大根の栄養と効果効能・調理法・保存法

3528views

大根

大根の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、大根に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

大根とは

大根(japanese white radish)は、ブロッコリーやキャベツなどと同じくアブラナ科の植物です。根は淡色野菜ですが、β‐カロテンが豊富な葉の部分は緑黄色野菜に分類されます。

葉から根の部分まですべて食べることができ、食べ方も煮物や炒め物、生食など幅広く楽しめます。葉に近い部分は甘く、先端にいくほど辛味が増すので、部位に合わせて調理法を変えるのが得策です。

大根の原産地は地中海沿岸や中央アジアと言われています。日本で本格的に栽培されるようになったのは江戸時代に入ってからです。2019年現在で出荷量が多いのは北海道、千葉県など。

品種改良が進み、今では1年を通して収穫されますが、一般的に大根の旬は11月から2月までです。旬の大根はみずみずしく甘みがあり、春から夏時期に収穫される大根は辛味が強い傾向にあります。

大根の品種・種類

大根は地域ごとに品種があるほど種類が豊富です。種類により収穫時期や大きさ、味などが異なります。ここでは代表的な品種をいくつか説明しましょう。

青首大根

青首大根は、辛味が少なく、甘みが強い大根です。葉に近い部分が青いため、青首大根という名前がつきました。

スーパーで見られる大根のほとんどがこの品種です。どんな土壌でも育てやすいため、全国で栽培されています。

辛味大根

辛味大根は、より辛味が強い大根の総称です。大根おろし専用の大根でもあります。見た目は蕪に似ていて、小ぶりで短いのが特徴です。

大根は栽培時に、土に埋まっている部分が辛くなります。通常の大根は1/3ほどが地上へ出ていますが、辛味大根の場合は根部分がすっぽりと土に隠れています。

練馬大根

練馬大根は、葉に近い部分が青い青首大根と対照的に、葉に近い部分が白い大根です。発祥は東京の練馬で、江戸時代から盛んに栽培されました。

現在は収穫量が少なく、ほとんど市場に出回らない「幻の大根」と呼ばれています。歯ごたえがよく、たくあんなどの漬物用として人気があります。

桜島大根

桜島大根は、世界一大きい大根としてギネスに登録された品種です。平均で10~20kgの重さまで成長し、見た目は扁球状をしています。鹿児島県桜島の特産物で、200年以上もの歴史を持ちます。

旬は1月半ばから2月頭。柔らかく味が染み込みやすいことから、煮物やおでんなどの料理に向いています。

守口大根

大根の品種では、もっとも根が長いと言われる守口大根。その長さは平均で120~130cmにも及びます。直径は2~3cmと細長い大根です。

もとは大阪府の守口地区で栽培が始まりました。現在は、愛知県扶桑町や岐阜県の木曽川流域でのみ栽培されています。

大根の加工方法による分類

大根の加工方法別の種類も紹介しましょう。

干し大根

干し大根は、その名の通り大根を乾燥させたものです。天日干しにより乾燥させることで、長期保存できるだけでなく甘みが増します。

千切りにした大根を干した切り干し大根や、蒸してから天日乾燥させる蒸し干し大根など加工方法はさまざまです。

たくあん漬け

たくあんは大根を糠や塩などで漬けた保存食で、漬物のなかでも代表的な存在です。伝統的な製法では、大根を天日で干してから漬け込みます。

大根を使った漬物はほかにも地域によって多くの種類があり、東京のべったら漬けや京都の千枚漬けも有名です。

大根に含まれる成分・栄養素

大根100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

大根は低カロリーの割に栄養価が高く、ダイエット食としても注目されています。特にミネラル類、ビタミン類、食物繊維が豊富です。

ミネラル類はカリウムを始めとし、カルシウムやリンなどが含まれています。体内で合成できないため、非常に重要な栄養素と言えるでしょう。ビタミン類ではビタミンC、葉酸が特に豊富です。脂溶性ビタミンも水溶性ビタミンもバランスよく含有しています。

