ひらたけの栄養と効果効能・調理法・保存法
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ひらたけの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、ひらたけに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
ひらたけとは
ひらたけ(oyster mushroom)とは、ヒラタケ科ヒラタケ属に分類される食用のキノコです。かさの部分が牡蠣に似ていることから、英語では「オイスター・マッシュルーム」と呼ばれています。
一般的にかさは10cm前後の平たい半円形ですが、かさの中央がへこんで、逆三角形に見えるものもあります。ひらたけのかさは暗灰色~灰褐色で、いくえにも重なっているのが特徴です。ひだと軸は白く、ぬめりはありません。
ひらたけは、広葉樹が生える温暖な地域に生育しますが、国内で流通するもののほとんどは菌床栽培されたものです。多くのきのこと同様に、旬は秋から翌年春にかけて。新潟県・福岡県・長野県・茨城県などで生産されています。
平安時代の記録にひらたけが記されていることから、日本では古くから食用きのことして食卓に上がっていたことがわかっています。「しめじ」として流通していた歴史もあり、食用きのこの代表的品種だった時代もありました。しかし、ぶなしめじが登場するとその地位を奪われ、生産量も落ちていきました。
ひらたけに似たきのこ
外観や食感が、ひらたけに似ているきのこ類を紹介します。
ぶなしめじ
ぶなしめじとは、しめじの品種の1つで、日本に自生する食用きのこです。
長野県が人工栽培を始め、農林水産省の調査では令和元年時点で、ぶなしめじの国内生産量の約42%を占めています。生産地はひらたけと似通っていますが、ぶなしめじの国内生産量はひらたけの約30倍にもおよびます。
ぶなしめじの外観は、ひらたけよりもかさが小さくて、丸い形をしていることが特徴です。食物繊維やビタミンDが豊富で、オルニチンも多く含有しています。
しめじの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
エリンギ
エリンギもひらたけと同じ、ヒラタケ科ヒラタケ属のきのこです。
肉厚で食べごたえのある点も似ていますが、ひらたけはかさの部分が大きいのに対し、エリンギは軸がしっかりしていることが特徴です。
エリンギには、葉酸やビオチン、ナイアシンなどのビタミンB群が多く含まれます。
エリンギの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
まいたけ
まいたけは、ひらたけのように軸がつながっている食用きのこです。かさが重なっている点も似ていますが、まいたけはトンビマイタケ科マイタケ属に分類されます。
食感は、プリプリと肉厚なひらたけに対し、まいたけはシャキシャキとした歯ごたえが特徴です。食物繊維やビタミンDはひらたけよりも豊富で、葉酸やビオチンも多く含みます。
まいたけの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
ひらたけとウスヒラタケの違い
ひらたけには、一般に「ひらたけ」と呼ばれる種類のほかに、「ウスヒラタケ」があります。
ウスヒラタケとは、ヒラタケ科ヒラタケ属のきのこで、外観はひらたけに似ています。かさが薄いことからウスヒラタケと呼ばれ、ひらたけよりもかさの白いことが特徴です。以前はひらたけと同種と考えられていましたが、DNA解析により別種と判明しました。
ウスヒラタケも食用として流通し、汁物や煮物に利用されます。
ひらたけに含まれる成分・栄養素
ひらたけ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
ひらたけには、食物繊維がたっぷり含まれています。とくに不溶性食物繊維が豊富で、消化管の水分を吸収して膨らむことで、腸の動きを活発にして便秘を改善します。
また、ひらたけはビタミンやミネラルを多く含む食品です。きのこ類に豊富に含まれるビタミンDも、ウスヒラタケは100gあたり2.4μgも含有しています。
ビタミンDは、骨や歯の形成に関与する栄養素で、不足すると骨粗しょう症のリスクが高まる栄養素です。免疫機能の促進にも関係しており、ひらたけには身体を健康に維持する栄養素が豊富に含まれていると言えるでしょう。
食 品 名 | 単位 | (ひらたけ類) ひらたけ 生 | (ひらたけ類) ひらたけ ゆで | (ひらたけ類) うすひらたけ 生 | (ひらたけ類) エリンギ 生 | (ひらたけ類) エリンギ ゆで | |
廃 棄 率 | % | 8 | 0 | 8 | 6 | 0 | |
エネルギー | kJ | 143 | 139 | 156 | 128 | 134 | |
kcal | 34 | 33 | 37 | 31 | 32 | ||
水 分 | g | 89.4 | 89.1 | 88 | 90.2 | 89.3 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | 2.1 | -2.1 | -3.7 | 1.7 | -2 |
たんぱく質 | g | 3.3 | 3.4 | 6.1 | 2.8 | 3.2 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | 0.1 | -0.1 | -0.1 | 0.2 | -0.3 |
コレステロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
脂質 | g | 0.3 | 0.2 | 0.2 | 0.4 | 0.5 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | 1.3 | -1.4 | 1.6 | 3 | -3.3 |
g | * | ||||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | 1.3 | -1.3 | 1.5 | 2.9 | -3.1 | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 4.8 | 4.1 | 3.5 | 3.7 | 3 | |
* | * | * | * | ||||
食物繊維総量 | g | 2.6 | 3.7 | 3.8 | 3.4 | 4.8 | |
糖アルコール | g | 0.2 | 0.2 | 0 | - | - | |
炭水化物 | g | 6.2 | 6.6 | 4.8 | 6 | 6.5 | |
有機酸 | g | - | - | - | - | - | |
灰分 | g | 0.8 | 0.7 | 0.9 | 0.7 | 0.5 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 2 | 2 | 1 | 2 | 2 |
カリウム | mg | 340 | 260 | 220 | 340 | 260 | |
カルシウム | mg | 1 | 1 | 2 | Tr | Tr | |
マグネシウム | mg | 15 | 10 | 15 | 12 | 10 | |
リン | mg | 100 | 86 | 110 | 89 | 88 | |
鉄 | mg | 0.7 | 0.7 | 0.6 | 0.3 | 0.3 | |
亜鉛 | mg | 1 | 1.4 | 0.9 | 0.6 | 0.7 | |
銅 | mg | 0.15 | 0.11 | 0.15 | 0.1 | 0.09 | |
マンガン | mg | 0.16 | 0.15 | 0.11 | 0.06 | 0.06 | |
ヨウ素 | μg | 0 | 0 | 1 | 1 | - | |
セレン | μg | 6 | - | 7 | 2 | - | |
クロム | μg | 1 | 0 | 1 | 0 | - | |
モリブデン | μg | 1 | 1 | 2 | 2 | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
β|カロテン | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
β|クリプトキサンチン | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
β|カロテン当量 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
レチノール活性当量 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンD | μg | 0.3 | 0.5 | 2.4 | 1.2 | 2.6 | |
α-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
β-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
δ-トコフェロール | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンK | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンB1 | mg | 0.4 | 0.3 | 0.3 | 0.11 | 0.08 | |
ビタミンB2 | mg | 0.4 | 0.27 | 0.41 | 0.22 | 0.16 | |
ナイアシン | mg | 11 | 7 | 6.9 | 6.1 | 4.2 | |
ナイアシン当量 | mg | 11 | -7.6 | -8.1 | 6.7 | -5 | |
ビタミンB6 | mg | 0.1 | 0.06 | 0.23 | 0.14 | 0.1 | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
葉 酸 | μg | 92 | 71 | 100 | 65 | 20 | |
パントテン酸 | mg | 2.4 | 2.36 | 2.44 | 1.16 | 1.02 | |
ビ オ チ ン | μg | 12 | 13 | 26 | 6.9 | - | |
ビタミンC | mg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
アルコール | g | - | - | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
ひらたけの効果・効能
ひらたけに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
葉酸で貧血予防
