イヌリンの効果・多く含む食品・1日の摂取目安量・効率よく摂取する方法
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イヌリンの基本情報、効果・働き、多く含む食品、1日の摂取目安量、効率よく摂取する方法、過剰摂取による影響について解説します。
イヌリンとは
イヌリン(inulin)は、水溶性食物繊維※の一種です。砂糖やデンプンといった糖類の一種ですが、人はイヌリンを分解する酵素を持っていないため、ほとんど吸収されずに体外へ排出されます。
ごぼう・たまねぎ・にんにく・チコリ・菊芋などに豊富に含まれており、その作用を活かして、ダイエット食品の甘味料としても用いられる栄養素です。
食後の血糖値を抑制する効果があることから、天然のインスリンとも呼ばれます。
※人が吸収できない栄養素を総称して食物繊維と呼びます。
イヌリンと難消化性デキストリンの違い
次に、イヌリンと難消化性デキストリンの違いについて解説します。
難消化性デキストリンとは
難消化性デキストリンは、イヌリンと同じ水溶性食物繊維の一種です。難消化性デキストリンはもともと食物繊維不足を補うために作られた成分で、トウモロコシ由来のデンプンから調整されます。
イヌリンと同じく整腸作用や血糖値の上昇抑制作用などが認められており、特定保健用食品(トクホ)の関与成分のひとつとして認められています。
一方アメリカの食品医薬品局では、1日の摂取量の上限を定める必要がないほど安全性も確かであるとしています。
難消化性デキストリンの安全性について調査した試験では、1日3回食事の前に10gの難消化性デキストリンを摂取したところ、16週間の試験期間において難消化性デキストリンの摂取が原因とみられる健康状況の悪化などは見られませんでした。
イヌリンと難消化性デキストリンの違い
イヌリンと難消化性デキストリンの違いは、大きく分けて下記の5つです。
- 資化率(腸内細菌利用率)
- 原料
- 製法
- 摂取しやすさ
- 認可
最も重要な違いが、腸内細菌にとっての利用しやすさです。腸内細菌が利用する割合を「資化率」といい、資化率が高い食物繊維ほど腸内細菌のエサとして効率的に利用されます。
難消化性デキストリンの資化率が50%であるのに対し、イヌリンの資化率は100%。腸内環境改善にうってつけの栄養素と言えるでしょう。
その他に、難消化性デキストリンがトウモロコシ由来のデンプンから作られるのに対して、イヌリンは菊芋やチコリから抽出されます。また製法にも大きな違いがあり、難消化性デキストリンが人工的に調整して作られるの対し、イヌリンは天然食品から抽出されます。
水への溶けやすさも異なり、難消化性デキストリンがサッと溶けるのに対して、イヌリンはやや溶けにくい特徴を持っています。また、その効果に対して認められている扱いも異なり、難消化性デキストリンが特定保健用食品の関与成分であるのに対し、イヌリンは機能性表示食品の関与成分として認められています。
特定保健用食品と機能性表示食品の違いを簡単にまとめると、特定保健用食品が国の審査をクリアしているのに対し、機能性表示食品は事業者の責任において機能性を表示しているという点です。そのため機能性表示食品は、消費者庁から個別の許可を受けたものではありません。
イヌリンと難消化性デキストリンの比較表
2つの栄養素の違いを表にまとめたものが下記になります。
イヌリン | 難消化性デキストリン | |
資化率(腸内細菌利用率) | 100% | 50% |
原料 | 菊芋やチコリなど | トウモロコシ由来のデンプン |
製法 | 植物から抽出 | 人工的に調製 |
摂取しやすさ | やや溶けにくい | サッと溶ける |
認可 | 機能性表示食品の関与成分 | 特定保健用食品の関与成分 |
イヌリンの効果・働き
イヌリンの効果・効能は次の通りです。
優れた資化性による整腸作用
イヌリンは、その資化率の高さから腸内環境を改善する効果が期待できます。イヌリンは、難消化性デキストリンやポリデキストロースといったその他の水溶性食物繊維と比べても特に資化率が高く、善玉菌を増やして腸内フローラを良化させるのに役立ちます。
さらにイヌリンが優れているのは、悪玉菌のエサとはならず、善玉菌に対してのみ効果を発揮するプレバイオティクスであるという点です。
中性脂肪やコレステロールの低減効果
イヌリンには、中性脂肪やコレステロールといった血中脂質を抑制・低減する効果が認められています。
独立行政法人 国立健康・栄養研究所によれば、経口からのイヌリン摂取が「高トリグリセライド血症(中性脂肪)」に有効であると評価されており、また中国・国立栄養・食品安全性研究所では、「高コレステロール血症」に対しても有効であると評価しています。
