ししゃもの栄養と効果効能・調理法・保存法

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Shishamo

ししゃもの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、ししゃもに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

ししゃもとは

ししゃも(柳葉魚)は、キュウリウオ目キュウリウオ科の魚です。海で生活・成長し、川で産卵・孵化する遡河回遊魚に分類されます。日本固有の魚で、北海道南部の太平洋沿岸にのみ分布しています。

ししゃもは、焼き魚やフライ、煮物などあらゆる料理に使える全長10~20cmの小型魚です。抱卵したメスのししゃもは「子持ちししゃも」と呼ばれ、人気があります。

ししゃもは、北海道で古くから親しまれていた魚です。アイヌ語で柳の葉を意味する「ススハム」がししゃもの語源と言われています。

ししゃもにまつわるアイヌの伝説は複数あり、アイヌの神が人々を飢えから救うため、柳の葉でししゃもをつくったという逸話も。漢字表記が「柳葉魚」なのはそのためです。

ししゃもの品種・種類

ししゃもの品種・種類について解説します。

ししゃも(本ししゃも)

本ししゃもは、北海道の一部地域にのみ分布している種類です。北海道で漁獲されるししゃもの旬は、ししゃも漁が解禁となる10月・11月。この時期になると、本ししゃもが産卵するために川に帰ってきます。

近年では、本ししゃもの漁獲量が減少して市場に出回りにくくなり、単にししゃもと言うときは、流通量の多いからふとししゃもを指すことが多くなっています。本ししゃもの代用魚であるからふとししゃもと区別するため、「本ししゃも」と呼びます。

本ししゃもは、数が少なく貴重な高級魚として扱われています。地元の北海道では、生の本ししゃもを刺身や寿司ネタとして味わうこともできます。

からふとししゃもと比較し、本ししゃもにはカリウムが約2倍、葉酸が約1.8倍多く含まれています。また、カロリーや脂質量、コレステロールがからふとししゃもよりも少なく、ダイエット向きのヘルシーな食材と言えるでしょう。

からふとししゃも(カペリン)

からふとししゃもは、本ししゃもと同じキュウリウオ科の魚で、北太平洋や北大西洋で漁獲されます。英名は、カペリン(キャペリン)です。

本ししゃもの漁獲量減少を受け、本ししゃもの代用品として多く出回っている魚です。日本で流通しているほとんどのからふとししゃもが輸入品であり、北海道の本ししゃもよりも安価な傾向にあります。

本ししゃもと比較して、うろこが小さく目の瞳孔が大きいのが特徴。本ししゃもが海と川を行き来するのに対し、からふとししゃもは一生を海で過ごすという生育環境の違いもあります。

