高菜の栄養と効果効能・調理法・保存法
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高菜の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、高菜に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
高菜とは
高菜(大芥菜)は、アブラナ科アブラナ属の漬菜です。葉や茎にピリッとした辛味があるのが特徴で、主に漬け物の「高菜漬け」の材料として利用されます。
高菜漬けは、野沢菜漬け・広島菜漬けと共に日本三大漬け物として知られています。漬け物としてそのまま食べるのはもちろん、炒め物やチャーハンの具材としても人気があります。
高菜の原産地は中央アジアで、中国経由で日本に伝来しました。古い文献の記述などから、平安時代にはすでに高菜の栽培が始まっていたと考えられています。
漬け物用の高菜が流通するのは12月~3月ですが、まびき菜や摘み菜は1年を通して収穫されます。若くて柔らかい葉は、漬け物だけでなく、サラダやおひたし、煮物にも調理できます。
高菜の品種・種類
古くから日本で利用されてきた高菜にはいくつもの系統があります。葉が緑色の「青高菜」、葉が紫色を帯びた「紫高菜」、葉が大きい「大葉高菜」、葉が赤色を帯びた「赤大葉高菜」などが代表的です。
日本各地でさまざまな高菜の品種が栽培されており、長崎県雲仙市の「雲仙こぶ高菜」、熊本県阿蘇地方の「阿蘇高菜」、大分県の「久住高菜」、福岡県の「三池高菜」などがよく知られています。
また、高菜の仲間であるからし菜のつぼみ部分は、「子持ち高菜」と呼ばれる野菜で、漬け物や炒め物に利用されます。
高菜に含まれる成分・栄養素
高菜100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食 品 名 | 単位 | たかな 葉 生 | たかな、たかな漬 | |
廃 棄 率 | % | 8 | 0 | |
エネルギー | kJ | 87 | 124 | |
kcal | 21 | 30 | ||
水 分 | g | 92.7 | 87.2 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | -1.5 | -1.5 |
たんぱく質 | g | 1.8 | 1.9 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | - | - |
コレステロール | mg | 0 | 0 | |
脂質 | g | 0.2 | 0.6 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | - | 0 |
g | ||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | - | - | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 2 | 2.1 | |
* | * | |||
食物繊維総量 | g | 2.5 | 4 | |
糖アルコール | g | - | 0 | |
炭水化物 | g | 4.2 | 6.2 | |
有機酸 | g | - | 0.5 | |
灰分 | g | 0.9 | 4 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 43 | 1600 |
カリウム | mg | 300 | 110 | |
カルシウム | mg | 87 | 51 | |
マグネシウム | mg | 16 | 13 | |
リン | mg | 35 | 24 | |
鉄 | mg | 1.7 | 1.5 | |
亜鉛 | mg | 0.3 | 0.2 | |
銅 | mg | 0.04 | 0.06 | |
マンガン | mg | 0.24 | 0.09 | |
ヨウ素 | μg | 2 | 1 | |
セレン | μg | Tr | Tr | |
クロム | μg | 4 | 2 | |
モリブデン | μg | 4 | 16 | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | 0 | 5 | |
β|カロテン | μg | 2300 | 2400 | |
β|クリプトキサンチン | μg | 0 | 52 | |
β|カロテン当量 | μg | 2300 | 2400 | |
