EPAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法

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EPA

EPAの基本情報や種類、EPAの効果・働き、EPAの不足・欠乏・過剰摂取による影響、EPAを多く含む食品、EPAを効率よく摂取する方法について解説します。

EPAとは

EPAとは、エイコサペンタエン酸(EicosaPentaenoic Acid)の略称で、多価不飽和脂肪酸の1種です。イコサペンタエン酸(IPA:IcosaPentaenoic Acid)と呼ばれることもあります。

サバやいわしなどの青魚に多く含まれており、人間の体内ではほとんど合成できない必須脂肪酸であるため、食事からの摂取が必要です。

EPAは、循環器疾患や認知症の予防、生理痛の軽減に効果があると期待されています。

脂質の分類

EPAの具体的な効果や働きについて紹介する前に、まず脂質の分類を解説します。

4種類の脂質の特徴

脂質は、脂肪酸・中性脂肪・コレステロール・リン脂質の4つに分類されます。

脂肪酸・中性脂肪・コレステロール・リン脂質は、合成される場所や利用方法が異なります。それぞれの特徴は、以下の通りです。

  • 中性脂肪:植物や動物の脂に含まれる脂質で、主に食品から摂取されてエネルギー源となる。
  • 脂肪酸:中性脂肪の成分で、エネルギーとして利用される。
  • コレステロール:主に肝臓で合成され、ホルモンや胆汁酸の材料になる。
  • リン脂質:グリセロールと脂肪酸が結合したもので、細胞膜の構成成分。

脂肪酸の分類と含有量の多い食品

脂肪酸はさらに、構造の違いにより、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類できます。そのうち、不飽和脂肪酸はさらに、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。

飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸が多く含まれる食品は、それぞれ以下の通りです。

脂肪酸の種類含有量の多い食品
飽和脂肪酸ラード・バター
不飽和脂肪酸一価不飽和脂肪酸オリーブオイル・キャノーラ油・サラダ油
不飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸レバー・植物油・青魚

多価不飽和脂肪酸は、n-3系(オメガ3)とn-6系(オメガ6)の2種類に分けられます。n-3系脂肪酸は人体で合成できず、摂取量が不足すると皮膚炎を発症するリスクが高まります。

EPAはn-3系脂肪酸の1つで、空気や熱、光で酸化しやすい物質です。n-3系脂肪酸が酸化すると、過酸化脂質に変化して体内に蓄積し、生活習慣病の原因となります。

EPAと類似成分の違い

EPAと同じn-3系脂肪酸には、DHAやα‐リノレン酸などがあります。それぞれの違いを確認しておきましょう。

DHA

DHAとは、ドコサヘキサエン酸(DocosaHexaenoic Acid)の略称で、EPAと同じn-3系の多価不飽和脂肪酸です。

脳神経に作用し、学習や記憶能力を高める効果があります。認知症の予防や進行抑制などの研究も進められています。

また、善玉コレステロールを増やす効果や、血栓予防に役立つ栄養素でもあります。EPAと同じく体内ではほとんど合成されないため、食事から摂取する必要があります。

α-リノレン酸

α-リノレン酸は、日本人が最も多く摂取しているn-3系脂肪酸です。

体内でEPAに変換されたあと、最終的にDHAへと変化します。しかし、α-リノレン酸→EPA→DHAの反応系は非常に弱いため、EPAやDHAの必要量を確保するのは難しいと考えられています。

α-リノレン酸は、細胞膜を主に構成するリン脂質の材料となる栄養素です。欠乏するとうつ病や心血管疾患の発症リスクを軽減します。

そのほかのn-3系脂肪酸(オメガ3)の詳細については、下記記事もご覧ください。

オメガ3の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

EPAの効果・働き

ここからは、EPAの持つ具体的な効果・効能について解説します。

抗炎症作用で皮膚を健康に保つ

EPAは抗炎症作用があると考えられており、皮膚を健康に保つ栄養素です。EPAが欠乏すると、皮膚炎を引き起こすことも報告されています。

抗炎症作用には、n-3系脂肪酸が関わっていることもわかっています。しかし、EPA単体がどこまで影響力をもっているかは今のところ不明です。抗炎症作用を期待する場合は、EPAだけでなくほかのn-3系脂肪酸も摂取しましょう。

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動脈硬化や血栓予防に働く

EPAを含めた多価不飽和脂肪酸には、動脈硬化や血栓を予防して血圧を下げる効果があると考えられています。

動脈硬化とは、血管が硬くなったり、血管内に血の塊が張りついて内腔が狭くなったりしている状態です。動脈硬化が起こると血流が悪くなり、脳や心臓へ血液が運ばれなくなって、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

血液には酸素が含まれているため、血流が途絶えると脳へ酸素が送られなくなって、生命維持が困難になります。血栓を作るのは、血中を流れる血小板と呼ばれる細胞です。血小板が凝集することで、血栓が作られます。

