よく噛めば痩せる「噛むだけダイエット」って本当? 今こそ咀嚼を見直そう

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「よく噛むと痩せる」という話を聞いたことがある人は多いと思います。でも実際のところはそんなに噛めない!という人が多いのでは? 確かに市販の食品は柔らかいものばかり。

でも「咀嚼」にはダイエットだけでないすごいパワーが秘められているのです。そこでこの記事では読むだけで咀嚼したくなる咀嚼の驚くべき効果、そして咀嚼を誘発するテクニックと、咀嚼ダイエットを成功させるための秘訣をご紹介。

運動嫌いさんは心得て! 咀嚼は最も小さい全身運動

食べ物を口に胃いれて、歯で噛んで小さくしてから飲み込む一連の行為を「咀嚼」といいますが、咀嚼は全身の健康状態にさまざまな影響を与える行為であるため「最も小さな全身運動」と考えられています。最新の研究では、「60kgの体重の人が1日3回、1年間、ゆっくりよく噛んで食事をした場合、早く食べた場合に比べて体脂肪に換算すると1.5kg分のエネルギーを多く消費する」という報告もあるのです(東京工業大学大学院社会理工学研究科 林直亨教授らのグループによる)。

この研究によれば、300kcalのブロック状の食品を急いで食べた場合、その後90分間のエネルギー消費量は1kg当たり平均7kcalだったのに対し、塊がなくなるまでゆっくり噛んで食べた後のエネルギー消費は体重1kgあたり180kcalにまで上昇し、有意に高い値だったということが報告されているのです。

つまり、咀嚼とは咀嚼そのものでエネルギーを消費するだけでなく、食後、安静にしている時のエネルギー消費量にまで大きな影響を与えているということ。昔から「早食いは太る」と言われてきました。それは満腹感が得られずついつい食べ過ぎてしまうからだと考えられてきましたが、それだけではないことがわかってきています。いずれにせよ、運動嫌いな人ほど、咀嚼を大切にすることで運動と同様かそれ以上の効果が得られる可能性は十分にあるといえるでしょう。

侮れない!よく噛むだけで得られる健康・美容の8大効果!

そもそも咀嚼にはダイエット効果だけでなく、さまざまな健康効果が報告されています。

  満腹感が得られやすくなる

十分に咀嚼をすると脳では「神経ヒスタミン」という物質が分泌されます。これによって満腹中枢や交感神経が刺激され、食欲が落ち着き満たされていくのです。しかし咀嚼が不十分だと「神経ヒスタミン」が分泌されず、なかなか満腹が得られないので食べすぎてしまうのです。

ちなみに神経ヒスタミンは食欲を抑えるだけでなく、脂肪の分解と合成抑制にも作用しているので、余計な脂肪をつけたくない人にとっては重要な物質。咀嚼を十分行うだけで神経ヒスタミンは分泌されるので、とにかく食事はよく噛んで食べる!これに尽きるのです。

  間食を予防する

十分に咀嚼をせずに早食いで食事をすると、血糖値が急上昇して満腹中枢が刺激され、食欲も収まってきますが、急上昇した血糖値は急激に低下するのでまたすぐにお腹が空いてしまいます。

つまり早食いさんほど間食が多くなるのです。咀嚼を十分にしてゆっくり食事をすれば、血糖値は緩やかに上昇していくので、血糖値の低下も緩やかとなり、次に空腹を感じるまでの時間が長くなり、間食を防ぐことに繋がります。しかも何も食べずに安静にしている時でさえ、脂肪が燃焼する効果が上がるのは先に説明した通り。

  複数の痩せホルモンが分泌される

「神経ヒスタミン」の他にも、咀嚼を十分に行うことで「レプチン」や「GLP-1」といういわゆる「痩せホルモン」が活性します。レプチンは食欲を抑制するだけでなくカロリーを消費しようという働きも担っている優れたホルモン。GLP-1は海外では肥満症の人の治療薬として知られ、このホルモンを注射するダイエット方法もあるほどで、最近は日本でもGLP-1の注射やサプリメントが知られるようになってきています。

でもわざわざお金を払わなくても、よく噛めば消化管(小腸)からGLP-1は自然に分泌されるのです。ダイエットにお金をかけたくない人ほどよく噛んでください。

  消化を促す

よく噛むことが消化を促します。消化酵素であるアミラーゼが咀嚼によって分泌され、主にでんぷん(炭水化物)を糖に分解してくれます。日本人は遺伝的にアミラーゼが他の民族より多く持っている傾向があるとされ、だからご飯を食べてもスムーズに消化され、太りにくいのではないかと考えられているほど。

一方、アミラーゼの分泌が十分でないと、その分膵臓からインスリンが大量に分泌されます。インスリンは中性脂肪を作る働きもあるため、肥満の原因となります。他にも消化吸収がスムーズでないと、胃痛や腹痛、便秘、肌荒れ、自律神経の乱れといったさまざまな不調の原因にもなります。また咀嚼をしている間に胃や小腸には十分な血液が送られ、これが食事後のエネルギー消費カロリーの増大の理由ではないかと考えられているのです。