レチノール活性当量 | μg | 190 | 200 | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | 0.8 | 1.6 | |
β-トコフェロール | mg | 0 | Tr | |
γ-トコフェロール | mg | 0.1 | 0.1 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | |
ビタミンK | μg | 120 | 300 | |
ビタミンB1 | mg | 0.06 | 0.01 | |
ビタミンB2 | mg | 0.1 | 0.03 | |
ナイアシン | mg | 0.4 | 0.2 | |
ナイアシン当量 | mg | -0.9 | -0.8 | |
ビタミンB6 | mg | 0.16 | 0.03 | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0.1 | |
葉 酸 | μg | 180 | 23 | |
パントテン酸 | mg | 0.27 | 0.08 | |
ビ オ チ ン | μg | 2.1 | 0.6 | |
ビタミンC | mg | 69 | Tr | |
アルコール | g | - | - | |
食塩相当量 | g | 0.1 | 4 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
高菜の効果・効能
高菜に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
β-カロテンで皮膚や粘膜の健康維持
高菜は、β-カロテンを多く含む緑黄色野菜です。同じ漬菜である野沢菜の約2倍ものβ-カロテンを含んでいて、栄養価が高い野菜と言えるでしょう。
β-カロテンは、体内に取り込まれるとビタミンAに変換されるプロビタミンAです。ビタミンAと同様に、暗い場所での見えにくさ、眼精疲労などに対する効能を発揮します。皮膚・粘膜の健康維持にも役立つため、美肌効果も期待できる成分です。
なお、プロビタミンAは、体にとって必要な量だけビタミンAに変換されるため、過剰摂取となる心配がないのもポイントです。また、β-カロテンには強い抗酸化作用があり、生活習慣病やがんの原因となる活性酸素を抑制する働きもあります。
β-カロテンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
葉物野菜でトップクラスのビタミンCを含有
ビタミンCは、しみ・そばかすの原因となるメラニン色素の抑制や、肌のハリを保つコラーゲンの生成、血管壁の健康維持など多くの効能を持つ栄養素です。体を活性酸素から守る抗酸化作用や、免疫機能を維持する機能もあります。
生の高菜には、キウイフルーツとほぼ同量のビタミンCが含まれています。野沢菜・ほうれん草・小松菜よりもビタミンCが豊富で、葉物野菜の中ではトップクラスのビタミンC含有量を誇ります。
厚生労働省が定めるビタミンCの摂取推奨量は、成人男女で1日あたり100mgです。高菜100gには69mgのビタミンCが含まれています。
ビタミンCの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
骨の健康維持を助けるビタミンK
高菜に豊富なビタミンKは、骨の健康や血液凝固に関わるビタミンです。ビタミンKには、カルシウムを骨に沈着させて健康な骨を維持する作用があり、骨粗しょう症の治療薬にも用いられています。
ビタミンKは、女性ホルモンの影響で骨粗しょう症のリスクが高くなる閉経後の女性や、成長期の子どもにとっても積極的に摂っておきたい栄養素です。
代謝を促しダイエットにも効果的なビタミンB群
高菜には、ビタミンB群の栄養素も含まれています。糖質の代謝を促すビタミンB1や、脂質の代謝を促すビタミンB2が豊富で、脂肪燃焼やダイエットに効果的です。エネルギーの代謝を高めるビタミンB1は、疲労が蓄積しているときにも有用な栄養素です。
また、高菜にはビタミンB群に含まれる葉酸が豊富なのもポイント。葉酸は、細胞分裂や、DNAなどの核酸合成に必要な栄養素で、胎児の健康な発育には欠かせない栄養素のひとつです。
葉酸は、胎児の先天性疾患のリスクを減らすことも認められており、妊娠中には特に大切になります。
ビタミンB群の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
貧血を予防する鉄
高菜はミネラルの一種である鉄が豊富で、野沢菜の約3倍もの量が含まれています。
