マグネシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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マグネシウムの基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、1日の摂取目安量、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
マグネシウムとは
マグネシウム(magnesium)は、原子番号12、元素記号Mgの金属元素のひとつ。
カルシウムの働きをサポートし、カルシウムが骨から溶出するのを防いだり、血流を整えたりする働きを持ったミネラルです。
体内含有量は0.14%(成人の場合およそ20~25g)であり、そのうち50~60%が骨として存在することから「骨のミネラル」とも。
体の中でもっとも含有量の多いカルシウムに比べると少ないですが、人体に含まれるミネラルとしては決して少なくありません。
マグネシウムは多くの食品に含まれるため、マグネシウム欠乏症と認められるほど欠乏することは稀なものの、近年はマグネシウム摂取量の不足が指摘されています。
特に日本人は軟水を常飲しているため、マグネシウムをはじめとする各種ミネラルを豊富に含んだ硬水を常飲する欧米諸国の人と比べるとミネラルが不足しやすいのです。
マグネシウムは、カルシウムやリンと共に骨や歯を形成する働きが代表的ですが、それに加えて補酵素(コエンザイム)として体内に300種類以上存在する酵素の働きをサポートする役割も持っています。
そのため、糖質・脂質・タンパク質をスムーズに代謝するために欠かせない重要な栄養素でもあります。
マグネシウムの効果・働き
マグネシウムの持つ効果・効能・働きについて解説します。
酵素を活性化させてエネルギーの代謝をスムーズに
マグネシウムは、酵素が働くために必要な「活性化」という過程において必須です。
三大栄養素すべての代謝に関わりますが、特に炭水化物(糖質)の代謝に必須であり、十分なマグネシウムがあることによってエネルギーの代謝がスムーズになります。
丈夫な骨を形成する
マグネシウムは、カルシウム・リンとともに骨や歯を形成するために重要なミネラルです。
マグネシウムは骨に弾力性を与えて、しなやかな骨を維持する働きがあります。
また、マグネシウムがカルシウムをコントロールしており、骨や歯に十分なカルシウムを行き届かせるためにもマグネシウムが必要です。
そのため、カルシウムの摂取量が増えるとマグネシウムの必要量もそれに伴って増えます。
高血圧を予防する
マグネシウムは血管の動脈を弛緩させる働きがあり、これによって血圧を下げて高血圧の予防に繋がります。
心疾患を予防する
マグネシウムは筋肉の収縮を円滑にする働きがあり、この働きによって心臓が規則正しく動くことができます。
マグネシウムが不足すると、筋肉の収縮がうまくいかず痙攣やふるえなどが起こり、心筋梗塞などのリスクが高まります。
精神を安定させる
マグネシウムには、神経伝達物質の情報伝達を正常に保つ働きがあります。
これにより、精神的なイライラなどを和らげ、精神を安定させます。
マグネシウムが不足・欠乏すると起こる症状
マグネシウムが不足・欠乏すると、次の症状が起こります。
- 吐き気
- 嘔吐
- 眠気
- 脱力感
- 筋肉の痙攣、ふるえ、手や足がつる
- ふるえ
- 食欲不振
- イライラ
なお、長期にわたってマグネシウムが不足すると、上記の症状以外に、骨粗しょう症・心疾患・糖尿病などの生活習慣病リスクを上昇させることが示唆されています。
しかしこれらのリスクは、化学的根拠の蓄積がまだ不十分として、日本人の食事摂取基準(2020 年版)では摂取目安量を設定するうえで考慮に含めていません。
マグネシウムが不足・欠乏する原因と対策
血中のマグネシウム濃度は一定に保たれていて、欠乏すると腎臓からマグネシウムが再吸収されるほか、骨のマグネシウムが溶出します。
それでも足りない場合は、低マグネシウム血症となります。
低マグネシウム血症とは,血清マグネシウム濃度が1.8mg/dL(0.70mmol/L)未満となった状態のことを言い、陥る原因は次の通りです。
- 摂取不足
- 吸収不足
- 高カルシウム血症
- 薬物による排泄増加
通常の生活において、マグネシウム欠乏と断定できるような欠乏症が見られることは稀です。
そのため、マグネシウム欠乏には多くの場合、摂取不足だけでなく吸収不足や排泄増加といった原因が関係しています。
対策としては、サプリメントなどによってマグネシウムを補充することが推奨されます。
マグネシウムを過剰摂取すると起こる症状
マグネシウムを食品以外のサプリメントなどから過剰に摂取すると、次の症状が起こる可能性があります。
- 高マグネシウム血症による血圧低下・吐き気・心電図異常など
- 下痢
マグネシウムを取り過ぎた際に引き起こされる副作用のなかで、もっとも初期に引き起こされるものが下痢です。
