とうがらしの栄養と効果効能・調理法・保存法

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Chili Pepper_top

とうがらしの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た野菜との違い、とうがらしに含まれる栄養と効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

とうがらしとは

とうがらし(Chili Pepper)は、果実や葉に強い辛味があり、香辛料として世界中の料理に用いられるナス科トウガラシ属の植物です。生薬として利用されるときは、蕃椒(ばんしょう)と呼ばれます。

とうがらしの原産地は中南米で、日本には16世紀ごろに伝来しました。とうがらし(唐辛子)は、「唐から伝わった辛子」という意味で付けられた名前ですが、この唐は中国ではなく外国のこと。ポルトガルから持ち込まれたとする説や、豊臣秀吉の朝鮮出兵のときに持ち帰られたとする説があります。

とうがらしは、6~10月に収穫される夏の食材です。乾燥とうがらしやオイルに漬け込んだものなど、とうがらしの加工食品は1年中流通しています。

とうがらしの品種・種類

トウガラシ属には数十種類の植物が分類されています。食用として一般的なとうがらしの品種を紹介します。

鷹の爪

鷹の爪(たかのつめ)は、日本で最も良く知られたとうがらしで、鷹のかぎ爪のような細長い形をしていることが名前の由来です。

辛味が強く、和食・中華・イタリアンなどあらゆる料理に利用されるほか、米の虫よけや、白点病など魚の病気の治療に用いられることもあります。

青とうがらし

青とうがらしは、完熟して赤くなる前に収穫された緑色のとうがらしの総称です。

辛味の少ないししとうと見た目が似ていますが、青とうがらしにはピリッとした辛味があり、メキシコ料理などによく使われます。柚子胡椒の原料にもなります。

島とうがらし

主に沖縄県や鹿児島県で生産される島とうがらしは、キダチトウガラシの一種です。

とうがらしのなかでも辛味が強く、長さ2~3cmほどと小ぶりなのが特徴。泡盛に島とうがらしを漬け込んだ「コーレーグス」という沖縄県の調味料があります。

葉とうがらし

葉とうがらしとは、とうがらしを葉が付いた枝ごと収穫したもので、炒め物や佃煮として食べることができます。

京都の伏見辛(ふしみがらし)などの品種が有名で、骨と歯の健康を維持するカルシウムを豊富に含んでいるのが特徴です。

ハラペーニョ

ハラペーニョは、メキシコの代表的な青とうがらしの一種です。

鷹の爪と比べて辛味はそれほど強くなく、ピクルスやサルサの材料になるほか、生で食べることもできます。緑色のタバスコソースの原料でもあります。

ハバネロ

ハバネロは、非常に辛いことで知られるとうがらしの一種で、チリソースやサルサなどの調味料や、スナック菓子の材料に使われます。

ハバネロの実は、直径3cmほどの丸みのある形をしています。単に辛味が強いだけでなく、フルーティーな香りを持っているのが特徴です。

甘味種のとうがらし

辛いとうがらしと同じナス科トウガラシ属に分類される、ししとう・万願寺とうがらし・ピーマン・パプリカなどは、辛味の少ない甘味種のとうがらしです。甘とうがらしと呼ばれることもあります。

甘味種のとうがらしにもビタミンCやβカロテンなどが含まれるため、辛いものが苦手でも無理なく栄養素を摂取できます。ただし、辛味成分であるカプサイシンは、ピーマンなど甘味種のとうがらしにはほとんど含まれていません。

