アジの栄養と効果効能・調理法・保存法

6180views

Horse mackerel

アジの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、アジに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

アジとは

アジ(Horse mackerel)は、スズキ目アジ科の魚の総称です。漢字では「鯵」と書きます。

世界には約150種類のアジの仲間が存在しますが、日本で最も多く流通しているのはマアジです。

アジは、刺身やたたきとして生で食べられるほか、塩焼き・蒲焼・フライなど加熱しても美味しく食べることができ、日本の食卓には欠かせない魚のひとつです。干物やくさやの材料としても用いられます。

アジの旬は種類によって異なり、マアジは4~7月、マルアジは10~1月、シマアジは6~8月、ムロアジは7~9月が、最も美味しく食べられる旬の時期です。

ちなみにアジという名前の由来は、味が良いことを褒める意味だと言われています。

アジの品種・種類

代表的なアジの種類は以下の通りです。それぞれの種類の特徴と栄養価の違いを解説します。

マアジ

マアジは最も一般的なアジで、単にアジというときはマアジを指すことが大半です。平均的なマアジの体長は約30cmですが、大きなものでは50cm程になることもあります。

マアジは、アジのなかでも脂質が少なくヘルシーな種類で、ダイエット中にも最適です。「瀬付きアジ」と呼ばれる内湾に住み着いたマアジは、回遊性の「沖アジ」より脂乗りが良く、身が肉厚で食べ応えがあります。

マルアジ

マルアジは、マアジと並んでポピュラーなアジです。マルアジとマアジは見た目がよく似ていますが、マアジがアジ科マアジ属なのに対し、マルアジはアジ科ムロアジ属に分類されています。

マルアジにはビタミンやミネラル類が豊富に含まれています。特に、カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、マアジの約2倍も含んでいます。

シマアジ

シマアジは、マアジよりやや頭部が大きいアジ科シマアジ属の代表的な魚です。味が良く、天然のシマアジは高級品として扱われています。

シマアジは、脳や血管に作用するオメガ3脂肪酸などの不飽和脂肪酸や、皮膚や粘膜を健康に保つレチノール(ビタミンA)を特に多く含んでいます。ただし、シマアジは脂質やコレステロールが多く含まれるため、ダイエット中の食べ過ぎには注意してください。

ムロアジ

ムロアジは、マアジなどと比較して血合いの部分が多いアジです。干物やくさやに加工されることが多く、産地周辺でないとムロアジの鮮魚はめったに出回りません。

造血作用のあるビタミンB群や鉄が豊富なのがムロアジの成分組成の特徴で、貧血予防におすすめです。また、ムロアジには心の不調への効果が期待されるナイアシン(ビタミンB3)が、マアジの約3倍も含まれています。

