しいたけの栄養と効果効能・調理法・保存法

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しいたけ

しいたけの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、しいたけに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

しいたけとは

しいたけ(椎茸、香蕈)は、数あるきのこ類のなかでも日本人にとって馴染み深く、人気のきのこです。ハラタケ目キシメジ科に分類されます。

古来から日本や中国で食べられてきたと考えられており、英語やフランス語でもShiitakeと呼ばれます。

独特のうまみと食感が特徴のしいたけですが、血液をサラサラにする効果が期待できるエリタデニンや、ビタミンD、食物繊維などをたっぷり含む栄養豊富な食材でもあります。

中国・日本・韓国などで食用としての栽培が盛んで、生しいたけは徳島県、干ししいたけは大分県が産地として有名です。

現在食べられているしいたけは、ほとんどが人の手によって栽培されたものですが、野生のしいたけも存在します。野生のしいたけは、クヌギ・コナラなどの広葉樹の枯れ木から発生します。

ハウス栽培のしいたけは、年間を通して出回っています。一方、天然ものや露地栽培のしいたけは、主に春と秋に収穫されます。天然のしいたけの旬は、4~5月と9~11月です。

しいたけの可食部は、石づきを除く全体。軸は捨ててしまう方も多いですが、食べることができます。

しいたけの栽培方法による分類

種菌によって数十もの種類があるとされるしいたけですが、栽培方法によって大きく2つに分類することができます。味や食感にも差があるので、それぞれの特徴を確認しましょう。

原木栽培

原木栽培とは、クヌギなどの原木に穴をあけて種菌を打ち、森の中など自然環境に置いてしいたけを栽培する方法です。

野生に近い環境で育てられた原木しいたけは、歯応えがあり、香りが強く味が濃いのが特徴。手間も時間もかかる栽培方法ですが、味の良さからブランド力があります。

菌床栽培

原木ではなく、おがくずなどを固めた菌床ブロックを用いて、ハウスの中でしいたけを栽培する方法を菌床栽培と呼びます。

原木栽培と比較すると、しいたけが発生するまでのサイクルが短く、手間もかからないというメリットがあります。安定供給しやすいので、現在市場に出回っているのはほとんどが菌床栽培のしいたけです。

一般的に、天然のしいたけや原木しいたけより、食感が柔らかく風味もマイルドという特徴があります。

乾燥しいたけ・干ししいたけの種類

乾燥・干ししいたけは、カサの開き方で大きく3つの種類に分類されています。それぞれの特徴を説明します。

どんこ(冬菇)

カサが完全に開ききる前に収穫するしいたけのことをどんこと呼びます。

肉厚で丸みのあるカサが特徴です。鍋・天ぷら・中華料理など、具材にしっかりした食感が求められる料理に適しています。

カサの部分に白い亀裂が入ったものは、「花どんこ」と呼ばれる高級品です。

こうしん(香信)

カサが7分開き以上になってから収穫したしいたけを、こうしんと呼びます。

カサの部分が平たく薄いため、他の具材との相性がよく、さまざまな料理に使いやすいです。ちらし寿司や炒め物にも向いています。

こうこ(香菇)