葉部分の栄養価が特に高いのも重要な点です。根には含まれない栄養素β‐カロテンが豊富なので、その作用に注目が集まっています。

食品名単位だいこん 根 皮つき 生だいこん 根 皮つき ゆでだいこん 根 皮むき 生だいこん 根 皮むき ゆでだいこん 根、皮むき、生、おろしだいこん 根、皮むき、生、おろし汁だいこん 根、皮むき、生、おろし水洗い切干しだいこん 乾切干しだいこん ゆで切干しだいこん 油いためだいこん ぬかみそ漬たくあん(塩押し)たくあん(干し)葉だいこん 葉 生だいこん 葉 生だいこん 葉 ゆで
%10015000000000020100
エネルギー(kcal)kcal/100 g181818183411303011988306427182525
エネルギー(kJ)kJ/100 g757575751404812712608037012626811375105105
水 分g/100 g94.694.494.694.890.596.591.48.494.684.587.178.288.892.690.691.3
たんぱく質g/100 g0.50.40.40.50.60.30.69.70.91.51.31.21.922.22.2
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g0.4-0.30.3-0.4----7.3-0.7-1.1----1.71.9-1.9
脂 質g/100 g0.1Tr0.10.10.2Tr0.10.80.160.10.30.10.20.10.1
トリアシルグリセロール当量g/100 gTr-(Tr)(Tr)----0.3(Tr)-5.7----0.1Tr(Tr)
飽和脂肪酸g/100 g0.01--0.01-0.01----0.1-0.01-0.44----0.020.01-0.01
一価不飽和脂肪酸g/100 gTr-(Tr)(Tr)----0.03(Tr)-3.48----0.01Tr(Tr)
多価不飽和脂肪酸g/100 g0.02--0.02-0.02----0.19-0.03-1.56----0.060.03-0.03
コレステロールmg/100 g000000000(Tr)000000
炭水化物g/100 g4.14.54.1482.77.269.74.17.66.715.25.53.35.35.4
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g2.7-2.82.92.5----------1.11.4-1.3
水溶性食物繊維g/100 g0.50.50.50.81.4Tr15.20.61.50.710.60.50.80.8
不溶性食物繊維g/100 g0.91.10.80.93.7Tr3.816.13.24.11.12.53.12.13.22.8
食物繊維総量g/100 g1.41.61.31.75.10.14.721.33.75.61.83.53.72.643.6
灰 分g/100 g0.60.50.60.50.60.40.68.50.30.44.853.71.51.60.9
ナトリウムmg/100 g191417123021252104815001700970414828
カリウムmg/100 g230210230210190140170350062110480140500340400180
カルシウムmg/100 g242423256314575006091442676170260220
マグネシウムmg/100 g1091010239211601422402180252222
リンmg/100 g1818171419131622010184446150435262
mg/100 g0.20.20.20.20.30.10.23.10.40.70.30.411.43.12.2
亜鉛mg/100 g0.20.20.10.10.30.10.22.10.20.30.10.20.80.40.30.2
mg/100 g0.020.020.020.010.020.010.010.130.020.030.020.070.050.050.040.03
マンガンmg/100 g0.040.050.040.050.060.010.060.740.080.140.130.280.890.230.270.25
ヨウ素µg/100 g3-3313120---2----
セレンµg/100 g1-11Tr0Tr2---1----
クロムµg/100 g0-000003---1----
モリブデンµg/100 g3-2221229---8----
レチノールµg/100 g0000000000000000
α-カロテンµg/100 g0000000000000000
β-カロテンµg/100 g00000002Tr1000230039004400
β-クリプトキサンチンµg/100 g00000000000001500
β-カロテン当量µg/100 g00000002Tr1000230039004400
レチノール活性当量µg/100 g0000000Tr00000190330370
ビタミンDµg/100 g0000000000000000
α-トコフェロールmg/100 g0000000000.90001.53.84.9
β-トコフェロールmg/100 g0000000000000Tr00
γ-トコフェロールmg/100 g0000000001.800000.10
δ-トコフェロールmg/100 g0000000000.1000000
ビタミンKµg/100 gTr0Tr0Tr0TrTr07100220270340
ビタミンB1mg/100 g0.020.020.020.020.020.020.020.350.010.020.330.210.210.070.090.01
ビタミンB2mg/100 g0.010.010.010.010.010.010.010.2Tr0.020.040.010.030.150.160.06
ナイアシンmg/100 g0.30.20.20.20.20.10.14.60.10.22.70.71.60.50.50.1
ナイアシン当量mg/100 g----0.30.20.2---------
ビタミンB6mg/100 g0.040.030.050.040.040.030.030.290.010.020.220.070.220.220.180.1
ビタミンB12µg/100 g0000000000000000
葉酸µg/100 g3438333323211921071298244713014054
パントテン酸mg/100 g0.120.10.110.080.070.070.051.240.040.070.430.270.660.390.260.11
ビオチンµg/100 g0.3-0.30.30.40.20.45.9---0.4----
ビタミンCmg/100 g12911977628TrTr155312495321
食塩相当量g/100 g00000.10.10.10.5003.84.32.50.10.10.1
アルコールg/100 g----------------
硝酸イオンg/100 g0.10.20.20.10.20.20.22.9TrTr-0.1Tr0.40.20.1
テオブロミンg/100 g----------------
カフェインg/100 g----------------
タンニンg/100 g----------------
ポリフェノールg/100 g----------------
酢酸g/100 g----------------
調理油g/100 g---------5.8------
有機酸g/100 g----------------
重量変化率%-86-86188220-56035073----79
備考廃棄部位: 根端及び葉柄基部根端及び葉柄基部を除いたもの廃棄部位: 根端、葉柄基部及び皮根端、葉柄基部及び皮を除いたもの全体に対する割合18 %全体に対する割合82 %全体に対する割合20 %水もどし後、ゆでた後湯切りしたもの水もどし後、油いため根、皮つき水洗いし、水切りしたもの別名: 新漬たくあん、早漬たくあんビタミンC: 酸化防止用として添加品あり別名: 本たくあん試料: 水耕栽培品廃棄部位: 株元及び根廃棄部位: 葉柄基部葉柄基部を除いたものゆでた後水冷し、手搾りしたもの
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