代表的な甘とうがらしであるししとうはピーマンと似た味わいですが、栽培条件によって辛味が強いものが発生することがあります。

とうがらしに含まれる成分・栄養素

とうがらし100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食品名単位とうがらし 葉・果実 生とうがらし 葉・果実 油いためとうがらし 果実 生とうがらし 果実 乾とうがらし 粉ししとう 果実 生ししとう 果実 油いため
廃 棄 率%600900100
エネルギー(kcal)kcal/100 g3585963454192755
エネルギー(kJ)kJ/100 g14635640214431753113228
水 分g/100 g86.779.5758.81.791.488.3
たんぱく質g/100 g3.443.914.716.21.91.9
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g-2.5-2.9-2.9-10.8-10.31.3-1.3
脂 質g/100 g0.14.93.4129.70.33.2
トリアシルグリセロール当量g/100 g(Tr)-4.7-1.3-4.4-8.3-0.1-2.9
飽和脂肪酸g/100 g-0.01-0.35-0.39-1.37-1.69-0.03-0.24
一価不飽和脂肪酸g/100 g(Tr)-2.89-0.04-0.14-1.54(Tr)-1.75
多価不飽和脂肪酸g/100 g-0.02-1.28-0.77-2.72-4.7-0.07-0.82
コレステロールmg/100 g0000000
炭水化物g/100 g7.28.516.358.466.85.75.8
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g-7.71.2-1.2
水溶性食物繊維g/100 g0.70.81.45.40.30.3
不溶性食物繊維g/100 g55.58.9413.33.3
食物繊維総量g/100 g5.76.310.346.43.63.6
灰 分g/100 g2.22.61.46.15.60.70.8
ナトリウムmg/100 g3261741Tr
カリウムmg/100 g65069076028002700340380
カルシウムmg/100 g49055020741101115
マグネシウムmg/100 g7987421901702121
リンmg/100 g6576712603403439
mg/100 g2.22.826.812.10.50.6
亜鉛mg/100 g0.40.40.51.520.30.3
mg/100 g0.120.130.230.851.20.10.1
マンガンmg/100 g0.430.470.271.080.180.18
ヨウ素µg/100 g300
セレンµg/100 g544
クロムµg/100 g1711
モリブデンµg/100 g4144
レチノールµg/100 g0000000
α-カロテンµg/100 g19021013040014000
β-カロテンµg/100 g510056006600140007200530540
β-クリプトキサンチンµg/100 g0022007400260000
β-カロテン当量µg/100 g520057007700170008600530540
レチノール活性当量µg/100 g43048064015007204445
ビタミンDµg/100 g0000000
α-トコフェロールmg/100 g7.78.58.929.81.31.3
β-トコフェロールmg/100 g0.20.20.10.400
γ-トコフェロールmg/100 g0.10.126.900
δ-トコフェロールmg/100 g0000.300
ビタミンKµg/100 g23025027585152
ビタミンB1mg/100 g0.080.120.140.50.430.070.07
ビタミンB2mg/100 g0.280.280.361.41.150.070.07
ナイアシンmg/100 g1.31.43.71411.31.41.5
ビタミンB6mg/100 g0.250.2813.810.390.4
ビタミンB12µg/100 g000000
葉酸µg/100 g879641303334
パントテン酸mg/100 g0.410.450.953.610.350.36
ビオチンµg/100 g49.14.23.7
ビタミンCmg/100 g92561201Tr5749
食塩相当量g/100 g0000000
アルコールg/100 g
硝酸イオンg/100 g0.40.5
テオブロミンg/100 g
カフェインg/100 g
タンニンg/100 g
ポリフェノールg/100 g
酢酸g/100 g
調理油g/100 g4.82.9
有機酸g/100 g0.3
重量変化率%9199
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

とうがらしの効果・効能

とうがらしに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

食欲増進・冷え性改善効果のカプサイシン

とうがらしの辛味の主成分は、カプサイシンと呼ばれる有機化合物です。カプサイシンは、とうがらしの種が付着している胎座(たいざ)や、果実内を仕切る隔壁(かくへき)に最も多く含まれています。

カプサイシンには舌や食道を刺激して唾液の分泌を促進し、食欲を増進させる効果があります。

また、脂肪の代謝や発汗を促すアドレナリンを分泌させる作用もあり、カプサイシンを摂取することで血流が良くなって体が温まり、冷え性や肩こりの改善が期待できます。脂肪の燃焼を促す効果もあるため、ダイエットにも効果的です。

近年の研究では、カプサイシンに胃酸の分泌を抑えて胃粘膜を保護する作用があることがわかっています。ラットを使った実験で、胃潰瘍のリスクを低下させることが証明されました。

ただし、カプサイシンを大量に摂りすぎると感覚神経が機能不全を起こし、粘膜の保護作用がなくなってしまうという実験結果も発表されています。

βカロテンでがん・生活習慣病のリスクを低減

βカロテンは、緑黄色野菜に多く含まれる色素成分の一種で、強い抗酸化作用を持っています。抗酸化作用とは、がん・生活習慣病を引き起こす活性酸素を体内から除去する働きのことです。体を酸化させる活性酸素は、老化の原因でもあります。

とうがらしの果実に含まれるβカロテンの量は、野菜類のなかでもトップクラスの多さです。とうがらしそのものを大量に食べることは難しいものの、調味料や具材として料理の中に取り入れるだけで多くの栄養素を摂取できるでしょう。

また、とうがらしには、βカロテンだけでなく、抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンEが豊富なのもポイント。抗酸化物質を多く含むとうがらしを摂取することは、動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病の予防や、若々しい体の維持に効果的です。

