カプサイシンの効果・多く含む食品・効率よく摂取する方法
12827views
カプサイシンの基本情報、効果・働き、多く含む食品、効率よく摂取する方法、不足・欠乏・過剰摂取による影響について解説します。
カプサイシンとは
カプサイシン(Capsaicin)は辛味成分の一種で、正式名称をカプサイシノイドと言います。有機化合物に分類され、脂肪酸とバニリルアミンが結合して作られます。
主にナス科トウガラシ属の果実に含まれる成分で、ヘタや種の部分に特に多く含まれます。果実のサイズが小さいほど、カプサイシンが多く含まれる傾向があります。
なおカプサイシンは気体に変化しにくい性質があり、熱にも強いため加熱で辛さがやわらぐことはありません。また水に溶けにくいですが、油・アルコール・酢には溶けやすい性質を持ちます。
カプサイシンの種類
カプサイシノイドにもさまざまな種類があり、それぞれ辛さの度合いが異なります。以下は、唐辛子に含まれる主なカプサイシノイドの辛さを比べた図です。
図の辛み相対強度とは、カプサイシンの辛味を100とした場合の相対値になります。
カプサイシノイドの種類 | 辛み相対強度 |
カプサイシン | 100 |
ジヒドロカプサイシン | 100 |
ノルジヒドロカプサイシン | 57 |
ホモジヒドロカプサイシン | 50 |
ホモカプサイシン | 43 |
図を見ると、カプサイシンと同等の辛味を持つ成分はジヒドロカプサイシンです。唐辛子の辛味成分の80~90%は、カプサイシンとジヒドロカプサイシンが占めています。
カプサイシンの効果・働き
カプサイシンの効果・効能について解説します。
食欲増進効果
カプサイシンは胃や食道を適度に刺激するので、唾液の分泌を促進してくれる成分です。唾液量が増えると口の中を保護することで咀嚼しやすくなったり、味覚物質が唾液に溶け込み味を感じやすくなったりするなどのメリットがあると言われています。
これらの作用により、食欲増進につながると考えられているのです。
ただしカプサイシンを摂取し過ぎると、強い刺激により味を感じにくくなったり、痛みを強く感じたりする場合もあります。その刺激は口腔内だけでなく気管支にも影響を与え、息切れや咳を招く場合があるため、食べ過ぎには注意しましょう。
胃潰瘍の予防
少量のカプサイシン摂取は、胃酸の分泌を抑制することがわかっています。胃酸が過度に分泌されると胃の粘膜を傷つけてしまうため、カプサイシンは胃潰瘍の予防に役立つと考えられています。
ただしカプサイシンの過剰摂取は逆効果です。カプサイシンを摂り過ぎると、胃粘膜の保護作用がなくなるという研究結果があります。ある研究では、ラットに体重あたり125mgのカプサイシンを与えた際に、胃の保護作用がなくなることが確認されました。
脂肪燃焼によるダイエット効果
カプサイシンには脂肪燃焼をサポートする働きが期待されています。
血中に入ったカプサイシンは中枢神経系を介して、副腎のアドレナリン分泌を促進する作用があります。このアドレナリンがエネルギー代謝を促す過程で脂肪分解酵素のリパーゼが活性化し、脂肪燃焼が促進されると考えられています。
ある論文では、肥満状態のラットで特に体重減少や血漿中性脂肪値の低下が見られました。
脂肪を燃焼する食べ物・飲み物|NANIWA SUPLI MEDIA
血行促進や発汗作用
カプサイシンはアドレナリンの分泌をサポートし、エネルギー代謝を促進させます。エネルギーの消費が進めば、体が温められたり、発汗が促されたりなどの変化が起き、結果的に血行促進効果も期待できるでしょう。
この代謝促進作用は、冷え性や肩こりの改善、疲労回復にも役立つと考えられています。
冷え性の改善におすすめの体を温める食べ物・飲み物 | NANIWA SUPLI MEDIA
発毛の促進作用
カプサイシンは血流アップ作用があるため、頭皮状態の改善作用が期待されています。頭皮に存在する発毛組織は、毛細血管から栄養素を受け取って髪の毛を作ります。つまり頭皮に血行不良が起きると、髪の成長が滞ってしまうと考えられるのです。
カプサイシンで全身の血流が促進されれば、髪にも良い影響を与えてくれるでしょう。
髪にいい食べ物・飲み物 | NANIWA SUPLI MEDIA
塩分制限による高血圧症予防
カプサイシンには血圧低下作用があり、高血圧症予防につながると考えられています。
研究では、カプサイシンと生姜に含まれるジンゲロールの抽出物をラットに一定期間摂取させたところ、血圧の上昇を抑制する作用が見られました。このとき血管の弛緩反応が確認されたため、血管が拡張したことで血圧が下がったと考えられます。
さらに食事の味付けに辛味成分のカプサイシンを入れると、旨味が増すため食塩の摂り過ぎを防げます。カプサイシンを活用すれば、塩分の過剰摂取による高血圧症も予防できるでしょう。
高血圧の予防・改善におすすめの血圧を下げる食べ物 | NANIWA SUPLI MEDIA
鎮痛効果
カプサイシンは経口摂取だけでなく、皮膚や粘膜に触れても刺激を生じる成分です。皮膚への刺激が繰り返されると、感覚神経細胞のTRPV1が麻痺して痛みを感じにくくなります。