からふとししゃもは、ビタミンAやビタミンB群を本ししゃもより多く含んでいます。

キュウリウオ

キュウリウオは、本ししゃも・からふとししゃもの仲間であるキュウリウオ科の魚です。北海道や日本海北部、オホーツク海などに分布しています。

新鮮なキュウリウオには、野菜のきゅうりに似た青臭いにおいがあるため、その名が付きました。からふとししゃもと共に、北海道の本ししゃもの代用魚として流通しています。

本ししゃもやからふとししゃもと見た目が良く似ていますが、うろこがやや小さめなのがキュウリウオの特徴です。

ししゃもに含まれる成分・栄養素

ししゃも100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食 品 名単位<魚類> (ししゃも類) ししゃも 生干し 生<魚類> (ししゃも類) ししゃも 生干し 焼き<魚類> (ししゃも類) からふとししゃも 生干し 生<魚類> (ししゃも類) からふとししゃも 生干し 焼き
廃 棄 率%101000
エネルギーkJ639680669710
kcal152162160170
水 分g67.664.169.366.4
たんぱく質アミノ酸組成によるたんぱく質g-17.4-20.112.6-14.3
たんぱく質g2124.315.618.2
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g7.16.69.99.9
コレステロールmg230300290370
脂質g8.17.811.611.3
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g-0.2-0.2-0.5-0.6
g
利用可能炭水化物(質量計)g-0.2-0.2-0.5-0.5
差引き法による利用可能炭水化物g4.95.75.25.8
****
食物繊維総量g0000
糖アルコールg----
炭水化物g0.20.20.50.6
有機酸g----
灰分g3.13.633.5
無機質ナトリウムmg490640590770
カリウムmg380400200210
カルシウムmg330360350380
マグネシウムmg48575565
リンmg430540360450
mg1.61.71.41.6
亜鉛mg1.82.122.4
mg0.10.110.060.07
マンガンmg0.110.180.040.06
ヨウ素μg74-27-
セレンμg35-41-
クロムμg1-1-
モリブデンμg1-1-
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg1007512090
α|カロテンμg0000
β|カロテンμg61100
β|クリプトキサンチンμg0000
β|カロテン当量μg61100
レチノール活性当量μg1007612090
ビタミンDμg0.60.60.40.5
α-トコフェロールmg0.81.11.62.1
β-トコフェロールmg0000
γ-トコフェロールmgTrTr0.10.1
δ-トコフェロールmg0000
ビタミンKμg11TrTr
ビタミンB1mg0.020.04Tr0.01
ビタミンB2mg0.250.290.310.37
ナイアシンmg1.70.91.50.8
ナイアシン当量mg-5.5-5.34.8-4.6
ビタミンB6mg0.070.070.080.08
ビタミンB12μg7.58.78.710
葉 酸μg37362120
パントテン酸mg1.951.931.21.19
ビ オ チ ンμg18-17-
ビタミンCmg1111
アルコールg----
食塩相当量g1.21.61.52
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ししゃもの効果・効能

ししゃもに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

DHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸

ししゃもには、青魚の脂に含まれるDHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸が豊富です。オメガ3脂肪酸には、動脈硬化や脂質異常症といった生活習慣病の予防効果や、悪玉コレステロール値を下げる効果など、健康を維持する効能が多くあることで知られています。

DHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳の神経細胞の働きと関わっており、記憶力や認知機能に良い影響を与える栄養素です。子どもの脳の発育や、アルツハイマー型認知症の予防にも効果が期待できます。

一方、EPA(エイコサペンタエン酸)には、血液をサラサラにして血栓を予防する効果があります。動脈硬化や心臓病、脳梗塞といった心血管系疾患の予防に摂取しておきたい栄養素です。

オメガ3の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

骨と歯の健康を維持するカルシウム

カルシウムは、人体に最も多く含まれる必須ミネラルで、骨や歯をつくる主要な成分です。カルシウムが不足すると、骨が脆くなる骨粗しょう症やくる病を発症する恐れがあります。

ししゃもは、魚介類の中でもトップクラスのカルシウム含有量を誇る食材です。骨格が発達する成長期の子どもや、女性ホルモンの関係で骨粗しょう症リスクが高まる更年期の女性にとってうれしい食材と言えます。

カルシウムが豊富な骨ごと食べられるのもポイントです。本ししゃもとからふとししゃものカルシウム含有量を比較すると、からふとししゃものほうがやや多いものの、ほとんど差はありません。

カルシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

夜間の視力を維持するビタミンA

ししゃもは、ビタミンA(レチノール)を多く含んでいます。ビタミンAは、目や皮膚の粘膜を健康に維持するビタミンです。眼の機能をサポートする働きもあり、暗い場所での見えにくさや、眼精疲労の改善効果が期待できます。

ビタミンAは、からふとししゃもに特に多く含まれています。からふとししゃもは、全国のスーパーで多く出回っている種類なので、眼の疲れが気になるときは食事に取り入れてみましょう。

ビタミンAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ|NANIWA SUPLI MEDIA

ダイエットや貧血予防に効果的なビタミンB群

ビタミンB群の栄養素が豊富なことも、ししゃもの栄養価の特徴です。特に、糖・たんぱく質・脂質の代謝を助けるビタミンB2や、巨赤芽球性貧血を予防するビタミンB12・葉酸などが多く含まれています。

