ぎんなんの栄養と効果効能・調理法・保存法

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ginkgo nut

ぎんなんの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、ぎんなんに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

ぎんなんとは

ぎんなん(ginkgo nut)とは、銀杏(いちょう)の木になる種子のことです。果肉の中にある種から殻を取り除いた胚乳を、ぎんなんとして食用にします。

果肉自体は臭いがきついため、食用には向きません。さらに果肉にはギンコール酸が含まれており、素手で触ると皮膚炎を起こす危険性があります。ぎんなんを採る際は、ゴム手袋をつけておくと安心です。

ぎんなんの原産地は中国と言われており、古くからせきや痰を止める薬としても活用されてきました。日本では愛知県祖父江町が名産地として有名で、生産量日本一を誇ります。

もっともおいしくなる旬時期は9月から11月にかけてです。よく見かけるぎんなんは黄色の見た目ですが、新鮮なものは緑色をしています。翡翠色のぎんなんは特有の臭いがほとんどなく、もちもちとした食感が特徴。購入する際のひとつの目安にしてみましょう。

ぎんなんの品種・種類

ぎんなんの種類を紹介します。

金兵衛

金兵衛(きんべえ)の特徴は、実つきの早さです。植え付けからおおよそ3~5年で本格的に収穫できるようになります。

日持ちするため、産地の愛知県祖父江町では7月から翌年の4月まで、長い期間出荷されます。甘みがそこまで強くなく、あっさりとした味わいのぎんなんです。

久寿(久治)

久寿(きゅうじゅ)は金兵衛に比べ貯蔵性に欠けますが、もちもちとした食感で味わい深いのが魅力。苦味も少なく、食べやすい品種です。

藤九郎

藤九郎(とうくろう)は岐阜県瑞穂市生まれの品種です。ほかの品種に比べ、実つきが遅い傾向にあります。

実は大粒で、殻が薄いのが特徴です。種皮が白く、見た目も美しい品種です。

栄神

栄神(えいしん)は殻が固くなるのが早く、夏時期には出荷される品種です。金兵衛と同じく貯蔵性に優れており、4月頃まで楽しめます。実は中粒で、やや縦長の形をしています。

ぎんなんに含まれる成分・栄養素

ぎんなん100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

ぎんなんには、カリウム・β-カロテン・ビタミンCなどの栄養素が多く含まれています。小さいながらも栄養価の高い食品です。

成分表を見ると、生のぎんなんのカロリーは100gあたり168kcal。1粒の重さは約2~3g程度なので、1粒のカロリーはおおよそ3~5kcalと考えられます。

食 品 名単位ぎんなん 生ぎんなん ゆで
廃 棄 率%250
エネルギーkJ710715
kcal168169
水 分g57.456.9
たんぱく質アミノ酸組成によるたんぱく質g4.2-4
たんぱく質g4.74.6
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g1.3-1.2
コレステロールmg00
脂質g1.61.5
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g33.433.6
g
利用可能炭水化物(質量計)g30.430.6
差引き法による利用可能炭水化物g33.934.3
**
食物繊維総量g1.62.4
糖アルコールg--
炭水化物g34.835.8
有機酸g--
灰分g1.51.2
無機質ナトリウムmgTr1
カリウムmg710580
カルシウムmg55
マグネシウムmg4845
リンmg12096
mg11.2
亜鉛mg0.40.4
mg0.250.23
マンガンmg0.260.25
ヨウ素μg2Tr
セレンμg01
クロムμg05
モリブデンμg3Tr
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg00
α|カロテンμg--
β|カロテンμg--
β|クリプトキサンチンμg--
β|カロテン当量μg290290
レチノール活性当量μg2424
ビタミンDμg00
α-トコフェロールmg2.51.6
β-トコフェロールmg0.10.1
γ-トコフェロールmg0.60.3
δ-トコフェロールmg00
ビタミンKμg33
ビタミンB1mg0.280.26
ビタミンB2mg0.080.07
ナイアシンmg1.21
ナイアシン当量mg2.5-2.3
ビタミンB6mg0.070.02
ビタミンB12μg00
葉 酸μg4538
パントテン酸mg1.271.02
ビ オ チ ンμg6.22.8
ビタミンCmg2323
アルコールg--
食塩相当量g00
備 考廃棄部位: 殻及び薄皮薄皮を除いたもの
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ぎんなんの効果・効能

ぎんなんに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

カリウムで高血圧予防

ぎんなんは、ミネラルの一種であるカリウムが豊富です。カリウムは細胞の浸透圧を調節する働きがあり、ナトリウムを体外に排出する作用があります。

ナトリウムの過剰摂取は、高血圧や喉の渇き、体のむくみなどを招く要因となります。特に日本人の高血圧症は、塩分の摂り過ぎがもっとも大きな要因と言われています。高血圧予防として、ぎんなんのようなカリウムが豊富な食品を摂取することが大切です。

