そら豆の栄養と効果効能・調理法・保存法

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broad bean

そら豆の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、そら豆に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

そら豆とは

そら豆(broad bean)とは、蚕豆や天豆とも呼ばれるマメ科の植物です。豆のさやが下に垂れるのではなく、直立して空に向かって育つため、そら豆と呼ばれるようになったと伝えられています。

そら豆の歴史は古く、古代エジプトの時代から栽培されていたと考えられています。ヨーロッパでは、さやいんげんが食用になるまで、豆といえばそら豆が一般的でした。日本では、そら豆は江戸時代に伝わったとする記録が残っています。

しかし、日本でそら豆の栽培が本格的に始まったのは明治時代になってからです。日本では、味噌や豆腐に使われる大豆の需要が高いことと、栽培しやすいヨーロッパ品種の導入が鎖国により遅れたことが関係していると考えられます。

そら豆の原産地は、アフリカ北部から西アジアですが、現在は世界中で栽培されています。そら豆は温暖な気候を好むため、日本では千葉県や鹿児島県、茨城県で栽培が盛んです。

そら豆の旬は、4月~6月の春から初夏にかけて。そら豆はハウス栽培もされており、特に鹿児島県では、ハウス栽培用品種を利用して冬でも収穫をしています。

そら豆は、品種によって形や大きさ、色が異なりますが、基本的な構造は同じです。さやの中の種子は、さや内側の白いワタに包まれており、種子を乾燥や寒さから守り、種子に栄養を送る役目を担っています。

料理で使用するときは、そら豆の種子の薄皮を剥くことがほとんどですが、実は薄皮ごと食べることも可能です。薄皮には、食物繊維が豊富に含まれていて、中身の種子よりも栄養価が高いとされています。ただし、鮮度の落ちたそら豆の薄皮は硬くなって食感が悪くなるため、薄皮ごと食べるときは鮮度のよいものがおすすめです。

日本では、未熟なそら豆の柔らかい豆の部分を調理するイメージですが、炒り豆菓子や甘納豆などのお菓子、豆板醤などの調味料にも使用される万能な食材です。

そら豆の品種・種類

そら豆は、品種によってさやの形や大きさ、種子の色が異なります。日本で、主に栽培されているそら豆の品種について解説します。

一寸そら豆

一寸そら豆とは、豆が一寸(約3cm)であることから名付けられた品種です。日本で流通するそら豆の大半を占め、派生品種が多数存在します。

一寸そら豆は大粒種に分類され、さやには2~4個の豆が付きます。主に青果用に利用されるそら豆です。

早生そら豆

早生そら豆とは、寒さに強いため冬でも収穫ができる品種です。小粒~中粒種に分類され、一つのさやに4~5粒の豆が入っています。

さぬき長さや

さぬき長さやは、さやの長さが20cmほどに成長するそら豆の品種の一つです。さやには小粒の5~6つの豆が入り、主に四国で栽培されます。

青果用だけでなく、乾燥させて加工用にも使用される品種です。

そら豆に含まれる成分・栄養素

そら豆100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

糖質(炭水化物)は、茹でたそら豆100gあたり16.9gです。同じ豆類の大豆と比べてみると、ゆで大豆100gあたり8.4gと、2倍の量を含みます。しかし、脂質は大豆の49分の1で、カロリーが低いことが特徴です。

そら豆は、カリウムやリンなどのミネラル、ビタミンKやナイアシンなどのビタミンも豊富です。特に葉酸を多く含み、成人の1日必要量200μgに対し、そら豆100gの葉酸量は120μgと、必要量の半分以上をカバーします。

そら豆のタンパク質量は、タンパク質が豊富な大豆(ゆで)とほとんど変わりません。そら豆には、炭水化物やタンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素がバランスよく含まれるため、隠れたダイエットフードと言ってもよいでしょう。