大根の効果・効能

大根に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

辛味成分イソチアネートにがん予防の可能性

大根の辛味を作るのはイソチアネートという成分です。近年、同成分は発がん物質の抑制作用が期待され、研究が重ねられています。

名古屋大学大学院生命農学研究科による実験では、イソチオシアネートが増殖性細胞のみアポトーシスの誘導を有意に進めることがわかりました。アポトーシスとは細胞死における1種の形態です。

イソチオシアネートの作用が明らかになれば、休止状態にある正常細胞には影響を与えずにがん予防のアプローチができると期待が高まっています。

むくみ解消に効果的なカリウム

ミネラルの一種であるカリウムの主な作用は、細胞の浸透圧調節におけるナトリウム(塩分)の排出です。ナトリウムは水分の吸収に関わっており、塩分を摂りすぎると体のむくみを引き起こします。

大根は多量のカリウムを含み、塩分の摂りすぎを抑制する作用が期待できるでしょう。また、塩分過多は高血圧の原因にもなるため、健康を考えると積極的に取り入れたい栄養素です。

人体にとって必須なミネラル類

ミネラル類のなかでも、人体にもっとも多く含まれているのはカルシウムです。次いでリンが多く、体重の約1%を占めます。

この2つは、特に骨や歯の形成に役立つ栄養素です。ミネラル類は体内で影響を受けながら吸収されるため、バランスよく摂取する必要があります。各種ミネラルの豊富な大根は、ミネラルバランスの観点からも優秀な食材といえるでしょう。

食物繊維の働きで便秘解消を目指す

胃や小腸で消化・吸収されずに大腸へ届く食物繊維には、整腸効果があると言われています。

大根には水溶性食物繊維以上に、水に溶けない不溶性食物繊維が豊富です。保水性の高い不溶性食物繊維は、特に便のかさを増やす働きを担い、腸のぜん動運動を促進して便の排出を促してくれます。

妊娠初期に重要な葉酸

大根には水溶性ビタミンの葉酸も多く含まれています。妊娠初期の葉酸摂取量が減ると、胎児に神経管閉鎖障害が起こると言われており、葉酸は妊娠前から積極的に摂取したい栄養素のひとつです。

