エビの栄養と効果効能・調理法・保存法

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shrimp

エビの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、エビに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

エビとは

エビ(shrimp)は、世界各国で食べられている甲殻類です。漢字では、海老・蝦・魵と表記します。天ぷら・エビフライ・エビチリなどの具材として用いられるほか、刺身や寿司ネタとして生でも食されます。

エビは、目玉が飛び出ている外見から「めでたい」とされ、縁起物としておせちや祝いの席の料理にも使われます。また、長いひげと曲がった腰が長寿を連想させるため、長生きの象徴でもあります。

日本人にとって身近なエビですが、国内自給率は10%ほどと低く、流通しているのはベトナム・インド・インドネシアなどで養殖されたバナメイエビ・ブラックタイガーといった輸入エビがほとんどです。

エビの品種・種類

世界には3000種類にのぼるエビの仲間が存在します。エビ類は、泳ぐ「遊泳型」と、歩く「歩行型」に大きく分けられ、クルマエビに代表される遊泳型のエビは約1700種があります。

日本人が普段食べているエビは、海外から輸入されるものを含めて約20種類です。そのなかでも代表的なエビの種類を紹介します。

クルマエビ

クルマエビは、日本で利用される食用エビの代表種です。体長は20cm程度で、縞模様の体を丸めると車輪のように見えることがクルマエビという名前の由来です。

クルマエビの身には強い旨味と歯応えがあり、食味に優れています。天然ものの旬は6~8月、養殖ものの旬は12~2月です。タンパク質・カリウム・ビタミンB群を多く含んでいます。

アマエビ(ホッコクアカエビ)

アマエビは、口当たりがソフトで、寿司ネタや刺身などの生食に向いた品種です。本来の名前はホッコクアカエビですが、甘みが強いことからアマエビと呼ばれます。

アマエビの体長は、12cmほどと小ぶり。生食できるアマエビは、カリウムやビタミンなど加熱により失われやすい水溶性の栄養素を摂取したいときにおすすめです。

サクラエビ

サクラエビは、主に干しエビとして食べられる体長5cmほどの小さなエビです。生で食べることもできます。

干したサクラエビにはカルシウム・カリウムなどのミネラル類が凝縮されており、効率的に栄養を摂取できます。ただし、コレステロールやプリン体の含有量も多いため、肥満や痛風が心配な方は食べ過ぎないように気を付けましょう。

シバエビ

シバエビは、クルマエビの仲間で、クルマエビよりもやや小さい体長15cmほどの種類です。寿司ネタやかき揚げの具材としてよく利用されています。

シバエビには、骨の形成や糖質・脂質の代謝に関わるマンガンや、造血作用のある葉酸が多く含まれています。

バナメイエビ

バナメイエビは、クルマエビ科のエビの一種で、台湾や東南アジアで盛んに養殖されています。身の食感は柔らかで、甘味が強くクセがほとんどないため食べやすいエビです。

バナメイエビには、骨を丈夫にするカルシウム、貧血予防に効果的な鉄などのミネラル類が豊富です。

ブラックタイガー(ウシエビ)

ブラックタイガーは、体長30㎝ほどになる、クルマエビ科のなかでも最大の品種です。サイズが大きいことからウシエビという名が付けられました。

弾力のある肉質で、加熱してもプリプリ感が失われにくいのが特徴。食べ応えを重視する方におすすめです。

大正エビ(コウライエビ)

大正エビは、クルマエビの仲間ですが、クルマエビのような縞模様はありません。主に大正エビという生で流通していますが、標準和名はコウライエビです。

大正エビには他のエビより多くのプリン体が含まれているため、尿酸値が高く痛風のリスクがある方は大量摂取を控えましょう。

伊勢エビ

伊勢エビは、体長40cmに達する個体もいる大型の歩行型エビです。日本では高級食材として用いられています。伊勢エビという呼称は、イセエビ科のイセエビに加え、他のイセエビ属のエビを指すときに用いられることもあります。

伊勢エビの特徴は、クルマエビ科のエビと比較してプリン体やコレステロールが少ないこと。伊勢エビのプリン体およびコレステロールの含有量は、クルマエビの2分の1程度なので、尿酸値が気になる方でも適量なら安心して食べられるでしょう。