鉄は、不足すると鉄欠乏性貧血を発症する恐れがあるなど、人体の健康維持に欠かせない必須ミネラルです。貧血気味の人はもちろん、月経のある女性や妊婦・授乳婦は、より多くの鉄を摂取することが推奨されています。
なお、高菜に含まれる鉄は、動物性のヘム鉄と比べて吸収率の低い非ヘム鉄です。非ヘム鉄の吸収率を高めるには、ビタミンCや動物性たんぱく質を合わせて摂取するようにしましょう。
鉄の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
カリウムでむくみ・高血圧を改善
高菜にはカリウムが多く含まれており、食事の塩分量を調節するのに役立つ食材と言えます。
カリウムは、過剰なナトリウムを体外に排出させる働きのある必須ミネラルです。塩分の摂りすぎで起こる、全身のむくみや高血圧の予防・改善効果が期待できます。
カリウムの効果効能・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
食欲増進効果のあるイソチオシアン酸アリル
高菜特有の辛味は、イソチオシアン酸アリルという成分によるものです。イソチオシアン酸アリルは、マスタードやわさびなどにも含まれる辛味成分で、料理のアクセントとなって食欲を増進させる効果が期待できます。
また、イソチオシアン酸アリルには抗菌・消臭効果も認められており、食品に用いる日持ち向上剤にも使われています。
高菜漬けには整腸作用のある乳酸菌も豊富
高菜漬けは、高菜を乳酸発酵させた漬け物であり、乳酸菌が多く含まれています。乳酸菌は、腸内の悪玉菌を減らして腸内環境を整える善玉菌の一種です。
乳酸菌の持つ整腸作用により、便通改善や免疫機能の向上が期待できます。高菜漬けは、便秘や下痢といった腸の不調に悩んでいるときにおすすめの食材です。同様に便秘解消効果が期待できる、食物繊維も摂取できます。
乳酸菌の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
高菜の食べ方
高菜の栄養素を損なわない調理方法・食べ方などを解説します。
β-カロテン・ビタミンKは油と一緒に摂る
高菜は、β-カロテンやビタミンKなど油に溶ける性質を持った栄養素を多く含んでいます。これらの脂溶性の栄養素の吸収効率を高めるためには、油と一緒に摂取するのが効果的です。
高菜漬けは、ごま油との味の相性が良い食材です。刻んでごま油炒めにしたり、ごま油で炒めたチャーハンの具材にするのがおすすめ。または、牛肉や豚肉など、脂身の多い肉類と合わせて調理しても良いでしょう。
ビタミンCを損なわないためには生食かスープで
高菜に豊富なビタミンCは、水に溶けやすく調理時に流出しやすいのが難点です。
ビタミンCを確実に摂りたい時は、漬け物ではなく生の高菜を食べるのがベスト。生でも食べやすい間引き菜や、比較的葉が柔らかいとされる「雲仙こぶ高菜」などの品種を選んでください。
高菜を加熱調理する場合は、煮汁ごと食べられるスープや味噌汁などにするのがおすすめです。
塩分の多い高菜漬けは食べ過ぎに注意
漬け物全般に言えることですが、高菜漬けは乳酸菌などの栄養素が豊富な一方で、塩分が多く含まれていることに注意が必要です。高菜漬け100gあたり、1600mgのナトリウムが含まれています。
塩分の摂取量を調節している方は、減塩タイプの高菜漬けを選ぶか、肉や他の野菜類と合わせて調理することで塩分濃度を調節してください。
高菜の保存方法
高菜の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
高菜漬けは冷蔵保存が基本、冷凍もOK
高菜の漬け物は、開封前・開封後問わず冷蔵庫で保存してください。空気に触れると味が落ちる恐れがあるため、密閉できる容器に入れ、ラップでぴったりと包んでおくのがおすすめです。
市販の高菜漬けは、製品表示の賞味期限に従ってなるべく早めに食べきります。家庭で浅漬けにした高菜は、冷蔵庫で2日程度が保存期間の目安です。
冷凍保存には向かないとされる漬け物類ですが、高菜漬けは、冷凍しても食感や風味が損なわれにくいのが特徴です。少量ずつラップに包んだ高菜漬けを、冷凍保存用容器に入れて凍らせてください。食べるときは、冷蔵庫で時間をかけて解凍しましょう。
生の高菜は野菜室で冷蔵保存する
生の高菜の保存には、他の葉物野菜と同様に冷蔵庫の野菜室が適しています。葉が乾燥しやすいため、湿らせた新聞紙やキッチンペーパーなどで包んでおくと鮮度を維持できます。
冷凍保存することもできますが、生のまま凍らせると解凍後に水っぽくなり食感が悪くなってしまいます。そのため、漬け物・炒めもの・ペーストなど、加工してから冷凍するのがおすすめです。