アジに含まれる成分・栄養素

アジ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食品名単位マアジ 皮つき、生マアジ 皮なし、刺身マアジ 皮つき、水煮マアジ 皮つき、焼きアジフライマアジ 開き干し 生マアジ 開き干し 焼きマアジ 小型 骨付き 生マアジ 小型 骨付き から揚げマルアジ 生マルアジ 焼きシマアジ 生シマアジ 水煮シマアジ 焼きムロアジ 生ムロアジ 焼きムロアジ 開き干しムロアジ くさや
廃 棄 率%550403503530100502550403545253530
エネルギー(kcal)kcal/100 g126123151170276168220123278147194169175203166186155240
エネルギー(kJ)kJ/100 g527514632712115670392051311626148117077328496957786491004
水 分g/100 g75.175.670.365.352.368.46073.450.371.262.469.9686367.761.967.938.6
たんぱく質g/100 g19.719.722.425.920.120.224.617.82422.128.719.621.724.723.629.722.949.9
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g16.416.1-18.6-21.516.2-16.8-20.514.719.117.723.2-16.2-17.9-20.4-19.5-24.6-18.9-
脂 質g/100 g4.54.15.96.418.28.812.3518.65.67.79.18.810.46.96.26.23
トリアシルグリセロール当量g/100 g3.534.65.1176.79.23.716.84.66.27.46.484.84.14.72
飽和脂肪酸g/100 g1.10.971.451.572.252.353.231.162.251.762.282.161.962.391.791.61.60.8
一価不飽和脂肪酸g/100 g1.050.91.421.529.232.233.11.058.911.091.643.072.513.111.110.941.360.37
多価不飽和脂肪酸g/100 g1.221.011.561.764.751.782.471.354.91.562.021.891.682.151.661.421.530.77
コレステロールmg/100 g6856819480739613014066887894100648666110
炭水化物g/100 g0.10.20.10.17.90.10.10.13.50.20.20.10.10.10.40.60.10.3
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g----8.5---4.4---------
水溶性食物繊維g/100 g0000-000-000000000
不溶性食物繊維g/100 g0000-000-000000000
食物繊維総量g/100 g0000-000-000000000
灰 分g/100 g1.31.21.31.81.42.532.93.61.31.71.31.41.81.41.62.98.2
ナトリウムmg/100 g130110130180160670770120140599316018022056748301600
カリウムmg/100 g360360350470330310350330420410540360350440420480320850
カルシウムmg/100 g66128010010036577809005394263058192843300
マグネシウムmg/100 g343136443527384354334137404435403565
リンmg/100 g230220250320250220270570700260330230230300280330260810
mg/100 g0.60.90.70.80.80.80.91.10.91.21.511.11.21.61.81.43.2
亜鉛mg/100 g1.10.61.31.51.20.70.91.21.51.31.50.90.91.211.20.83.2
mg/100 g0.070.090.070.080.080.090.10.070.090.090.090.080.080.10.130.150.140.26
マンガンmg/100 g0.010.010.010.010.110.010.010.050.080.010.020.010.010.020.020.030.02-
ヨウ素µg/100 g20201427-24-4130---------
セレンµg/100 g46426478-50-5253---------
クロムµg/100 g10Tr2-0-21---------
モリブデンµg/100 g0000-0-00---------
レチノールµg/100 g778816TrTr3339111516121345TrTr
α-カロテンµg/100 g00000000000TrTrTr00Tr0
β-カロテンµg/100 g0000TrTrTr0000TrTrTr00Tr0
β-クリプトキサンチンµg/100 g000010000000000000
β-カロテン当量µg/100 g00001(Tr)(Tr)0000(Tr)(Tr)(Tr)00(Tr)0
レチノール活性当量µg/100 g778816(Tr)(Tr)3339111516121345(Tr)(Tr)
ビタミンDµg/100 g8.97.91111.7732.65.14.818.715.589.67.26772
α-トコフェロールmg/100 g0.60.90.30.73.40.710.941.21.30.30.30.40.60.80.41.2
β-トコフェロールmg/100 g0000Tr000000TrTrTr00TrTr
γ-トコフェロールmg/100 g00005.9TrTr05.200TrTrTr000.1Tr
δ-トコフェロールmg/100 g00000.10000.100TrTrTr00TrTr
ビタミンKµg/100 gTr(Tr)TrTr2300--110000000
ビタミンB1mg/100 g0.130.140.130.150.120.10.120.190.190.10.090.10.110.120.180.280.170.24
ビタミンB2mg/100 g0.130.20.120.150.150.150.140.170.210.190.180.210.180.210.320.30.30.4
ナイアシンmg/100 g5.56.45.36.84.63.74.74.65.57.48.26.14.86.215.21613.516
ビタミンB6mg/100 g0.30.410.250.270.150.310.320.260.160.470.240.290.240.340.570.520.590.64
ビタミンB12µg/100 g7.19.85.97.17.56.38.55.66.79.99.48.176.312.812.99.411.6
葉酸µg/100 g5955106611128811111356526
パントテン酸mg/100 g0.410.530.380.470.530.810.750.470.550.590.530.590.50.590.740.760.621.09
ビオチンµg/100 g3.34.75.25.3-4.5-4.46.3---------
ビタミンCmg/100 gTrTr0000010Tr0TrTrTrTrTrTr0
食塩相当量g/100 g0.30.30.30.40.41.720.30.30.20.20.40.50.60.10.22.14.1
アルコールg/100 g------------------
硝酸イオンg/100 g------------------
テオブロミンg/100 g------------------
カフェインg/100 g------------------
タンニンg/100 g------------------
ポリフェノールg/100 g------------------
酢酸g/100 g------------------
調理油g/100 g------------------
有機酸g/100 g------------------
重量変化率%--8772120-80-76-72-9078-73--
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

アジの効果・効能

アジに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

脳の記憶力や集中力を維持するDHA(ドコサヘキサエン酸)

アジを含む青魚の油には、不飽和脂肪酸の一種であるオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。オメガ3脂肪酸は人間の体内ではほとんど作り出せないため、食品やサプリメントから補給する必要があります。

オメガ3脂肪酸の一種であるDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳や眼の網膜に作用し、記憶力・集中力の維持や、眼の健康を保つ効果が期待される成分です。アルツハイマー型認知症の予防効果も示唆されています。

DHAは、子供の脳や体の発達のためにも大切な栄養素です。乳幼児期には母乳を通じてDNAが与えられるため、妊娠中・授乳中はアジなどの青魚を積極的に食べるようにしましょう。

血管の健康を維持するEPA(エイコサペンタエン酸)

アジに多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)は、オメガ3脂肪酸の一種で、血管と血液の健康に関わっています。

EPAには血液をサラサラにする効果や中性脂肪値を下げる働きがあり、動脈硬化・高血圧・高コレステロール・血栓など生活習慣病の予防に効果的です。

DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸は、マアジよりもシマアジやムロアジに多く含まれています。マアジと比較すると入手しにくい品種ですが、効率的にオメガ3脂肪酸を摂取したいときは選んでみてください。

