酒かすの栄養と効果効能・調理法・保存法

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酒かす

酒かすの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、酒かすに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

酒かすとは

酒かす(sake lees)とは、日本酒を製造するときにできる副産物です。蒸米に麹や酒母(しゅぼ / もと)などを原料とするもろみを絞った液体が日本酒になり、残った白い固形物が酒かすになります。そのため「あまりの部分」を意味する「粕」の字が使われ、漢字では「酒粕」と表記されます。

日本酒を作るときの残りかすである酒かすですが、多くの栄養素が含まれているのが特徴です。原料の米や麹に含まれるアミノ酸やビタミンなどの栄養素がぎゅっと凝縮されています。また、仕込む過程でアルコール発酵するため酵素も豊富に含まれています。健康や美容に良い栄養素が多く含まれることから、近年ますます注目を浴びている食品です。

そんな酒かすは甘酒にして飲む方法もありますが、粕汁や粕漬けなどの料理にも活用できます。幅広く使えるので、ぜひ普段の食生活に取り入れてみてください。

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加工の違いによる種類

酒かすは加工の形状によって、さまざまな種類があります。

板粕

板粕とは、もろみを絞った際に出る酒かすをそのまま製品化した板状の酒かすです。好きな大きさにカットして、焼いて食べることもできます。

ただし酒かすが凝縮された状態なので、少し溶けにくい性質があります。料理に入れる場合は事前にだし汁で溶いたり、水によく漬けたりしてから使いましょう。

バラ粕

バラ粕は板粕のように板状にとれず、バラバラになった状態の酒かすです。板粕のように固くないので、料理に使いやすいでしょう。甘酒や粕汁を作るのにも向いています。

練り粕

練り粕は板粕やバラ粕を踏み込み、熟成させたものです。 踏込み粕とも呼ばれ、通常の酒かすより茶色っぽい見た目をしています。

よりコクや甘みが強く、柔らかい状態になっているのが特徴で、その味わいや使いやすさを活かして粕漬けを作る際にも便利です。

酒かすに含まれる成分・栄養素

酒かす100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

酒かすにはタンパク質やビタミン、食物繊維などの栄養素が多く含まれています。特にタンパク質が豊富で、100gあたりの含有量は14.9g。牛肉肩ロース(脂身つき)100gに含まれるタンパク質量に匹敵する数値です。

食 品 名単位<調味料類> (その他) 酒かす
廃 棄 率%0
エネルギーkJ904
kcal215
水 分g51.1
タンパク質アミノ酸組成によるタンパク質g-14.2
タンパク質g14.9
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g-
コレステロールmg0
脂質g1.5
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g-
g
利用可能炭水化物(質量計)g-
差引き法による利用可能炭水化物g19.3
*
食物繊維総量g5.2
糖アルコールg-
炭水化物g23.8
有機酸g-
灰分g0.5
無機質ナトリウムmg5
カリウムmg28
カルシウムmg8
マグネシウムmg9
リンmg8
mg0.8
亜鉛mg2.3
mg0.39
マンガンmg-
ヨウ素μg-
セレンμg-
クロムμg-
モリブデンμg-
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg0
α|カロテンμg-
β|カロテンμg-
β|クリプトキサンチンμg-
β|カロテン当量μg0
レチノール活性当量μg0
ビタミンDμg0
α-トコフェロールmg0
β-トコフェロールmg0
γ-トコフェロールmg0
δ-トコフェロールmg0
ビタミンKμg0
ビタミンB1mg0.03
ビタミンB2mg0.26
ナイアシンmg2
ナイアシン当量mg-5.3
ビタミンB6mg0.94
ビタミンB12μg0
葉 酸μg170
パントテン酸mg0.48
ビ オ チ ンμg-
ビタミンCmg0
アルコールg8.2
食塩相当量g0
備 考
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

酒かすの効果・効能

酒かすに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

体作りやダイエットを後押し

酒かすには、牛肉に負けないほど多くのタンパク質が含まれています。タンパク質は筋肉や皮膚・髪の毛などのもとになる大切な栄養素で、十分な量を摂取することで健康的な体作りをサポートしてくれます。

さらに酒かすはアミノ酸も豊富です。体内でタンパク質を合成するには、20種類のアミノ酸が必要になります。タンパク質に比べ分子が細かく吸収されやすいアミノ酸の摂取により、効率の良い筋肉作りもサポートしてくれるでしょう。ダイエット時にも役立ちます。

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肌を健康に保つ美容効果

酒かすに含まれるビタミンB群は、体内で補酵素として働く栄養素です。脂質・糖・タンパク質のエネルギー化を促すため、肌の代謝を高める作用が期待されます。エネルギーを効率よく作り消費させることで、ダイエット効果も見込めるでしょう。

また、抗酸化作用のあるコウジ酸やフェルラ酸、保湿効果を持つα-EGなども含まれています。特にα-EGは近年の研究で肌のコラーゲン量を増やす働きがあると話題になりました。

これらの作用により肌荒れやニキビなどのトラブルを抑制し、美肌を目指せるでしょう。酒かすは経口摂取するだけでなく、肌に塗っても美容効果が期待できます。

ビタミンB群の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品 | NANIWA SUPLI MEDIA

くすみを抑制する美白作用

酒かすは美肌作用だけでなく、美白作用も期待されています。

くすみが生じる原因は肌内部に蓄積したメラニン色素です。紫外線や摩擦などの刺激で、チロシナーゼという酵素が働き、メラニン色素が増えてしまいます。この酵素の働きを抑える成分として美白化粧品にも含まれるアルブミンが注目されていますが、酒かすにも同様の作用を持つ遊離リノール酸が含まれています。