湿布やクリームなどの鎮痛外用薬にカプサイシンが配合されているのは、この作用を利用したものです。
殺菌作用や防虫効果
カプサイシンには雑菌の繁殖を防ぐ作用があります。ぬか漬けのぬか床に唐辛子を入れる知恵は、カプサイシンの殺菌作用を利用した方法です。経口摂取の場合も喉の殺菌につながるため、風邪予防につながります。
また、カプサイシンは防虫効果も持っている成分です。身近なものでは、米びつに唐辛子を入れて虫よけとして利用する、といった活用法があります。
風邪予防におすすめの食べ物・飲み物 | NANIWA SUPLI MEDIA
カプサイシンが不足・欠乏すると起こる症状
カプサイシンは必ず摂取しなければならない栄養素ではないので、欠乏リスクはほとんどないと言えます。しかし、食欲増進効果や脂肪燃焼効果、血行促進作用など健康に役立つ効果を多く備えていることから、意識的に摂取したい栄養素のひとつと言えます。
ただし摂り過ぎると喉や胃の粘膜を傷つけ、炎症が起きる場合があるので気をつけたいところです。過剰摂取による危険性は次の章で詳しく解説します。
カプサイシンを過剰摂取すると起こる副作用
カプサイシンを過剰摂取すると起こる症状は次の通りです。
- 口腔内や気管支などに生じる強い灼熱間
- 咳
- 息切れ
- 粘膜炎症
- 胃もたれ
- 胸やけ
- 下痢
- 胃食道逆流症
- 吐き気
- 嘔吐
- 高血圧症
- 流涙症
- 鼻水
- 排尿障害
- 痔
- 味覚障害
身近な症状としては、鼻水が出たり、下痢が起きやすくなったりするケースです。これらの症状はアレルギー反応ではなく、カプサイシンの刺激で副交感神経の働きが高まってしまうために起こります。副交感神経はリラックス状態を作る自律神経なので、唾液や鼻水が出やすくなったり、腸の働きが活発になることで下痢が起きやすくなったりするのです。
また、カプサイシンは発癌リスクが懸念されており、実際にインドやメキシコの疫学調査ではカプサイシンの摂取量が多い人は大腸がんリスクが高いという研究結果が存在しています。しかしカプサイシンと大腸がんの相関関係はわかっておらず、未だ研究段階です。
過剰摂取のリスクとは直接関係ありませんが、皮膚や粘膜にカプサイシンがついた場合の症状は次の通りです。
- 流涙
- 鼻漏
- 疼痛
カプサイシンの1日の摂取目安量
2011年にドイツで実施された、人を対象としたリスク評価研究を参考に、日本ではカプサイシンの1日の許容摂取量を5mg/kg bwと推定しています。
「mg/kg bw」とは、体重あたりの1日の許容摂取量を表す単位で、1kgあたり何mgまでの摂取が許容されるかを示しています。カプサイシンの許容摂取量である5mg/kg bwの場合、1㎏あたり5mg、つまり50kgの人ならば250mgが1日の許容摂取量と考えられます。
ただし辛味を感じやすい人や、カプサイシンが含まれた食品を食べ慣れていない人は、許容摂取量未満の摂取量でも過剰摂取に似た症状が出る場合があるので注意する必要があります。
また、同じくドイツで実施された疫学調査では、胃細胞の剥離が起きない無毒性量を8.3 mg/kg bwとしています。一般的に鷹の爪1本(約1g)に含まれるカプサイシンが約1mgなので、通常の食事で1日の許容摂取量を超えることは考えにくいと言えます。しかし、サプリメントなどでカプサイシンを摂取している人は注意しましょう。
なお人を対象とした実験ではありませんが、マウスを使った動物実験では、経口摂取によるカプサイシンの半数致死量(投与した動物の半数が死亡する用量)は60~75mg/kg bwとされています。
カプサイシンを多く含む食品
カプサイシンを多く含む代表的な食品は唐辛子です。ただし唐辛子の仲間であるピーマンには、カプサイシンがほとんど含まれていません。
また、しし唐も唐辛子の一種ですが、ピーマンと同じくカプサイシンはほとんど含まれません。まれに生育時の天候の変化や肥料不足で、カプサイシンが多く含まれるしし唐が生まれます。
以下はカプサイシンが豊富に含まれる食品の代表です。
- 鷹の爪
- ハラペーニョ
- カイエンペッパー
- スーパーチリ
- エスプレット
- ラー油
- キムチ
とうがらしの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA
キムチの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
カプサイシンを効率よく摂取する方法
カプサイシンは油に溶けやすい性質があるので、効率よく摂取するには油を活用しましょう。油に漬け込んだり、油でよく炒めたりすれば摂取効率が高まります。特に種部分にカプサイシンが多く含まれるので、辛味が得意な人は種ごと使いましょう。
食べ合わせる食材はニンニクがおすすめです。ニンニクは血行を促進する作用がある食材ですので、カプサイシンの代謝促進作用により相乗効果が見込めるでしょう。
にんにくの栄養と効果効能・調理法・保存法 | NANIWA SUPLI MEDIA