オールスパイスの栄養と効果効能・調理法・保存法
19077views
オールスパイスの原産地や代用品などの基本情報、似た食品との違い、オールスパイスに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
オールスパイスとは
オールスパイス(allspice)とは、ユーカリやグアバなどと同じ、フトモモ科に属する樹木です。名前から、複数の香辛料が混ざっているイメージがありますが、1種類の香辛料から作られています。
香辛料として使われるのは、果実や葉の部分で、果実は5~8mm程度の暗褐色をした球状をしています。完熟する前の果実を収穫し、乾燥させたものが香辛料になり、シナモンやナツメグ、クローブのようなほんのりと甘い香りが特徴です。
オールスパイスの原産地は、ジャマイカやメキシコなどの中南米です。マヤ文明のころに、ミイラの防腐剤や香辛料として使用されていたと、考えられています。
香辛料として、オールスパイスが一般的に普及したのは、16~17世紀ごろです。多くの香辛料が15世紀に発見され、大航海時代の主な貿易品として扱われました。しかしオールスパイスは、ほかの香辛料よりも発見された時期が遅かったため、ヨーロッパに持ち込まれたのも遅かった経緯があります。
オールスパイスの代用品になる香辛料
オールスパイスが自宅にない場合は、別の香辛料で代用することも可能です。オールスパイス代わりとして使える、風味の似た香辛料を紹介します。
ナツメグ
ハンバーグなどの肉料理で定番のナツメグは、甘い香りが特徴の香辛料です。同じく肉料理に使われる、オールスパイスの代わりとしても使用できます。
ナツメグ単体でもオールスパイスの代わりになりますが、シナモンやクローブを少量混ぜることで、よりオールスパイスに似た風味を出せるでしょう。
ナツメグの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
シナモン
シナモンは、甘味とスパイシーさが特徴の香辛料です。主にお菓子に使われ、オールスパイスを使ったお菓子作りでの代用品として使えます。
肉料理にオールスパイスの代用として加えるときは、シナモンでは甘味が強すぎるかもしれません。シナモン単体ではなく、ナツメグやクローブを混ぜることで、肉料理でもオールスパイスの代用品として使えるでしょう。
シナモンの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
クローブ
クローブは、バニラに似た甘い香りと、ビリっとした刺激が独特な香辛料です。肉料理の臭み消しとして使われ、肉料理に使うオールスパイスの代わりとして使えるでしょう。
オールスパイスの代用品にするときは、シナモンと同様にクローブ単体よりも、ナツメグ・シナモンと混ぜて使うのがおすすめです。
クローブの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
ガラムマサラ・五香粉との違い
オールスパイスは、1種類のスパイスから作られる香辛料です。ガラムマサラや五香粉は、複数の香辛料を混ぜたミックススパイスで、香りや用途がオールスパイスとよく似ています。
ガラムマサラや五香粉の特徴を説明したうえで、オールスパイスとの違いについて解説します。
ガラムマサラ
ガラムマサラは、インド料理に使われるミックススパイスです。シナモンやナツメグ、ブラックペッパー、クローブなど3~10種類の香辛料から作られています。
カレーに使われる香辛料で、チリペッパーなどの辛味を加えることもあるため、オールスパイスの代わりとして使えないこともあります。辛味調味料を含まないガラムマサラであれば、肉料理にオールスパイスの代用品として使用できるでしょう。
五香粉
五香粉(ごこうふん)は、中国で使われるミックススパイスの1種です。クローブやホアジャオ(花椒)、スターアニス(八角)など5種類以上の香辛料を混ぜて作られます。
中国料理では、臭み消しとして利用され、オールスパイスの代用品としても使えます。五香粉は、多種の香辛料が含まれていて風味が多彩です。五香紛の代わりにオールスパイスを使うと、深みが足りないこともあるので注意しましょう。
オールスパイスに含まれる成分・栄養素
オールスパイス100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
カリウムやマグネシウム、カルシウムなどのミネラルを豊富に含むため、生体機能を健康に維持するのに役立ちます。とくに鉄や、ビタミンB群の1つであるナイアシンを多く含有することが特徴です。
