便秘の予防・解消におすすめの食べ物・飲み物【食物繊維・有機酸】

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便秘予防の食べ物

便秘の症状や定義、原因について解説したうえで、便秘の予防・解消に役立つ、食物繊維や有機酸を豊富に含む食べ物や飲み物をご紹介。また、便秘の改善に効果的な食生活や生活習慣についても解説します。

便秘とは

便秘とは、腸のはたらきが滞るなどして十分な排便がなされず、腸内に便が何日も残ってしまっている状態のことです。

本来、便通は毎日あるのが健康な状態ですが、便秘になると排便が滞り、腹痛、お腹の張り(腹部膨満感)、食欲不振などの症状を引き起こします。

便秘の症状

便秘の症状や、便秘にともなって引き起こされる症状は具体的に下記の通りです。

  • 便がお腹に溜まっている感覚はあるが、力を入れても排便できない
  • 下剤や浣腸により外から働きかけないと便通がない
  • 排便しても便を出し切れない、残便感がある
  • お腹が張って苦しい
  • 硬い便や、小さくころころとした便が出る
  • 吐き気があり、食欲がでない
  • 肩こり
  • 肌荒れ
  • イライラ

便秘の定義

日本内科学会では、便秘について、「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と定義しています。

また日本消化器病学会関連研究会の編集した、慢性便秘症診療ガイドライン2017では、「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とも定義されています。

便秘の原因

便秘が起こる原因には、以下のようなものがあります。

  • 食物繊維が足りていない
  • 食事量が足りていない
  • 水分が足りていない
  • ストレスや不摂生による自律神経の乱れ
  • 加齢などによる腸の運動や筋力の低下
  • 排便反射の低下
  • 消化器系の疾患による腸の狭窄・閉塞・ぜん動運動の障害など
  • 糖尿病・甲状腺機能低下症などの内科系疾患
  • 神経系疾患によるぜん動運動の麻痺
  • 内服薬による副作用

便秘の種類

便秘は、機能性便秘3種類と器質性便秘1種類の計4種類に分けることができます。

機能性便秘①:弛緩性便秘

自律神経の失調などを原因として、大腸の機能に支障をきたした結果現れる便秘を総称して、機能性便秘と言います。

そのなかでも弛緩性便秘は、腸管の緊張がゆるむ(=弛緩する)ことで起こる便秘で、便秘のなかでも特に頻度の高い症状です。

弛緩性便秘の症状は主に、腹部膨満感、残便感、食欲低下など。また血行が滞ることにより、肩こり、肌荒れ、イライラなどの症状も引き起こします。

弛緩性便秘になる主な原因としては、運動不足、水分不足、食物繊維の不足、筋力低下、極端なダイエットなどが挙げられます。女性や高齢者に多い便秘のひとつでもあります。

弛緩性便秘になると、大腸のぜん動運動が十分に行われず、便から水分が過剰に吸収されてしまい、便が過剰に硬くなり排便しづらくなってしまうのです。

機能性便秘②:けいれん性便秘

けいれん性便秘は、弛緩性便秘とは反対に、腸管の緊張しすぎによって便の運搬が滞ることで引き起こされる便秘です。

けいれん性便秘も弛緩性便秘と同様に、便の水分が過剰に吸収されることで、便が硬くコロコロとした状態になります。食後に腹痛があったり、便が出ても残便感が残ったりするほか、自律神経の失調により便秘と下痢を交互に繰り返す傾向もあります。

けいれん性便秘を引き起こす原因には、ストレスや睡眠不足、環境の変化などによる自律神経の乱れが関係しています。

けいれん性便秘の改善には、過剰なストレスをなくすことが大切です。

機能性便秘③:直腸性便秘(習慣性便秘)

直腸性便秘は、直腸に便が溜まっても排便反射が起こらず、うまく排便できないことによって便秘になるタイプです。排便反射とは、直腸に便がやってきたという情報を神経が受け取り、便を送り出す働きを強める、一連の機能のことを指します。

直腸性便秘は、弛緩性便秘やけいれん性便秘とは異なり、腸のぜん動運動自体は正常ですが、直腸や肛門周辺に問題を抱えることによって引き起こされます。

習慣的に便を我慢することにより、排便反射を起こすセンサーとなる直腸圧受容体がうまく機能しないことが主な原因です。その他にも、痔などが原因で排便時に痛みや違和感を感じることによって、排便そのものの回数が少なくなっても直腸性便秘となります。

下剤を服用しても効きにくく、ぜん動運動に問題があるわけではないため不溶性食物繊維を摂取しても効果がないどころか、便のかさが増してしまうためかえって逆効果になりかねません。

