カシスの栄養と効果効能・調理法・保存法

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cassis

カシスの旬や原産地などの基本情報、似た食品との違い、カシスに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

カシスとは

カシス(cassis)とは、濃い紫色の果実をつけるスグリ科の低木です。「カシス」はフランス語での名称で、和名では「クロスグリ」と呼ばれます。そのほかに、「クロフサスグリ」や、「ブラックカラント」と呼ばれることもあります。大きく分類すると、ブルーベリーやラズベリーなどと同じ仲間です。

野生種のカシスは、古代から北ヨーロッパに自生しており、フランス人によって発見されました。1500年代後半に、カシスのもたらす健康効果を期待して、民間療法に使われる薬として使われ始めます。その後、カシスの健康効果に関する論文が発表されるなど、注目を集めて、1800年代に栽培がピークになりました。

現在は、ポーランドやフランス、ニュージーランドを中心に、栽培されています。国内の生産量第1位は、青森県です。

国産カシスの旬は7~8月で、黒に近い紫色の直径1cm程度の果実をつけます。カシスの果実は酸味やえぐみが強く、日本では主にカクテルやジュース、ジャムに加工されます。

カシスと似た食品との違い

フサスグリ、ブルーベリー、ブラックベリーなど、カシスと似た食品との違いを解説します。

フサスグリ

フサスグリはカシスと同じスグリ科の植物で、「アカスグリ」や「レッドカラント」とも呼ばれます。

カシスとは異なり、果実が鮮やかな赤色をしていることが特徴です。ジャムやゼリー、果実酒に加工して利用されます。

フサスグリのなかには、赤ではなく白い果実をもった「シロスグリ」もあり、シロスグリは酸味が弱いため、生食用としてケーキやお菓子に乗せて使います。

ブルーベリー

ブルーベリーの果実はカシス似た濃い青紫色をしていますが、ブルーベリーはスグリ科ではなく、ツツジの仲間です。果実の大きさは1.5~2cm程度で、カシスよりも少し大きい点で異なります。

カシスとは異なり、ブルーベリーの果実は酸味が少なく、生食用としても人気の果実です。ジャムやソース、ジュースなどの加工品としても、流通します。

ブルーベリーには、アントシアニンなどのポリフェノールが豊富に含まれます。カシスと同様に、目の健康を保ったり、血流をよくしたりする働きがあり、健康食材として注目をされている食べ物です。

ブルーベリーの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

ブラックベリー

カシスの果実が黒っぽい紫色をしていることから、ブラックベリーとイメージが似ていますが、ブラックベリーはキイチゴの仲間です。ブラックベリーの果実は、桑の実状になっており、小さな粒が集まって1つの果実を形成しています。

果実はカシスよりも大きく、2~3cm程度。イチゴのようにヘタがついているのが特徴です。

ブラックベリーの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA

カシスに含まれる成分・栄養素

カシス100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

カシスには、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。とくにビタミンCやビタミンB2が多いことが特徴です。似た食品であるブルーベリー(生100g)と比較して、ビオチンやβ‐カロテンを多く含みます。

食 品 名単位カシス 冷凍ブルーベリー 生
廃 棄 率%00
エネルギーkJ257201
kcal6248
水 分g79.486.4
たんぱく質アミノ酸組成によるたんぱく質g1.1-0.3
たんぱく質g1.60.5
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g1.1-0.1
コレステロールmg-0
脂質g1.60.1
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g0-8.6
g
利用可能炭水化物(質量計)g--8.6
差引き法による利用可能炭水化物g6.49.8
**
食物繊維総量g6.43.3
糖アルコールg--
炭水化物g13.412.9
有機酸g3.5-
灰分g0.70.1
無機質ナトリウムmgTr1
カリウムmg27070
カルシウムmg408
マグネシウムmg195
リンmg549
mg0.50.2
亜鉛mg0.20.1
mg0.080.04
マンガンmg0.260.26
ヨウ素μg00
セレンμg00
クロムμg1Tr
モリブデンμg41
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg-0
α|カロテンμg20
β|カロテンμg10055
β|クリプトキサンチンμg10
β|カロテン当量μg11055
レチノール活性当量μg95
ビタミンDμg-0
α-トコフェロールmg2.11.7
β-トコフェロールmgTrTr
γ-トコフェロールmg0.30.6
δ-トコフェロールmgTrTr
ビタミンKμg30-15
ビタミンB1mg0.030.03
ビタミンB2mg0.030.03
ナイアシンmg0.30.2
ナイアシン当量mg0.6-0.2
ビタミンB6mg-0.05
ビタミンB12μg-0
葉 酸μg-12
パントテン酸mg-0.12
ビ オ チ ンμg5.71.1
ビタミンCmg-9
アルコールg--
食塩相当量g00
備 考別名:くろふさすぐり、くろすぐり食物繊維:AOAC2011.25法タンニン:0.8gポリフェノール:0.6g試料: ハイブッシュブルーベリー果実全体
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