マグネシウムの摂取によって、大半の人にとって問題のない量だったとしても、一部の人で軽度の下痢が起こる可能性があります。
そのため、日本人の食事摂取基準(2020 年版)では、下痢の有無をマグネシウムの耐容上限量を決めるうえで指標としました。
なお、これらの症状はあくまでもサプリメントなどによって過剰摂取した場合の副作用であり、食品からの過剰摂取によって健康被害が引き起こされたという報告は見当たらないことから、通常の食事で摂取するマグネシウム量には特に上限を定めていません。
マグネシウムの1日の摂取目安量
マグネシウムの1日の摂取目安量は、成人男性で320~370mg、成人女性で260~290mgです。
これは、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に登録された食品の中で最も多くマグネシウムを含む「あおさ」で摂取した場合、およそ10gで十分な量となります。
なお前項の通り、マグネシウムは食品以外から摂取すると、軽度の下痢、腎機能の低下した一部の人において高マグネシウム血症などの症状を引き起こす可能性があるため、サプリメントなどからの摂取に関してのみ耐容上限量が定められています。
通常の食品以外からのマグネシウムの摂取耐容上限量は、成人の場合350mg/日、小児では体重1kgあたり5mg/日です。
マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)
性 別 | 男 性 | 女 性 | ||||||
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 1 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 1 |
0 ~ 5 (月) | ─ | ─ | 20 | ─ | ─ | ─ | 20 | ─ |
6 ~11(月) | ─ | ─ | 60 | ─ | ─ | ─ | 60 | ─ |
1 ~ 2 (歳) | 60 | 70 | ─ | ─ | 60 | 70 | ─ | ─ |
3 ~ 5 (歳) | 80 | 100 | ─ | ─ | 80 | 100 | ─ | ─ |
6 ~ 7 (歳) | 110 | 130 | ─ | ─ | 110 | 130 | ─ | ─ |
8 ~ 9 (歳) | 140 | 170 | ─ | ─ | 140 | 160 | ─ | ─ |
10~11(歳) | 180 | 210 | ─ | ─ | 180 | 220 | ─ | ─ |
12~14(歳) | 250 | 290 | ─ | ─ | 240 | 290 | ─ | ─ |
15~17(歳) | 300 | 360 | ─ | ─ | 260 | 310 | ─ | ─ |
18~29(歳) | 280 | 340 | ─ | ─ | 230 | 270 | ─ | ─ |
30~49(歳) | 310 | 370 | ─ | ─ | 240 | 290 | ─ | ─ |
50~64(歳) | 310 | 370 | ─ | ─ | 240 | 290 | ─ | ─ |
65~74(歳) | 290 | 350 | ─ | ─ | 230 | 280 | ─ | ─ |
75 以上(歳) | 270 | 320 | ─ | ─ | 220 | 260 | ─ | ─ |
妊婦(付加量) | +30 | +40 | ─ | ─ | ||||
授乳婦(付加量) | +0 | +0 | ─ | ─ |
出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)
マグネシウムを多く含む食品
マグネシウムを多く含む食品を、全食品・穀類・豆類・種実類・野菜・海藻・魚介類の順で、それぞれランキング形式で紹介します。
マグネシウムを多く含む食品ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | 藻類/あおさ/素干し | 3200 |
2 | 藻類/あおのり/素干し | 1400 |
3 | 藻類/わかめ/乾燥わかめ/素干し | 1100 |
3 | 藻類/てんぐさ/素干し | 1100 |
5 | 藻類/ひとえぐさ/素干し | 880 |
6 | 穀類/こめ/[その他]/米ぬか | 850 |
7 | 調味料及び香辛料類/バジル/粉 | 760 |
8 | 藻類/ふのり/素干し | 730 |
9 | 藻類/(こんぶ類)/刻み昆布 | 720 |
10 | 藻類/まつも/素干し | 700 |
10 | 藻類/(こんぶ類)/ながこんぶ/素干し | 700 |
マグネシウムを多く含む穀類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | 米ぬか | 850 |