抗酸化作用による美容効果

抗酸化作用をもつビタミンCやβ-カロテンといった栄養素にも注目です。抗酸化作用とは、大気汚染や紫外線などの影響から発生する活性酸素を抑える働きのこと。細胞の酸化が進むとがんや免疫力の低下につながるだけでなく、老化にも関わります。

ちなみにイソチアネートにも抗酸化酵素を促進する働きがあると解明されており、大根の高い抗酸化作用は美容効果への期待も高まっています。

大根の食べ方

大根の栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。

大根の洗い方・下ごしらえ

大根のビタミンCがより多く含まれているのは、皮の部分です。そのため、皮をむかずに表面をよく洗って一緒に食べたほうが効率よくビタミンCを摂取できます。

ただし大根は根菜なので、一般的な野菜より多く汚れがついています。タワシなどでしっかりこすり泥を落としましょう。

なお、干し大根を戻すときは、もみ洗いで汚れを落としてから水に浸します。15~20分ほど浸せば完了です。あまり長く浸しすぎると風味や食感が損なわれてしまいますので、様子を見ながら作業しましょう。

大根の調理方法

大根にはさまざまな調理方法があります。生食の場合はサラダや大根おろし、加熱する場合は炒め物や煮物など、選択肢の幅が広い野菜です。

辛味の強さによって料理方法を変えるのもよいでしょう。

例えば、甘みが強い葉の近くはサラダに、辛味の強い先端部分は細かく切って味付けの濃い味噌煮込みなどが向いています。甘みと辛味のバランスがよい中央部は、ふろふき大根にぴったりです。

大根おろしにする場合は、辛めが好きな人は先端部分を、辛いのが苦手な人は葉に近い部分を活用してみてください。

大根の食べ方

大根の栄養を、より効率よく摂取できるおすすめの食べ方をいくつかご紹介していきます。

大根にはアミラーゼやプロテアーゼなど消化を助ける酵素が多く含まれています。これらの酵素は熱に弱いため、なるべくサラダや大根おろしなど生のまま食べましょう。

また、前述したように皮にはビタミンCなどの栄養素が多く含まれているので、皮ごと処理したほうが効率的に栄養が摂取できます。

特におすすめの食べ方が大根おろしです。イソチオシアネートは細胞が破壊されることで発生するため、同成分を摂取するにはおろすのが得策。発がん性物質は食品の焦げに起因すると言われているので、焼き魚に大根おろしは理にかなっているとも言えます。

大根の葉の食べ方

葉の部分は根より栄養価が高いので、葉つき大根を手に入れたときは捨てずに食べるようにしましょう。

葉に豊富に含まれるβ‐カロテンは脂溶性のビタミンなので、炒め物などにして油といっしょに摂取すると吸収率が高まります。

大根を調理する際の注意点

大根を煮る際は、水溶性の栄養素が流れ出てしまうので注意が必要です。加水調理をする場合は、煮汁ごと食べられる汁物などにして、栄養を余すことなく摂取しましょう。

大根を食べる際の注意点

大根には体にとって嬉しい作用がさまざまありますが、いずれも適量を摂取することが重要です。

例えば、消化を助けてくれる酵素ジアスターゼは、摂りすぎると胃酸の分泌量が増え胃痛を引き起こす場合があります。また、もともとお通じが良い人は、食物繊維を過剰に摂取すると下痢になる可能性もあるため注意しましょう。

大根の保存方法

大根の栄養素を損なわない保存方法を解説します。

葉がついた状態だと、栄養と水分が損なわれてしまうのですぐに切り落としましょう。新聞紙またはラップなどにくるみ、立てた状態での冷蔵保存がおすすめです。冷蔵庫に入らない場合は、半分に切って保存してみてください。

冷凍する場合は細かく切って茹でたものを密閉容器などに入れてから保存しましょう。また、大根おろしもラップなどに包んで冷凍保存できます。

葉部分はできればその日のうちに調理してください。長く保存したい場合は、軽く茹でて冷凍保存がおすすめです。

LINE公式アカウントを追加
LINEお友達追加