かつお節の栄養と効果効能・調理法・保存法
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かつお節の原産地、主要な種類などの基本情報、削り方、かつお節に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
かつお節とは
かつお節(dried bonito)とは、茹でたかつおをあぶって乾燥させ、黴付(かびづけ)と呼ばれる工程を経て、日光で再度乾燥させたものです。
かつおを原材料とし、脂肪分を取り除いて3枚におろして、船型に整形して加工されます。この船型を「節」と呼ぶことから、かつお節と呼ばれるようになったと、考えられています。
歴史は古く、古事記に記されているものが最初と考えられ、奈良時代にはかつお節の原型ができていました。当時は堅魚(かたうお)と呼ばれており、素干しにしたものを指していました。そのあと、発酵技術の発達とともに、今のかつお節になっていったと言われています。
現在の主要なかつお節の生産地は、鹿児島県や静岡県の2県で、国内生産量の約99%を占めています。2017年の生産量は、約3万トンでした。
かつお節の種類
かつお節を大きく分けると、黴付を行う「枯節」と行わない「荒節」、一度しかいぶさない「なまり節」の3種類です。それぞれで、見た目や味が異なります。
なまり節(生節)
なまり節とは、かつおを茹でたあと、一度だけ燻したかつお節です。荒節や枯節とは異なり、身が軟らかく、ほぐしてそのまま食べられます。
味付けはされていないため、醤油などの調味料をかけたり、煮付けにしたりして食べるのがおすすめです。
荒節(あらぶし)
荒節とは、かつおの内臓や脂肪を取り除き、煮て骨を取ったあと、いぶして乾燥させたかつお節です。約1か月をかけて製造され、「花かつお」とも呼ばれます。
見た目は黒っぽく、いぶすことで、表面が焦げたように見えます。一般に市販されているパック入りのかつお節は、削り節として荒節を削ったものです。
枯節とはことなり、荒節の場合は原材料に、「かつおのふし」と表記されます。かつおを原料とするのが一般的ですが、まぐろやさば、あじを使った荒節もあります。
枯節(かれぶし)
枯節とは、荒節の表面を削って形を整えたあと、かつお節用の真菌(カビ)を塗る黴付を行ったかつお節です。
燻したあとのかつお節を削っているため、荒節とは異なり、表面が薄茶色に見えます。また、黴付によって、表面が粉っぽくなっているのが特徴です。黴付と乾燥を繰り返すため、荒節よりも製造に時間がかかります。
パック入りの削り節には、「かつおのかれぶし」と原材料が表記されているため、荒節と区別できます。
本枯節
本枯節は、黴付と乾燥の工程を枯節よりも多く繰り返し、熟成させたかつお節です。工程が多くなるため、製造に約半年かかるとされています。
かつお節の削り方の違い
市販されているパック入りのかつお節には、「ソフト削り」や「厚削り」などと記載されています。実は削り方によって、味や舌触りが異なり、それぞれに適した調理方法があります。
厚削り
厚削りは、通常よりも厚く削ったかつお節です。
しっかりとした肉厚の削り節が特徴で、薄削りよりも濃い出汁が取れます。出汁専用の削り節のため、トッピングとしては使用しないのが一般的です。
うどんやそばの出汁、味噌汁を作るときの出汁取りに適しています。
ソフト削り
ソフト削りとは、通常よりも薄く削ったかつお節です。
薄くて軟らかいため、料理のトッピングに使用します。もちろん、出汁を取るときにも問題なく使えます。
味噌汁や煮物の出汁だけでなく、トッピングに使えるため、市販品でも流通量の多い削り方です。
糸削り
糸削りとは、かつお節の血合い部分を、取り除いてから削ったものです。
血合いを取り除かないかつお節とは異なり、臭みが少なく、見た目も白いことが特徴。ふわふわと薄く軟らかいため、料理のトッピングに適しています。
出汁を取るよりも、おひたしや冷ややっこ、焼きそばなどに乗せるとよいでしょう。
削り粉
削り粉とは、粉末状のかつお節です。食感よりも、かつお節の味を楽しむために使われます。
料理の食感を邪魔しないため、そのままドレッシングや和え物に入れてもよいでしょう。味噌汁や煮物などの出汁にも使えます。
かつお節に含まれる成分・栄養素
かつお節100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
かつお節に含まれるタンパク質は、なまり節よりも、荒節や枯節のほうが約2倍多いことが特徴です。ミネラルも、おおむね荒節・枯節のほうが多く含み、熟成させたかつお節は栄養の高いことがわかります。
食 品 名 | 単位 | かつお節 | 削り節 | 削り節つくだ煮 | なまり | なまり節 | 裸節 | |
廃 棄 率 | % | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
エネルギー | kJ | 1410 | 1387 | 989 | 534 | 687 | 1296 | |
kcal | 332 | 327 | 233 | 126 | 162 | 306 | ||
水 分 | g | 15.2 | 17.2 | 36.1 | 66.9 | 58.8 | 22.6 | |
たんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質 | g | 64.2 | 64 | - | -24.3 | -30.9 | - |
たんぱく質 | g | 77.1 | 75.7 | 19.5 | 29.8 | 38 | 71.6 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | 1.8 | 1.9 | 2.6 | 0.4 | 0.7 | -2.1 |
コレステロール | mg | 180 | 190 | 57 | 80 | 95 | 160 | |
脂質 | g | 2.9 | 3.2 | 3.3 | 0.7 | 1.1 | 3.3 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | -0.8 | -0.4 | - | -0.4 | -0.5 | -0.2 |