高血圧やむくみを改善するカリウム

とうがらしの果実や葉には、多くのカリウムが含まれています。カリウムは、人体の健康を維持するのに不可欠な必須ミネラルの一種で、細胞内液の浸透圧を調整しています。

カリウムには余分なナトリウムを体外に排出する働きがあり、塩分の摂りすぎが原因となる高血圧やむくみの改善に効果的です。

なおカリウムは、辛いとうがらしだけでなく、ししとうなど甘味種のとうがらしにも含まれています。

ビタミンCでハリツヤのある若々しい肌に

ビタミンCは、肌のハリを維持するコラーゲンの生成を助ける作用や、シミの原因となるメラニン色素を抑制する効果があり、美容成分として注目されている栄養素です。

また、ビタミンCには強い抗酸化作用もあり、老化の原因となる活性酸素を取り除き、アンチエイジングにも効果的です。

ビタミンCは、人間の体では生成できないため、食品から摂取する必要があります。とうがらしの生の葉や果実にはビタミンCが豊富に含まれていて、摂取することで美肌効果が期待できます。

ただし、とうがらしは乾燥させるとビタミンCが失われてしまうため、ビタミンCを摂りたいときは生のとうがらしを利用しましょう。

とうがらしの食べ方

とうがらしの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

油で調理すると栄養素を効率的に摂取できる

とうがらしの栄養成分であるカプサイシンやβカロテンには油に溶けやすい性質があり、油を使って調理することで体に吸収されやすくなります。

栄養素を効率的に摂りたいときは、とうがらしを油で炒めたり、オイルに漬け込んで利用しましょう。また、油を使うことで、カプサイシンの持つ辛味が料理全体に広がりやすくなるというメリットもあります。

カプサイシンは、油のほかアルコールや酢にも溶けやすく、アルコール漬けや酢漬けにするのもおすすめです。

辛味を増強させたいときは細かく刻む

とうがらしは、細かく刻んだり潰したりしてペーストや粉末にすることで辛味がアップします。とうがらしの辛味成分であるカプサイシンは、細かく刻むことで細胞壁が壊され、辛い成分が溶け出しやすくなるからです。

カプサイシンには空気に触れても気体になりにくい性質があるため、細かくすることで辛さが飛ぶ心配もありません。

また、カプサイシンは熱にも強く、加熱調理しても辛味はほとんど失われません。

とうがらしの辛味を和らげる方法

辛いものが苦手な人や子供にとうがらしを食べさせる際、以下のような方法で辛味を和らげることができます。

  • 切らずに丸ごと利用する
  • カプサイシンを多く含む胎座や隔壁を取り除いてから使う
  • カプサイシンを吸着するヨーグルトなどの乳製品を料理に取り入れる
  • 牛乳を飲みながらとうがらしを使った料理を食べる
  • 熱い料理のほうが辛味を感じやすくなるため、冷ましてから食べる

とうがらしを調理する際の注意点

とうららしを触った手で目や鼻などの粘膜に触れると、痛みを感じる可能性があります。

とうがらしの調理中に顔を触らないよう気を付けるとともに、とうがらしを子供やペットの手の届かない場所に置くようにしましょう。

とうがらしを食べる際の注意点

とうがらしには多くの健康効果がありますが、カプサイシンを含む食品の食べ過ぎは、粘膜を傷付けてしまう恐れがあるため、過剰摂取は避けましょう。

口内・喉・食道・胃腸などの粘膜がカプサイシンの刺激により傷付くと、咳込みや胃腸の痛み、下痢などの健康被害が引き起こされます。

ドイツ連邦リスク評価研究所が公表する意見書では、1回の食事でのカプサイシン摂取量の限界は体重1kgあたり5mgとしています。鷹の爪1本には約1mgのカプサイシンが含まれているので、摂取する量には注意しましょう。

とうがらしの保存方法

とうがらしの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

生のとうがらしの保存方法

生のとうがらしは傷みやすいため、冷蔵保存が基本です。乾燥予防としてラップやビニール袋で包んで冷蔵庫の野菜室で保存してください。生のとうがらしの冷蔵保存期間の目安は約1週間です。

生のとうがらしを長期保存したい場合は冷凍しましょう。風味が失われるのを防ぐため、とうがらしを1本1本ラップで包み、冷凍保存用袋に入れて凍らせます。輪切りにしてから凍らせることもでき、冷凍保存できる期間は約3ヶ月が目安です。

乾燥とうがらしの作り方・保存方法

とうがらしをより長く保存したい場合は、乾燥とうがらしにするのがベストです。生のとうがらしをザルや網の上に並べ、直射日光が当たらない風通しの良い場所で1週間程度乾燥させてください。

品種やサイズにより、完全に乾くまでの時間に幅があります。とうがらしを振って種がカラカラと音を立てていれば、しっかり乾燥している状態です。

乾燥させたとうがらしは、湿気が入らない密閉容器に入れて、冷暗所または冷蔵庫で保存します。市販の乾燥とうがらしも、同じように密閉できる容器で保存してください。

参考文献