食品名単位そらまめ 未熟豆 生そらまめ 未熟豆 ゆで
廃 棄 率%2525
エネルギー(kcal)kcal/100 g108112
エネルギー(kJ)kJ/100 g452469
水 分g/100 g72.371.3
たんぱく質g/100 g10.910.5
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g8.1-7.8
脂 質g/100 g0.20.2
トリアシルグリセロール当量g/100 g0.1-0.1
飽和脂肪酸g/100 g0.03-0.03
一価不飽和脂肪酸g/100 g0.01-0.01
多価不飽和脂肪酸g/100 g0.05-0.05
コレステロールmg/100 g00
炭水化物g/100 g15.516.9
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g13.2-13.7
水溶性食物繊維g/100 g0.20.4
不溶性食物繊維g/100 g2.43.6
食物繊維総量g/100 g2.64
灰 分g/100 g1.11.1
ナトリウムmg/100 g14
カリウムmg/100 g440390
カルシウムmg/100 g2222
マグネシウムmg/100 g3638
リンmg/100 g220230
mg/100 g2.32.1
亜鉛mg/100 g1.41.9
mg/100 g0.390.33
マンガンmg/100 g0.210.38
ヨウ素µg/100 g0-
セレンµg/100 gTr-
クロムµg/100 g0-
モリブデンµg/100 g150-
レチノールµg/100 g00
α-カロテンµg/100 g20
β-カロテンµg/100 g240210
β-クリプトキサンチンµg/100 g00
β-カロテン当量µg/100 g240210
レチノール活性当量µg/100 g2018
ビタミンDµg/100 g00
α-トコフェロールmg/100 gTrTr
β-トコフェロールmg/100 g00
γ-トコフェロールmg/100 g1.31.2
δ-トコフェロールmg/100 g00
ビタミンKµg/100 g1819
ビタミンB1mg/100 g0.30.22
ビタミンB2mg/100 g0.20.18
ナイアシンmg/100 g1.51.2
ビタミンB6mg/100 g0.170.13
ビタミンB12µg/100 g00
葉酸µg/100 g120120
パントテン酸mg/100 g0.460.39
ビオチンµg/100 g6.9-
ビタミンCmg/100 g2318
食塩相当量g/100 g00
アルコールg/100 g--
硝酸イオンg/100 g00
テオブロミンg/100 g--
カフェインg/100 g--
タンニンg/100 g--
ポリフェノールg/100 g--
酢酸g/100 g--
調理油g/100 g--
有機酸g/100 g--
重量変化率%-100
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

そら豆の効果・効能

そら豆に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

リンで骨や筋肉・神経を健康に維持

リンは、骨の形成に関与するミネラルの一種です。カルシウムやマグネシウムと結合することで、骨や歯を形成します。筋肉や神経を構成する栄養素でもあり、身体を健康に保つ効果があります。

リンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・摂取量を減らす方法|NANIWA SUPLI MEDIA

β-カロテンの抗酸化作用で動脈硬化を予防

β-カロテンとは、緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドの1つで、ビタミンAの前段階の栄養素として働きます。

β-カロテンには強い抗酸化作用があり、体内の老廃物である活性酵素を体外に排出する役割を持ちます。β-カロテンが持つ抗酸化作用は、動脈硬化の予防や老化防止に効果的です。

β-カロテンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

ナイアシンで新陳代謝を活発化

ナイアシンとは、ビタミンB群の一種で、体内で必須アミノ酸・トリプトファンから合成される栄養素です。ナイアシンを体内で合成するには、多くのトリプトファンが必要になるため、食べ物から摂取するほうが効率的と考えられます。

ナイアシンの主な作用は、エネルギー物質の産生や抗酸化、ステロイドホルモンの合成、DNAの合成です。ナイアシンが欠乏すると、皮膚炎や神経症状が表れるペラグラを発症することもあります。

補酵素(コエンザイム)として働くナイアシンは、体内の新陳代謝を活発にし、老廃物を体外に排出する効果を持ちます。

ナイアシンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

葉酸で貧血予防

葉酸は、ビタミンB群に分類される栄養素です。細胞のDNA合成に関与する栄養素のため、赤血球合成や胎児の発育に欠かせません。

赤血球は、身体中に酸素を運ぶ血中成分です。葉酸が欠乏して赤血球合成が阻害されると、貧血を起こすことがあります。

妊娠初期では神経管閉鎖障害を予防するため、通常の2倍量(400μg/日)の葉酸を摂ると発症リスクを低減できると考えられています。そのため、妊娠初期は特に意識して摂りたい栄養素です。

