あんずの栄養と効果効能・調理法・保存法

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あんず

あんずの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、あんずに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

あんずとは

あんず(apricot)はバラ科サクラ亜目サクラ属の木になる果実で、梅や桃は同じバラ科の仲間です。

黄桃のような色と形をしており、大きさは梅くらいのものからスモモくらい大きいものまで品種によってさまざま。酸味が強いため、生食よりもジャムやお菓子、ドライフルーツなどの加工食品として食されるのが一般的です。

あんずの原産地は、ネパールや中国の山東省・山西省・河北省の山岳地方と言われています。紀元前3000年〜2000年ごろにはすでに栽培が始まっており、中国から中央アジアを経由し、ヨーロッパに持ち込まれた後、14世紀にイギリス、18世紀にアメリカに伝わりました。

日本には中国を経て平安時代に伝来します。あんずは薬用として用いられた歴史が長く、国内で食用として出回ったのは1800年ごろの江戸時代だとされています。

旬は6月中旬〜7月中旬にかけて。あんずの栽培は冷涼な気候が適しており、青森県や長野県が主な産地となっています。

あんずの品種・種類

あんずは大きく2種類に分類され、国内で栽培されている東洋系品種は主に加工用に用いられるのに対し、欧州系の品種は生で食べることができます。

東洋系品種

東洋系品種は日本で古くから栽培されている品種で、酸味が強いのが特徴です。

平和

平和は日本で栽培されるあんずの代表的な品種です。大正時代に長野県で発見されました。果皮はオレンジ色で丸い形をしており、50~60gほどと小ぶり。ほどよい酸味と香りが特徴です。6月下旬〜7月上旬に旬を迎えます。

昭和

昭和は長野県で発見された品種です。酸味が強いため、ジャムやシロップ漬けに適しています。旬は7月上旬〜中旬です。

新潟大実(にいがたおおみ)

新潟大実は、名前の通り新潟県で誕生した品種です。重量は40~60gほどで、果皮は淡いオレンジ色をしています。昭和と同様に酸味が強いためジャムやシロップ漬けのほか、ドライフルーツにも加工されます。

山形3号

山形3号は山形県が原産の品種ですが、昭和初期以降は長野県で栽培されています。1個当たりの重量は60gほどで、果皮は黄色みが強いオレンジ色をしています。

甘みはありますが、酸味が強く感じられるため、ジャムやドライフルーツに用いられます。市場に出回るのは6月下旬ごろからです。

信山丸(しんざんまる)

信山丸は、1個当たり30gほどと軽量で、サイズも小さめの品種です。酸味はやや強めですが生で食べることができます。生産数が少なく質が高いため、高級あんずとして知られています。

欧州系品種

欧州系品種は東洋系品種に比べて甘みが強く、生食が可能です。

ハーコット

ハーコットはカナダで生まれ育った品種で、日本には1979年に伝わってきました。重量は80~100gほどでサイズは大きめ。糖度が高く甘みを感じられ、果肉が柔らかいため、生食に適しています。旬は7月上旬ごろです。

ゴールドコット

ゴールドコットはアメリカ生まれの品種です。1967年に日本に導入されました。酸味が少なく甘みが強いのが特徴で、生食で楽しむことができます。7月中旬ごろに出回ります。

