セロトニンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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セロトニンの基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
セロトニンとは
セロトニン(serotonin)とは、主に脳内で働く神経伝達物質です。ドーパミンやノルアドレナリンの調節に関与し、精神の安定に作用します。
脳だけでなく、全身の中枢神経にも関与しており、体温調節・痛覚・性行動などの人間に必要な機能を担っています。
セロトニンは、必須アミノ酸の1つであるトリプトファンから合成される物質です。必須アミノ酸とは、人間が体内で合成できず食事から摂取する必要のあるアミノ酸のこと。
そのため、トリプトファンが欠乏するとセロトニンも不足します。セロトニンが不足すると、ドーパミンやノルアドレナリンの調節作用が働かなくなり、不安感や攻撃性が高まって、うつ症状を引き起こす仕組みです。
うつ病やパニック障害では、セロトニンの取り込みを促進する薬で治療をします。
セロトニン合成に関与する栄養素
セロトニンの合成には、トリプトファンやビタミンB6、ナイアシンが必要不可欠です。それぞれの概要とセロトニンとの関係性を解説します。
トリプトファン
トリプトファンとは、セロトニンの前駆物質となる必須アミノ酸です。セロトニンだけでなく、睡眠に関わるホルモンであるメラトニンの材料でもあります。
トリプトファンが不足すると、セロトニンの合成量が減少して、結果的にセロトニン不足に陥ります。セロトニン合成には欠かせない栄養素です。
トリプトファンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンB6
ビタミンB6とは、タンパク質の代謝やホルモン合成に必要不可欠なビタミンB群の1種です。ビタミンB6の主な働きの1つは、トリプトファンからセロトニンを合成するときの触媒作用です。
触媒作用とは、触媒自体は変化せずに、特定の反応を促進させる作用のことです。セロトニン合成においては、トリプトファンと反応してセロトニンへと変化させます。
つまり、ビタミンB6が不足すると、トリプトファンからセロトニンが作られにくくなってしまうのです。
ビタミンB6の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ナイアシン
ナイアシンは、糖質や脂質の代謝を促進したり、アルコール分解をサポートしたりする機能のある栄養素です。ビタミンB群の仲間で、体内でさまざまな物質を代謝しています。
セロトニンと同様に、トリプトファンから合成される栄養素のため、ナイアシンが不足するとトリプトファンから優先的に生成されます。結果的に、セロトニンの合成量が減ってしまう仕組みです。
ナイアシンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
セロトニンの効果・働き
セロトニンの効果・効能について解説します。
精神状態を安定させる
セロトニンの主要な働きは、ドーパミンやノルアドレナリンの分泌を調節して、精神状態を安定させることです。
ドーパミンは、快楽をコントロールする神経伝達物質で、不足により意欲低下や抑うつ症状が起こります。
ノルアドレナリンは、恐怖や不安などの感情をつかさどる神経伝達物質です。ノルアドレナリンが増加すると、イライラ感や不安感が増します。反対に、分泌量が減少すると意欲低下や抑うつ症状が起こりやすくなります。
集中力をアップさせる
集中力を向上させる働きも、セロトニンが関与しています。
セロトニンが調節するドーパミンは、記憶や学習に作用する神経伝達物質です。不足すると、集中力の低下や学習機能の低下につながります。
また、ノルアドレナリンが不足すると集中力や意欲の低下が起こります。ノルアドレナリンは、意欲向上や緊張を高める働きを持っているからです。
集中力を高める栄養素と食べ物・飲み物|NANIWA SUPLI MEDIA
腸の動きを活発化して便秘を解消する
セロトニンには、腸の動きを調整する効果もあります。
脳内で働くイメージの強いセロトニンですが、実は腸にも多く分布しており、腸のぜん(蠕)動運動を制御しています。ぜん動運動とは、食べ物を運ぶために腸の筋肉を動かす運動です。
ぜん動運動が弱まると、腸内の食べ物はうまく運ばれなくなり便秘が起こります。反対に、ぜん動運動が活発になりすぎれば、下痢の原因になります。
セロトニンはぜん動運動を制御し、腸の動きを活発にすることから便秘解消に効果的です。
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セロトニンが不足・欠乏すると起こる症状
