HMBの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
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HMBの基本情報、種類、効果・働き、不足・欠乏・過剰摂取による影響、多く含む食品、効率よく摂取する方法について解説します。
HMBとは
HMB(β-Hydroxy-β-Methyl Butyrate)とは、必須アミノ酸であるロイシンが代謝されてできる物質です。ロイシンは、筋肉を動かすときのエネルギー源になる必須アミノ酸で、肝機能を高めたりストレスを緩和したりする効果もあります。
必須アミノ酸とは、人間が体内で合成できず、食事からの摂取が欠かせないアミノ酸です。ロイシンは、BCAAと呼ばれる分岐鎖アミノ酸の1種に分類されます。
HMBには、筋肉の合成促進と筋肉の分解抑制の作用があります。そのため、筋肉増強の効果を期待して、筋トレ中やダイエット中の人に注目されている栄養素です。
ただし、摂取されたロイシンから作られるHMBは、非常に少ないことを理解しておく必要があるでしょう。ロイシンから作られるHMBは、ロイシン摂取量の約5%です。
つまり、100mgのロイシンを食事から摂取した場合、体内で合成されるHMBは約5mg。ロイシンを多く含むたたみいわしでも、100gあたりのロイシン含有量は5,700mgで、HMBはおおよそ285mgしか作られません。
HMBを多く摂取するには、ロイシン含有量の多い食品を摂取するだけでなく、サプリメントで補うとよいでしょう。
BCAAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
HMBの種類
食事から摂取したロイシンから作られるHMBに種類はありませんが、サプリメントとして販売されているHMBは2種類あります。それぞれの違いを解説します。
HMBカルシウム(HMB-Ca)
HMBカルシウムとは、HMBの成分をカルシウムと結合させて粉末にしたサプリメントです。粉末・錠剤・ドリンクなど、さまざまな商品が流通しています。
HMB単体では販売されておらず、カルシウムと結合させたHMBカルシウムとして販売されるのが一般的です。カルシウムと結合させることでHMBを安定させます。
後述するHMB遊離酸よりも吸収速度が遅く、摂取後1~2時間で血中濃度がピークになると考えられています。
HMB遊離酸(HMB-FA)
HMB遊離酸とは、HMBをカルシウムと結合させず、純粋な遊離酸として精製したサプリメントです。
無色透明の液状で、HMBカルシウムよりも早く吸収されます。血中濃度は、摂取後30分程度でピークを迎えると考えらえています。
精製に手間がかかるだけでなく液状製品のため、一般的にHMBカルシウムサプリメントよりも高価です。流通している商品数も少なく、選択肢が限られます。
HMBと類似成分の違い
HMBと類似する栄養素・成分との違いを解説します。
バリン
バリンは、HMBの原料となるロイシンと同じように、筋肉のエネルギー源となる必須アミノ酸です。
ロイシン・イソロイシンと同じBCAAに分類され、筋肉増強に関わる栄養素として知られています。また、アンモニア代謝にも関与し、老廃物の排出を促進させる効果もあります。
バリンは、カゼイン・乾燥卵白・かつお節・大豆製品に多く含まれる栄養素です。
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イソロイシン
イソロイシンも、BCAAに分類される必須アミノ酸の1種です。
エネルギー不足で筋肉が分解されるのを抑制する働きがあり、筋肉量の維持に関与します。また、タンパク質合成にも大きな影響を与える栄養素です。
イソロイシンは、カゼインや大豆製品のほかに、いわし・かつお・タラなどの魚介類に多く含まれます。
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HMBの効果・働き
HMBの効果・効能について解説します。
筋肉増強を促進
HMBは筋肉中のタンパク質の合成を促進する効果があり、筋肉増強に効果的です。
HMBには、細胞分裂や細胞の成長を促進させる効果が報告されています。筋肉の原料となるタンパク質の合成も促進し、筋肉増強に働きかけます。
タンパク質は筋肉や骨などを構成し、身体の約20%を占める栄養素です。食事に含まれるタンパク質は、消化管でアミノ酸に分解されて体内に吸収され、筋肉や組織の構成成分となります。
筋肉の減少を防ぐ
HMBは、ユビキチン-プロテアソーム系の反応を抑制することが知られており、筋肉の分解を抑制して筋力維持に効果を発揮します。
HMBは、筋肉を分解させにくくする効果もある物質です。タンパク質の分解抑制をすることが知られており、タンパク質で構成される筋肉の分解も抑制します。
タンパク質は、ユビキチン-プロテアソーム系と呼ばれる経路により分解されます。通常は感染症予防やがん予防に働きますが、この経路の反応が促進すると必要なタンパク質まで分解されてしまうことがデメリットです。
筋肉痛の軽減
HMBには、トレーニング後の筋肉痛を軽減させる効果もあります。
エネルギー代謝やタンパク質代謝に関与し、炎症反応を調節していることがわかっています。HMBは過剰な炎症反応を抑制するため、筋肉痛や筋疲労に効果的な成分です。
HMBを過剰摂取すると起こる副作用
現段階ではHMBを過剰摂取しても、副作用はほとんどないと報告されています。
ただし、サプリメントとしてHMBを長期間に渡って過剰摂取すると、肝機能や腎機能への影響が懸念されます。過剰摂取による副作用として、肝・腎機能への影響はHMBに限ったことではありません。
特定の栄養素を多く含むサプリメントを大量に摂取すると、代謝と排出を行う肝臓と腎臓に負担がかかります。結果として、肝機能や腎機能に影響を与える恐れがあります。
また、HMBは過剰摂取しても効果が大きくなるわけではないことに留意しましょう。
研究報告によると、HMBサプリメントを大量に摂取した場合でも、筋肉に与える影響は適量を摂取した場合と変わりませんでした。
HMBをサプリメントとして摂取する場合は、メーカーが定める用量に従いましょう。
HMBの1日の摂取目安量
厚生労働省が発表する「日本人食事摂取基準(2015年版)」によると、HMBの1日の摂取目安量は3,000mgです。
ただし、健康維持のために上記数値を毎日摂取する必要があるわけではなく、筋肉量の増加が期待できる摂取目安量であることに注意しましょう。
別の研究報告では、毎日3,000mg摂取したグループと6,000mg摂取したグループでは、効果に違いがなかったとしています。つまり、HMBの効果を期待する場合は、1日3,000mgを目安に摂取することが適切と考えられます。
HMBを多く含む食品
HMBは、体内でロイシンから合成される物質です。
そのため、HMBの効果を期待するなら、ロイシンを多く含む食品を積極的に摂取しましょう。ロイシンを多く含む食品は、以下のとおりです。
順位 | 食品名 | 成分量100gあたりmg |
1 | 乳類/<牛乳及び乳製品>/(その他)/カゼイン | 8400 |
2 | 魚介類/<魚類>/にしん/かずのこ/乾 | 7300 |
2 | 卵類/鶏卵/卵白/乾燥卵白 | 7300 |
4 | 豆類/だいず/[その他]/大豆たんぱく/分離大豆たんぱく/塩分無調整タイプ | 6900 |
5 | 魚介類/<魚類>/とびうお/煮干し | 6400 |
6 | 魚介類/<魚類>/(かつお類)/加工品/かつお節 | 5900 |
6 | 魚介類/<魚類>/(かつお類)/加工品/削り節 | 5900 |
8 | 魚介類/<魚類>/(いわし類)/たたみいわし | 5700 |
9 | 魚介類/<魚類>/(さば類)/ごまさば/さば節 | 5600 |
10 | 魚介類/<魚類>/とびうお/焼き干し | 5500 |
HMBを効率よく摂取する方法
HMBの効果を効率よく得るためには、サプリメントをいつ飲むか、どれくらい飲むかも重要です。
摂取するタイミング
HMBサプリメントを摂取するのは、HMBカルシウムならトレーニングの1~2時間前、HMB遊離酸ならトレーニング後がおすすめです。
摂取後に血中濃度がピークになるのは、HMBカルシウムで1~2時間後、HMB遊離酸は30分前後かかります。血中濃度がピークになる時間に合わせて摂取しましょう。
飲む頻度や摂取量
HMBサプリメントを飲む頻度は、トレーニングの回数に合わせるとよいでしょう。ただし、メーカーが定める用量を超えてはいけません。
1日3,000mgを目安に、トレーニングの前後に飲むのがおすすめです。
HMBだけでは効果は薄い
HMBを摂取するだけでは筋肉増強の効果は弱く、同時に筋トレなどのトレーニングも行う必要があります。
プロテインやクレアチン、BCAAなどのサプリメントと一緒に摂取すると、筋肉増強効果が高まります。