酵素の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法

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栄養素

酵素の基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏による影響、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。

酵素とは

酵素(enzyme)とは、生体内で行われる化学反応の触媒になる物質です。5,000種類以上もの酵素が見つかっていると言われており、いまだ知られていない酵素も多くあります。

触媒とは、化学反応が起こってもそれ自体は変化せず、他の物質の反応に関わる物質のことです。酵素は他の物質を変化させる化学反応に関わるものの、酵素自体は反応の前後で変化しません。

構成成分は主にタンパク質ですが、分子量の小さい低分子化合物や金属イオンなど非タンパク質で構成される場合もあります。低分子化合物のうち、酵素の働きを補助するものを補酵素(コエンザイム)と呼びます。

酵素は補酵素がないと正常に働かないため、補酵素の存在も重要です。

ほとんどの酵素は、生体の体温と同じ37℃で最も活発に働きます。高温には弱く、タンパク質が変性しやすく、低温になると活動が抑制されます。至適pH(作用を発揮する最適のpH)も人体と同じ7.4前後です。ただし、消化酵素はpH2程度で活発に働くなど、酵素の種類によって至適pHは異なります。

pHとは水素イオン濃度のことで、水の性質を表す指標です。体液のpHは、7.40±0.05のごく狭い範囲で調整されています。

酵素の種類

酵素は大きく、消化酵素と代謝酵素、食物酵素に分類されます。それぞれの特徴を解説します。

消化酵素

消化酵素とは、摂取した食べ物を体内で吸収しやすいように分解する働きをもった酵素です。人間では主に消化管から分泌される消化液に含まれています。

人体が合成する主な消化酵素は、以下のとおりです。

種類分泌部位働き
唾液アミラーゼ口腔内糖質を分解する
ペプシン胃壁タンパク質を分解する
トリプシン膵臓タンパク質を分解する
リパーゼ膵臓脂質を分解する

代謝酵素

代謝酵素は、体内に吸収された栄養素を代謝して、栄養として全身の細胞に届けるための酵素です。たとえば、運動・呼吸・思考などの生命活動にも大きな影響を与えます。

美容効果として、肌のターンオーバーに関与するのも代謝酵素の仲間です。

食物酵素

食物酵素とは、食品に含まれ体内に摂取される酵素です。代謝酵素や消化酵素の働きをサポートし、より効率よく代謝を促進します。

また、発酵食品に含まれる食物酵素は腸内環境を整え、消化を助ける働きもあります。食品によって含まれる食物酵素の種類が異なるため、期待する効果のある食品を摂取することがポイントです。

食物酵素のなかでも、肉を軟らかくする酵素として有名なのがプロテアーゼです。タンパク質を分解する酵素の1種で、肉と一緒に調理すると肉のタンパク質を分解して軟らかい食感に変化させます。

プロテアーゼは、パパイヤやパイナップル、納豆などの食品に多く含まれます。

酵素の効果・働き

ここでは、食品に含まれる酵素のうち、健康や美容に効果的なものを解説します。

パパイン:角質を除去してつるつるの肌に

パパインとは、パパイヤに含まれるタンパク質分解酵素「プロテアーゼ」の1種です。

体内でタンパク質分解に関わるほか、角質剥離作用を利用して、美容製品としても利用されます。パパインはタンパク質である角質を軟らかくしたり分解したりします。その結果、古い角質を除去して、肌を滑らかにする目的で使われる酵素です。

パパイヤの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

ブロメリン:炎症を抑制して肌荒れを防ぐ

ブロメリンとは、パイナップルに多く含まれるタンパク質分解酵素・プロテアーゼの1つです。パイナップル特有の酸味を作り出します。

パイナップルを大量に食べると舌がピリピリとするのは、ブロメリンのタンパク質分解酵素の作用によるものです。肉と一緒に調理すると、肉に含まれるタンパク質が分解されて軟らかく仕上がります。