2 | そば粉/表層粉 | 340 |
3 | 小麦はいが | 310 |
4 | アマランサス/玄穀 | 270 |
5 | そば粉/中層粉 | 220 |
6 | そば粉/全層粉 | 190 |
7 | キヌア/玄穀 | 180 |
8 | もろこし/玄穀 | 160 |
9 | そば/そば米 | 150 |
10 | 強力粉/全粒粉 | 140 |
10 | こむぎ/[玄穀]/輸入/硬質 | 140 |
マグネシウムを多く含む豆類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | 大豆たんぱく/粒状大豆たんぱく | 290 |
2 | きな粉/全粒大豆/黄大豆 | 260 |
3 | きな粉/脱皮大豆/黄大豆 | 250 |
3 | いり大豆/青大豆 | 250 |
3 | 全粒/ブラジル産/黄大豆/乾 | 250 |
6 | きな粉/全粒大豆/青大豆 | 240 |
6 | いり大豆/黄大豆 | 240 |
8 | 全粒/米国産/黄大豆/乾 | 230 |
8 | つるあずき/全粒、乾 | 230 |
10 | 全粒/国産/黄大豆/乾 | 220 |
10 | 湯葉/干し/乾 | 220 |
10 | いり大豆/黒大豆 | 220 |
10 | 全粒/中国産/黄大豆/乾 | 220 |
10 | 大豆たんぱく/濃縮大豆たんぱく | 220 |
10 | きな粉、脱皮大豆、青大豆 | 220 |
マグネシウムを多く含む種実類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | かぼちゃ/いり、味付け | 530 |
2 | すいか/いり、味付け | 410 |
2 | あまに/いり | 410 |
4 | あさ/乾 | 400 |
5 | ひまわり/フライ、味付け | 390 |
6 | ブラジルナッツ/フライ、味付け | 370 |
6 | ごま/乾 | 370 |
8 | チアシード/乾 | 360 |
8 | ごま/いり | 360 |
10 | けし/乾 | 350 |
マグネシウムを多く含む野菜ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | 干しわらび、乾 | 330 |
2 | とうがらし/果実、乾 | 190 |
3 | ドライトマト | 180 |
4 | 切干しだいこん/乾 | 160 |
5 | 干しぜんまい/干し若芽、乾 | 140 |
5 | きく/菊のり | 140 |
7 | 干しずいき、乾 | 120 |
8 | かんぴょう/乾 | 110 |
9 | らっかせい/未熟豆、生 | 100 |
10 | とうがらし/葉・果実、油いため | 87 |
マグネシウムを多く含む海藻ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | あおさ/素干し | 3200 |
2 | あおのり/素干し | 1400 |
3 | てんぐさ/素干し | 1100 |
3 | 乾燥わかめ/素干し | 1100 |
5 | ひとえぐさ/素干し | 880 |
6 | ふのり/素干し | 730 |
7 | 刻み昆布 | 720 |
8 | ながこんぶ/素干し | 700 |
8 | まつも/素干し | 700 |
10 | みついしこんぶ/素干し | 670 |
マグネシウムを多く含む魚介類ランキング
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | かに類/加工品/がん漬 | 530 |
2 | えび類/加工品/干しえび | 520 |
3 | えび類/さくらえび/素干し | 310 |
4 | えび類/さくらえび/煮干し | 260 |
5 | いわし類/かたくちいわし/煮干し | 230 |
6 | とびうお/焼き干し | 200 |
7 | いわし類/かたくちいわし/田作り | 190 |
7 | いわし類/たたみいわし | 190 |
9 | きびなご/調味干し | 170 |
9 | いか類/加工品/するめ | 170 |
9 | とびうお/煮干し | 170 |
マグネシウムを効率よく摂取する方法
マグネシウムは、加工すると失われやすいため、なるべくそのまま摂取するよう心がけましょう。
また、肉やインスタント食品、清涼飲料水などに含まれるリンを一緒に摂ると、マグネシウムの吸収を妨げてしまいます。
マグネシウムは加熱調理による損失はないものの、水に溶けやすいため水洗いは手早く済ませ、ゆで汁や煮汁ごと食べられる調理法を選ぶのがベストです。
また、マグネシウムはカルシウムとの摂取量のバランスが重要な栄養素でもあります。
カルシウムをしっかり摂っていても、マグネシウムが不足すればカルシウムが十分に働かず、不足しているのと同じ状態になってしまうのです。
カルシウムとマグネシウムは、2:1の割合で摂るのが理想的とされています。