あんずに含まれる成分・栄養素

あんず100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食品名単位あんず 生あんず 乾あんず 缶詰あんず ジャム 高糖度あんず ジャム 低糖度
廃 棄 率%50000
エネルギー(kcal)kcal/100 g3628881262205
エネルギー(kJ)kJ/100 g15112053391096858
水 分g/100 g89.816.879.834.548.8
たんぱく質g/100 g19.20.50.30.4
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g-0.8-6.6-0.4-0.2-0.3
脂 質g/100 g0.30.40.40.10.1
トリアシルグリセロール当量g/100 g-0.2-0.1-0.3-0.1-0.1
飽和脂肪酸g/100 g-0.02-0.01-0.03-0.01-0.01
一価不飽和脂肪酸g/100 g-0.13-0.06-0.16-0.04-0.04
多価不飽和脂肪酸g/100 g-0.06-0.06-0.08-0.02-0.02
コレステロールmg/100 g00000
炭水化物g/100 g8.570.418.964.950.5
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g-4.8-49.9--66.2-
水溶性食物繊維g/100 g0.64.30.40.50.9
不溶性食物繊維g/100 g15.50.40.20.3
食物繊維総量g/100 g1.69.80.80.71.2
灰 分g/100 g0.43.20.40.20.2
ナトリウムmg/100 g21541018
カリウムmg/100 g20013001907580
カルシウムmg/100 g97018811
マグネシウムmg/100 g845744
リンmg/100 g151201467
mg/100 g0.32.30.20.20.3
亜鉛mg/100 g0.10.90.10.10.1
mg/100 g0.040.430.030.020.03
マンガンmg/100 g0.210.320.030.020.03
ヨウ素µg/100 g0----
セレンµg/100 g0----
クロムµg/100 g0----
モリブデンµg/100 g1----
レチノールµg/100 g00000
α-カロテンµg/100 g00000
β-カロテンµg/100 g14004800520430630
β-クリプトキサンチンµg/100 g1902705596120
β-カロテン当量µg/100 g15005000550470690
レチノール活性当量µg/100 g120410463958
ビタミンDµg/100 g00000
α-トコフェロールmg/100 g1.71.40.90.40.5
β-トコフェロールmg/100 g0.1Tr000
γ-トコフェロールmg/100 g0.10000
δ-トコフェロールmg/100 g00000
ビタミンKµg/100 g00000
ビタミンB1mg/100 g0.0200.010.010.01
ビタミンB2mg/100 g0.020.030.01Tr0.01
ナイアシンmg/100 gTr3.50.10.20.2
ビタミンB6mg/100 g0.050.180.040.020.02
ビタミンB12µg/100 g00000
葉酸µg/100 g210212
パントテン酸mg/100 g0.30.53000
ビオチンµg/100 g0.5----
ビタミンCmg/100 g3TrTrTrTr
食塩相当量g/100 g00000
アルコールg/100 g-----
硝酸イオンg/100 g-----
テオブロミンg/100 g-----
カフェインg/100 g-----
タンニンg/100 g-----
ポリフェノールg/100 g-----
酢酸g/100 g-----
調理油g/100 g-----
有機酸g/100 g-----
重量変化率%-----
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

あんずの効果・効能

あんずに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

β-カロテン:視機能の改善・目や肌の粘膜の保護

あんずのβ-カロテンの含有量は、フルーツの中でトップクラスです。柿の約3倍、β-カロテンを豊富に含むほうれん草の約1.1倍、小松菜の約1.5倍ものβ-カロテンを含んでいます。

β-カロテンは一部が脂肪組織に蓄えられ、残りはビタミンAに変換されるプロビタミンAです。そのため、視機能の改善や夜間での視力の維持、目や肌の粘膜を健康に保つ、免疫機能のコントロールなどのビタミンAと同様の効果が期待できます。

カリウム:血圧を下げる・むくみを解消する

あんずは、人体に必須のミネラルの一種であるカリウムも多く含んでいます。カリウムは、細胞の浸透圧を調整して、高くなりすぎた血圧を下げ、心血管疾患や脳卒中など高血圧を原因とする病気のリスクを軽減します。

また、心筋の活動を正常に保つことで血流を改善し、体内にある過剰なナトリウムを排出してむくみの解消にも効果的です。

鉄:貧血を予防する・肌のハリを保つ

鉄は血液の多くを閉める赤血球の材料となり、貧血の予防に効果があります。赤血球の赤い色素であるヘモグロビンの一部となって、体のずみずみまで酸素を運ぶという重要な役割も担っています。