ただし、ブロメリンは酵素の1種のため、高温で調理すると変性して効果を発揮できなくなります。ブロメリンの効果を期待する場合は、生のパイナップルを肉と一緒に漬けた後で加熱調理するのがおすすめです。

また、ブロメリンには炎症を抑制する効果も期待されるため、美容製品にも使われます。炎症による肌荒れ予防に効果的と考えられています。

パイナップルの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

ナットウキナーゼ:血液をサラサラにして血栓を予防

ナットウキナーゼは、納豆に含まれる酵素です。血液の塊である血栓ができる原因であるフィブリンを分解し、血栓が作られにくくする働きがあります。

血栓は血中の脂質が増えて血液がドロドロになったり、血管が硬くなったりすると血管壁に形成されます。血栓は血流にのって流され、脳や肺、心臓の血管を詰まらせると脳梗塞や心筋梗塞、肺梗塞を引き起こすため危険です。

ナットウキナーゼは血栓を溶かすだけでなく、血栓そのものが作られにくくするため、脳梗塞や心筋梗塞などを予防できます。

納豆の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

アクチニジン

アクチニジンは、主にキウイフルーツに含まれるタンパク質分解酵素の1種です。タンパク質の分解を促進し、消化を助けます。胃もたれや胸焼けを予防したいときに摂取するとよいでしょう。

また、アミノ酸の吸収効率を高めることも知られており、栄養素を効率よく摂取したいときにも効果的です。

パパインやブロメリンと同様にタンパク質を分解するため、肉類と一緒に調理すると肉質を軟らかくする効果も期待できます。肉料理の胃もたれ予防と肉を軟らかくする効果の2つが見込めるため、肉料理でぜひ利用したい酵素です。

キウイフルーツの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

酵素が不足・欠乏すると起こる症状

酵素が不足・欠乏すると起こる症状は次の通りです。

  • 代謝抑制
  • 疲れやすくなる
  • 冷え性
  • 倦怠感
  • 肩こり
  • めまい
  • 便秘

酵素は代謝に関わる栄養素のため、不足すると代謝が悪くなったり、血流が悪くなったりします。その結果、疲れがとれない・冷え性・肩こりなどが起こる可能性もあります。

また、酵素は神経伝達にも関与しているため、酵素の不足・欠乏はめまいなどの神経症状の原因にもなります。

酵素を多く含む食品

酵素を多く含む食品は次のとおりです。

酵素の種類多く含まれる食品例
プロテアーゼ麹納豆(ナットウキナーゼ)パイナップル(ブロメリン)パパイヤ(パパイン)キウイフルーツ(アクチニジン)りんご(ペクチン)メロン
アミラーゼ大根キャベツ山芋かぶバナナしょうが
リパーゼバナナ味噌チーズアボカドイチゴ

酵素はさまざまな食品に含まれていますが、多く含まれるのは上記の食品です。とくに植物性食品や発酵食品に多く含まれます。

米麹の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

りんごの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

メロンの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

酵素を効率よく摂取する方法

最後に、酵素をより効率よく摂取する方法について解説します。

加熱せず生で食べる

酵素は熱に弱い栄養素のため、加熱するよりも食品を生で食べるとより効果的です。生で食べられるバナナや納豆、キウイフルーツがおすすめ。

肉類を軟らかくするために使うときは、加熱前に肉と一緒にしておくとタンパク質分解酵素の働きで肉が軟らかくなります。

ビタミンB2やB6を多く含む食品と一緒に食べる

酵素は、補酵素の働きで作用が促進されます。そのため、ビタミンB2やビタミンB6などの補酵素と一緒に摂取するのがおすすめです。

ビタミンB2は、補酵素として糖質や脂質代謝を促進します。レバーや藻類に多く含まれる栄養素です。

ビタミンB6も補酵素として働くビタミンで、タンパク質や脂質の代謝をサポートします。レバーなどの肉類やまぐろ、バナナに豊富に含まれます。

ビタミンB2の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

ビタミンB6の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

参考文献

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