘徊・幻覚・異食・不眠・うつ症状・暴力などの周辺症状
認知症の定義
認知症の定義は、「慢性あるいは進行性の脳疾患が要因となって発生し、記憶・思考・見当識・理解・判断などの高次脳機能の障害による症候群」です。
診断基準ICD-10では、記憶障害があり、以前の機能レベルから著しい機能低下を認めることと定義しています。また、日常生活における動作に障害があることが必須条件です。
もの忘れとの違い
もの忘れをすると、「認知症かも」と不安になる方もいるかもしれません。しかし、単純なもの忘れと認知症は異なります。もの忘れとは、老化による脳機能の衰えが原因で、少なからず誰にでも起こる症状です。
老化によるもの忘れでは、記憶の一部を忘れてしまうだけで、忘れてしまった自覚があります。一方、認知症では、ある出来事の記憶をすべて忘れてしまうため、忘れていること自体に気が付きません。
また、単純なもの忘れでは、判断力の低下は起こらず、料理の手順や自転車の乗り方、切符の買い方などは忘れないのが特徴です。認知症では、服を選んで着ることや、お風呂への入ることなど、以前はできていた当たり前の生活ができなくなります。
認知症の原因疾患
認知症の原因となる疾患は、アルツハイマー型・脳血管性・レビー小体型・前頭側頭葉型の主に4つで、その他には飲酒が原因となるアルコール性認知症などがあります。
ここでは、認知症の主要な原因疾患である4つの疾患について解説します。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症とは、異常なタンパク質が脳に蓄積することで、脳細胞が障害を受ける症状です。
記憶をつかさどる脳の海馬を中心に、広範囲で障害が起こります。異常タンパク質は、加齢によって誰でも蓄積するものですが、特に糖尿病や高血圧などの症状がある人でリスクが増加します。
認知症全体の67.6%がアルツハイマー型認知症とされており、高齢者だけでなく、30代~50代の若年層でも発症する認知症です。アルツハイマー型認知症は、男性よりも女性に発症することが多いと考えられています。
アルツハイマー型認知症の特徴は、もの忘れなどの記憶障害から始まる点です。昔の記憶がある一方で最近の物事を忘れやすくなり、徐々に見当識障害や判断力の低下が起こります。
脳血管性認知症
脳血管性認知症とは、脳血管が詰まったり切れたりしたことが原因で、脳細胞が破壊されて起こる認知症です。脳血管性認知症は、アルツハイマー型に次いで多く、全認知症の19.5%を占めます。
脳血管障害が起こる原因は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳卒中です。糖尿病や高血圧、肥満が原因となる脳血管障害を引き起こし、高齢男性で発症しやすいと考えられています。
脳血管性認知症の症状は、脳血管障害を起こしている場所によって異なります。原因となる脳血管障害の進行により、症状の進行は断続的です。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症とは、レビー小体と呼ばれる異常タンパク質の塊が脳内にでき、神経細胞を減少させる認知症です。認知症のなかでは4.3%を占め、高齢の男性に多いと考えられています。
レビー小体ができる原因の詳細はまだ解明されておらず、加齢が原因との考えが一般的です。
レビー小体型認知症では、神経細胞が壊れて神経伝達が障害されるため、幻覚や手足の震え、転びやすくなるなどの症状が表れます。記憶障害よりも先に、手足の震えや歩行障害といった症状が出ることが多いとされています。
前頭側頭葉型認知症
前頭側頭葉型認知症とは、全認知症の1.0%を占め、脳の前頭葉と側頭葉と呼ばれるエリアの神経細胞が障害されて起こる認知症です。
記憶をつかさどる前頭葉と、言語の理解や視覚の記憶、感情を管理する側頭葉が障害されることで、認知症の症状が起こります。そのため、言葉の意味が理解できなくなったり、怒りっぽくなったりといった症状を引き起こします。
前頭側頭葉型認知症は、他の認知症よりも、若年で発症することが多いと考えられている認知症です。
認知症の予防・進行を遅らせるのに効果的な栄養素
認知症の予防や、症状の進行を遅らせるのに効果的な栄養素について解説します。
ビタミンC:アルツハイマー型認知症を予防する
ビタミンCは、老廃物を除去して老化防止に役立つ抗酸化作用や、免疫力の上昇効果を持つビタミンの1種です。ビタミンCには、アルツハイマー型認知症の発症リスクを下げる効果があるとの報告があり、認知症予防に効果が期待されます。