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β-カロテンの抗酸化作用

ぎんなんに含まれるβ-カロテンは、抗酸化物質の一種です。抗酸化物質とは体内で活性酸素の働きを抑制したり、除去したりする作用を持つ物質のこと。体内で活性酸素が過剰に生成されると細胞が傷つけられ、老化やガンなどの原因になります。

ぎんなんにはβ-カロテンのほかに、ビタミンCやビタミンEといった抗酸化ビタミンも豊富です。より高い抗酸化作用に期待できるでしょう。

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ビタミンCが免疫力アップをサポート

ビタミンCは人間の白血球やリンパ球に多く含まれている物質です。この白血球やリンパ球には体外から侵入した細菌・ウイルスなどの異物と戦う働きがあります。ビタミンCの摂取は免疫機能の強化につながり、風邪予防や感染症予防に役立つでしょう。

水に溶けやすい性質を持つビタミンCは、摂取しても余剰分は尿として排出されてしまいます。そのため継続的な摂取が必要です。

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ぎんなんの食べ方や注意点

ぎんなんの栄養素を損なわない食べ方・調理方法、注意点などを解説します。

殻と薄皮の取り方

ぎんなんの殻は硬いので、可食部を取り出すにはコツがいります。殻にヒビを入れるには、ペンチや麺棒などを使うのがおすすめです。ぎんなんを取り出したら、たっぷりのお湯で湯がくと、自然と薄皮もはがれてきます。

または、電子レンジを使った方法も手軽です。破裂しないよう事前にぎんなんの殻をペンチなどで割ったら、茶封筒に10~20粒ほど入れて加熱するだけです。40秒から1分ほど加熱したら、殻と薄皮を外します。

苦味がやわらぐ素揚げ

ぎんなん特有の苦味が得意でない人には、素揚げがおすすめです。油によって苦味がやわらぐので、食べやすくなります。

ぎんなんは揚げる前に、あらかじめ殻を取り外しましょう。薄皮は揚げている最中に勝手に外れるので、殻だけ外せれば問題ありません。1~2分ほど揚げたら油を切って、塩をかけて食します。

殻ごと調理する食べ方

事前の下処理が面倒な場合は、殻ごと調理しましょう。フライパンで炒る方法が手軽でおすすめです。

調理方法は殻つきのままフライパンに入れ、塩を振って炒めるだけです。熱が加わると殻が弾けるので、フタをして調理するようにしましょう。10分ほど乾煎りすれば完成です。

食べ過ぎによるぎんなん中毒

ぎんなんを食べ過ぎると、嘔吐やめまいなどの中毒症状が出る場合があります。ひどい場合は痙攣が起きる場合もあるので注意しましょう。

原因はぎんなんに含まれるギンコトキシン(メチルピリドキシン)という物質です。神経伝達物質の生成に関わるビタミンB6の活性を妨げるため、中毒症状につながってしまうと考えられています。

特に、子どもはギンコトキシンの解毒能力が低いので気をつけなければいけません。公共財団法人日本中毒情報センターによれば、同団体に寄せられるぎんなんに関する相談の約7割が5歳以下の中毒症状とのこと。なかには6〜7粒を⾷べた5歳以下の子どもに痙攣症状が出た事例もあります。

同団体の中毒情報データベースでは、経口摂取による中毒症状の危険ラインは小児で7~150粒、成人で40~300粒。個人差はありますが、子供は5粒まで、大人でも10〜15粒程度までに食べる量を抑えるようにしましょう。

妊婦もぎんなんを食べられますが、摂取量の目安は明確に定められていません。万が一のことを考えて、数粒程度に抑えたほうが良さそうです。

ぎんなんの保存方法

ぎんなんの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

常温または冷蔵保存の場合

ぎんなんは高温多湿の場所や、乾燥した場所に置いておくと傷みやすくなってしまいます。必ず涼しい場所で常温保存するか、冷蔵庫の野菜室で冷蔵保存しましょう。その際は殻付きのまま新聞紙にくるんで保存します。

常温なら1ヶ月、冷蔵なら2ヶ月ほど持ちますが、長い間放置すると実が縮んで硬くなってしまいますので早めに食べるようにしましょう。

冷凍保存の場合

さらに使いやすい状態で長期保存する場合は、実の状態で冷凍保存しましょう。殻を取ったぎんなんを塩茹でし、薄皮を外して冷凍します。保存袋に小分けにして保存すると、さらに便利です。

冷凍での保存期間は約2ヶ月ほど。凍ったまま茶碗蒸しや、炊き込みのご飯の具材に使えます。

参考文献

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