エビに含まれる成分・栄養素

エビ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

食品名単位しばえび 生バナメイエビ 養殖 生ブラックタイガー 養殖 生大正えび 生いせえび 生くるまえび 養殖 生あまえび 生さくらえび 素干し
廃 棄 率%502015557055650
エネルギー(kcal)kcal/100 g83918295929787312
エネルギー(kJ)kJ/100 g3473823433973854063641305
水 分g/100 g79.378.679.976.376.676.178.219.4
たんぱく質g/100 g18.719.618.421.720.921.619.864.9
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g15.416.2-15.2-17.917.117.9-16.3-
脂 質g/100 g0.40.60.30.30.40.60.34
トリアシルグリセロール当量g/100 g0.20.30.10.10.10.30.12.1
飽和脂肪酸g/100 g0.060.10.040.040.030.080.030.59
一価不飽和脂肪酸g/100 g0.040.050.030.040.030.050.050.63
多価不飽和脂肪酸g/100 g0.080.150.060.060.070.120.060.75
コレステロールmg/100 g17016015016093170130700
炭水化物g/100 g0.10.70.30.1TrTr0.10.1
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g--------
水溶性食物繊維g/100 g0000000-
不溶性食物繊維g/100 g0000000-
食物繊維総量g/100 g0000000-
灰 分g/100 g1.51.31.11.62.11.71.611.6
ナトリウムmg/100 g2501401502003501703001200
カリウムmg/100 g2602702303604004303101200
カルシウムmg/100 g566867343741502000
マグネシウムmg/100 g30373645394642310
リンmg/100 g2702202103003303102401200
mg/100 g11.40.20.10.10.70.13.2
亜鉛mg/100 g11.21.41.41.81.414.9
mg/100 g0.350.330.390.610.650.420.443.34
マンガンmg/100 g0.110.10.020.020.020.020.020.23
ヨウ素µg/100 g-104--4--
セレンµg/100 g-2726--35--
クロムµg/100 g-22--0--
モリブデンµg/100 g--1--1--
レチノールµg/100 g3016003Tr
α-カロテンµg/100 g0000000-
β-カロテンµg/100 g200040490-
β-クリプトキサンチンµg/100 g00-0000-
β-カロテン当量µg/100 g2000404900
レチノール活性当量µg/100 g4016043(Tr)
ビタミンDµg/100 g00000000
α-トコフェロールmg/100 g1.71.71.41.83.81.63.47.2
β-トコフェロールmg/100 g00000000
γ-トコフェロールmg/100 g00.30.100000.1
δ-トコフェロールmg/100 g00000000
ビタミンKµg/100 g00000000
ビタミンB1mg/100 g0.020.030.070.030.010.110.020.17
ビタミンB2mg/100 g0.060.040.030.040.030.060.030.15
ナイアシンmg/100 g2.23.62.62.42.13.81.15.5
ビタミンB6mg/100 g0.10.140.070.070.140.120.040.21
ビタミンB12µg/100 g1.11.20.92.10.31.92.411
葉酸µg/100 g57381545152325230
パントテン酸mg/100 g0.380.230.590.610.411.110.211.16
ビオチンµg/100 g-1.91.9--2.6--
ビタミンCmg/100 g21Tr11TrTr0
食塩相当量g/100 g0.60.30.40.50.90.40.83
アルコールg/100 g--------
硝酸イオンg/100 g--------
テオブロミンg/100 g--------
カフェインg/100 g--------
タンニンg/100 g--------
ポリフェノールg/100 g--------
酢酸g/100 g--------
調理油g/100 g--------
有機酸g/100 g--------
重量変化率%--------
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

エビの効果・効能

エビに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

肝機能を高めるタウリン

エビにはタウリンというアミノ酸が多く含まれています。タウリンは、コレステロールの吸収を抑制する作用のほか、高血圧の予防・視力回復・インスリン分泌促進・疲労回復など多くの効能を持つ栄養素です。

タウリンは、肝臓が分泌する胆汁の成分でもあり、肝臓の機能を高める効果もあります。肝臓にはアルコールを分解する働きがあるため、タウリンが豊富なエビはお酒の飲み過ぎによる悪酔い・二日酔いの予防にも効果的です。

グリシンで睡眠の質を向上

エビには睡眠の質を高めるグリシンというアミノ酸が含まれています。グリシンは、睡眠との関連性が指摘される深部体温を低下させ、眠りの質・量を改善する効果があります。

実際に、グリシンは「睡眠の質の向上」の表示が認められた機能性表示食品の成分にも用いられています。エビは、ぐっすり眠りたいときにもおすすめの食材と言えるでしょう。

アンチエイジングに効果的なアスタキサンチン

アスタキサンチンは、エビやカニに含まれている赤色の天然色素で、ビタミンCの6000倍もの抗酸化力があると言われています。抗酸化力とは、体に悪影響を及ぼす活性酸素を抑制する働きのことで、老化や生活習慣病を予防する力のことです。