アルツハイマー型認知症を発症するリスク因子に、アポEと呼ばれるタンパク質の1種があります。アルツハイマー型の人は、アポEの特定の種類を保有していると考えられており、アポE遺伝子を持った人の認知症発症リスクは、持っていない人の約3.9倍です。
ビタミンCは、アポE遺伝子を持った女性において、アルツハイマー型認知症の予防効果があると報告されています。一方、男性の場合は効果が有意でないと考えられます。
ビタミンCの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンE:男性においてアルツハイマー型認知症
ビタミンEは、コレステロールの酸化を防いだり、血管の拡張を促進したりするビタミンです。ビタミンEも、ビタミンCと同様に、アルツハイマー型認知症の原因となるアポE遺伝子を持った人の認知症発症リスクを下げるとの報告があります。
ビタミンEの効果は、女性に対しては有意に発揮されず、男性で有効と考えられています。
ビタミンEの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンB群:脳血管障害を予防
ビタミンB6やB12、葉酸などのビタミンB群は、認知症の原因疾患である脳血管障害のリスクを下げる効果があります。ビタミンB群が不足すると、アミノ酸の1種であるメチオニンが代謝されずに体内に蓄積し、動脈硬化のリスクを高めると考えられています。
そのため、ビタミンB6・B12・葉酸は、認知症の原因疾患である脳梗塞などを予防するのに効果的です。
ビタミンB群の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
ポリフェノール:認知症の原因となる動脈硬化を予防
ポリフェノールとは、植物に含まれる苦味や色素の成分です。ポリフェノールには、赤ワインに含まれるアントシアニンや、カテキン、チョコレートに含まれるカカオポリフェノールなど、さまざまな種類が含まれます。
ポリフェノールには、抗酸化作用があり、動脈硬化の予防や老化防止の効果があります。認知症の原因とされる脳血管障害の予防につながる栄養素です。
ポリフェノールの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
認知症の予防・改善に効果の期待できる食べ物・飲み物
認知症の予防・改善に効果的な栄養素を多く含む食べ物・飲み物について解説します。
青魚
青魚は、カルシウムやDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)など、認知症予防に効果的な栄養素を多く含む食べ物です。DHAとEPAは、動脈硬化を予防し、血栓ができにくくする働きを持ちます。
また、DHAは、脳神経の機能を向上させる働きがあります。2019年の東北大学の研究によれば、魚の摂取量が増えると認知症リスクが下がることが報告されており、今後の動向が期待される食べ物です。
アジの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
サバの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
いわしの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
緑黄色野菜
野菜や果物には、ビタミンCやビタミンEが豊富に含まれます。ビタミンCとビタミンEには、血中のコレステロール値を下げたり、動脈硬化を予防したりする働きがあるため、認知症の予防に効果的です。
ビタミンC・ビタミンEは、かぼちゃやほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれています。WHO(世界保健機関)の「認知症ガイドライン」では、緑黄色野菜だけでなく、淡色野菜も毎食摂取することが推奨されています。
かぼちゃの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
ブロッコリーの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
ほうれん草の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
大豆
大豆には、コレステロールや、中性脂肪を下げる働きがあります。また、肥満予防に効果的とされる大豆サポニンも多く含むため、認知症のリスクとなる糖尿病や高血圧を予防できます。ミネラルも豊富に含み、バランスのよい食事には欠かせない食べ物です。
大豆の栄養と効果効能・食べ方・注意点・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
