パイナップルの栄養と効果効能・調理法・保存法
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パイナップルの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、パイナップルに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
パイナップルとは
パイナップル(Pineapple)とは、パイナップル科アナナス属の果実です。松かさ(Pinecone)に見た目が似ていることと、リンゴ(apple)のような甘酸っぱさがあることから、「パイナップル(Pineapple)」という名前になったと言われています。
パイナップルの原産地はブラジルや南アメリカのパラナ川とパラグアイ川とされており、大航海時代にコロンブスによって発見されました。その後、ヨーロッパやアジアに伝わり、日本には江戸時代の終わりに伝来しました。
パイナップルの世界的な生産地はコスタリカ、ブラジル、フィリピンです。日本はフィリピン産のパイナップルを多く輸入しています。国内では、全体のほとんどが沖縄県で栽培されています。
通年輸入されているため、季節を問わず市場に出回っています。国産のパイナップルの旬は6〜8月頃です。
パイナップルの品種・種類
パイナップルの品種は多岐に渡り、その数は200種を超えると言われています。以下では、代表的な品種を紹介します。
スムースカイエン
スムースカイエンは、世界で最も生産量の多いパイナップルです。酸味と甘みのバランスの良さと、たっぷりの果汁が特徴。1つあたりの重さは1〜1.5kgほどです。
デルモンテゴールド
デルモンテゴールドは、デルモンテ社が独自に改良したパイナップルで、「ゴールドパイン」「ゴールデンパイナップル」とも呼ばれています。糖度が高く、果肉が濃い黄色で、甘い香りがあります。
スウィーティオパイナップル
スウィーティオパイナップルは、ドール社オリジナルのパイナップルで、日本人の味覚に合わせて開発されました。ほのかな酸味と強い甘み、芳醇な香りが特徴です。
ボゴール
ボゴールは台湾原産のパイナップルで、「スナックパイン」とも呼ばれています。他のパイナップルに比べて芯が柔らかく、果肉を手でちぎって食べることができます。甘みが強く、酸味が抑えられているのが特徴です。
ピーチパイン(ソフトタッチ)
ピーチパインは、沖縄県で栽培されているパイナップルです。正式名称は「ソフトタッチ」ですが、桃(ピーチ)のような香りがすることから、一般的には「ピーチパイン」と呼ばれるようになりました。完熟した状態でも果肉が白っぽく、柔らかくジューシーなのが特徴です。
ゴールドバレル
ゴールドバレルは、2009年に品種登録された比較的新しいパイナップルです。樽のような見た目から「黄金の樽(ゴールドバレル)」と名付けられました。大ぶりなサイズで1つあたりの重さは1.4kgほど、黄色で柔らかい果肉、少ない酸味、強い甘みが特徴です。
パイナップルに含まれる成分・栄養素
パイナップル100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | 生食 | ストレートジュース | 濃縮還元ジュース | 50 %果汁入り飲料 | 10 %果汁入り飲料 | 缶詰 | 砂糖漬 |
廃 棄 率 | % | 45 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 51 | 41 | 41 | 51 | 50 | 84 | 351 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 213 | 172 | 172 | 213 | 209 | 351 | 1469 |
水 分 | g/100 g | 85.5 | 88.2 | 88.3 | 87.3 | 87.6 | 78.9 | 12 |
たんぱく質 | g/100 g | 0.6 | 0.3 | 0.1 | 0.3 | Tr | 0.4 | 0.5 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 0.4 | - | - | - | - | -0.2 | -0.4 |
脂 質 | g/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | Tr | 0.1 | 0.2 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | - | -0.1 | -0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.01 | - | -0.01 | -0.01 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.01 | -0.01 | -0.01 | -0.01 | - | -0.01 | -0.02 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | -0.03 | -0.04 | -0.04 | -0.04 | - | -0.03 | -0.07 |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 13.4 | 11 | 11.1 | 12.1 | 12.4 | 20.3 | 86.8 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 11.3 | -10.2 | -10.1 | - | - | -19.7 | -91.3 |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1.4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.5 | 1.3 |
食物繊維総量 | g/100 g | 1.5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.5 | 1.3 |
灰 分 | g/100 g | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 0.2 | Tr | 0.3 | 0.5 |
ナトリウム | mg/100 g | Tr | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 58 |
カリウム | mg/100 g | 150 | 210 | 190 | 95 | 18 | 120 | 23 |
カルシウム | mg/100 g | 10 | 22 | 9 | 6 | 2 | 7 | 31 |
マグネシウム | mg/100 g | 14 | 10 | 10 | 4 | 2 | 9 | 5 |
リン | mg/100 g | 9 | 13 | 12 | 5 | 1 | 7 | 5 |
鉄 | mg/100 g | 0.2 | 0.4 | 0.3 | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 2.5 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | Tr | Tr | 0.1 | 0.1 |
銅 | mg/100 g | 0.11 | 0.03 | 0.03 | 0.02 | Tr | 0.07 | 0.06 |
マンガン | mg/100 g | 0.76 | 0.87 | 1.16 | 0.33 | 0.18 | 1.58 | 0.45 |
ヨウ素 | µg/100 g | 0 | - | - | - | - | - | - |
セレン | µg/100 g | 0 | - | - | - | - | - | - |
クロム | µg/100 g | Tr | - | - | - | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | Tr | - | - | - | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | - | - | - |
β-カロテン | µg/100 g | 30 | 9 | 11 | 4 | - | - | - |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 1 | 0 | 1 | 0 | - | - | - |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 30 | 9 | 12 | 4 | Tr | 12 | 17 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 3 | 1 | 1 | Tr | 0 | 1 | 1 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | Tr | Tr | Tr | Tr | Tr | 0 | 0.1 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.08 | 0.04 | 0.05 | 0.03 | 0 | 0.07 | 0 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.02 | 0.01 | 0.02 | 0.01 | 0 | 0.01 | 0.02 |
ナイアシン | mg/100 g | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.1 | Tr | 0.2 | 0.1 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.08 | 0.07 | 0.05 | 0.04 | 0.01 | 0.06 | 0.01 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 11 | 9 | 7 | 0 | 1 | 7 | 2 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.28 | 0.19 | 0.17 | 0.07 | 0 | 0.06 | 0 |
ビオチン | µg/100 g | 0.2 | - | - | - | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 27 | 6 | 5 | 3 | 0 | 7 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.1 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | 1 | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | - | - | - | - | - | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
パイナップルの効果・効能
パイナップルに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
ビタミンB1
ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変換する際に必要な栄養素で、「疲労回復のビタミン」とも呼ばれています。
糖質が十分にエネルギーに変換されることで疲労回復をサポートするほか、消化不良の改善にも繋がります。また、糖質を主なエネルギー源とする神経や脳を正常に保つことにも効果的です。
ビタミンC
パイナップルに多く含まれるビタミンCは、骨や腱を構成するコラーゲンを生成するために必須の栄養素です。コラーゲン生成を助けることで、骨・腱・皮膚・血管・歯などを丈夫にしたり、シワを予防したり、傷の治りを早くしたりする効果があります。
また、強い抗酸化力により、老化を促す活性酸素を除去して細胞を若々しく保つ・免疫力を高めて風邪や感染症などを予防する効果もあります。シミやそばかすの原因になる皮膚のメラニン色素の生成を抑制し、美白・美容効果も期待できます。
ブロメライン
ブロメラインは、パイナップルに豊富に含まれるタンパク質分解酵素です。ブロメラインを摂取することで胃液の分泌を活発にし、胃腸の炎症を鎮めたり、消化を促したり、腸内にある有害物質を分解してガスの発生を改善したりする働きがあります。
食物繊維
パイナップルには水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が含まれています。
水溶性食物繊維は腸で水分を吸収して便を柔らかくする・善玉菌のエサとなって腸内環境を整える働きがあり、不溶性食物繊維は便のカサを増やすことで腸を刺激する働きがあります。その結果、便秘の予防・改善に繋がります。
カリウム
カリウムは人体に必須のミネラルの一種で、ナトリウムとともに細胞内液の浸透圧を調整する働きがあります。この働きによって、ナトリウムが過剰になることによる高血圧を予防したり、血圧を下げて心血管疾患や脳卒中など高血圧を起因とする生活習慣病の予防したりします。
また、心筋の活動を正常に保つことで血の巡りを良くし、体内にある過剰なナトリウム(水分)を排出してむくみを予防することができます。
β-カロテン
β-カロテンは緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドの一種です。強い抗酸化作用を持っており、ストレスや喫煙などで発生する活性酸素を除去して細胞を若々しく保つほか、動脈硬化やがんなどの生活習慣病を予防することができます。
β-カロテンは体内でビタミンAとして働くため、視機能の改善・夜間での視力の維持・目や皮膚の粘膜を健康に保つ・免疫機能をコントロールする、といった効果も期待できます。
パイナップルの食べ方
パイナップルの栄養素を損なわない食べ方や食べる際の注意点などを解説します。
パイナップルの栄養素を損なわない食べ方
生のパイナップルには、ビタミンB1・ビタミンC・消化酵素のブロメラインなどさまざまな栄養素が含まれています。これらの栄養素は熱に弱いため、加熱処理されると壊れてしまいます。
パイナップルの缶詰は、加工の過程で加熱処理されるため、生のパイナップルに比べると栄養素が損なわれてしまいます。パイナップルが持つ栄養素を損なわず摂取するためには、缶詰より生のパイナップルを食べる方が良いでしょう。
パイナップルを食べる際の注意点
パイナップルを食べていると、口の中や舌、喉がヒリヒリと痛むことがあります。これは、パイナップルに含まれる消化酵素・ブロメラインが影響しています。
ブロメラインはタンパク質を分解する働きがあり、ブロメラインによって口の中や舌の粘膜を構成するタンパク質が分解されることで、パイナップルの酸を直に感じてしまうのです。
ブロメラインによって分解された粘膜も、時間が経てば修復されるので心配はありません。しかし、傷みがひどく、長引くようであればアレルギー反応を起こしている可能性があるため、医療機関を受診するようにしてください。
パイナップルの保存方法
パイナップルの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
パイナップルをまるごと冷蔵保存する場合は、葉はすべて切り落とさず、根元を約1cm残しておきましょう。
根元まで切ってしまうと果肉までえぐれてしまう可能性があり、その部分から傷んでしまうからです。根元を残して葉を切ったら、冷蔵庫の野菜室で保存します。冷蔵での保存期間は3〜4日です。
カットされたパイナップルを冷蔵保存する場合は、果肉が乾燥しないように1切れずつラップで包み、保存袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存してください。カットパイナップルの保存期間は2〜3日です。
冷凍保存
長期保存したい場合は冷凍保存しましょう。パイナップルの葉や果皮、芯を切り落とし、食べやすいサイズにカットしたら、ラップを敷いた金属バットの上に広げて冷凍庫に入れます。金属バットの上に乗せることで急速に冷凍されて細胞の破壊を抑え、おいしさをキープすることができます。
凍ったカットパインは冷凍用保存袋にうつして冷凍庫で保存します。冷凍での保存期間は約1ヶ月です。
解凍方法
冷凍パイナップルを解凍する場合は、冷蔵庫で30分ほど置きます。すべて解凍すると水分やパイナップルの甘味・酸味が流れ出てしまうため、半解凍の状態で食べるのが良いでしょう。