g | * | |||||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | -0.7 | -0.4 | - | -0.4 | -0.5 | -0.2 | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 14.8 | 13.4 | 33 | 6.2 | 8 | 1 | |
* | * | * | * | * | ||||
食物繊維総量 | g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
糖アルコール | g | - | - | - | - | - | - | |
炭水化物 | g | 0.8 | 0.4 | 32.3 | 0.4 | 0.5 | 0.2 | |
有機酸 | g | - | - | - | - | - | - | |
灰分 | g | 4 | 3.5 | 8.8 | 2.2 | 1.6 | 2.8 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 130 | 480 | 3100 | 110 | 95 | 310 |
カリウム | mg | 940 | 810 | 410 | 300 | 630 | 780 | |
カルシウム | mg | 28 | 46 | 54 | 11 | 20 | 15 | |
マグネシウム | mg | 70 | 91 | 69 | 32 | 40 | 76 | |
リン | mg | 790 | 680 | 290 | 300 | 570 | 570 | |
鉄 | mg | 5.5 | 9 | 8 | 3.7 | 5 | 6.5 | |
亜鉛 | mg | 2.8 | 2.5 | 1.3 | 0.9 | 1.2 | 1.9 | |
銅 | mg | 0.27 | 0.43 | 0.18 | 0.17 | 0.2 | 0.29 | |
マンガン | mg | - | 0.05 | 0.35 | 0.02 | 0.03 | 0.03 | |
ヨウ素 | μg | 45 | - | - | - | - | 60 | |
セレン | μg | 320 | - | - | - | - | 240 | |
クロム | μg | 1 | - | - | - | - | 3 | |
モリブデン | μg | 1 | - | - | - | - | 2 | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | Tr | 24 | Tr | Tr | Tr | 10 |
α|カロテン | μg | - | 0 | 0 | - | - | - | |
β|カロテン | μg | - | 0 | 0 | - | - | - | |
β|クリプトキサンチン | μg | - | - | 0 | - | - | - | |
β|カロテン当量 | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | |
レチノール活性当量 | μg | (Tr) | 24 | (Tr) | (Tr) | (Tr) | 10 | |
ビタミンD | μg | 6 | 4 | 6 | 4 | 21 | 6.7 | |
α-トコフェロール | mg | 1.2 | 1.1 | 0.4 | 0.2 | 0.4 | 1.5 | |
β-トコフェロール | mg | 0.3 | 0 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | |
γ-トコフェロール | mg | 0.1 | 0 | 1.2 | 0 | 0 | 0 | |
δ-トコフェロール | mg | 0.2 | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 | |
ビタミンK | μg | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | |
ビタミンB1 | mg | 0.55 | 0.38 | 0.13 | 0.19 | 0.4 | 0.01 | |
ビタミンB2 | mg | 0.35 | 0.57 | 0.1 | 0.18 | 0.25 | 0.35 | |
ナイアシン | mg | 45 | 37 | 12 | 16 | 35 | 45 | |
ナイアシン当量 | mg | 61 | 54 | -16 | -22 | -42 | -60 | |
ビタミンB6 | mg | 0.53 | 0.53 | 0.19 | 0.46 | 0.36 | 0.65 | |
ビタミンB12 | μg | 15 | 22 | 5.3 | 21 | 11 | 16 | |
葉 酸 | μg | 11 | 15 | 27 | 16 | 10 | 14 | |
パントテン酸 | mg | 0.82 | 0.97 | 0.57 | 0.58 | 0.7 | 0.86 | |
ビ オ チ ン | μg | 15 | - | - | - | - | 15 | |
ビタミンC | mg | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 | - | |
アルコール | g | - | - | - | - | - | - | |
食塩相当量 | g | 0.3 | 1.2 | 7.9 | 0.3 | 0.2 | 0.8 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
かつお節の効果・効能
かつお節に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
タンパク質が体を作る
タンパク質は、筋肉や骨、内臓を構成する主要な栄養素です。体を作るだけでなく、ホルモンや酵素などは、その骨格がすべてタンパク質からできています。酸素の運搬や神経伝達にも関与しており、人体には必要不可欠です。
