アミノ酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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アミノ酸の基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
アミノ酸とは
アミノ酸(amino acid)とは、窒素を含みタンパク質を構成する化合物の総称です。
自然界には500種類以上のアミノ酸が存在すると考えらえれていますが、人体を構成するアミノ酸は20種類。アミノ酸は人体の約40%を構成しており、人体には欠かせない栄養素です。
食品を食べると、消化管でアミノ酸に分解されて体内に吸収されます。体内では、再度タンパク質に合成されるだけでなく、再合成されずにアミノ酸単体で働く種類もあります。
体内で再合成されるアミノ酸は、身体を構成したりエネルギー合成に利用されたりする仕組みです。
タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
アミノ酸の種類
人体を構成するアミノ酸は全部で20種類あり、タンパク質を合成するために欠かせない栄養素です。20種類のアミノ酸は、体内で合成できない必須アミノ酸と、合成できる非必須アミノ酸に分類されます。
ここでは、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分けて紹介します。
必須アミノ酸
必須アミノ酸は体内で合成できないため、食品として摂取する必要のあるアミノ酸です。下記の9種類のアミノ酸が必須アミノ酸と呼ばれます。
種類 | 特徴 | 主な作用 |
メチオニン | 硫黄を含むため含硫アミノ酸とも呼ばれる。穀類に少なく、肉類・魚介類・豆類・乳製品に多く含まれる。 | ヒスタミンの働きを抑制肝機能の促進抗うつ作用抗酸化作用 |
フェニルアラニン | 芳香族アミノ酸の1つで、神経伝達物質を合成する。人工甘味料の材料にもなる。 | 鎮痛作用抗うつ作用記憶力・集中力の向上 |
リシン(リジン) | 植物性タンパク質に少ないアミノ酸。豆類や肉類、魚介類に多く含まれる。 | 肝機能の促進成長促進代謝促進 |
ヒスチジン | 芳香族アミノ酸の1つ。体内でヒスタミンへ変換されて神経機能に働く。 | 成長の促進神経機能の補助皮膚機能の維持 |
トリプトファン | 芳香族アミノ酸の1つ。神経伝達物質の材料となって精神安定に働く。 | 抗うつ作用鎮痛作用 |
イソロイシン | BCAA(分岐鎖アミノ酸)の1つ。筋肉に関わるアミノ酸で、肝機能の促進にも働く。 | 筋肉強化成長促進血糖値上昇を抑制 |
ロイシン | BCAA(分岐鎖アミノ酸)の1つ。肉類や魚介類に多く含まれ、筋肉や肝臓に働く。 | 筋肉強化肝機能の促進 |
バリン | BCAA(分岐鎖アミノ酸)の1つ。血中窒素バランスの調整作用をもつ。 | 肝機能の促進筋肉強化 |
トレオニン(スレオニン) | 動物性タンパク質に多く含まれるアミノ酸。アミノ酸20種類のうち最後に発見された。 | 脂肪肝の予防成長の促進 |
トリプトファンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
BCAAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
非必須アミノ酸
必須アミノ酸以外のアミノ酸を、非必須アミノ酸と呼びます。非必須アミノ酸は体内で合成できるため、必ずしも食事から摂取する必要はありません。
種類 | 特徴 | 主な作用 |
チロシン | 芳香族アミノ酸の1つ。フェニルアラニンから合成される。 | 抗うつ作用自律神経の調整 |
システイン | メチオニンから合成されるアミノ酸。 | メラニン合成を抑制抗酸化作用爪・髪の健康維持 |
アスパラギン酸 | エネルギー源として利用されるアミノ酸。旨味成分として知られている。 | エネルギー産生疲労回復利尿作用 |
アスパラギン | アスパラガスで最初に見つかったことから名付けられた。アスパラギン酸から合成される。 | 運動持久力の向上利尿作用 |
セリン | 細胞膜の材料になるアミノ酸。角質にも多く含まれる。 | 皮膚・髪の健康維持脳機能の維持 |
グルタミン酸 | 神経伝達物質として働くアミノ酸。旨味成分として知られている。 | 脳機能の維持利尿作用GABAの生成 |
グルタミン | 体内に最も多いアミノ酸。グルタミン酸から合成される。 | 筋肉の分解抑制免疫力の向上消化促進 |
プロリン | 皮膚のコラーゲンの主要構成成分。グルタミン酸から合成される。 | 皮膚の健康維持エネルギー産生 |
グリシン | DNAやRNAの合成に必要なアミノ酸。ヘモグロビン合成やエネルギー産生にも使われる。 | 皮膚の健康維持抗炎症作用睡眠促進 |
アラニン | 甘味と旨味をもつアミノ酸で、調味料にも使われる。グルタミン酸から合成される。 | 肝機能の促進脂質代謝の促進疲労回復 |
アルギニン | 非必須アミノ酸に含まれるが、子どもは体内で十分に合成できない。 | エネルギー産生免疫力の向上筋肉強化 |
その他のアミノ酸