  虫歯を予防する

咀嚼を十分に行い唾液がしっかり分泌されると、特に唾液に含まれるパロチンというホルモンがカルシウムと結びつき、歯の表面に浸透することで、歯を強くし虫歯を予防します。

  若返る

さらにパロチンは別名「若返りホルモン」といわれ、肌や筋肉、内臓の代謝を活性化させる働きがあることが確認されている物質です。実際、パロチンは更年期障害の治療薬としても使用されているのです。

もちろん咀嚼によって表情筋が鍛えられることで、表情が豊になり、顎のたるみ予防や小顔効果も得られます。

  子供なら歯並びを整え、体力を増強する

我が子の歯並びを美しくさせたいのであれば、顎の骨のサイズも成長させておくことが大切です。ところが咀嚼が不十分だと顎のサイズは小さいまま、大きい歯(永久歯)が生えてしまい、十分なスペースがないところに大きい歯が押し込められることで歯並びが悪くなります。

咀嚼をすれば顎だけでなく、全身の骨や筋肉の成長が促され、体力もしっかりついていくのです。

  脳を活性化する

咀嚼をすることで脳の前頭前野と呼ばれる、人間の知性に関わる部分が活性することが報告されており、この前頭前野の活性が不十分だと「きれやすい」「鬱症状」が起こるのではないかとも考えられています。

これなら簡単!毎日の生活に咀嚼が簡単に取り入れられるテクニック

ここまで読んで、是非とも咀嚼を取り入れたい!と思った人は多いはず。しかし実際は難しい。それは私たちの食事の中に「硬く」「歯応えのあるもの」が失われつつあるからです。

お肉も「溶ける〜」ご飯も「柔らか〜い」、パンも「ふわふわ〜」なものが好まれる現代で「硬い」食事を摂るのは容易ではありません。ある研究によれば、戦前と現代で1回の食事で行う咀嚼の回数は1/3にまで減っているとも報告されています。ではどうしたら私たちの生活に咀嚼を自然に取り入れられるのでしょうか?

  食前にガムを食べる

食前にガムを食べるだけで、ダイエットになることはよく知られています。ガムを噛むことで先に満腹中枢を刺激したり、食欲抑制ホルモンを分泌させておくことができるからです。

  食後にガムを食べる

食後にガムを食べるだけでも、遅くはありません。食後15分にガムを噛むだけでエネルギー消費量が6〜8kcal増加することも報告されていますし、食後の咀嚼でアミラーゼが分泌されることで消化吸収を助けてくれます。ノンシュガーやキシリトールなどの歯磨きガムのようなものを噛むと尚良しです。

  日中の水分補給も咀嚼しながら

普段から水分を摂取する時にも咀嚼をしながらちびちびと飲むようにしましょう。美味しい紅茶やハーブティーを飲むときは、ゆっくり数回でもいいので咀嚼して味わって飲みます。1〜2回でも咀嚼してから水分補給をするだけで、何かを口に入れたら咀嚼をするということが自然に習慣化されていきます。

  歯応えのあるレスキュースナックを切らさない

例えばビーフジャーキーやスルメ、ナッツ類、昆布、こんにゃくゼリー、プロテインバー、サラダチキンなど、なるべく歯応えがあってローカロリーなお気に入りスナックを家にストックしておきましょう。

小腹が空いたり、おやつを食べたくなったら、まずはそういったレスキュースナックを口にすることで、おやつだけでも咀嚼をしながら、を習慣化させましょう。

  食事は温かいものを選んで食べる

冷たいものより温かい食事、できれば熱々の食事のほうが咀嚼回数は増えます。できるだけ温かいものを食べるようにしましょう。

  噛む回数は決めない、数えない。それより早食いをやめる

「1口30回」とよくいわれますが、なかなか30回噛める食材はありません。また心の中で数を数えながら噛んでいると、咀嚼が苦行になってしまいます。それよりは、時間をかけて食べることを目標にしましょう。

12時から12時45分までゆっくり食べる。と決めるだけも咀嚼回数は自然に増えるはず。逆に、テレビをみながら、スマホをみながらの食事は、あっという間に終わってしまうので、やめたほうが良いでしょう。

いかがでしたか。もし咀嚼するだけでダイエットを成功させたいと思うのであれば、上記で紹介した6つのテクニックのうちできそうなものを1つでも選んで1ヶ月継続してみてください。ダイエットだけでなく、顎がシャープになる、間食が減るなど、他の嬉しい効果も得られるはずですよ。

この記事を書いた人

AYA ARAHARA
AYA ARAHARA
https://aya-works.com/
ヨガインストラクター。
ホテル、外資系化粧品メーカー、美容業の広報/PRとして業務を経て、アロマテラピーや美容業界の実用書等の、編集・執筆活動のほか、ライフワークとしてヨガインストラクターとしても活動している。
近著としては、「ママになっても美しい人の食事術」(PHP研究所)編集協力、「枯れないからだ」(河出書房新社)編集協力など多数。最新作は「寝る前5分の新習慣! 極上の眠りに導く安眠ヨガ」が好評発売中!
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