ダイエットには「持続可能」な「ゆる糖質制限」を取り入れよ!

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ここ数年のダイエット&健康市場において「糖質制限」「糖質オフ」「ロカボ」「炭水化物抜き」といったキーワードが一般的に使われるようになっていて、それらを意識した商品も増えています。いずれも「糖質をコントロールしよう!減らそう!」ということですが、一体どれくらいの人が糖質制限を徹底した食生活を習慣にすることができているのでしょうか。

そもそも白米が主食の日本人にとって厳密な糖質制限は難しいと考えられています。そこで、糖質制限の最前線と「制限よりも摂り方にこだわる」という「持続可能なゆる糖質制限」についてご紹介。

糖質を多く摂取することで起こる問題その1:血糖値スパイク

私たちヒトが糖質を摂取しすぎると、健康にも美容にも悪影響があることがわかっていて、これは紛れもない事実です。よく知られるのが「血糖値スパイク」。血糖値スパイクとは食後に血糖値が急上昇した後に急降下することで、これによって血管が傷つき動脈硬化を促進させ、また活性酸素が大量発生し、血管以外にも細胞を傷つけることで、生活習慣病や老化促進のリスクになるのです。

糖尿病とは全く無縁に思える痩せ型の日本人女性であっても5人に1人の割合で血糖値スパイクが起きているとされ、食後に急速に眠くなる・だるくなる・集中力が低下する・食後わずか数時間で甘いものを食べたくなる、という人は血糖値スパイクが起こっている可能性が高いとされています。ちなみにパスタやラーメンなどの単品メニュー、朝食抜きからのランチ、野菜不足の献立などで血糖値スパイクが起こりやすいこともわかっています。つまり、現代人の食生活は血糖値スパイクが非常に起こりやすいものだと言えるでしょう。

糖質を多く摂取することで起こる問題その2:糖化

血糖値スパイク以外にも糖質摂取過多によって起こる問題が「糖化」。糖化とほぼ同意の「AGEs」という言葉もメディアでよく取り上げられるようになっています。糖化とは、体内でタンパク質と糖が結びつくことで起こるメイラード反応のことで、メイラード反応によって発生する物質「糖化最終生成物=Advanced Glycation Endproducts」を、略して「AGEs」と呼びます。体内でタンパク質が糖化してしまうと、そのタンパク質は本来の機能を発揮できなくなり、炎症や細胞死が起こってしまうだけでなく、細胞組織は茶色に変性し、質感も硬く弾力を失ってしまうため、血管であればやはり動脈硬化になるし、肌に生じるとシミやシワ、くすみの原因になってしまいます。

しかもAGEsは皮膚の老化(はり・弾力の低下、くすみの原因)、アルツハイマー病(アミロイドβの凝集)、動脈硬化、骨粗鬆症(骨の脆弱化)、糖尿病合併症(網膜症や腎症)などの原因になることもわかってきており、糖化によりAGEsが過剰に発生することは、さまざまな疾患リスクを高めることになることが報告されているのです。特に肌に与える影響は大きく、老尿病の患者はそうでない人に比べ肌弾力が5〜10歳も老化しているといった報告もあるほど。

糖質を多く摂取することで起こる問題その3:中毒性や依存性が高いのでやめられない

このように糖質を多く摂取すると体の内側から体調や見た目を損なうリスクが高いという大きなデメリットがあるのに対し、糖質、特に白い砂糖には麻薬レベルの中毒性や依存性があるというのが3つ目の大きな問題です。糖質を一度摂取すると、どうしてもそれをもう少し食べたくなってしまいます。これは私たち人間の脳の唯一のエネルギー源となる栄養素が糖(ブドウ糖)ということとも関係しているはず。

また糖が多く含まれる炭水化物は脳のエネルギー源になるだけでなく、腸内細菌の餌になるという観点からも摂取を厳密に制限するのは難しい栄養素なのです。糖は私たちの生命維持に不可欠である一方で、摂取過多は老化や疾病のリスクになるということを常に頭に入れて上手に付き合うべき、厄介な存在だと言えるでしょう。

糖質制限ダイエットの究極「ケトジェニックダイエット」は米国でも大ブーム

ところで、ダイエット大国のアメリカでは糖質制限の究極とも言える「ケトジェニックダイエット」が大ブームになっています。ケトジェニックダイエットとは、ケトジェニック食と呼ばれる糖質を徹底的に制限した食事療法を実践する方法で、体内で「糖」が枯渇した時に体内で産生される「ケトン体」というものをフル活用するダイエット方法のこと。ケトン体とは飢餓状態や糖尿病などによってエネルギー源として血糖が利用できなくなった時に、脂肪酸によって肝臓で産生され血中に放出される物質。

このケトン体が体内で産生されている時は体内に通常ならエネルギーになる糖がない状態なので、代わりに体に蓄積されている脂肪がどんどん燃焼されていくのです。近年にはケトン体そのものに「疲労回復」「代謝促進」「抗老化」「脳機能の維持・向上」「睡眠の質の向上」「持久力の向上」といった効果があるのでは、という研究報告もあり、ケトン体回路を起動させるために「ケトジェニックダイエット」に取り組むセレブが続出しています。ただしケトジェニックダイエットで推奨される食事の構成は「脂質75%、たんぱく質20%、炭水化物5%」と、糖質が非常に少ないもの。

ちなみに日本人の食事摂取基準で推奨されている食事のバランスは「炭水化物60︎%、脂質25%、タンパク質15︎」ですから、ご飯をメインで考える日本人にとってケトジェニック食やそれ以外の糖質制限食は厳しいものがあります。

日本人に厳格な糖質制限はマッチしない!