直腸性便秘の解消には、下剤を服用し過ぎないことと、排便をスムーズにする水溶性食物繊維を積極的に摂取することが重要です。

器質性便秘

器質性便秘は、腸そのものに病変が生じることで起こる便秘です。腸の腫瘍や炎症、閉塞などが起こり腸管が狭くなることで便が通りにくくなったり、先天的に腸が長く便の運搬に時間がかかったりすることで便秘になります。

腸に生じている異変・病変が根本的な原因なので、生活習慣・食生活の見直しや下剤の服用などによる改善は難しいでしょう。

便秘にともなって、激しい腹痛や嘔吐、血便などの症状が見られる場合は、かかりつけ医に早急に相談することをおすすめします。

便秘の改善に効果的な栄養素

便秘の予防・改善に効果的な栄養素について解説します。なおここでは、便秘のうちもっとも一般的である弛緩性便秘の予防・改善を中心に説明します。

食物繊維をバランスよく摂取する

便秘の予防・改善には、食物繊維の十分な摂取が欠かせません。食物繊維は、人の消化酵素で消化することのできずに腸まで届く物質の総称です。

食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。

水溶性食物繊維は、昆布・わかめなどの海藻・こんにゃく・里芋・大麦・オーツ麦・果物などに含まれる食物繊維で、サラサラしたものとネバネバしたものに大きく分かれます。

特定保健用食品(トクホ)にもっともよく使われている食物繊維、難消化性デキストリンも水溶性食物繊維の一種です。

不溶性食物繊維は、ボソボソ・ザラザラとした食感を持っており、野菜に多く含まれるほか、穀類・豆類・きのこ類・甲殻類の殻などにも含まれています。

大まかに、水溶性食物繊維は便通をスムーズにする働きがあり、不溶性食物繊維は便のかさを増やして腸のぜん動運動を促進する働きがあります。

どちらか一方の食物繊維が多すぎても逆効果になる可能性があるため、水溶性1に対して不溶性2のバランスで摂取することを心がけましょう。

糖分を適度に摂取する

糖分の多い食品は、腸で発酵しやすく、大腸の運動をサポートします。糖分の多い食品とは、はちみつ・砂糖・水あめなどのことです。

有機酸で腸内環境を整える

有機酸を積極的に摂取することで、腸内環境の改善が期待できます。有機酸は腸内細菌のエサとなり、悪玉菌の増殖を防いで腸内フローラを整えます。

便秘の改善に効果的な食べ物・飲み物

便秘の予防・改善に効果的な栄養を豊富に含む、便秘の予防・改善に効果的な食べ物をランキング形式で紹介します。

食物繊維を豊富に含む食べ物・飲み物ランキング

全食品中で食物繊維を多く含む食べ物・飲み物ランキングは下記表の通りです。

全食品中で食物繊維を豊富に含む食べ物・飲み物ランキング

順位食品名総量水溶性食物繊維不溶性食物繊維
1いも及びでん粉類/こんにゃく/精粉79.973.36.6
2きのこ類/(きくらげ類)/あらげきくらげ/乾79.56.373.1
3藻類/てんぐさ/粉寒天79--
4藻類/てんぐさ/角寒天74.1--
5いも及びでん粉類/こんにゃく/凍みこんにゃく、乾71.30.970.4
6きのこ類/(きくらげ類)/しろきくらげ/乾68.719.349.4
7野菜類/わらび/干しわらび、乾581048
8きのこ類/(きくらげ類)/きくらげ/乾57.4057.4
9藻類/えごのり/素干し53.3--
10藻類/ひじき/ほしひじき/鉄釜、乾51.8--
10藻類/ひじき/ほしひじき/ステンレス釜、乾51.8--
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

全食品中で食物繊維をもっとも豊富に含むのはこんにゃくですが、市販のこんにゃくではなくこんにゃくの原料となる精粉である点に注意してください。

普段の食生活に取り入れられる範囲では、きくらげや寒天といった、きのこ類や海藻類が優秀な食物繊維含有食品です。

ただし、食物繊維総量こそこんにゃく精粉に次ぐきくらげですが、割合としては不溶性食物繊維が大半のため、直腸性便秘の場合は注意して摂取した方がよいでしょう。

食物繊維を豊富に含む野菜ランキング

順位食品名総量水溶性食物繊維不溶性食物繊維
1わらび/干しわらび、乾581048
2とうがらし/果実、乾46.45.441
3ぜんまい/干しぜんまい/干し若芽、乾34.86.128.7
4かんぴょう/乾30.16.823.3
5きく/菊のり29.68.221.4
6ずいき/干しずいき、乾25.84.821
7トマト類/トマト/ドライトマト21.76.415.3
8だいこん類/切干しだいこん/乾21.35.216.1
9らっきょう類/らっきょう/りん茎、生20.718.62.1
10つるにんじん、根、生17.110.76.4
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

