あなごの栄養と効果効能・調理法・保存法

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あなご

あなごの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、あなごに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

あなごとは

あなご(Conger eel)とは、ウナギ目アナゴ科の魚類の総称です。うなぎに似た形をしていますが、その性質は異なります。うなぎは基本的に淡水に生息し、産卵と孵化のみ海でおこなう降河回遊魚です。一方、あなごは海の浅瀬に生息する海水魚です。さらに薄茶色の体色をしていたり、上あごが出ていたりなど、うなぎと見た目も異なります。

あなごの主な産地は有明海や瀬戸内海などで、漁獲量が多いのは長崎県や島根県です。しかし年々漁獲量が減ってきており、今では韓国からの輸入に頼る状況となっています。

日本で獲れるあなごの旬は夏と冬の2回です。6~8月に漁獲されるあなごは脂質が少なく、あっさりとした淡白な味わいが特徴です。一方、冬のあなごは脂肪をたっぷり蓄え、うなぎに似た濃厚な味わいになります。

食べ方としては焼き穴子や煮穴子、天ぷら・干物などが有名です。身だけでなく、肝を使った肝吸いや串焼きなどの料理もあります。

あなごの品種・種類

あなごは世界でおおよそ150種類もの品種があると言われています。日本の海域で見られるのは真穴子や黒穴子をはじめとした約30種類のあなごです。ここでは主に食用とされるあなごを紹介します。

真穴子

真穴子(まあなご)は日本でもっとも多く食用されている品種です。日本であなごと言えば、この真穴子を指します。旬時期は6月から8月にかけてで、蒲焼きや寿司・天ぷらなどさまざまな料理に活用されています。

見た目は、体の脇に白い斑点が線状に並んでいるのが特徴です。オスが40cm程度、メスは90cm程度まで成長します。

黒穴子

黒穴子(くろあなご)は、全長1.5mほどで真穴子より大きい品種です。黒穴子の名前の通り、黒っぽい見た目をしています。主に魚肉練り製品の原料として使われている種類です。

御殿穴子

御殿穴子(ごてんあなご)は、黒穴子と同じく練り製品の原料となる品種です。全長は60cmほどで小さめ。淡い褐色の体色で、腹の部分が白い見た目をしています。

あなごに含まれる成分・栄養素

あなご100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

あなごはうなぎよりもタンパク質やカリウムが豊富で、脂質は少ない傾向にあります。カロリーが低く、ダイエットにも適した食材です。

そのほかうなぎには劣りますが、ビタミンAやカルシウムなどの栄養素も多く含まれています。

食 品 名単位<魚類> あなご 生<魚類> あなご 蒸し
廃 棄 率%350
エネルギーkJ611723
kcal146173
水 分g72.268.5
タンパク質アミノ酸組成によるタンパク質g14.4-14.3
タンパク質g17.317.6
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g810.4
コレステロールmg140180
脂質g9.312.7
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g(Tr)(Tr)
g
利用可能炭水化物(質量計)g(Tr)(Tr)
差引き法による利用可能炭水化物g4.25.6
**
食物繊維総量g00
糖アルコールg--
炭水化物gTrTr
有機酸g--
灰分g1.21.2
無機質ナトリウムmg150120
カリウムmg370280
カルシウムmg7564
マグネシウムmg2326
リンmg210180
mg0.80.9
亜鉛mg0.70.8
mg0.040.04
マンガンmg0.20.22
ヨウ素μg15-
セレンμg39-
クロムμg0-
モリブデンμg0-
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg500890
α|カロテンμg00
β|カロテンμg00
β|クリプトキサンチンμg00
β|カロテン当量μg00
レチノール活性当量μg500890
ビタミンDμg0.40.8
α-トコフェロールmg2.32.9
β-トコフェロールmg00
γ-トコフェロールmg00
δ-トコフェロールmg00
ビタミンKμgTrTr
ビタミンB1mg0.050.04
ビタミンB2mg0.140.11
ナイアシンmg3.22.7
ナイアシン当量mg6.2-5.8
ビタミンB6mg0.10.1
ビタミンB12μg2.32.5
葉 酸μg915
パントテン酸mg0.860.79
ビ オ チ ンμg3.3-
ビタミンCmg21
アルコールg--
食塩相当量g0.40.3
備 考試料: まあなご廃棄部位: 頭部、内臓、骨、ひれ等試料: まあなご切り身
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

あなごの効果・効能

あなごに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

タンパク質が体作りに

あなごはうなぎよりもタンパク質が多く含まれています。タンパク質は筋肉や臓器、皮膚のほか、ホルモンや酵素を作る大切な成分です。十分な量を摂取することで体の健康維持に役立つでしょう。