ビタミンB群は代謝を促進する働きがあり、ダイエット中にもうれしい栄養素です。

また、ビタミンB12や葉酸は、貧血予防効果があり、妊娠中・授乳中には通常時より多くの摂取が推奨される栄養素です。葉酸には胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを下げる機能があることもわかっています。

ビタミンB群の栄養素は、からふとししゃもに多く含まれる傾向にありますが、葉酸は北海道で獲れる本ししゃもに豊富です。本州ではなかなか出回らない魚ですが、葉酸を効率よく摂りたいときは本ししゃもを選んでみてください。

ビタミンB群の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA

妊婦・授乳婦の健康維持に必要な亜鉛・鉄

ししゃもには、貧血気味の人にうれしい亜鉛や鉄などのミネラル類が多く含まれています。鉄欠乏性貧血・亜鉛欠乏性貧血の予防に役立つ食材を言えるでしょう。

特に、鉄欠乏性貧血になりやすい妊婦や授乳婦は、より多くの鉄・亜鉛を摂取することが推奨されています。また、亜鉛は、DNAの合成に必要な成分でもあり、胎児や乳児の健康な発育にも大切な役割を果たしています。

鉄の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

亜鉛の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

ししゃもの食べ方

ししゃもの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

レモン・大根おろしでビタミンCや食物繊維を補う

動物性食品であるししゃもには、アンチエイジングや免疫力維持に効果的なビタミンCがほとんど含まれていません。ビタミンCは、人間の体内では合成できない栄養素です。ししゃもを食べるときは、ビタミンCが豊富な食材と食べ合わせて栄養価を高めましょう。

ししゃもの付け合わせや味付けには、ビタミンCが豊富なレモン汁や大根おろしがおすすめ。ししゃもに豊富な亜鉛や鉄などのミネラルは、ビタミンCと合わせると吸収率が高まるのもうれしいポイントです。

また、大根には消化を助ける酵素が含まれているため、脂乗りの良いししゃもとの相性も抜群です。ししゃもからは摂取できない食物繊維も補えます。

アルミホイルで焼くと身がバラける

フライパンでししゃもを焼くときにアルミホイルを敷くと、身がホイルにくっついてバラバラになってしまいます。ししゃもは、丸ごと食べられるからこそ栄養を多く摂れる魚であり、身が崩れるとせっかくの栄養を損なうことになります。

そのため、ししゃもをフライパンで焼くなら、食材がこびりつきにくいクッキングシートか、魚焼き用のフライパンシートを使ってください。食材がくっつかないようにシリコーン加工が施されたアルミホイルでも大丈夫です。

コレステロールや中性脂肪値が高い人は注意

ししゃもは、コレステロールを多く含む魚です。特に、卵を持つ子持ちしゃもにコレステロールが多いため、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪値が高いと指摘された人は気をつけたほうが良いでしょう。

なお、本ししゃもより、代用魚のからふとししゃもに多くのコレステロールが含まれています。

LDLコレステロール値を低下させる食品は以下の記事で紹介していますので、参考にしてください。

LDLコレステロール値を下げる食品|NANIWA SUPLI MEDIA

ししゃもの保存方法

ししゃもの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

冷蔵保存の目安は3日

生のししゃもは、冷蔵保存なら3日ほど日持ちします。なるべく空気に触れないように密閉容器に入れ、冷蔵庫のチルド室で保存してください。

丸ごと冷凍保存することも可能

ししゃもは、冷凍して1ヶ月程度保存することができます。キッチンペーパーなどで水気を拭き取り、密閉できる冷凍保存袋や容器に入れて丸ごと冷凍します。フライや煮物など、調理済みのししゃもを冷凍することも可能です。

冷凍ししゃもを使うときは、解凍せずに凍ったまま料理に使用するのがおすすめ。自然解凍すると、生臭みの原因となるドリップが出てしまうためです。

参考文献

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