かつお節の原料であるかつおは、魚介類に含まれる動物性タンパク質を豊富に含みます。良質なタンパク質が含まれるため、積極的に摂取したい栄養素です。
タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
カルシウムで骨粗しょう症を予防
体内のカルシウムの約99%は、骨や歯を構成しています。残りの約1%は血中に存在し、血中のカルシウムが不足すると、骨や歯からカルシウムが溶け出す仕組みです。
そのため、食事からのカルシウム摂取量が減ると、骨からカルシウムが溶け出して中身がスカスカになる、骨粗しょう症を引き起こしやすくなります。カルシウムは、丈夫な骨や歯を作るときに、欠かせない栄養素です。
カルシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
鉄が貧血や出血を予防
鉄は、酸素の運搬に深くかかわっているミネラルの1つです。体内の約70%の鉄が、赤血球のヘモグロビンや、筋肉中のミオグロビンと結合して、酸素の運搬をしています。残りの約30%は、肝臓や骨髄に蓄えられ、体内にある鉄の約0.3%は、エネルギー代謝にかかわっています。
かつお節に含まれる鉄は、ヘム鉄と呼ばれ、肉や魚に多く含まれる鉄です。ヘム鉄は体内への吸収率が非ヘム鉄よりも高く、食べ物内の鉄が効率よく栄養素として利用されます。また、鉄は、ビタミンCを多く含む食べ物と一緒に摂取することで、より吸収率を上げることが可能です。
体内の鉄が不足すると、鉄欠乏性貧血になったり、出血を起こしやすくなったりします。
鉄の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
亜鉛で胎児の発育を促進
亜鉛は、味覚を正常に保ったり、DNAの合成に関与したりと、成長促進や生体機能の維持にかかわる微量ミネラルです。
亜鉛が不足すると、成長の遅延や味覚異常、性腺の発達障害などを引き起こします。成長に大きくかかわるため、妊娠中の女性にとって欠かせない栄養素です。細胞の増殖を促進させ、胎児が正常に発育するように働きかけます。
亜鉛の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
イノシン酸でうま味を引き出す
イノシン酸とは、アミノ酸の1種で、うま味成分と呼ばれる栄養素です。
三大うま味成分であるグルタミン酸や、グアニル酸と同様に、イノシン酸を料理に入れることでうま味が強くなります。複数のうま味成分を含むとよりうま味が強くなり、グルタミン酸を多く含む昆布と、イノシン酸の多いかつお節を両方使うと、より濃い出汁が取れます。
イノシン酸は、料理のうま味をアップさせるため、食欲増進にもつながるでしょう。
かつお節の食べ方
かつお節の栄養素を損なわない調理方法・食べ方などを解説します。
ほうれん草のおひたし
「もう1品ほしい」というときに、手間なく作れるのがほうれん草のおひたしです。ほうれん草のおひたしに、ソフト削りのかつお節を加えると、風味がよくなります。
ほうれん草に含まれるシュウ酸は、カルシウムと結合することで、結石の原因物質であるシュウ酸カルシウムになります。
かつお節とほうれん草を一緒に摂ると、かつお節に含まれるカルシウムが、ほうれん草のシュウ酸と結合します。体内に入る前にシュウ酸カルシウムに変わるため、シュウ酸が体内に吸収されにくくなると考えられます。
ほうれん草の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
納豆に入れるとより栄養価の高いおかずに
納豆には、良質なタンパク質とミネラル、ビタミンが多く含まれています。女性ホルモンのバランスを整える効果がある、大豆イソフラボンも豊富です。納豆1パック(50g)に含まれる、大豆イソフラボンの量は約36mg。これは、豆乳100gよりも多い数字です。
栄養満点の納豆のトッピングには、かつお節がおすすめです。そのままかけて混ぜるだけなので、簡単にカルシウムなどの栄養をアップさせられます。
納豆の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
ごまやのりと混ぜて自家製のふりかけにも
かつお節は、ふりかけの原材料にもなっており、自家製のふりかけを作るときに、削り粉のかつお節が活躍します。
ごま油と醤油・みりん・酒・砂糖などのお好みの調味料をフライパンに入れ、かつお節を炒めます。パラパラになったら、ごまやのりなどのトッピングを入れて完成です。出汁を取ったあとのかつお節でも作れるため、材料に無駄がありません。
お子様のお弁当作りで、ふりかけがないことに気付いても、かつお節があればすぐに手作りのふりかけが作れます。
かつお節の保存方法
かつお節の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
削り節は密閉して保存
かつお節は、小さいパックでも一度にすべてを使いきれないことがあります。その場合は、密閉して、冷蔵庫で保存しましょう。かつお節が空気に触れると酸化して、風味や栄養が損なわれる可能性があります。密閉容器に入れることで、酸化を防げます。
未開封の削り節なら、直射日光の当たらない涼しい場所で、長期間の保存が可能です。削り節の袋の中には、窒素ガスが充填されており、酸素と触れ合わせずに風味を保つ役割をしています。未開封の削り節のパックに、空気が入っているのはこのためです。
枯節は室温でも問題ない
枯節をそのまま保存するときは、日光の当たらない涼しい場所で保管します。枯節の表面には、カビが付いているため、荒節よりも保存性の高いことが特徴です。
ただし、湿度の高い場所で保管すると、虫が湧くことがあるため、湿度の低い冷暗所で保存しましょう。保存するときは、ラップで包み、空気と触れないようにします。
荒節は冷蔵庫で保管
荒節の場合は、枯節よりも保存性が悪いため、冷蔵庫での保存が基本です。
乾燥の回数が枯節よりも少なく、カビの増殖や虫の発生が、起こりやすいと考えられています。こちらも、ラップで包んで保存しましょう。