また、うなぎに比べて脂質が少ない分、あなごはヘルシーな食材です。高カロリーで低脂質な食品は健康的な体作りを後押ししてくれます。

タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品 | NANIWA SUPLI MEDIA

カリウムのむくみ防止効果

あなごにはミネラルの一種であるカリウムが多く含まれています。カリウムは細胞の浸透圧を調節する過程で、ナトリウムの排出を促す栄養素です。

塩分を摂り過ぎると体内のナトリウム濃度が高まり、体は水分を溜め込みやすくなってしまいます。そのためナトリウムを調節するカリウムは、体のむくみを解消するために効果的です。

カリウムの効果効能・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

ビタミンAが目や皮膚を健やかに

ビタミンAは上皮細胞の生成に関わり、目や皮膚を健康に保つには欠かせない栄養素です。正常な皮膚の生成を促し、ニキビや肌荒れなどの肌トラブルを防いでくれます。

また、ビタミンAは光を察知するロドプシンの主成分でもあります。視機能の維持にも大切な成分です。

ビタミンAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ|NANIWA SUPLI MEDIA

DHAやEPAで健康的な体へ

うなぎに比べると脂質の含有量は少なめですが、あなごにはDHAやEPAなど近年注目を浴びている不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。

DHAは脳に取り込まれる性質があり、脳の活性化に関わると言われています。あらゆる研究でも認知症の改善に効果が期待できると報告されている栄養素です。

一方、EPAにはLDLコレステロールの低下作用があります。さらに中性脂肪の低下作用も期待され、肥満防止にも役立ちそうな成分です。

オメガ3の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA

カルシウムが強い骨を作る

カルシウムは人間の体にもっとも多く存在し、丈夫な骨や歯を形成します。特に骨を構成する重要な成分なので、不足すると骨粗しょう症のリスクが高まります。

成人の1日あたりの摂取量目安は男性で750~800mg、女性で600~650mgです。食生活にあなごを取り入れることで、効率的なカルシウム摂取につながるでしょう。

カルシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA

あなごの食べ方や注意点

あなごの栄養素を損なわない調理方法・食べ方などを解説します。

あなごの選び方

新鮮なあなごを見極めるには、表面のヌメリに注目しましょう。ヌメリが透明なあなごのほうが鮮度が高いと言われています。または体色が濃く、白い斑点がはっきりとしているあなごも良いとされます。

ただしあなごは内臓やヌメリ、血抜きの処理が大変で、一般家庭ではさばきにくい食材です。さばく自信がない場合は、下処理済みのあなごの開きがおすすめ。購入するときは身が肉厚で、白く透明感のあるあなごを選びましょう。

調理に使うなら焼き穴子が手軽

一般的にスーパーでは、白焼きや蒲焼きにしたあなごが売られています。これらの焼き穴子は生のあなごより、自宅で調理に使いやすいのでおすすめです。

甘いタレで焼き上げたり、酢の物やちらし寿司の材料にしたりしても良いでしょう。う巻きの代わりに、あなごを卵焼きの芯に使う穴子焼きも人気です。

生食は専門のお店で

あなごやうなぎ・ハモなど、ウナギ目の魚類には血液や表面のヌメリにタンパク質性の毒素が含まれています。生で食べると吐き気や下痢などの中毒症状を招く危険性があるので、ご自宅では加熱してから食べたほうが安心です。

あなごの刺身を食べたい場合は専門店を訪れましょう。職人のさばき方や活き締めによる血抜きによって、あなごを刺身としておいしく食べることができます。

妊娠初期は摂取量に注意

あなごは妊婦でも食べられる食材です。栄養満点なので積極的に食べたくなりますが、摂取量には注意しましょう。あなごにはビタミンA(レチノール)が豊富に含まれており、過剰摂取は胎児の先天性異常を招く危険性が高まります。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、ビタミンAの耐容上限量は1日2,700μgRAEです。これはおよそ蒸し穴子300g(3~5尾)に相当します。通常の食事では過剰摂取の心配はありませんが、よりビタミンAが豊富なうなぎやレバーと一緒に食べるのは避けましょう。

また、ビタミンAは体内に貯蔵されやすい栄養素です。あなごを食べ過ぎた翌日はビタミンAが豊富な食品を控えるなど、連日の食べ過ぎを防ぐようにしましょう。

あなごの保存方法

あなごの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

あなごの白焼きや蒲焼きなどは冷凍しても味が変わりにくい食品です。日持ちさせるには、あなごをひとつずつラップにくるんで冷凍するのがおすすめです。空気が入らないよう隙間なく包むとよりおいしさが損なわれません。

食べる際は自然解凍や流水解凍してから、あなごを調理しましょう。電子レンジで加熱しても大丈夫です。焼き網で焼いてもおいしく食べられます。

参考文献

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