必須アミノ酸や非必須アミノ酸以外にも、自然界には数多くのアミノ酸が存在します。ここでは、タンパク質を構成せずに単独で働くアミノ酸を解説します。
種類 | 特徴 | 主な作用 |
オルニチン | アンモニアを無害化するために必要なアミノ酸。しじみに多く含まれる。 | 肝機能の促進二日酔い改善 |
シトルリン | スイカなどのウリ科植物に多く含まれる。一酸化窒素の生成に関与する。 | 血管拡張作用むくみ解消疲労回復 |
タウリン | 硫黄を含む含硫アミノ酸の1つ。魚介類・軟体生物に多く含まれる。 | 疲労回復高血圧予防 |
テアニン | 緑茶に多く含まれる旨味成分の1つ。 | 冷え性の改善高血圧の予防リラックス効果 |
GABA(γ‐アミノ酪酸) | 自然界に広く分布している。グルタミン酸から合成され、神経伝達物質として働く。 | 精神安定作用血圧低下作用 |
オルニチンの効果・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
GABAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
アミノ酸の効果・働き
アミノ酸の効果・効能について解説します。
筋肉を増強する
筋肉の主成分はタンパク質で、アミノ酸を多く含む食品を食べることで筋肉増強効果を期待できます。とくにBCAAと呼ばれるバリン・ロイシン・イソロイシンは、筋肉を強化する働きのあるアミノ酸です。
筋肉量を維持・増強するだけでなく、持久力の向上や筋疲労の回復にも働きます。
肌や髪を健康に保つ
アミノ酸は皮膚や髪の構成成分でもあり、健康に維持する働きをもつ栄養素です。そんなアミノ酸の中でも、特にヒスチジン・システイン・セリン・グリシンなどが皮膚や髪の美容効果に関わっています。
また、むくみ解消にもアミノ酸の効果が期待されます。むくみとは、血流が悪くなって血中の水分が組織内に溜まった状態です。シトルリンやテアニンには血流を促進する効果があり、手足のむくみも解消します。
免疫力を向上させる
アミノ酸の中には、免疫力を向上させる効果のある種類もあります。免疫力の向上を主な作用とするのは、アルギニン・グルタミン・シスチン・テアニンなどです。
身体は免疫細胞によって、外部から侵入する病原体から守られています。免疫細胞はタンパク質で作られており、タンパク質を構成するアミノ酸が必要不可欠です。
精神を安定させる
トリプトファンやチロシンには、精神を安定させる抗うつ作用があります。
精神を安定させるのは、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質です。体内のセロトニンが減少すると、不安やうつ症状を引き起こすと考えられています。セロトニンはトリプトファンから合成されるため、トリプトファンを積極的に摂取すると精神を安定させるのに役立ちます。
またチロシンは、アドレナリンやドーパミンの材料となるアミノ酸です。アドレナリンやドーパミンも神経伝達物質で、脳を興奮させたり集中力を高めたりする効果があります。アドレナリンやドーパミンが不足すると、うつ症状を引き起こすと考えられているため、チロシンも精神を安定させる効果を期待できます。
代謝促進によるダイエット効果も期待できる
アミノ酸は酵素として働き、代謝を促進します。酵素とは、栄養素の分解やエネルギー産生に欠かせない物質です。
代謝が促進されると、栄養素がエネルギーに変換されて消費されます。代謝が滞ると体内に脂質や糖質が蓄積し、内臓脂肪へと変わります。代謝を上げると太りにくい体質になる、と言われるのはこのためです。
アミノ酸には代謝を促進する効果があるため、ダイエットをするときに積極的に摂りたい栄養素です。
二日酔いの症状を軽減させる
アルコールを過剰摂取すると、肝臓のアルコール代謝が追いつかなくなります。その結果、アルコール代謝の過程で産生されるアセトアルデヒドによって、吐き気や頭痛などの症状が引き起こされます。
オルニチンは有害なアンモニアを解毒して、無害な尿素に変える働きのあるアミノ酸です。
肝機能を向上させる効果があるため、溜まったアセトアルデヒドを処理しやすくなり、二日酔いの症状を軽減すると考えられます。
アミノ酸が不足・欠乏すると起こる症状
アミノ酸のうち、非必須アミノ酸は体内で合成できるため、不足する心配はほとんどありません。しかし、必須アミノ酸は体内で合成できず食事から摂取する必要があるため、無理なダイエットや偏った食事を続けると不足してしまいます。
アミノ酸の不足や欠乏によって起こる症状は、以下のとおりです。
- 筋肉量の低下
- 脱毛・髪のパサつき
- 皮膚の潤い低下・炎症
- 免疫力の低下
- 脳機能の低下
- うつ症状・不眠
アミノ酸は身体を構成する栄養素のため、不足すると皮膚・髪・爪などのトラブルを引き起こします。目に見えない部分でも、免疫力の低下や記憶力の低下を引き起こす恐れもあります。
アミノ酸を過剰摂取すると起こる副作用
必要以上に摂取したアミノ酸は分解されて体外へ排出されるため、通常の食事で過剰摂取する心配はありません。
しかし、サプリメントとしてアミノ酸を摂取した場合は、過剰摂取になることもあります。また、特定のアミノ酸ばかりを摂取すると成長遅滞が起こることも示唆されており、好ましくありません。
