山椒の栄養と効果効能・調理法・保存法
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山椒の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、山椒に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
山椒とは
山椒(Zanthoxylum piperitum)は、ミカン科サンショウ属の落葉低木です。葉から花、実まで幅広く食せます。柑橘類の香りとピリリとした辛味が特徴で、実の外皮を粉末にした粉山椒は、うなぎのかば焼きの薬味として古くから用いられています。
山椒の原産地は、日本または朝鮮半島南部と言われており、日本では古来より馴染み深い香辛料でした。古事記の中には「はじかみ」という名で山椒の記載があったようです。この「椒(はじかみ)」の名から、現在の山椒という名称で呼ばれるようになったと考えられています。
日本の主な産地は、和歌山県・兵庫県・岐阜県など。「平成30年産特産果樹生産動態等調査」によると、和歌山県は全国収穫量の約58%を占めています。
山椒の品種・種類
山椒の主な品種や種類を紹介します。
葡萄山椒
葡萄山椒(ぶどうさんしょう)は、山椒の名産地である和歌山県で主に栽培されている品種です。ぶどうの房のように実をつけることから、葡萄山椒と呼ばれるようになりました。肉厚な実と爽やかな香りから、「緑のダイヤ」という愛称でも親しまれています。
うなぎにかける薬味としてよく用いられる品種が、この葡萄山椒です。
朝倉山椒
朝倉山椒(あさくらさんしょう)は、兵庫県の養父市八鹿町朝倉が発祥と言われています。昔は大名に献上する高級食材でもありました。
木にトゲがないのが特徴で、実は大粒。爽やかな香りが魅力の品種です。
高原山椒
高原山椒(たかはらさんしょう)は、岐阜県の飛騨高山地域で主に栽培されている品種です。高原川近くに自生していたことから、高原山椒の名がつきました。実は小ぶりで、香りが長続きする点が特長です。
烏山椒
烏山椒(からずざんしょう)は、北海道を除く日本全国に広く分布する品種です。実は食用に適さないため、主に健胃薬として使われています。若葉や若芽を、天ぷらなどにして食す地域もあるようです。
華北山椒
華北山椒(かほくさんしょう)は、中国が原産の落葉低木です。日本原産の山椒とは同属異種にあたります。
華北山椒の実は花椒(ホワジャオ、かしょう)と呼ばれ、痺れるような辛味が特長です。麻婆豆腐や坦々麺など、中国四川料理の香辛料としてよく使われます。
山椒に含まれる成分・栄養素
山椒100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
山椒には、カリウムやリンなどのミネラル類が多く含まれています。また成分表には記載がありませんが、山椒特有の成分として辛味成分のサンショオール、香気成分のシトロネラールなどが豊富です。
食 品 名 | 単位 | <香辛料類> さんしょう 粉 | |
廃 棄 率 | % | 0 | |
エネルギー | kJ | 1588 | |
kcal | 375 | ||
水 分 | g | 8.3 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | - |
たんぱく質 | g | 10.3 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | - |
コレステロール | mg | 0 | |
脂質 | g | 6.2 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | - |
g | |||
利用可能炭水化物(質量計) | g | - | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 69.6 | |
* | |||
食物繊維総量 | g | - | |
糖アルコール | g | - | |
炭水化物 | g | 69.6 | |
有機酸 | g | - | |
灰分 | g | 5.6 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 10 |
カリウム | mg | 1700 | |
カルシウム | mg | 750 | |
マグネシウム | mg | 100 | |
リン | mg | 210 | |
鉄 | mg | 10 | |
亜鉛 | mg | 0.9 | |
銅 | mg | 0.33 | |
マンガン | mg | - | |
ヨウ素 | μg | 32 | |
セレン | μg | 6 | |
クロム | μg | 21 | |
モリブデン | μg | 19 | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 |
α|カロテン | μg | - | |
β|カロテン | μg | - | |
β|クリプトキサンチン | μg | - | |
β|カロテン当量 | μg | 200 | |
レチノール活性当量 | μg | 17 | |
ビタミンD | μg | 0 | |
α-トコフェロール | mg | - | |
β-トコフェロール | mg | - | |
γ-トコフェロール | mg | - | |
δ-トコフェロール | mg | - | |
ビタミンK | μg | - | |
ビタミンB1 | mg | 0.1 | |
ビタミンB2 | mg | 0.45 | |
ナイアシン | mg | 2.8 | |
ナイアシン当量 | mg | -4.5 | |
ビタミンB6 | mg | - | |
ビタミンB12 | μg | - | |
葉 酸 | μg | - | |
パントテン酸 | mg | - | |
ビ オ チ ン | μg | 27 | |