セロトニンが不足・欠乏すると、精神が不安定になって身体にさまざまな症状をきたします。セロトニン不足で起こる主な症状は、次の通りです。
- 疲労
- イライラ感
- 集中力の低下
- 意欲低下
- 不眠
セロトニンを過剰摂取すると起こる副作用
一般的に、食事に含まれるトリプトファンを過剰に摂取しても、セロトニンの過剰摂取にはつながりません。
トリプトファンはセロトニンのほかに、メラトニンやインドール酢酸などの材料です。トリプトファンを過剰摂取しても、すべてがセロトニンになるわけではなく、体内で合成量が調節されます。
しかし、セロトニンの取り込みを促進する薬を服用している場合は、薬の過剰摂取や相互作用でセロトニン症候群と呼ばれる副作用が起こる可能性もあります。
セロトニンを過剰摂取すると起こる症状は次の通りです。現れる症状は人によって異なり、過剰摂取となる薬の量も体質によって違います。
- 不安
- 興奮・不穏
- せん妄
- 振るえ
- 筋硬直
- 動悸
- 高血圧
- 嘔吐・下痢
セロトニンの1日の摂取目安量
セロトニンは体内で合成される物質のため、1日の摂取目安量はありません。セロトニンを積極的に摂取したいときは、トリプトファンの含有量を参考にするとよいでしょう。
トリプトファンの1日摂取量目安は、体重1kgあたり4mg程度です。セロトニンと同様に、明確な摂取量上限は定められていません。
サプリメントでトリプトファンを摂取するときは、1日220mgを上限として考えるのが一般的です。
セロトニンを多く含む食品
前述のとおり、セロトニン自体は食品に含まれません。体内のセロトニンを増やしたいときは、材料となるトリプトファンやビタミンB6、ナイアシンなどの栄養素が豊富な食品を摂取しましょう。
トリプトファンを多く含む食品
トリプトファンを多く含む食品は、次の通りです。
豆乳や豆腐などの大豆製品、らっかせいやアーモンドなどのナッツ類、チーズや牛乳などの乳製品に多く含まれています。
食品名 | 成分量100gあたりmg |
豆類/だいず/[全粒・全粒製品]/きな粉/黄大豆/全粒大豆 | 520 |
種実類/カシューナッツ/フライ/味付け | 370 |
乳類/<牛乳及び乳製品>/(チーズ類)/ナチュラルチーズ/チェダー | 320 |
乳類/<牛乳及び乳製品>/(チーズ類)/プロセスチーズ | 300 |
種実類/らっかせい/小粒種/いり | 280 |
カシューナッツの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
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ビタミンB6を多く含む食品
ビタミンB6を多く含む食品は、次の通りです。
とうがらし・ニンニク・バジルに多く含まれているほか、牛肉やまぐろ、バナナにも豊富に含まれます。
食品名 | 成分量100gあたりmg |
野菜類/とうがらし/果実、乾 | 3.81 |
穀類/こめ/[その他]/米ぬか | 3.27 |
調味料及び香辛料類/にんにく/ガーリックパウダー | 2.32 |
野菜類/(にんにく類)/にんにく/りん茎、油いため | 1.80 |
調味料及び香辛料類/バジル/粉 | 1.75 |
ナイアシンを多く含む食品
ナイアシンを多く含む食品は、次の通りです。
表に記載した食品以外にも、らっかせい・しいたけ・鶏肉に多く含まれます。
食品名 | 成分量100gあたりmg |
きのこ類/まいたけ/乾 | 64.1 |
魚介類/(たら類)/すけとうだら/たらこ/焼き | 56.9 |
魚介類/(たら類)/すけとうだら/たらこ/生 | 49.5 |
し好飲料類/コーヒー/インスタントコーヒー | 47.0 |
魚介類/(かつお類)/加工品/かつお節 | 45.0 |
とうがらしの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
まいたけの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
セロトニンを増加させる方法
体内のセロトニンを増加させたいときは、材料になるトリプトファンやビタミンB6を積極的に摂るだけでなく、生活習慣の改善も効果的です。
日光に当たる
日光は、セロトニンの活性化を促進すると考えられています。
セロトニンを分泌するのは、セロトニン神経系と呼ばれる神経系です。多くは脳に分布しますが、身体のいたところに存在し、日光によって活性化されます。
体内のセロトニンを増加させたいときは、日光に当たると効果的です。
適度な運動をする
セロトニンは、運動によっても活性化する物質です。激しい運動は必要ありませんが、定期的に適度な運動をすることで、体内のセロトニン量を増加させられます。
また、セロトニンが合成されるのは日中で、夜間には合成されません。日中、とくに午前中に散歩やジョギングなどの適度な運動をするのが好ましいと考えられています。