鉄の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法

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鉄(鉄分)の基本情報や種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。

鉄とは

鉄は人体に必須のミネラルのひとつで、成人でおよそ3~5gの鉄が体内に存在しています。

製造業などで用いられる鉄鋼の鉄と区別するため、生体内で利用される鉄について「鉄分」と示すこともありますが、栄養学的には「鉄」で統一するのが一般的です。

食品中の鉄は、タンパク質に結合したヘム鉄と、無機鉄である非ヘム鉄に分けられます。

肉や魚など動物性食品に含まれるものが「ヘム鉄」、ひじき・ほうれん草・プルーンなど植物性食品に含まれるものが「非ヘム鉄」です。

ヘム鉄の方が吸収率が高く、その吸収率は非ヘム鉄のおよそ5~6倍にも及びます。

鉄は、血液中のヘモグロビンの一部となって全身に酸素を運ぶという重要な働きを持っており、不足すると鉄欠乏性貧血による疲れ・だるさ・頭痛・眠気などの症状に繋がります。

なお、めまいやふらつきといった症状も貧血によるものと誤解されやすいですが、その多くは低血圧が原因です。

鉄の効果・働き

鉄の持つ効果・効能・働きについて解説します。

体中に酸素を行き渡らせてエネルギー代謝を促す

鉄の重要な役割のひとつが、タンパク質と共にヘモグロビンの一部となって、体のすみずみまで酸素を運ぶというものです。

また酸素を運ぶだけでなく、酸素を利用したエネルギーの代謝サイクル、呼吸・DNAの合成と修復・異物の代謝など、細胞内でのエネルギー代謝にも関わっています。

特に酸素は脳のエネルギーとなるブドウ糖を代謝するのに必要なため、酸素の供給が不足すると脳が正常に働きにくくなり、めまいや頭痛、眠気といった症状が現れてしまうのです。

二酸化炭素を回収して肩のコリ・痛みを予防

酸素を運ぶのと合わせて、二酸化炭素を回収・排出する働きもあり、肩こりなどを予防します。

血液の多くの割合を占める赤血球の材料となる

血液の96%(重量比)を占める赤血球は、約99%の成分がタンパク質と鉄を材料とするヘモグロビンからできています。

そのため鉄が十分にあることで、酸素が運ばれやすくなるだけでなく、血液そのものも造られるようになるのです。

特に運動量が多い人では、比例して筋肉の消費するエネルギーと酸素も増えるため、増加に見合った血液・赤血球が必要となり、鉄の必要量も増加します。

生理などで鉄の排出量が増える場合も同様です。

筋肉の中で酸素を受け取る働きも

トレーニング中の人の鉄必要量が増えるのは、酸素供給量が増えるだけでなく、鉄が筋肉の中で酸素を受け取る働きも果たしているためです。

酸素を運ぶヘモグロビンだけでなく、筋肉で酸素を受け取るミオグロビンの材料としても鉄が用いられます。

新陳代謝の促進とコラーゲンの合成によりシミ・シワを予防する

鉄は美容にも大きく関係しています。

まず肌へしっかり酸素を供給することで、新陳代謝を促しシミをできにくくします。さらに肌の潤いを保つコラーゲンの合成にも鉄は関わっており、肌のハリを保ちシワを予防。

またその他にも、鉄が十分にあることで肌に赤みが差し、健康的に見えるといった効果もあります。

血液の赤色はヘモグロビン中の鉄が酸化したものなので、鉄が不足すると皮膚や粘膜の赤みがなくなり顔色が悪く見えてしまうのです。

健康的な太い髪を保ち抜け毛を防ぐ

髪の健康を保つうえでも、ヘモグロビンの酸素運搬能力は重要です。

髪は、毛根にある髪を作る細胞(毛乳頭細胞)が、毛細血管から酸素や栄養分を吸収してそれらを元に作っています。

そのため鉄が十分にあると、毛乳頭細胞まで酸素や栄養分が届くようになり、髪を太く保ち抜け毛予防にも繋がるのです。

鉄が不足・欠乏すると起こる症状

鉄が不足・欠乏すると起こる症状は次の通りです。

動悸・めまい・頭痛

鉄が欠乏すると、酸素が十分に供給されず動悸・めまい・頭痛などの症状が起こります。

イライラ・注意力散漫・食欲不振・抑うつ

鉄は、トリプトファンやセロトニン、メラトニンといった神経伝達物質精神発達においても重要な役割を果たすことが分かっており、不足すると抑うつ感情などに繋がります。

持久力の低下

スポーツ・トレーニングなどによって急激に運動量が増えると、酸素が行き渡らず疲れやすい・持久力がないといった症状が見られます。

疲労感・筋力低下

鉄が不足すると筋肉中で酸素を供給するミオグロビンも不足するため、筋肉の疲労回復などが正常の行われず、だるさ・疲労感・筋力低下などの症状が見られます。

骨の健康に悪影響を及ぼす

鉄が欠乏した状態では、カルシウムの摂取量が正常の範囲内であっても正しく吸収されず、骨の健康に悪影響を及ぼします。

鉄が不足・欠乏する原因と対策

鉄が不足・欠乏する主な原因は次の通りです。

  1. 食品から摂る鉄が不足している
  2. 吸収を阻害・抑制するものを摂っている
  3. 一時的に鉄の必要量が増大している

食品から摂る鉄が不足している

食品から摂取する鉄が不足する主な原因は、動物性食品に含まれるヘム鉄ではなく、植物性食品に含まれる非ヘム鉄が中心となっており、吸収率が低いためだと考えられます。

そのため、普段の食生活で非ヘム鉄の摂取が中心となっている人は、次の「非ヘム鉄の吸収を促進する栄養素」を一緒に摂ることを意識するとよいでしょう。

また鉄を豊富に含む食品については、後ほど紹介する「鉄を多く含む食品ランキング」もご覧ください。

非ヘム鉄の吸収を促進する栄養素

  • ビタミンC
  • 動物性タンパク質
  • クエン酸・リンゴ酸などの果実酸

鉄の吸収を阻害・抑制するものを摂っている

吸収を促進する栄養素とは反対に、次の栄養素・食品は、鉄と一緒に摂ると吸収を阻害してしまいます。摂取する場合は、食後から少し時間を空けるなど工夫しましょう。

鉄の吸収を阻害・抑制する栄養素

  • コーヒー・紅茶などに含まれるカフェイン
  • 緑茶・コーヒー・赤ワインに含まれるタンニン
  • レトルト食品・インスタント食品に含まれるリン酸塩
  • 乳製品などカルシウムを多く含む食品

一時的に鉄の必要量が増大している

生理、または負荷の高い運動などによって一時的に鉄の必要量が増大しているような場合は、鉄サプリメントで不足分を補うのも効果的です。

なお鉄サプリメントを摂取する際も、前述の「非ヘム鉄の吸収を促進する栄養素」「鉄の吸収を阻害・抑制する栄養素」を意識して食事時に飲むようにしましょう。吸収率を高めて、より効率的に摂取することができます。

鉄を過剰摂取すると起こる症状

鉄は、不足・欠乏した際の貧血症状が注目される傾向にありますが、過剰摂取によるリスクもある栄養素のため、特に鉄サプリメントなどで不足分を補う場合は摂取量に注意が必要です。

たとえば高齢女性を対象に鉄サプリメントの使用について研究した報告では、鉄サプリメントの使用が総死亡率を上昇させることが認められました。

鉄の蓄積が多くの慢性疾患の発症を促進するという報告もありますので、鉄サプリメントや強化食品を摂取する際は、次項で示す耐容上限量に注意してください。

また長期的な過剰摂取に限らず、短期的な鉄サプリメントや鉄剤の服用でも、次のような副作用が報告されています。

  • 胸焼け
  • 吐き気や嘔吐
  • 胃痛
  • 下痢
  • 便秘
  • ふらつき
  • 倦怠感
  • 気分不良
  • ショック
  • 肝機能障害
  • 過敏症(発疹、かゆみ)

鉄サプリメントや鉄剤を服用して何らかの副作用が現れた場合は、ただちに服用をやめてかかりつけの医師へ相談しましょう。

鉄の1日の摂取目安量

鉄の1日の摂取目安量は、成人男性で7~7.5mg、月経のない成人女性で6~6.5mg、月経のある成人女性で10.5~11mgです。

ヘム鉄を豊富に含む食品なら、豚レバー100gで13mg、あさり水煮缶40gで15.1mg、カツオの刺身100gで1.9mgが摂取できます。

なお、1日の鉄摂取量が100mgを超えると鉄沈着症になるため、日本人の食事摂取基準(2020 年版)で定められている耐容上限量を守って摂取しましょう。

鉄の1日あたりの耐容上限量は、成人男性で50mg、成人女性で40mgです。

鉄の食事摂取基準(mg/日)

性 別男 性女 性
年齢等推定平均必要量推奨量目安量耐容月経なし月経なし月経あり月経あり目安量耐容上限量
推定平均必要量推奨量推定平均必要量推奨量
0~5 (月)0.50.5
6 ~11(月)3.553.54.5
1~2 (歳)34.52534.520
3~5 (歳)45.52545.525
6~7 (歳)55.5304.55.530
8~9 (歳)673567.535
10~11(歳)78.53578.5101235
12~14(歳)8104078.5101240
15~17(歳)810505.578.510.540
18~29(歳)6.57.5505.56.58.510.540
30~49(歳)6.57.5505.56.5910.540
50~64(歳)6.57.5505.56.591140
65~74(歳)67.5505640
75 以上(歳)67505640
妊婦(付加量)初期中期・後期+2.0+8.0+2.5+9.5────────
授乳婦(付加量)+2.0+2.5
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)