葉酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

食物繊維で便秘対策

そら豆には、食物繊維も豊富に含まれています。腸管では食物繊維は消化吸収されないため、腸内の老廃物を体外に排出する効果があり、便秘対策に効果的です。

食物繊維の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法|NANIWA SUPLI

そら豆の食べ方

そら豆の栄養素を損なわない茹で方・調理方法・食べ方などを解説します。

そら豆の下茹で方法

新鮮なそら豆は、生のまま食べることもできますが、一般的には下茹でしてから調理します。そら豆は、さやから出すと鮮度や栄養素が落ち始めるため、調理直前にさやから取り出すのがポイントです。

さやから出したそら豆は、沸騰したお湯に入れて、3~5分程度薄皮ごと茹でます。茹でる前に、そら豆のくぼみに、包丁で切れ込みを入れると、薄皮の表面にシワができにくくなります。

そら豆は塩ゆでしてサラダの彩りに

そら豆は、しっかりとした味がついているため、塩ゆでだけで旨味を引き出せます。塩ゆでにして、サラダの彩りに添えるのがおすすめです。

濃いめの味付けでおつまみにするのもおすすめ。薄皮ごと炒めれば、栄養素を逃さずに食べられます。

薄皮付きそら豆は栄養素たっぷり

そら豆は、薄皮を取らずそのまま食べられます。薄皮も食物繊維をたっぷり含むため、新鮮なそら豆は薄皮ごと食べるのもおすすめです。

薄皮ごと食べる場合は、スープなどに入れて、火をしっかり通すと皮の硬さが気になりません。

ポタージュにするのもおすすめ

茹でたそら豆をつぶして、ポタージュにするのもおすすめです。つぶす手間がありますが、ミキサーを使えば、簡単に緑が鮮やかなポタージュができます。

とろみをつけるために、ジャガイモと合わせると、さらに濃厚なポタージュに仕上がります。

そら豆の食べすぎによるソラマメ中毒に注意

ソラマメ中毒とは、そら豆に含まれる有害物質を多量に摂取することで、急性溶血性貧血を起こす中毒です。

そら豆を食べすぎても、全員に症状が起こるわけではなく、G6PD異常症(グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症)と呼ばれる遺伝子疾患を持った人にのみ起こると考えられています。

日本を含むアジア地域では、ソラマメ中毒の報告例が少ないのが特徴です。G6PD異常症には多数の型が存在し、その中で地中海型と呼ばれる型のG6PD異常症で、ソラマメ中毒が起こりやすいと考えられています。地中海型は、日本人のG6PD異常症患者には少ないことが、日本でソラマメ中毒が少ない理由です。

そら豆の保存方法

そら豆の栄養素を損なわない保存方法を解説します。

生のそら豆は鮮度が落ちやすい

そら豆は、収穫から3日程度で鮮度が落ちるとされたことから、「三日豆」とも呼ばれています。実際に3日しか保存できないわけではありませんが、生の状態では鮮度や栄養素が落ちやすいので、できるだけ早く食べることをおすすめします。

生のそら豆を保存するときはさやごと冷凍する

生のそら豆を保存したいときは、さやごと冷凍保存するのがおすすめです。さやを取って豆の状態で冷凍することも可能ですが、さやで保存したときよりも乾燥しやすく、栄養素を損なってしまいます。

さやのまま冷凍保存すれば、1ヶ月程度は保存できます。

茹でたそら豆も冷凍保存がおすすめ

茹でたそら豆は、薄皮のまま冷凍庫で保存可能です。茹でてから冷凍すれば、解凍後にすぐに料理に使えます。生のそら豆と同様に、1ヶ月程度は冷凍で保存できます。

参考文献

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