野菜の中でもっとも食物繊維を含むのは、干しわらびです。その他も、2位とうがらし、3位干しぜんまい、4位かんぴょう、と毎日の食事で一定量を摂取するにはやや取り入れづらい食品が並びます。

食物繊維を豊富に含む果物ランキング

順位食品名総量水溶性食物繊維不溶性食物繊維
1ブルーベリー/乾17.6314.6
2かき/干しがき141.312.7
3なつめ/乾12.52.79.8
4いちじく/乾10.73.47.3
5かんきつ類/すだち/果皮、生10.12.87.3
6あんず/乾9.84.35.5
7かりん/生8.90.98
8すもも類/プルーン/乾7.23.43.8
9なつめやし/乾71.55.5
9バナナ/乾725
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

果物の中でもっとも豊富に食物繊維を含有しているのは、ドライブルーベリーでした。

重量当たりの成分量であるため、その他もドライフルーツが多くランクインする中、5位のすだちと7位のかりんだけが、生の状態でランクインするほど豊富な食物繊維を含んでいます。

有機酸を豊富に含む食べ物・飲み物ランキング

順位食品名成分量100gあたりg
1果実類/(かんきつ類)/レモン/果汁、生6.7
2うめ 梅干し 塩漬4.3
3野菜類/(トマト類)/トマト/ドライトマト3.6
4(すぐり類)カシス、冷凍3.5
5果実類/(かんきつ類)/レモン/全果、生3.2
6果実類/マンゴー/ドライマンゴー3
7乳類/(その他)/チーズホエーパウダー2.7
8調味料及び香辛料類/<調味料類>(調味ソース類) 焼きそば粉末ソース2
8果実類/キウイフルーツ/緑肉種、生2
10豆類/だいず [全粒・全粒製品] きな粉、脱皮大豆、青大豆1.9
10きのこ類/しいたけ/乾しいたけ/乾1.9
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

有機酸は、レモン・梅干し・マンゴー・キウイなど果物に豊富に含まれるほか、きな粉やホエーパウダーなどにも含まれます。

便秘の改善に効果的な食生活・習慣

便秘を予防・改善するために心がけたい食生活や生活習慣について解説します。

水溶性食物繊維の積極的な摂取

まずは、食物繊維の十分な摂取を心がけましょう。食物繊維の1日の摂取目安量は、成人男性でおよそ20g以上、成人女性で18g以上です。ただし、これを満たしていたとしても水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスが崩れていると逆効果になります。

一般的に、不溶性食物繊維の摂取量が多くなる傾向にあることから、水溶性食物繊維の積極的な摂取が推奨されます。水溶性食物繊維の豊富な食品は、いも類・果物類・海藻類などが代表的です。

刺激の強い食品を避ける

大腸や直腸、肛門などに過度な負担を与えることを避けるためにも、刺激の強い食品の摂取は極力避けましょう

酸味・香辛料・アルコール飲料・カフェイン飲料などがこれにあたります。

またそのほかにも、消化しづらい硬い食品・濃すぎる味付け・炭酸飲料・食べ過ぎ・熱いもの・冷たいものなども、物理的に刺激となるためできるだけ避けましょう。

脂質の摂り過ぎを控える

適度な脂質の摂取は、脂質に含まれる脂肪酸が大腸を刺激するため正常な排便を促します。

しかし過剰な脂質はかえって負担となってしまいます。一般的な食生活を送る人であれば必要な脂質は十分に摂取できているはずなので、あえて積極的に摂取する必要はありません

最低限の食事量を確保する

十分な食事量が確保されないと、大腸が正常に機能せず排便が滞り、どんどん便が溜まっていってしまいます。

過度なダイエットなどにより、食事量を減らしているのにお腹が張っている、食欲がわかない、といったケースもあります。

理想的な排便量は、1日あたり150gほどです。これよりも排便量が少ない場合は、食事量そのものが足りていないかもしれません。

記事の監修

美容作家、評論家、ヨガインストラクター

AYA ARAHARA

ヨガインストラクター。
ホテル、外資系化粧品メーカー、美容業の広報/PRとして業務を経て、アロマテラピーや美容業界の実用書等の、編集・執筆活動のほか、ライフワークとしてヨガインストラクターとしても活動している。
近著としては、「ママになっても美しい人の食事術」(PHP研究所)編集協力、「枯れないからだ」(河出書房新社)編集協力など多数。最新作は「寝る前5分の新習慣! 極上の眠りに導く安眠ヨガ」が好評発売中!
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