こうこは、どんことこうしんの中間の状態で収穫されるしいたけです。

カサが開きすぎず丸まりすぎず、ほどよい形をしているので、あらゆる料理にオールマイティに使えます。

しいたけに含まれる成分・栄養素

しいたけ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

比較のため、菌床栽培と原木栽培の生・ゆで・油炒め、乾燥しいたけの生・ゆでの成分を表にまとめています。

食品名単位菌床栽培 生菌床栽培 ゆで菌床栽培 油いため原木栽培 生原木栽培 ゆで原木栽培 油いため乾燥しいたけ乾燥しいたけ ゆで
廃 棄 率%20002000200
エネルギー(kcal)kcal/100 g19175723197318242
エネルギー(kJ)kJ/100 g79722389678306761176
水 分g/100 g90.391.584.788.390.881.39.779.1
たんぱく質g/100 g32.53.33.12.43.819.33.2
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g1.9-1.6-21.9-1.5-2.312.5-2.1
脂 質g/100 g0.30.44.10.40.45.43.70.5
トリアシルグリセロール当量g/100 g0.2-0.3-3.80.2-0.3-5.1-2.2-0.3
飽和脂肪酸g/100 g0.04-0.05-0.30.04-0.05-0.4-0.44-0.06
一価不飽和脂肪酸g/100 g0.01-0.01-2.230.01-0.01-3.01-0.07-0.01
多価不飽和脂肪酸g/100 g0.15-0.19-1.130.16-0.19-1.49-1.61-0.22
コレステロールmg/100 g00000(Tr)00
炭水化物g/100 g5.75.17.37.65.98.863.416.7
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g0.6-0.6-0.80.8-0.6-0.911.8-2.7
水溶性食物繊維g/100 g0.40.20.20.40.20.330.3
不溶性食物繊維g/100 g3.84.24.55.14.66387.2
食物繊維総量g/100 g4.24.44.75.54.86.4417.5
灰 分g/100 g0.60.50.70.70.40.73.90.5
ナトリウムmg/100 g1111Tr162
カリウムmg/100 g2802003002701703302100220
カルシウムmg/100 g112212103
マグネシウムmg/100 g15111616101811013
リンmg/100 g87659261457531043
mg/100 g0.30.30.40.40.20.41.70.3
亜鉛mg/100 g10.810.70.50.72.30.4
mg/100 g0.090.060.090.060.050.080.50.09
マンガンmg/100 g0.220.160.240.270.190.320.870.11
ヨウ素µg/100 g0--0--40
セレンµg/100 g6--1--41
クロムµg/100 g1--Tr--53
モリブデンµg/100 g4--1--31
レチノールµg/100 g00000000
α-カロテンµg/100 g00000000
β-カロテンµg/100 g00000000
β-クリプトキサンチンµg/100 g00000000
β-カロテン当量µg/100 g00000000
レチノール活性当量µg/100 g00000000
ビタミンDµg/100 g0.40.50.50.40.40.512.71.1
α-トコフェロールmg/100 g00-0.600-0.800
β-トコフェロールmg/100 g00(Tr)00(Tr)00
γ-トコフェロールmg/100 g00-1.200-1.600
δ-トコフェロールmg/100 g00(Tr)000.100
ビタミンKµg/100 g00-400-600
ビタミンB1mg/100 g0.130.080.160.130.060.140.50.06
ビタミンB2mg/100 g0.20.110.180.220.120.261.40.23
ナイアシンmg/100 g3.123.33.424.416.82
ビタミンB6mg/100 g0.210.120.180.190.10.180.450.1
ビタミンB12µg/100 g00000000
葉酸µg/100 g44142075255124044
パントテン酸mg/100 g1.050.711.280.950.561.157.931.05
ビオチンµg/100 g7.3--7.7--36.610.4
ビタミンCmg/100 g00000000
食塩相当量g/100 g00000000
アルコールg/100 g--------
硝酸イオンg/100 g--------
テオブロミンg/100 g--------
カフェインg/100 g--------
タンニンg/100 g--------
ポリフェノールg/100 g--------
酢酸g/100 g--------
調理油g/100 g--3.7--5--
有機酸g/100 g0.2--0.2--1.9-
重量変化率%-11092-11084-570
備考試料: 栽培品廃棄部位: 柄全体廃棄率: 柄の基部(いしづき)のみを除いた場合5 %エネルギー: 暫定値試料: 栽培品柄全体を除いた傘のみエネルギー: 暫定値試料: 栽培品柄全体を除いた傘のみエネルギー: 暫定値試料: 栽培品廃棄部位: 柄全体廃棄率: 柄の基部(いしづき)のみを除いた場合5 %エネルギー: 暫定値試料: 栽培品柄全体を除いた傘のみエネルギー: 暫定値試料: 栽培品柄全体を除いた傘のみエネルギー: 暫定値どんこ、こうしんを含む試料: 栽培品廃棄部位: 柄全体エネルギー: 暫定値どんこ、こうしんを含む試料: 栽培品柄全体を除いた傘のみエネルギー: 暫定値
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

しいたけの効果・効能

しいたけに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

コレステロール値を下げ血液サラサラに

しいたけは、血中のコレステロール値を下げる働きが認められている食材です。

しいたけに含まれる特有成分エリタデニンが、コレステロールに作用します。ラットを使った実験では、エリタデニンを多く含むしいたけの粉末を与えると、コレステロールが低下することも証明されています。

また、エリタデニンには血流をスムーズにする作用もあり、高血圧や動脈硬化など血管のトラブルにも効果的です。

エリタデニンはあらゆるきのこ類に含まれる成分ですが、特にしいたけに多く含まれる傾向があります。

便秘を予防する

食物繊維には、便秘予防などの整腸作用に加え、血糖値の上昇を抑える、コレステロール値を下げるなどさまざまな効果があると言われています。

しいたけには、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方が含まれています。

特にしいたけに豊富なのは、体内で水を吸収してふくらみ、腸のぜんどう運動を促して便通をスムーズにしてくれる不溶性食物繊維です。

なお、100gあたりの食物繊維量をみると、生しいたけ(菌床栽培)が4.2g、乾しいたけが 41gとなっており、乾燥しいたけにより多くの食物繊維が含まれています。

骨や歯を丈夫にする

ビタミンDは、骨や歯を丈夫にするカルシウムの吸収を助ける働きを持っています。ビタミンDが不足すると、骨粗しょう症を引き起こす可能性もあります。

しいたけには、多くのビタミンDが含まれています。健康な骨や歯を作るのに欠かせない食材であり、イライラして気分が安定しない時にもおすすめです。

免疫力を高める

免疫は、体内に侵入したウイルスなどの異物と戦って体を守ってくれるシステムです。病気にかからないためには、免疫力を高めることが重要。

しいたけなどのきのこ類に含まれるβ-グルカンは、免疫力を高め、菌やウイルスにも有効と言われています。

また、しいたけには、βグルカンの一種であるレンチナンという成分が豊富です。レンチナンは、1985年に抗悪性腫瘍剤(注射剤)として承認されている成分で、医療現場でも用いられています。