鉄を多く含む食品

最後に、鉄を多く含む食品を、全食品・肉類・魚介類・野菜・果物の順で、それぞれランキング形式で紹介します。

全食品中で鉄を多く含む食品ランキング

順位食品名成分量100gあたりmg
1調味料及び香辛料類/バジル/粉120
2調味料及び香辛料類/タイム/粉110
3いも及びでん粉類/こんにゃく/赤こんにゃく78.5
4藻類/あおのり/素干し77
5魚介類/あゆ/天然、内臓、焼き63.2
6藻類/かわのり/素干し61.3
7藻類/ひじき/ほしひじき/鉄釜、乾58.2
8調味料及び香辛料類/セージ/粉50
9藻類/いわのり/素干し48.3
10きのこ類/(きくらげ類)/きくらげ/乾35.2
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

全食品中で鉄を最も多く含むのは、バジル・タイムなどの香辛料類でした。

より摂取しやすい食品としては、あゆの内臓に含まれるヘム鉄の方が吸収率も高く高効率でしょう。また海苔やひじきなど海藻類も鉄が豊富な傾向にあります。

鉄を多く含む肉類ランキング

順位食品名成分量100gあたりmg
1ぶた/[その他]/スモークレバー19.8
2ぶた/[副生物]/肝臓/生13
3にわとり/[副生物]/肝臓/生9
4すずめ/肉、骨・皮つき、生8
5ぶた/[その他]/レバーペースト7.7
6うし/[副生物]/第三胃/生6.8
7うし/[加工品]/ビーフジャーキー6.4
8にわとり/[副生物]/心臓/生5.1
9いなご/つくだ煮4.7
10うし/[副生物]/じん臓/生4.5
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

肉類の中で鉄を豊富に含むのは豚・鶏・牛のレバーですが、なかでも最も多く含むのは豚のスモークレバーでした。生のレバーに比べて、下処理の必要がなく使いやすいのが特徴です。

鉄を多く含む魚介類ランキング

順位食品名成分量100gあたりmg
1あゆ/天然、内臓、焼き63.2
2あわび/塩辛33.9
3やつめうなぎ/干しやつめ31.6
4あさり/缶詰/水煮29.7
5あさり/缶詰/味付け27.8
6あゆ/天然、内臓、生24
7たにし/生19.4
8あゆ/養殖、内臓、焼き19
9あさり/つくだ煮18.8
10いわし類/かたくちいわし/煮干し18
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

魚介類の中では、あさりの水煮缶やつくだ煮の缶詰が、取り入れやすさと豊富さを兼ね備えた便利な食材です。

鉄を多く含む野菜ランキング

順位食品名成分量100gあたりmg
1きく/菊のり11
1わらび/干しわらび、乾11
3ずいき/干しずいき、乾9
4ぜんまい/干しぜんまい/干し若芽、乾7.7
5パセリ/葉、生7.5
6とうがらし/果実、乾6.8
7つるにんじん、根、生5.9
8よもぎ/葉、生4.3
9トマト類/トマト/ドライトマト4.2
10よめな/葉、生3.7
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

野菜の中で鉄を豊富に含むのは山菜類が多い傾向にありました。しかし毎日の食事への取り入れやすさを考えると、いずれもやや扱いづらいでしょう。

ちなみに、鉄が豊富な野菜として認知されているほうれん草の鉄含有量は、100gあたりわずか2gと、全野菜の中でも中程度の水準に留まります。

ただ、ビタミンCや葉酸など、造血に関連する栄養素を豊富に含んでいることから、積極的に摂取したい野菜のひとつであることは確かです。

鉄を多く含む果物ランキング

順位食品名成分量100gあたりmg
1うめ/梅びしお7
2くこ、実、乾4
3ぶどう/ジャム3.3
4うめ/梅漬/塩漬2.9
5パインアップル/砂糖漬2.5
6うめ/梅干し/調味漬2.4
7ぶどう/干しぶどう2.3
7あんず/乾2.3
9りゅうがん/乾1.7
9きはだ、実、乾1.7
9いちじく/乾1.7
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

果物の中で最も鉄を豊富に含有するのは、梅びしおでした。梅びしおとは練り梅のことで、野菜類の調味料などと同様に、大量に摂取するのは難しいでしょう。

また1位の梅びしおですら100gあたり7mgと、果物類に鉄があまり含まれていないことも明らかです。