イヌリンを4週間摂取した前後の血中脂質量を比較した研究では、中性脂肪が27.3%低下、LDLコレステロールが16.9%低下したと報告があります。
血糖値の上昇抑制効果
イヌリンは、食後の血糖値上昇を抑える効果があります。
イヌリンを含む水溶性食物繊維は、水分を吸収してゲル状になると、一緒に摂取した糖質(ブドウ糖)を取り込んで腸における糖の吸収を穏やかにします。これにより、食後の血糖値上昇が抑制されるのです。
またイヌリンをエサとして腸内フローラの状態が良化すると、腸内細菌がインスリンの分泌をサポートするようになります。そうして血糖値を低下させるのに十分なインスリンが確保されることも、血糖値の上昇が抑制される要因のひとつと考えられます。
ダイエット効果
イヌリンの持つ各種作用から、ダイエット効果が期待できます。
腸内環境の改善により便秘などが解消されれば、ぽっこりと出ていた下腹部がスッキリする可能性がありますし、血糖値の上昇抑制効果や脂質の抑制効果はより直接的にダイエットに働きかけるでしょう。
またさらに、イヌリンを含め食物繊維は消化に時間がかかるため腹持ちがよく、食べ過ぎ防止にもつながります。イヌリン自体も1gあたり2kcalと非常に低カロリーで、生活習慣病予防だけでなくダイエットのお供にもぴったりの食品です。
ミネラルの吸収を促す
イヌリンには、カルシウム・マグネシウム・亜鉛・鉄などのミネラルの吸収を促進する効果が報告されています。
メキシコのリュウゼツラン(アガベ)を原料とするアガベ・イヌリンの効果を検証した研究報告によれば、1日あたり3gのアガベ・イヌリンの摂取により、カルシウムの吸収量が有意に増加したとのことです。
イヌリンを多く含む食品
イヌリンは、ごぼう・たまねぎ・にんにく・チコリ・エシャロット・菊芋・ニラ・アスパラガスに多く含まれています。
イヌリンを最も多く含むアガベ(リュウゼツラン)は、メキシコに原生するアロエに似た多肉質の植物で、テキーラの原料となることで知られています。
アガベを普段の食生活に取り入れるのは難しいため、ごぼうやたまねぎ、ニラなど手に取りやすい食品で摂取するようにしましょう。
食品 | イヌリン含量 (%生体重あたり) |
アガベ | 25~30% |
菊芋 | 約20% |
チコリ | 15~20% |
にんにく | 9~16% |
ニラ | 3~10% |
玉ねぎ | 2~6% |
ごぼう | 3.5~4.0% |
イヌリンの1日の摂取目安量
厚生労働省の「食事摂取基準(2020年版)」では、食物繊維の1日あたりの目標摂取量は成人男性でおよそ21g以上、成人女性で18g以上と定めています。これは玄米ごはんで摂取した場合、およそ1.3~1.5kgの摂取が必要となります。
また、食物繊維は水溶性と不溶性のどちらか一方ではなく、両方をバランスよく摂取することが大切です。比率は、「水溶性1:不溶性2」のバランスが良いとされています。
そのため、成人男性なら水溶性7g:不溶性14g、成人女性なら水溶性6g:不溶性12gの摂取を心がけてください。ただ、一般的な食生活を送る人では水溶性食物繊維の方が不足しがちなため、イヌリン粉末や機能性表示食品などを積極的に取り入れて行くと良いでしょう。
イヌリンのおすすめの摂取方法
イヌリンは、朝食に摂取することでより高い健康効果を得ることができます。
イヌリン摂取のタイミングによる効果の違いを研究した報告によれば、朝食でイヌリンを摂取したグループは便秘症状の改善傾向が見られたほか、朝食後だけでなく昼食後・夕食後の血糖値上昇も緩やかだったとのことです(セカンドミール効果)。
この結果から、イヌリンを摂取するタイミングは朝食時が良いと考えられます。
イヌリンを過剰摂取すると起こる副作用
イヌリンは水溶性食物繊維の一種であり、基本的に健康に害を及ぼす栄養素ではありません。しかし、過剰摂取すると胃腸の傷みや下痢などを引き起こす恐れがあるため、1日の摂取量は必ず守るようにしましょう。
また、イヌリンに対してアレルギー反応を起こしたという報告も数例あります。もし、かゆみや肌の赤みなどアレルギー症状がみられた場合は、直ちに医療機関を受診することをおすすめします。
まとめ:イヌリンは食物繊維不足を補う鍵となる
イヌリンは水溶性食物繊維のなかでも特に効果が高く、また副作用なども引き起こしにくい安全性の高さが特徴の食品です。
「平成29年国民健康・栄養調査」によれば、食物繊維の摂取量は男女問わず全ての年代で不足しており、特に20代・30代の男女では、およそ12~13.5gと目標量にはるかに及んでいないのが現状。
イヌリンをはじめとする食物繊維の粉末やサプリメントを上手に生活に取り入れて、食物繊維不足を補っていきましょう。