骨と歯を丈夫にするカルシウム

カルシウムは、人体に最も多く含まれるミネラルで、骨や歯の主成分です。丈夫で健康な骨の維持には欠かせない栄養素で、カルシウム不足は骨粗しょう症を引き起こすこともあります。

カルシウムが豊富なアジは、骨と歯の健康を維持するのに役立ちます。種類別にみると、マアジが最も多くカルシウムを含んでいる品種です。

また、フライや南蛮漬けに調理すれば骨ごと食べられる小アジ(豆アジ)は、カルシウムの摂取元として理想的な食材と言えるでしょう。

さらに、アジにはカルシウムの吸収率を高めて骨の定着を促すビタミンDが豊富なのもポイント。ビタミンDは、日光に当たることで体内で生成されるため、冬場や外で活動する機会が少ない人に不足しがちな栄養素です。

カルシウムとビタミンDの相互作用による骨への効果が期待できるアジは、骨格が発達する成長期の子供や骨が脆くなる高齢者にも有用な食材です。

貧血を改善するビタミンB12・葉酸・鉄

ビタミン類が豊富なアジですが、エネルギー生成に関わるビタミンB群が多く含まれているのは注目すべきポイントです。

アジは、ビタミンB群のなかでも造血作用を持つビタミンB12や葉酸を豊富に含んでいます。アジには鉄も含まれており、ビタミンB群との相互作用で貧血の予防・改善効果が期待できます。

鉄などの貧血に効果的な栄養素は、アジの血合いの部分に特に多く含まれているため、血合いも除去せず一緒に食べるようにしましょう。

憂鬱な気持ちを和らげるナイアシン(ビタミンB3)

ビタミンB群の一種であるナイアシンは、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの減少を抑える働きがあり、うつや統合失調症などメンタルの不調に効果的と言われています。

アジにはナイアシンが豊富で、特にムロアジに多くのナイアシンが含まれています。ナイアシンは熱に強く、焼き魚やフライにしてもほとんど失われないのが特徴です。アジの干物からもナイアシンを摂取できます。

その他の効果・効能

アジは、青魚のなかではカロリーが低く脂質も少ない魚で、ダイエット中の食事にも向いています。100gあたり297kcalのさんまと比較して、マアジ100gあたりのカロリーは126kcalと半分以下です。

さらに、アジには糖質や脂質の代謝を促進するビタミンB群も含まれており、肥満の改善効果が期待できます。

ダイエット中にアジを食べるときは、刺身・水煮・塩焼きなど、油を使わずに調理できるヘルシーなメニューがおすすめです。

アジの食べ方

アジの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

DHA・EPAを余さず摂るなら刺身やたたきで生のまま

アジに豊富なDHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸は、熱に弱く、加熱すると酸化して栄養価が損なわれます。オメガ3脂肪酸を効率的に摂取するなら、刺身やたたきとしてアジを生のまま食べるのがベストです。

また、アジと同じ青味魚であるサンマを使った実験では、DHAとEPAが最も失われやすい加熱方法はフライで、最も保持率が高いのはフライパン調理であることが判明しました。栄養価をなるべく損なわずアジに火を通したいときは、フライパンで加熱するようにしましょう。

ビタミンB群の摂取には汁ごと食べられる煮物やつみれ汁が最適

ビタミンB群は、水に溶けやすい水溶性のビタミンです。水で洗ったり茹でることで流出し、その大部分が失われてしまいます。

アジに含まれるビタミンB群を多く摂りたいときは、煮汁ごと食べられる煮物・鍋料理・つみれ汁・スープにするのがおすすめです。

寄生虫のアニサキスに要注意

生のアジを食べるときは、アニサキスなどの寄生虫に注意してください。

アニサキスは、魚介類に寄生する線虫の一種です。アニサキスが寄生した魚介類を食べると、胃壁や腸壁に突き刺さってアニサキス症を引き起こし、激しい胃痛や腹痛、嘔吐に見舞われます。

アニサキスは、十分な冷凍・加熱で死滅させることができます。生のアジを食べるときは、アニサキスが寄生している確率の高い内臓を素早く取り除くことで対策しましょう。

アジの保存方法

アジの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

アジは、内臓を残したままにしておくと傷みが早くなるため、内臓を取り除いてから冷蔵・冷凍保存してください。内臓を除去する際に出た血やドリップは水で洗い流しましょう。水気をしっかりふき取ってから、ラップに包んで保存すると、鮮度が落ちにくくなります。

冷蔵したアジの保存期間の目安は1~2日程度で、冷凍したアジの保存期間の目安は2週間程度です。

室温で解凍するとドリップが出て傷みやすくなるため、冷蔵庫で時間をかけて解凍するのがおすすめです。

参考文献

LINE公式アカウントを追加
LINEお友達追加