アミノ酸の過剰摂取による副作用は、主に以下のとおりです。
- 腎機能障害
- 肝機能障害
アミノ酸は肝臓や腎臓で代謝されるため、過剰摂取により腎機能や肝機能が障害されるリスクが高まると考えられます。
アミノ酸の1日の摂取目安量
タンパク質の1日の摂取推奨量は、18~64歳の男性で65g、18歳以上の女性で50gです。
また、身体の成長・維持に必要な必須アミノ酸の1日量は、下表のとおりとなっています。
<必須アミノ酸の体重1kg当たりの必要量(単位mg)>
アミノ酸の種類 | 1~2歳 | 3~10歳 | 11~14歳 | 15~17歳 | 18歳以上 |
含硫アミノ酸 | 22 | 17 | 17 | 16 | 15 |
芳香族アミノ酸 | 40 | 30 | 30 | 28 | 25 |
リシン | 44 | 35 | 35 | 33 | 30 |
ヒスチジン | 15 | 12 | 12 | 11 | 10 |
トリプトファン | 6.4 | 4.8 | 4.8 | 4.5 | 4.0 |
イソロイシン | 27 | 22 | 22 | 21 | 20 |
ロイシン | 54 | 44 | 44 | 42 | 39 |
バリン | 36 | 29 | 29 | 28 | 26 |
トレオニン(スレオニン) | 24 | 18 | 18 | 17 | 15 |
合計 | 267 | 212 | 212 | 200 | 183 |
表では、「体重1kgあたりの必要量(mg)」を表しています。たとえば18歳で体重60kgの人では、183mg × 60kg = 10,980mgとなり、1日当たり10,980mgの必須アミノ酸が必要です。
なお「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書では、フェニルアラニンとメチオニン単体の数値が示されておらず、含硫アミノ酸・芳香族アミノ酸として記載があります。
アミノ酸を多く含む食品
アミノ酸はタンパク質を構成する栄養素であり、1つでも不足すると体内で合成されるタンパク質の量が不足します。そのため、とくに必須アミノ酸をバランスよく摂取することが重要です。しかし、食品に含まれるアミノ酸の種類はさまざまで、食品によっては必須アミノ酸のバランスが悪いものもあります。
そこで、食品に含まれる必須アミノ酸のバランスを数値化し、上限を100として表したものがアミノ酸スコアです。アミノ酸スコアが高いほど、必須アミノ酸がバランスよく含まれており、体内のタンパク質合成が正しく行われる目安になります。
主な食品(100gあたり)のアミノ酸含有量の合計とアミノ酸スコアは、以下のとおりです。表を見ると、穀類や野菜はアミノ酸スコアが低く、肉類や乳製品などの動物性タンパク質が豊富な食品ほど高い傾向があることがわかります。
食品名 | アミノ酸スコア | アミノ酸含有量合計(mg) |
精白米 | 65 | 2,400 |
大豆 | 100 | 16,000 |
卵 | 100 | 13,000 |
牛乳 | 100 | 3,400 |
肉類 | 100 | 約20,000 |
じゃがいも | 68 | 1,500 |
トマト | 48 | 580 |
みかん | 50 | 490 |
食品成分データベース|文部科学省
アミノ酸を効率よく摂取する方法
アミノ酸を効率よく摂取するには、アミノ酸代謝に関わる栄養素と一緒に食べるのがおすすめです。アミノ酸代謝を促進するビタミンB6や、ビタミンB12を多く含む食品と一緒に摂取しましょう。
また、肌や髪の美容効果を期待する場合は、アミノ酸だけでなくビタミンCも積極的に摂取します。
ビタミンB6
ビタミンB6は、補酵素としてアミノ酸代謝を助ける栄養素です。とくに、脳機能に働く神経伝達物質を合成するときに欠かせません。
肉類や魚介類のほか、かぶやトマトにも多く含まれています。
ビタミンB6の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンB12
ビタミンB12も、補酵素としてアミノ酸代謝に関わるビタミンB群の1つです。赤血球やDNAの合成に欠かせない栄養素で、生命維持に深く関係しています。
野菜や穀類にはほとんど含まれず、肉類や魚介類など動物性食品に多く含まれています。
ビタミンB12の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率のよい摂取方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンC
ビタミンCは、皮膚を構成するコラーゲンの合成に関与する栄養素です。
コラーゲンは皮膚の骨組みともいえる物質で、アミノ酸から作られます。一般的な食事でコラーゲンが不足することはほとんどありませんが、皮膚の弾力を保ったり関節をスムーズに動かしたりするのにコラーゲンが重要な役割をしています。
ビタミンCは、コラーゲンを合成するときに欠かせません。アミノ酸の美容効果を期待するなら、ビタミンCも一緒に摂取しましょう。
ビタミンCの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA