プリン体の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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プリン体の基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
プリン体とは
プリン体(purine)とは、核酸を構成する化合物の1種です。
一般的にプリン体は身体によくないイメージですが、実は美容への効果が期待される抗酸化作用があったり、エネルギー産生に関与したりしています。
プリン体の悪いイメージは、プリン体含有量の多い食品を過剰摂取することで起こる、痛風や高尿酸血症といった症状が主な原因です。プリン体の多いビールや魚卵を食べると痛風のリスクが高まるため、プリン体の多い食品は身体に悪いイメージが付きました。
神経疾患や脳梗塞急性期の脳障害は、プリン体から合成される尿酸で軽減されるとも考えられており、プリン体は必ずしに身体に悪影響を及ぼす物質ではありません。
プリン体は加熱しても壊れにくい性質をもちますが、水に溶けやすいため、湯煎で煮汁に溶け出します。プリン体を効率よく摂取したいときは、煮汁も使って調理するのがおすすめです。
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プリン体の効果・働き
プリン体の効果・効能について解説します。
激しい運動を可能にする
プリン体は、エネルギー合成に関わる化合物です。
ATPと呼ばれる物質を構成するリン酸基が外れることで、エネルギー放出が起こって筋収縮が起こります。プリン体はATPを構成する物質の1つで、激しい運動の際にエネルギー放出の際に利用されます。
通常の運動ではプリン体が使われることは少ないですが、激しい運動をするときに関与する物質です。
抗酸化作用で老化予防(活性酵素を除去)
プリン体は強い抗酸化作用をもつことが知られており、老化予防に効果的です。
抗酸化作用とは、老化や動脈硬化、免疫機能の低下を引き起こす活性酵素を除去する作用。活性酵素自体は身体の維持に必要な物質ですが、過剰産生されると老化の促進や生活習慣病を引き起こすことが知られています。
プリン体は体内に蓄積した活性酵素を除去し、老化予防に働きます。
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細胞増殖の材料となって生命を維持
プリン体は遺伝子を構成する核酸の1種で、細胞増殖に欠かせない物質です。
人間は37兆個の細胞で構成されており、プリン体は細胞内の遺伝子合成に関与する核酸を作ります。細胞は常に増殖を繰り返しており、細胞増殖は生命維持のために必要な活動です。
細胞増殖に必要な核酸を構成するプリン体は、生命維持には必要不可欠です。
プリン体を過剰摂取すると起こる副作用
プリン体を過剰摂取すると起こる症状は次のとおりです。
- 痛風
- 高尿酸血症
食品中に含まれるプリン体は、過剰摂取されると肝臓で代謝されて尿酸へと変化します。
通常、尿酸は無害な尿素へ代謝されて尿中に排出されますが、尿酸が過剰産生されると代謝が滞って血中の尿酸量が増加します。その結果、高尿酸血症を起こす仕組みです。
高尿酸血症が持続し、尿酸が結晶化すると関節に入り込んで炎症が起こります。炎症によって、痛みや腫れが発生した状態が痛風です。
痛風は発作のように一時的に炎症が起こったり、症状が和らいだりします。しかし症状がなくなっても関節中の尿酸血症は残っているため、炎症を繰り返す恐れがあります。
プリン体の1日の摂取目安量
日本痛風・尿酸核酸学会の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』では、プリン体の1日の摂取量は400mgを超えない程度と記載されています。
食品から摂取されるほかに、体内で合成されるプリン体は8割程度です。そのため、食品に含まれるプリン体は少ないほど、高尿酸血症や痛風のリスクが少なくなります。
しかし現実的にプリン体の少ない食品を選択するのは難しく、1日400mgを超えないことを推奨しています。
プリン体を多く含む食品
プリン体を多く含む食品は次のとおりです。
プリン体含有量(100gあたり) | 食品名 |
極めて多い(300mg~) | 鶏レバー・いわし干物・白子・あん肝・かつお節・煮干し・干ししいたけ |
多い(100mg~200mg) | 豚レバー・牛レバー・カツオ・いわし・大正エビ・マアジ干物・さんま干物 |
含有量の多いとされる食品は上記のとおりで、プリン体は肉類や魚介類などの動物性食品に多く含まれています。また魚卵など、細胞数の多い食品にも豊富に含まれることが特徴です。
アルコール飲料のなかではビールに多く含まれますが、最近は「プリン体ゼロ」のビールも販売されています。
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プリン体の少ない食品
プリン体含有量の少ない食品は、次のとおりです。
プリン体含有量(100gあたり) | 食品名 |
少ない(50mg~100m) | ウナギ・豚ロース・豚バラ・牛肩ロース・牛肩バラ・牛タン・ハム・マトン・ベーコン・ほうれん草・カリフラワー |
極めて少ない(~50mg) | 魚肉ソーセージ・かまぼこ・牛乳・チーズ・バター・鶏卵・とうもろこし・白米・パン・うどん・キャベツ・トマト・じゃがいも・わかめなど |
含有量の少ない食品は、野菜類・海藻類・乳製品です。肉類では豚ロース・バラ、牛肩ロース・バラは、比較的プリン体が少ないと考えられています。
豆腐は、大豆製品のなかでプリン体の少ない食品です。しかし、健康によいイメージの納豆は牛肉よりもプリン体が多いため、尿酸値が高い人は摂取に注意しましょう。
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食品中のプリン体の減らし方
プリン体は加熱で損失されない栄養素のため、効率よく摂取したいときは調理方法を選びません。
ただし、食品中のプリン体を減らしたいときは、調理方法を工夫するのがおすすめです。
食品の加熱調理によるプリン体含有量の変化についての報告によると、食品を茹でるとプリン体が煮汁に溶出することが分かっています。また、鍋で茹でるよりも電子レンジを使った方がより多くのプリン体が溶出されます。
そのため、プリン体を減らしたい場合は、電子レンジで食品を加熱するか、煮汁を除いて茹でた食品を摂取するとよいでしょう。ただし、プリン体の溶出量は食品によって異なると考えられており、含まれるプリン体がなくなるわけではありません。
参考文献
- 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版|日本痛風・尿酸核酸学会(PDF)
- 湯煎および電子レンジ加熱調理による食品中のプリン体含量の変動|Gout and Nucleic Acid Metabolism Vol,42 No.2(PDF)
- 尿酸は善玉か悪玉か|Gout and Nucleic Acid Metabolism Vol,41 No.2(PDF)
- 『食品におけるプ リン体含有量の測定大豆加工食品を中心に多様化する各種食品について』|Gout and Nucleic Acid Metabolism Vol,30 No.1(PDF)
- 高尿酸血症|浅草クリニック
- 激痛!痛風を予防する|三和科学研究所
- No.093 痛風の原因と対策|田中消化器科クリニック
- プリン体|e-ヘルスネット
- 抗酸化物質|e-ヘルスネット
- アデノシン三リン酸 / ATP|e-ヘルスネット