カシスの効果・効能

カシスに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

ビタミンAで免疫機能アップ

ビタミンAは、脂溶性ビタミンの1つで、目の網膜細胞を保護したり、視細胞の機能に関与したりする栄養素です。

乳幼児でビタミンAが不足すると、角膜乾燥症を引き起こす恐れもあります。成人の場合はビタミンAの欠乏により、暗いところで目が見えにくくなる、夜盲症を引き起こします。

またビタミンAは、皮膚や粘膜を健康に保つ役割のあるビタミンです。粘膜を保護することで、ウイルスや細菌などの病原菌が、体内に侵入するのを阻止します。ビタミンAは、免疫機能を保つのに欠かせません。

ビタミンAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ|NANIWA SUPLI MEDIA

ビタミンB2が皮膚を健康に保つ

ビタミンB2は、糖質やタンパク質、脂質の代謝を促進する役割をもったビタミンB群の1つです。栄養素を効率よく分解し、エネルギーに変える働きをします。ビタミンB2は、体の発育に欠かせない栄養素です。

また体内にあるビタミンB2の70~90%が活性型で、細胞の再生にかかわる酵素の働きをサポートする作用をもっています。皮膚や髪の炎症を抑え、健康に保つ効果があります。肌荒れやにきびが気になる人は、積極的に摂取したいビタミンです。

ビタミンB2の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

ビタミンCの抗酸化作用で老化予防

ビタミンCには、老化の原因となる活性酵素を除去する、抗酸化作用の強い栄養素です。活性酵素の産生を抑制することで、有害物質の影響による老化や動脈硬化を予防します。

またビタミンCは、ストレスを感じたときにも、積極的に摂取したいビタミンです。ビタミンCは、ストレスによって分泌が促進される副腎皮質ホルモンや、アドレナリンなどのホルモン合成にも関与します。

ストレスを受けることによって、ビタミンCが大量に消費されるため、ビタミンCを多く含む食べ物を食べるとよいでしょう。

ビタミンCの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

アントシアニンは視力改善・眼精疲労に効果的

アントシアニンとは、赤・青・紫の色素を作っている植物の天然成分で、ポリフェノールの1種です。カシスのほかには、ブルーベリーやブドウなど青紫色の植物に多く含まれます。

目の網膜にあるロドプシンと呼ばれる、光の受容体を合成する働きをもっているため、視力改善に効果的な栄養素として知られています。

またアントシアニンは、強い抗酸化作用をもつ栄養素です。眼精疲労や老化防止に効果的であると考えられ、白内障や緑内障などの疾患に、アントシアニンがどのように関与するかの研究が続けられています。

ポリフェノールの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

カシスの食べ方

カシスの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

カシスジャムでアントシアニンを毎日摂取

カシスは酸味が強いため、砂糖と一緒に煮込むジャムは、カシスのおすすめの食べ方です。一般的なジャムの作り方と同様に、鍋で砂糖と煮詰めます。

酸味と甘味のバランスがよいカシスジャムは、ヨーグルトやパンに合います。朝食に取り入れることで、無理なくカシスの栄養素を摂取できるでしょう。

カシスの生ピューレで

カシスの生ピューレは、ムースやケーキなどに使えるほか、そのままアイスクリームやヨーグルトにかけて食べられます。砂糖が入っていないピューレは、肉料理のソースやドレッシングにもおすすめです。

自宅でカシスの生ピューレを作る際は、冷凍カシスをそのまま、ミキサーやすりおろし器ですり潰します。裏ごしすることで滑らかになりますが、あえて荒くすり潰すことで、食感を変えられます。

クレーム・ド・カシスは料理にも使える

クレーム・ド・カシスとは、カシスを使ったリキュールです。カクテルとして飲むほか、料理にも使えます。

お菓子の香りづけや、煮込み料理でワインの代わりに使うのがおすすめです。とくに肉料理と相性が抜群で、ソースの材料としても利用できます。

カシスの保存方法

カシスの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

生のカシスは傷みやすい

日本で入手できるカシスは、ほとんどの場合は冷凍カシスか加工されたものです。

しかし、「青森カシス」などのブランド化されたカシスも増え、生のカシスを入手した場合は、どのように保存すればよいか迷うでしょう。

ビタミンCが豊富な生のカシスは、時間の経過とともにビタミンCが酸化して、風味が変わってしまいます。栄養素を損なわないためにも、生のカシスはすぐに消費しましょう。

カシスは冷凍保存してそのまま調理

生のカシスは冷凍保存することで、1~2年程度の保存が可能です。日本では、主に冷凍カシスが流通しており、購入後はそのまま冷凍庫で保存します。

生食をする場合は、完全に解凍すると、食感が変わってしまうことがあります。カシスを加熱せずに食べたいときは、半解凍の状態で食べると食感を損ないません。ジャムやソースに使うときは、解凍せずにそのまま調理できます。

開封後のカシスリキュールは冷蔵保存

カシスリキュール「クレーム・ド・カシス」は、「度数が低い」「果実を使用している

」「蒸留されていない」といった理由から、風味の劣化が早いリキュールです。

酸化しやすく、味や栄養素が変化しやすいため、開封後は冷蔵庫で保存し、早めに消費しましょう。日光や高温にさらされると、酸化が早く進むことに注意します。

参考文献

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