EPAには血小板凝集を抑制する作用が認められており、この作用が動脈硬化や血栓予防に効果的であると報告されています。

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糖尿病・認知症の予防効果が期待される

EPAを積極的に摂取することで、認知症の予防効果が期待されています。認知機能の低下を抑制する研究報告も多数ありますが、治療効果があることはまだわかっていません。

またEPAは、糖尿病の発症率を下げるとの報告もあります。ただし、糖尿病の発症要因は複数あるため、EPAの摂取だけが関与しているとは言い切れません。

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生理痛を緩和する

EPAには、生理痛を緩和する働きも期待されています。

生理痛が起こる原因は、プロスタグランジンと呼ばれるホルモンが子宮を収縮させるためです。ホルモンの分泌量が多いと、子宮収縮が過剰に起こって痛みを感じます。

EPAには、プロスタグランジンの生成を抑制する働きがあるため、積極的な摂取で生理痛が起こりにくくなると考えられています。また近年の研究では鎮痛作用があることも報告されており、生理痛の緩和効果が期待できる栄養素です。

生理痛のメカニズムとその対策となる栄養素や食べ物の詳細は、下記記事もご覧ください。

生理痛対策になる生理中におすすめの食べ物・飲み物|NANIWA SUPLI MEDIA

EPAが不足・欠乏すると起こる症状

一般的な食事を摂れば、EPAが欠乏することはないと考えられています。しかし食事を経口摂取できない患者や乳幼児は、EPAが不足・欠乏する可能性があります。

EPAの不足・欠乏により引き起こされる症状は次の通りです。なお以下の症状が起こっても、n-3系脂肪酸の摂取で症状は改善することが報告されています。

  • 成長障害
  • 鱗状皮膚炎
  • 出血性皮膚炎
  • 結節性皮膚炎

EPAを過剰摂取すると起こる副作用

一般的な食品からEPAを摂取する場合は、過剰摂取になるリスクはほとんどありません。ただし、サプリメントとしてEPAを摂取する場合は、過剰摂取に注意が必要です。

EPAを過剰摂取すると、出血が止まりにくくなるリスクがあります。EPAには、血を固まりにくくして血栓を予防する作用があるため、サプリメントの過剰摂取により、出血を止める正常な働きも弱めてしまう恐れがあります。

とくに抗凝固薬や抗血小板薬など、血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合は、医療機関にEPAのサプリメントを飲んでも問題ないかを確認しましょう。

EPAの1日の摂取目安量

EPA単体の摂取目安量として、公式の値は示されていません。しかし、EPAも含めたn-3系脂肪酸の1日摂取目安量は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で以下のように明記されています。

EPAの1日の摂取目安量は、成人男性18~49歳で2.0g、50~64歳で2.2g。成人女性18~49歳で1.6g、50~64歳で1.9gです。

日本人の食事摂取基準(2020 年版)|厚生労働省

EPAを多く含む食品

EPAを多く含む食品と、各食品100gあたりのEPA含有量は次の通りです。

食品名EPA含有量(mg)
魚介類/<魚類>/さんま/皮つき/生1,500
魚介類/<魚類>/ぶり/成魚/生940
魚介類/<魚類>/(いわし類)/めざし/生930
魚介類/<魚類>/(いわし類)/まいわし/生780
魚介類/<魚類>/(さば類)/まさば/生690
魚介類/<魚類>/(ししゃも類)/ししゃも/生干し/生670
魚介類/<魚類>/あなご/生560
魚介類/<魚類>/(まぐろ類)/くろまぐろ/養殖/赤身/生420
魚介類/<魚類>/(かつお類)/かつお/秋獲り/生400
魚介類/<魚類>/(あじ類)/まあじ/皮つき/生300
出典:食品成分データベース|文部科学省

EPAは、とくにさんまやぶり、めざしなどに豊富な栄養素です。魚介類の油脂に多く含まれる成分のため、赤身よりも脂身に多い傾向にあります。

一方で、ごま油やオリーブオイル、なたね油などの植物性油脂には含まれません。

EPAを効率よく摂取する方法

最後に、EPAを効率よく摂取する方法や一緒に摂取したい栄養素を紹介します。

加熱調理よりも刺身がおすすめ

EPAは加熱すると酸化して、生活習慣病を引き起こすリスクのある過酸化脂質へと変化します。そのため、加熱調理せずに刺身で食べるのがおすすめです。

またEPAは、脂身に多く含まれているため、赤身だけでなく脂身も一緒に食べるとより効果が期待できます。

抗酸化作用のある食品と一緒に食べる

EPAは熱や光、酸素で酸化しやすい栄養素です。酸化するとEPA特有の効果が減ってしまうため、酸化を抑制する抗酸化作用を持つ食品と一緒に食べるとよいでしょう。

抗酸化作用の強い栄養素は、以下の通りです。

栄養素多く含む食品
ビタミンCアセロラ・ケール・パセリ・グァバ・焼きのり
ビタミンE煎茶・ひまわり油・アーモンド・唐辛子
ビタミンAレバー・ニンジン・ほうれん草・春菊・あんず・メロン
出典:
ビタミンCの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンEの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ|NANIWA SUPLI MEDIA

参考文献

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