日本でも某ダイエット専門スタジオなどで糖質制限が実践されていますが、実際はダウントレンドといえます。というのもやはりお米が大好きな日本人にとってお寿司を食べない、ご飯と味噌汁が食べられない、というのはハードルが高すぎるからです。一時的に絶つことができても、一度許してしまうと糖には中毒性があるので、大抵ずるずると食べてしまうことになりあっというまにリバウンド。

また、糖質制限やロカボ、ケトジェニックを実践した人の中には「吐き気」「骨密度の低下」「腎障害」「悪玉コレステロールの増加」といった副作用が報告されているケースも多いのです。特に日本人の腸内環境の組成的にも、日本人が持っている腸内細菌叢には炭水化物が絶対的に必要だという研究成果が多く出てきています。

血糖値スパイクや糖化を抑制する食べ方

少し前に「食べる順番ダイエット」というのが大ブームになりましたが、この方法は、血糖値スパイクや糖化を抑制するのに十分な効果があることが報告されています。基本的に「不溶性の食物繊維」を最初に、あるいは一緒に食べることで血糖値の上昇はグッと抑えられること、糖化も抑制できることがわかっていて、例えば、白いご飯をお茶碗一杯食べるにしても、その上に山芋のとろろをかけて食べるのでは、後者の方が血糖値の上昇がグッと抑制され、糖化も抑えられることがわかっています。

お味噌汁、納豆、漬物、このような副菜を活用することは非常に効果が高いですし、そのようなものがなければ、「難消化性デキストリン」が入っている機能性表示やトクホのドリンクを一緒に摂取するだけでも十分な対策になるのです。つまり日本人の場合、「糖を制限する」のではなく「糖の吸収を抑制する食べ方」をコツコツと実践していく方が、間違いなく継続することができます。

生活習慣病の見直しも血糖値対策になる

さらに最近では規則正しい生活習慣が糖化最終生成物AGEsの蓄積予防に役立つという報告もあります。具体的には喫煙、飲酒(週に3日以上)、睡眠不足(6時間を切る)でAGEsの蓄積が進んでしまう可能性が指摘されています。禁煙、休肝日は週4日、1日7時間以上寝るようにすることでAGEsの蓄積予防になるというのです。

糖質制限以外にケトン体を作る方法

また、糖質制限をしなくてもたいなにケトン体を増やす方法が少しずつ見つかってきています。例えばMCTオイル。この中鎖脂肪酸を摂取することで体内でケトン体が合成されやすくなるため、最近はコーヒーなどの飲料にMCTオイルを添加したり、サラダのドレッシングにMCTオイルを使う人が増えています。

さらに、週末断食、腹八分目、一汁三菜、といった昔からの日本人が実践している食養生をするだけでもケトン体回路が活性する可能性も示唆されています。また、1ヶ月の自然な運動(毎日30分の有酸素運動)で、肝臓でのケトン体生成量が増え脳由来神経栄養因子(BDNF)が増加するといったエビデンスも出ていますから、やはり運動も不可欠でしょう。

血糖値パターンを知る時代へ

近い未来に期待されているのがスマートウォッチによる血糖値の管理です。現在、スマートウォッチで歩数や心拍数などを管理している人が多いと思いますが、近い将来血糖値の測定も随時スマートウォッチでできるのではないかと期待されています。おにぎり1つ食べても、血糖値の上がり方・下がり方には個人差があるため、一人一人が血糖値をパーソナルに管理できれば、食事も生活習慣もより自分に合った方法をカスタマイズできるようになるでしょう。

SDGs(持続可能な開発目標)という言葉は今まさにトレンドワードですが、ダイエットにおいても持続可能であることが何よりも大切です。無理をすると必ずリバウンドや弊害が起こります。糖質制限ではなく「ゆる糖質制限」という日本人が続けやすい方法を長く実践し続けて、ダイエットも健康も成功させましょう。

この記事を書いた人

AYA ARAHARA
AYA ARAHARA
https://aya-works.com/
ヨガインストラクター。
ホテル、外資系化粧品メーカー、美容業の広報/PRとして業務を経て、アロマテラピーや美容業界の実用書等の、編集・執筆活動のほか、ライフワークとしてヨガインストラクターとしても活動している。
近著としては、「ママになっても美しい人の食事術」(PHP研究所)編集協力、「枯れないからだ」(河出書房新社)編集協力など多数。最新作は「寝る前5分の新習慣! 極上の眠りに導く安眠ヨガ」が好評発売中!
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