食 品 名 | 単位 | オールスパイス 粉 | |
廃 棄 率 | % | 0 | |
エネルギー | kJ | 1543 | |
kcal | 364 | ||
水 分 | g | 9.2 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | - |
たんぱく質 | g | 5.6 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | -3.7 |
コレステロール | mg | 0 | |
脂質 | g | 5.6 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | - |
g | |||
利用可能炭水化物(質量計) | g | - | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 77.1 | |
* | |||
食物繊維総量 | g | - | |
糖アルコール | g | - | |
炭水化物 | g | 75.2 | |
有機酸 | g | - | |
灰分 | g | 4.4 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 53 |
カリウム | mg | 1300 | |
カルシウム | mg | 710 | |
マグネシウム | mg | 130 | |
リン | mg | 110 | |
鉄 | mg | 4.7 | |
亜鉛 | mg | 1.2 | |
銅 | mg | 0.53 | |
マンガン | mg | 0.72 | |
ヨウ素 | μg | - | |
セレン | μg | - | |
クロム | μg | - | |
モリブデン | μg | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 |
α|カロテン | μg | 6 | |
β|カロテン | μg | 31 | |
β|クリプトキサンチン | μg | 0 | |
β|カロテン当量 | μg | 34 | |
レチノール活性当量 | μg | 3 | |
ビタミンD | μg | 0 | |
α-トコフェロール | mg | - | |
β-トコフェロール | mg | - | |
γ-トコフェロール | mg | - | |
δ-トコフェロール | mg | - | |
ビタミンK | μg | - | |
ビタミンB1 | mg | 0 | |
ビタミンB2 | mg | 0.05 | |
ナイアシン | mg | 2.9 | |
ナイアシン当量 | mg | 3.8 | |
ビタミンB6 | mg | - | |
ビタミンB12 | μg | 0 | |
葉 酸 | μg | 0 | |
パントテン酸 | mg | - | |
ビ オ チ ン | μg | - | |
ビタミンC | mg | 0 | |
アルコール | g | - | |
食塩相当量 | g | 0.1 | |
備 考 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
オールスパイスの効果・効能
オールスパイスに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
オイゲノールの抗菌作用
オイゲノールとは、オールスパイスの香りのもとになる成分です。クローブやシナモンなどの香辛料のほか、バナナなどにも含まれています。
香水や香料、精油、化粧品の原料として使われますが、オールスパイスを料理に使う場合は、毒性は問題ありません。
オイゲノールには強い抗菌作用があり、これがマヤ文明時代に防腐剤として利用されていた理由です。ほかの香辛料と同じように、料理に入れることで、保存食としての効果を発揮してきました。
またオイゲノールには、抗炎症作用もあると考えられています。皮膚を健康に保ち、炎症や感染症を予防します。
シネオールが炎症を抑える
シネオールとは、ユーカリやローズマリーなどの植物に含まれる臭気成分です。オールスパイスにもシネオールが含まれており、炎症を抑える抗炎症作用があると考えられています。
喘息や気管支炎などの、呼吸器の炎症疾患やアレルギー疾患における治療研究も多く進められており、抗炎症・抗アレルギー効果があると報告されている成分です。
料理に入れるオールスパイスの量では、シネオールの医学的な効果は見込めませんが、香りによるリラックス効果や、体内の炎症に対する効果が期待されます。
鉄