妊婦の健康維持を助ける

しいたけは、妊娠中の女性にもぴったりな食材です。

妊娠中は、ホルモンの影響で便秘になりやすくなります。便秘を予防する食物繊維や、妊娠中に不足しがちなカルシウムの吸収を補助するビタミンDを、しいたけから効率的に摂取できます。

それだけではなく、しいたけには、胎児の健康な発育にとって重要な葉酸も含まれています。

しいたけの調理方法

しいたけの栄養素を損なわない洗い方や調理方法を解説します。

しいたけの洗い方

生しいたけ・干ししいたけ共に、基本的には水で洗わなくても食べられます。なぜなら、菌床栽培・原木栽培どちらも、土に直接触れる栽培方法ではないからです。

ただし、必ずしも清潔なしいたけが手に入るとは限らないので、おがくずなどのゴミが付着していて気になるときは、調理する前にサッと水洗いしてください。

乾燥・干ししいたけの戻し方

乾燥・干ししいたけは、水で簡単に戻せます。

まず、タッパーやチャック付きビニール袋など密閉できる容器にしいたけと冷水を入れてください。このとき、水の温度が冷たい方がしいたけのうまみ成分が出やすくなります。

容器は冷蔵庫に入れ、6~12時間ほど置いてじっくりと戻しましょう。時間は、しいたけのサイズや種類によって調整してください。

軸の部分を触って柔らかくなっていれば、きちんと戻った証拠です。

しいたけのおすすめ調理方法

しいたけは、和洋折衷さまざまな料理にアレンジできます。おすすめの食べ方を紹介します。

煮物:旨味と食感を味わえる

しいたけの旨味と食感を存分に味わいたい時は、煮物にするのがおすすめです。

軸を取ったしいたけに十字に切り込みを入れ、砂糖・醤油・酒・みりん・顆粒だしなどで煮込みます。にんじんやこんにゃくと一緒に煮込んでも良いでしょう。

パスタ:和風から洋風まで使いやすい

しいたけは、パスタの具材としても人気です。醤油味の和風パスタから、トマトパスタやクリームパスタなど、あらゆる味付けにマッチします。

肉詰め焼き:大きなサイズを活かしてメインのおかずに

大きなサイズのしいたけは、肉詰め焼きにもできます。軸を取ったしいたけに片栗粉をまぶし、味付けしたひき肉を詰めて焼くだけで完成です。

味噌汁やスープ:具として加えれば味に深みが出る

しいたけは素晴らしいだしが出るので、味噌汁やスープなど汁ものに入れる具材としても人気です。

しいたけを調理する際の注意点

しいたけを調理する際は、いくつか注意点があります。

まず、新鮮なしいたけであっても生食はNG。十分に加熱してから食べるようにしてください。加熱が不十分なしいたけを食べると、「しいたけ皮膚炎」を発症することがあります。

しいたけ皮膚炎とは、しいたけを食べて数時間から4日以内に、全身に激しいかゆみを伴う線状の発疹が出る皮膚炎です。

熱に対して不安定な成分がしいたけに含まれていることが、一つの原因と考えられています。

特に、肉厚で大きなしいたけは、表面に火が通ったように見えても、内部がまだ生のことも多いので念入りに加熱するようにしましょう。

しいたけの保存方法

しいたけの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

生のしいたけは常温でも冷蔵でも保存可能

生のしいたけは、常温でも冷蔵でも保存できます。

すぐに食べない場合は、冷蔵庫に入れておきましょう。このとき、より長く鮮度を保つため、しいたけを一つひとつ新聞紙やキッチンペーパーで包んでおくのがおすすめです。

しいたけの冷凍保存

しいたけは冷凍して保存することも可能です。しいたけは、冷凍すると香りやうまみが増す食材とも言われています。

冷凍保存の手順を解説します。

まず、冷凍する前に3時間ほど天日干しして、余分な水分を飛ばしてください。次に、しいたけの軸を切り取り、食べやすい大きさにカットします。

カットしたしいたけは、密閉できるチャック付きビニール袋に入れて冷凍庫で冷凍します。冷凍保存の期限は2ヵ月を目安に使い切りましょう。

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