ビタミンC | mg | 0 | |
アルコール | g | - | |
食塩相当量 | g | 0 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
出典:FoodData Central|USDA(米国農務省)
山椒の効果・効能
山椒に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
サンショオールの3つの作用
山椒の辛味成分であるサンショオールには主に3つの作用があります。
健胃作用
山椒は漢方の生薬としても用いられます。山椒に含まれる成分の中でもサンショオールは、胃の働きをサポートする作用が期待され、整腸作用や内臓の粘膜強化などを促します。胃腸の機能を高める作用から、胃もたれや消化不良の改善が期待できるでしょう。
消化にいい食べ物・飲み物|NANIWA SUPLI MEDIA
代謝アップ作用
サンショオールは、山椒独特の痺れを伴う辛味を生み出す成分です。この辛味成分には発汗作用があり、代謝機能を高める効果が期待されます。血行の促進作用により、肩こりや冷え性の改善にも役立つでしょう。
一時期メディアで、1日0.2gの山椒を毎日摂取すると冷え性の改善に効果的と放送され、話題になりました。
代謝を上げる食べ物・飲み物|NANIWA SUPLI MEDIA
白髪予防に期待
近年ではサンショオールに、メラニン色素を作る細胞を活性化させる作用があるとわかってきました。メラニン色素は、髪の黒い色素を作る成分です。サンショオールによってメラニン色素の生成が促されれば、白髪の予防にもつながると考えられています。
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シトロネラールのリラックス作用
シトロネラールは香気成分のことで、柑橘類特有の爽やかな香りを生み出します。その爽快感のある香りから、リラックス効果や集中力アップ作用が期待される成分です。
そのほかに抗炎症作用や除菌作用も持つと言われています。
カリウムによるむくみ予防
山椒にはミネラルが豊富に含まれています。なかでもカリウムはナトリウムを排出する働きから、塩分の摂り過ぎを防いでくれる栄養素です。
ナトリウムは水分を溜め込む性質があるため、過剰摂取するとむくみが発生しやすいデメリットがあります。カリウムを摂取すればむくみ予防だけでなく、塩分の摂り過ぎによる高血圧症予防にも役立つでしょう。
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ミネラルが骨の形成をサポート
山椒はカルシウム・リン・マグネシウムなどのミネラルが豊富です。これらの栄養素はいずれも骨の形成に関わります。ミネラルは互いに影響し合いながら吸収されるので、バランスよく摂取するのが大切です。
カルシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
リンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・摂取量を減らす方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
マグネシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA
山椒の食べ方や注意点
山椒の栄養素を損なわない選び方・調理方法・食べ方などを解説します。
生の山椒の選び方
6月の旬時期には枝付きの生山椒をスーパーで見かけることができます。選ぶときは実にハリがあるものや、鮮やかな濃い緑色のものを見極めましょう。
枝から実がたくさん外れている場合は、収穫から時間が経っている可能性が高いので避けたほうが無難です。
山椒の実のあく抜き方法
生の山椒はあく抜きが必要になります。枝から実を外したら、水でよく洗ってから茹でましょう。
まずは、鍋にたっぷりの水とひとつまみの塩を入れて沸騰させます。洗った山椒の実を入れ、30秒から1分ほど湯がきます。ザルにあげ、1時間から4時間ほど水にさらしたら完了です。さらしている間は、適宜水を交換してあげるようにしましょう。
生の山椒の実は、佃煮や醤油漬けに入れたり、魚を煮るときに入れたりして、臭み消しとしても活用できます。
うなぎ以外の相性の良い食材
薬味としての山椒はうなぎにふりかける方法が一般的。山椒にはうなぎの泥臭さを消し、脂っぽさを緩和させる作用があります。
うなぎ以外の食材でおすすめなのがキノコ類です。キノコ類は食物繊維が豊富なので、山椒とともに胃腸の働きを高める作用が期待できます。
薄味の食事と合わせて減塩をサポート
近年の研究で、山椒に含まれる辛味成分は塩味の感受性を高めることがわかりました。実際の研究では微量のサンショオールを口に含むと、塩味を感じる閾値が1/2~1/4程度低下したと言います。つまり山椒の摂取により、その後の食事で味を濃く感じやすくなったということです。
食事の前に山椒を摂取すれば、薄味の食事でも満足感を得て食べられると言えるでしょう。
食べ過ぎは腹痛の原因に
山椒を過剰摂取すると、腹痛や下痢を招く場合があるので注意してください。山椒にはキサントキシンと呼ばれる麻痺成分が含まれています。
1日あたりの摂取量は定められていませんが、ひとふり(0.2~0.3g程度)を目安にしてみましょう。うなぎのかば焼きについてくる小袋入りの山椒は、ちょうど0.2gほどです。
山椒の保存方法
山椒の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
基本的に粉タイプの山椒は、パッケージの記載通りに保存してください。
生の実はあく抜きを行ってから保存しましょう。塩水で茹でて、水煮浸けるだけなので手軽です。
あく抜き後は冷蔵で1週間、冷凍で1年間ほど保存できます。冷凍保存するときは風味が損なわれないよう、保存袋に入れたのちしっかりと空気を抜きましょう。