エビの殻に多くのアスタキサンチンが含まれるため、アンチエイジングの効果を期待するならエビを丸ごと食べてください。

キチン質(キチン・キトサン)で生活習慣病を予防

エビの殻や尾には、生活習慣病の予防に効果的なキチン質が豊富です。キチン質とはキチン・キトサンの総称で、コレステロールを吸着して排出させる働きがあり、肥満や脂質異常症への効果が期待できます。

キチン・キトサンの摂取には、エビを殻ごと食べられるフライなどの調理方法がおすすめです。

カルシウムで骨・歯の健康を維持

エビには骨や歯の主成分であるカルシウムが含まれています。カルシウムはエビの肉にも含まれていますが、殻や尾に特に豊富です。

カルシウムを多く摂りたいときは、エビの殻や尾も捨てずに食べるようにしましょう。

筋トレの効率を高めるタンパク質が豊富

エビは、高タンパク低脂質な食材で、ダイエットや筋トレを効果的に行いたいときにも最適です。タンパク質が特に多いのは大正エビやクルマエビです。

最もカロリーが低く、脂質の量も少ないのはブラックタイガーなので、ダイエット中にはブラックタイガーがおすすめです。

エビの食べ方

エビの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

エビの栄養を余さず摂取するなら殻・尾も食べる

エビの殻と尾には、強力な抗酸化作用を持つアスタキサンチン・骨と歯を丈夫にするカルシウム・コレステロールを吸着するキチン質といった栄養素が多く含まれています。

栄養を多く摂りたいときは、むきエビではなく殻付きのエビを選びましょう。エビの殻を美味しく食べるには、揚げ物・塩焼きなどの調理方法がおすすめです。殻を捨てずにエビを丸ごと食べることで、ゴミを減らす効果もあります。

栄養価の高い干しエビ

エビを乾燥させた干しエビは、成分が凝縮されていて非常に栄養価の高い食べ物です。エビに含まれるアミノ酸・ミネラルなどの栄養素を少ない量で効率的に摂取したいときは、干しエビを取り入れてみてください。

市販されている干しエビの賞味期限は、未開封の状態で6ヶ月程度と、生のエビと比較して格段に日持ちするというメリットもあります。

妊婦はエビを生で食べないようにする

エビは、刺身や寿司ネタとしても人気のある生で食べられる魚介類です。ただし、免疫力が普段より低下している妊娠中は、食中毒のリスクを考えてエビの生食を控えましょう。

生のエビには、食中毒を引き起こすリステリア菌という細菌や、トキソプラズマという原虫が生息している場合があります。リステリア菌とトキソプラズマは、胎盤を通じて胎児に悪影響を及ぼし、最悪の場合は流産する可能性もゼロではありません。

リステリア菌やトキソプラズマは加熱することで死滅するため、火を通したエビなら妊娠中でも問題なく食べられます。

また、妊婦だけでなく、食中毒を起こしやすい高齢者・子供・基礎疾患のある人も、なるべくエビを生で食べないでください。

コレステロールやプリン体が多いエビは食べ過ぎに注意

エビは、尿酸値を上昇させて痛風を引き起こすプリン体や、脂質異常症の原因となるコレステロールを多く含む食材です。生活習慣病が気になる方は、エビをむやみに食べ過ぎないように気を付けてください。

日本で主に食べられているエビのなかで、プリン体が最も多く含まれているのは大正エビで、最も少ないのは伊勢エビです。伊勢エビは、コレステロールの含有量も少なく、体に優しい食材と言えるでしょう。

また、干しエビにもプリン体やコレステロールが多いので、摂取量には気を付けてください。

エビの保存方法

エビの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

冷蔵保存

エビは、頭と背ワタが付いたままだと傷みやすく、臭みも出やすくなるため注意しましょう。エビを冷蔵保存する場合は、頭を落として背ワタを取り除いておくと、新鮮な状態をより長く保てます。

エビの背わたは、つまようじや竹串を使って抜き取ることができます。エビを冷蔵保存できる期間の目安は2~3日程度です。

冷凍保存

エビを冷凍する場合、冷蔵するときと同じように頭と背ワタは事前に取り除いておきましょう。下処理したエビは、水気をよくふき取ってから冷凍用保存袋に入れて冷凍します。

エビは、加熱することで保存性が高まるため、下茹でしてから冷凍するのもおすすめです。生のエビの冷凍保存期間は2~3週間、加熱したエビの冷凍保存期間は3~4週間を目安としてください。

冷凍したエビの解凍は、冷蔵庫解凍か流水解凍すると臭みが出にくくなります。市販の冷凍エビを解凍する場合も同様です。

参考文献

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