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食物繊維による整腸作用

酒かすに含まれる食物繊維は、整腸作用を持つ栄養素です。胃で消化・吸収されずに大腸まで届き、腸のぜん動運動を促すことで便秘の改善に役立つでしょう。

さらに酒かすにはオリゴ糖も含まれています。オリゴ糖は食物繊維と同じく整腸作用と、腸内細菌を増やす働きがあります。食物繊維とオリゴ糖の相互作用で、さらに腸の調子が整うでしょう。

食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法|NANIWA SUPLI MEDIA

オリゴ糖の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA

LDLコレステロールの低下作用

酒かすには体に悪影響を及ぼすLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させる作用が期待されています。酒かすに含まれる食物繊維は、便を排出する過程で余分な脂質を吸着して体外へ出す働きがあるためです。

また、食物繊維と同様の働きを持つレジスタントプロテインというタンパク質にも、コレステロールを排出する作用があります。

LDLコレステロール値を下げる食品 | NANIWA SUPLI MEDIA

免疫力アップで風邪予防

腸を整える作用を持つ酒かすは、免疫力アップをサポートしてくれる食品です。腸には多くの免疫細胞が集中しているため、腸が正常に働けばウイルスや細菌に負けない体作りが目指せるでしょう。

さらに酒かすには体内のエネルギー作りに欠かせないビタミンB群や、疲労回復に役立つアミノ酸も多く含まれます。さまざまな栄養を含んでいる分、体内で効率的に働いてくれるでしょう。

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高血圧を予防する効果

ある研究で、酒かすには血圧を低下させる作用のあるペプチドが含まれていることがわかりました。

このペプチドは、血圧に影響を与えるアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを阻害し、血圧上昇を防ぐ働きがあります。ラットを用いた実験や人への経口摂取試験でも、血圧の降下作用が確認されました。

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がん予防への期待

酒かすにはがん細胞の増殖を抑える働きが期待されています。

実験で発酵させたもろみから絞った濾液をがん細胞に添加したところ、細胞の生存率が低下しました。さらに発酵日数が12~50日目のもろみから得た濾液では、がん細胞の死滅効果が確認できました。発酵が進むにつれ、アミノ酸やペプチドの含有量が増加したことが関係していると考えられています。

もろみを絞った残りである酒かすにもアミノ酸やペプチドが多く含まれているので、同じくがん予防に役立ちそうです。

酒かすの食べ方や注意点

酒かすの栄養素を損なわない調理方法・効果的な食べ方・注意点などを解説します。

簡単な甘酒の作り方

甘酒は、酒かすに砂糖を加えてお湯で溶かした飲み物です。自宅でも簡単に作ることができるので、酒かすを買った際にはぜひチャレンジしてみましょう。

だいたい水1カップ(200ml)に対し、30g程度の酒かすを入れて煮込みます。板粕を使う場合は溶けにくいので、少し水に浸けてから加熱しましょう。酒かすが完全に溶けたら、砂糖大さじ1杯を加えて完成です。

粕汁や粕漬けに

酒かすのおいしい食べ方に、調味料として活用する方法があります。アミノ酸が多く含まれる酒かすを加えると、料理にコクが生まれます。

例えば味噌汁に酒かすを加えて粕汁にしても良いでしょう。いつもの味噌汁に溶かし入れるだけなので簡単です。4人前あたりだいたい100~150gほどの酒かすを入れましょう。酒かすは溶けにくいので、事前にだし汁で解きほぐすとくダマにならずおすすめです。

肉や魚の切り身に酒かすを漬ける粕漬けも手軽にできる料理のひとつ。酒かすに含まれるアミノ酸や酵素には、肉や魚を柔らかくする効果があります。2~3日漬けたら、フライパンや魚焼きグリルで焼きましょう。

洋食にも活用可能

酒かすは和食だけでなく、洋食にも使えます。ちょっとしたとろみをつける効果もあるので、市販のルーや小麦粉なしで作れるシチューが特におすすめです。酒かすを加えれば、甘味やコクも簡単にプラスできます。

微量のアルコールが含まれる

酒かすにはアルコールが含まれているので、妊婦や子どもが食べる際は注意しましょう。80℃以上で煮込めばある程度のアルコールは飛びますが、それでも微量のアルコールが残ってしまいます。車を運転する場合にも注意したほうが良さそうです。

さらに加熱によって失われてしまう栄養素もあります。特に酵母や酵素などは熱で失われやすい栄養素です。

スキンケアやヘアケアにも

酒かすは経口摂取する以外にも、スキンケアやヘアケアにも活用可能です。酒かすを精製水で溶けば、手軽に酒かすパックやトリートメントが作れます。ただしアルコールが含まれているので、肌の弱い人は気をつけましょう。

酒かすの保存方法

酒かすの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

常温保存・冷蔵保存の方法

酒かすは直射日光を避けて、冷暗所で保存しましょう。冷蔵庫で保存しても大丈夫です。保存袋に入れて空気を抜けば乾燥を防げ、よりおいしい状態が保てます。時間の経過とともに発酵が進むので、ときおり保存袋の空気を抜いてあげるようにしましょう。おおよそ半年程度、保存が可能です。

冷凍保存の方法

より長期保存したい場合は、冷凍保存がおすすめです。冷蔵保存の場合と同じく、保存袋に入れて空気を抜いてから冷凍させます。この状態で約1年ほど持ちます。調理に使う際は少量ずつちぎって加熱調理するか、冷蔵庫で解凍させましょう。

参考文献

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