アーモンド
アーモンドの特徴は、ビタミンEを豊富に含むことです。ビタミンEは認知症予防に効果的なビタミンで、ナッツ類はWHOが認知症予防として推奨する地中海料理にもよく使われます。ナッツのなかでも、アーモンドは特に、ビタミンEを多く含みます。
アーモンドの脂質成分は、オレイン酸と呼ばれる不飽和脂肪酸です。オレイン酸は、動脈硬化や心疾患の予防に効果的といわれており、脳血管性認知症の予防効果が期待できます。
アーモンドの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
オリーブオイル
オリーブオイルも、認知症予防で推奨される地中海料理に使われる食材です。
オリーブオイルには、抗酸化作用を持つポリフェノールが豊富に含まれます。抗酸化作用とは、体内で産生される老廃物・活性酵素を取り除く働きです。抗酸化作用には、動脈硬化を予防する効果があると考えられています。
また、オリーブオイルに含まれる脂質は、不飽和脂肪酸のオレイン酸です。悪玉コレステロールと中性脂肪の増加を抑制し、生活習慣病を防ぎます。
オリーブの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
赤ワイン
赤ワインには、アントシアニンやタンニンなど複数のポリフェノールが含まれます。ポリフェノールは、抗酸化作用があり生活習慣病のリスクを下げる栄養素です。赤ワインに含まれるポリフェノールの量は、白ワインの数倍とも言われています。
ただし、アルコールの飲み過ぎは認知症リスクを上昇させる原因になります。赤ワインは認知症予防になる飲み物として注目されていますが、バランスのよい食事と一緒に適量を飲む程度にしましょう。
認知症の予防・改善に効果的な生活習慣
認知症を予防・改善するために心がけたい食生活や生活習慣について解説します。
適度な運動をする
糖尿病や高血圧などの生活習慣病を抱える人は、生活習慣病でない人よりも、認知症になるリスクが高いとの報告があります。
WHOによる「認知症予防ガイドライン」でも、認知機能の低下リスクを低減させるための運動が推奨されています。65歳以上の場合の運動推奨例は、次のとおりです。
- 1週間に150分程度の中程度の有酸素運動、あるいは75分の激しい有酸素運動をおこなうこと
- 有酸素運動1回は10分以上続けること
- 1週間に3回に分けて運動をおこなうこと
- 筋力トレーニングは1週間に2回以上おこなうこと
周囲の人とコミュニケーションをとる
社会活動も、認知症予防に効果的です。社会的な交流が少ない人は、認知症の発症率が上がるとの報告もあります。
しかしWHOは、社会活動が認知症のリスク低減に関わるとのエビデンスは十分ではないと判断しています。一方で、社会参加や社会交流は、生活における幸福度に関与しているため推奨されるべき、とも発言しています。
認知症の予防については、今後の研究が期待されるところです。
過度な飲酒や喫煙は避ける
WHOの「認知症予防ガイドライン」では、喫煙とアルコールの摂取についても言及しています。喫煙と飲酒は、認知症や認知機能の低下を引き起こす危険因子として、摂取を避けることを推奨しています。
参考文献
- 認知症|ドクターズ・ファイル
- 高齢者の健康・福祉|内閣府(PDF)
- 認知症施策の総合的な推進について|厚生労働省老健局(PDF)
- 認知症の定義,概要,経過,疫学|日本神経学会(PDF)
- 【専門医監修】認知症の種類と症状一覧|認知症のコラム|探しっくす
- 認知症とは?原因・症状・対処法から予防まで|認知症ねっと
- ビタミン C がアポリポタンパク E E4 保有女性の認知症リスクを下げる可能性を世界で初めて報告|金沢大学(PDF)
- ビタミンと認知症|ビタミン(PDF)
- 日本人高齢者における魚の摂取と認知症発症のリスク:大崎コホート2006年研究|British Journal of Nutrition
- 認知機能低下および認知症のリスク低減|WHO(PDF)
記事の監修
AYA ARAHARA
ヨガインストラクター。
ホテル、外資系化粧品メーカー、美容業の広報/PRとして業務を経て、アロマテラピーや美容業界の実用書等の、編集・執筆活動のほか、ライフワークとしてヨガインストラクターとしても活動している。
近著としては、「ママになっても美しい人の食事術」(PHP研究所)編集協力、「枯れないからだ」(河出書房新社)編集協力など多数。最新作は「寝る前5分の新習慣! 極上の眠りに導く安眠ヨガ」が好評発売中!
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