また、酸素を運ぶのに合わせて二酸化炭素を回収・排出する働きもあり、肩こりを予防する効果もあります。

鉄は健康面だけでなく美容面にも関わりがあり、肌へしっかりと酸素を運ぶことで新陳代謝を促し、シミをできにくくしたり、肌の潤いを保つコラーゲンの合成を助け、肌のハリを保ったり、といった効果があります。

有機酸:疲労回復・食欲増進

あんずの酸味の主成分は、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸です。有機酸は、激しい運動やストレス、不規則な生活によって発生する疲労物質「乳酸」を分解し、疲労の蓄積を抑制したり回復を早めたりする効果があります。

また、胃液の分泌を促して消化を助け、食欲を増進させる効果も発揮します。

食物繊維:便秘の予防・解消

あんずには、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維が多く含まれています。

不溶性食物繊維は胃や腸の水分を吸収して便のカサを増やし、腸のぜん動運動を促す働きがあります。水溶性食物繊維は便をやわらかくしたり、善玉菌のエサとなって腸内環境を整えたりする働きがあります。

これらの働きにより、便秘の予防と解消が期待できます。

あんずの食べ方

あんずの栄養素を効率的に摂取する食べ方などを解説します。

干しあんずの栄養

干しあんずは、生のあんずに比べてβ-カロテンや食物繊維などの栄養素をより多く含んでいます。これは干すことで水分が抜け、gあたりの栄養素が多くなるためです。

同量のあんずと干しあんずを摂取した場合、干しあんずの方が多くの栄養を摂取できますが、その分糖分も多くなるため、1個あたりのカロリーは高くなります。食べ過ぎると虫歯や肥満の原因になるので注意しましょう。

あんずの1日の摂取量の目安は、生のあんずで5個程度、干しあんずで2〜3個です。

あんずを食べる際の注意点

生のあんずの種の中にある「仁(さね)」には、「アミグダリン」という成分が含まれています。「アミグダリン」は咀嚼などによって、強い急性毒性を持つシアン化物に分解されます。

インターネットなどでは、仁を風味づけに使って杏仁豆腐を作る方法が紹介されていますが、数分煮るだけではシアン化物はすべて除去されません。

シアン化物は肝障害、意識混濁、呼吸困難などを引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。

内閣府の食品安全委員会によると、大きめのあんずの仁では半分摂取しただけでもシアン化物の目安量を超えてしまいます。生のあんずを食べる際は、種を誤って食べないように気をつけましょう。

なお、過剰に摂取すると毒になる「アミグダリン」ですが、少量であれば薬としての効果が期待できます。実際、咳止めや痰を抑える漢方薬「杏仁(きょうにん)」として昔から人々の治療を助けてきました。

ただ、その効果を得るために、家庭で種を取り出して食べるのは危険なのでやめましょう。

あんずの保存方法

あんずの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

常温保存

生のあんずは傷みやすく、常温では日持ちがしません。また、販売されている多くのあんずは完熟状態になっているため、なるべく早く食べるようにしましょう。

冷蔵保存

冷蔵保存する場合は、乾燥を防ぐためにラップで包んで保存袋に入れます。あんずの保存に適した温度は3〜8℃なので、冷蔵庫の野菜室で保存するようにしましょう。冷蔵での保存期間はおよそ4〜5日です。

冷凍保存

より長期で保存したい場合は冷凍で保存します。まず、あんずを水洗いして皮を剥き、筋に沿って2つに切って種を取り除きます。あんずが重ならないように冷凍用保存袋に入れ、冷凍庫に入れます。冷凍での保存期間は約1ヶ月です。

冷凍あんずの解凍方法

凍ったあんずは常温で解凍してください。このとき、完全に解凍すると果汁がたくさん出てしまうため、半解凍の状態で食べるのが良いでしょう。

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