葉酸は、造血機能に深く関係するビタミンB群です。
ビタミンB12とともに、赤血球の合成に関与して、赤血球のもととなる赤芽球を作ります。葉酸は体内で産生できない栄養素のため、食事中の葉酸量が不足すると貧血を起こす原因になります。
葉酸はビタミンCによって働きが強化されるため、ビタミンCを多く含む食品と一緒に食べるとより効果的です。
葉酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビオチンが皮膚や髪を健康に保つ
ビオチンとは、抗炎症物質を生成する働きのあるビタミンB群の1種です。
皮膚の炎症を引き起こすのは、ヒスタミンと呼ばれる炎症物質です。ビオチンは、ヒスタミンの増加を抑制し、皮膚の炎症を抑えたり皮膚を健康に保つ働きをします。爪や髪の健康維持にも効果的で、美容効果の高い栄養素です。
ビオチンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
ナイアシンが二日酔いを予防
ナイアシンとは、ビタミンB群の1つで、糖質や脂質の代謝をサポートする働きをもった栄養素です。
体内に取り込まれたナイアシンは、補酵素と呼ばれる機能のサポート物質として、数百種類の酵素の働きを助けます。栄養素の代謝やホルモン合成、遺伝子合成に欠かせません。
また、アルコールの代謝にもかかわっており、二日酔いの症状を引き起こす原因物質であるアセトアルデヒドを分解するときに、ナイアシンが補酵素として働きます。
ナイアシンは、二日酔い予防やダイエット中の代謝促進に活躍するため、積極的に摂りたい栄養素です。
ナイアシンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
パントテン酸がストレスへの防御機能を高める
パントテン酸は、以前はビタミンB6と呼ばれていた栄養素で、ビタミンB群の1つです。
食品内ではコエンザイムAとして存在し、消化管内でパントテン酸に分解されて体内に吸収されます。吸収されたパントテン酸は、体内で再びコエンザイムAとなり、エネルギー産生やホルモン合成にかかわります。
パントテン酸は、善玉コレステロールの合成を助ける働きもあるため、脂質の代謝を促し、血管を健康に保つ働きをもった栄養素です。
また、パントテン酸にはストレス改善作用もあります。ストレスを改善させる働きのある副腎皮質ホルモンの合成をサポートし、ストレスから身体を守ります。
パントテン酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
ひらたけの食べ方
ひらたけの栄養素を損なわない洗い方・選び方・調理方法・食べ方などを解説します。
ひらたけの選び方
ひらたけを選ぶときのポイントは、次のとおりです。
- かさが肉厚でしおれていない
- 軸が太い
- 傘の色が濃く変色していない
ウスヒラタケは、ひらたけよりも色が薄いため、白っぽく見えることがありますが、問題ありません。
ひらたけは洗わない
ほかのきのこ類と同様に、ひらたけも調理の際は洗わないのが一般的です。
ひらたけには、ビタミンやミネラルなど水に溶けやすい栄養素が豊富に含まれているため、水洗いすることで栄養素が損なわれてしまいます。また、ひらたけが水分を吸収することで、食感が失われる恐れもあるため、水洗いは不要です。
ただし、野生のひらたけを採取して食べるときは、虫や汚れをしっかり取り除きましょう。
肉厚のひらたけは厚く切って調理する
かさが肉厚のひらたけは、分厚く切って調理すると、食感を楽しめます。とくに霜降りひらたけと呼ばれる品種は、かさが厚いためバターソテーにするのがおすすめです。
厚いひらたけは、天ぷらにすると衣のサクサク感とひらたけ特有のプリプリ感を同時に味わえます。
ウスヒラタケは汁物や炊き込みご飯に
かさが薄く小さいウスヒラタケは、汁物や炊き込みご飯に入れるのがおすすめです。ひらたけから出汁がでて、旨味が強くなります。
ウスヒラタケは、ひらたけよりも味にクセがないため、きのこ類が苦手な人でも薄くカットすると食べやすくなるでしょう。
ひらたけに似た「スギヒラタケ」に注意
スギヒラタケは、白いかさをもち、かさのサイズは5cm前後とひらたけに似た外観をしています。以前は食用として、自生するスギヒラタケを食べることもありましたが、現在は農林水産省が、「毒性の有無が不明のため食べるのを禁止すべき」との見解を発表しています。
スギヒラタケを食べた人が急性脳症を発症したことから、その危険性が知られました。とくに腎機能の低下している人が食べると症状が強く表れると考えられていますが、いまだ詳細は不明です。
腎機能の良し悪しにかかわらず、スギヒラタケを食べるのは避けましょう。
ひらたけの保存方法
ひらたけの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
保存の際は軸を上にして置くと劣化しにくい
ひらたけを保存するときは、かさを下に、軸を上に向けて置きます。ひらたけをはじめとするきのこ類は、かさの部分に栄養が集まっているため、かさの栄養を逃さないように軸を上にします。
スーパーマーケットで購入したひらたけは、パック詰めされていることもありますが、購入後はパックから出して冷蔵保存しましょう。
石づきを落として冷凍保存も可能
ひらたけは、冷凍保存もできます。
石づきを落として、数本ずつ割いてフリーザーパックで冷凍保存します。ひらたけは水洗いすると栄養素が逃げてしまうため、保存前に洗う必要はありません。