鉄は、赤血球や肝臓、筋肉に存在するミネラルの1種です。筋肉中のミオグロビンや、赤血球中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬に携わっています。欠乏すると、貧血の原因となり、めまいや頭痛、動悸、息切れなどを引き起こします。
成人では体内に2~3g存在し、食べ物から6.5~10.0mg/日が必要とされる栄養素です。とくに月経のある女性では、8.5~10.0mg/日と、非常に多くの鉄を摂取しなくてはなりません。
鉄の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ナイアシン
ナイアシンとは、肝臓に存在し、体内で必須アミノ酸のトリプトファンから合成される、ビタミンB群の1つです。補酵素として、生体機能を維持するために働いています。
ナイアシンは、トリプトファンから合成されるほか、食べ物にも多く含まれるため、一般的には欠乏しにくい栄養素です。しかし、過度なダイエットなどをしている場合には、皮膚炎や胃腸障害、抑うつ気分などの症状が発生するリスクもあります。
ナイアシンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
オールスパイスの食べ方
オールスパイスの栄養素を損なわない調理方法を解説します。
ホールのまま使う場合
オールスパイスは、ホールと呼ばれる乾燥させた果実そのままの状態でも、料理に使用できます。ホールのまま使う場合は、煮込み料理に入れるのが一般的です。
ピクルスに添えて、オールスパイスの香りをアクセントにすることもあります。
パウダーの場合
オールスパイスのホールを挽いたり、パウダー状の市販品を購入したりした場合は、料理の下味にも使えます。粒が細かいため、ハンバーグなどに練りこんでも、食材の邪魔になりにくいことがメリットです。
ソースやドレッシングに混ぜるときも、パウダータイプがおすすめです。
ハンバーグなどの肉料理に入れて臭みを消す
オールスパイスの一般的な使い方に、臭み消しの目的があります。
ナツメグのように、ハンバーグのタネに練りこむことで、肉の臭みを消してピリッと刺激的な風味になるでしょう。煮込み料理にホールのまま入れたり、砕いてステーキなどに使ったりとさまざまな肉料理に使えます。
ハンバーグに入れるときは、ホールではなく、なじみやすいパウダータイプのオールスパイスを選ぶとよいでしょう。
トマトとの相性も抜群
オールスパイスは、トマトとの相性もよく、パスタやトマトの煮込み料理にもおすすめです。独特の風味が、料理のアクセントとなるでしょう。
自家製のケチャップを作るときにも、オールスパイスを入れると味が締まります。
オールスパイスはお菓子とも合う
オールスパイスは、シナモンに似た甘い香りをもつため、お菓子作りにも使えます。お菓子には、パウダー状のオールスパイスを使用し、クッキーやマフィンに入れると、大人の味に仕上がります。
ジャムに混ぜたり、果物に直接かけたりなど、さまざまな使い方ができることも、オールスパイスの魅力です。
オールスパイスの保存方法
オールスパイスの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
保存方法に限らず密閉容器で保存
多くの香辛料のように、オールスパイスも密閉容器で保存することが基本です。
オールスパイスは傷みにくい食べ物ですが、密閉しないと、香りが飛んだり、別の食品のにおいがついたりしまうことがあります。香りを活かすために、密閉容器に入れて直射日光の当たらないところで保存しましょう。
コンロの近くに置いておくと、熱で傷んでしまうことがあるため、冷蔵庫や冷凍庫、棚の中に保管するのがおすすめです。
冷蔵保存するときは温度差に注意
一般的に冷蔵庫に入れれば、湿気や温度の影響を受けないと思われがちです。しかし実は、冷蔵庫の開け閉めや出し入れによる、温度変化がオールスパイスの保存にも影響を与えます。
冷蔵保存で冷たくなった容器を、冷蔵庫から出してすぐに開けると、外気温との差で結露が生じます。この結露が、容器内を湿気させ、オールスパイスの痛みの原因です。
結露を生じさせないポイントは、冷蔵庫からだした容器をしばらく放置すること。容器内の温度を外気温と同じにすることで、気温差をなくして湿気を防ぎます。
冷凍庫なら長期保存が可能
オールスパイスを長期間保存したいなら、冷凍庫での保管がおすすめです。湿度が上がりにくいため、風味を長期間残せます。
ただし、冷凍庫内のにおいが移ることもあるため、オールスパイスの風味を楽しみたいなら、開封後は半年~1年程度で使い切りましょう。