慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・改善に役立つ食べ物
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状や定義、原因について解説したうえで、COPDの予防・改善に役立つ栄養素を豊富に含む食べ物や飲み物を紹介します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、肺気腫と慢性気管支炎の総称です。2つの疾患を併発するケースが多いことから、まとめてCOPDと呼ばれるようになりました。
COPDは、タバコの煙や大気汚染物質などの有害物質を、長期にわたって吸い込むことで、気管支や肺胞に起こる炎症がもととなり発症します。40歳以上の喫煙者や、喫煙していた経験のある人に多く発症する疾患です。
肺気腫:肺や気管支の炎症により、肺胞の壁が破壊される疾患です。隣接する肺胞同士が結合して肺が大きな袋のようになり、呼吸の苦しさや息切れが生じます。進行は遅く、病状が悪化してから発見されることも少なくありません。
慢性気管支炎:気管支に炎症が起こり、咳・痰などの症状を引き起こす疾患です。急性気管支炎は数日から数週間で症状が治まりますが、慢性気管支炎は症状が1年のうちに3ヶ月以上あり、それが2年以上続いている状態です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状
COPDの主な症状は次の通りです。
- 労作時呼吸困難(運動時などの息切れ・息苦しさ)
- 咳
- 痰
- 喘鳴(ぜんめい/呼吸するときにゼイゼイ・ヒューヒューという音がする)
- 食欲不振
- 体重減少
- 頭痛
- ビール樽状胸郭(胸部がビール樽のようにふくらむ)
- チアノーゼ(血中酸素濃度が低下して口唇や顔面が青紫色になる)
- ばち指(指先が太鼓のばちのように丸く変形する)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因
COPDの原因について説明します。
喫煙習慣
COPDの主要な原因は喫煙です。「タバコ病」の別名も持ち、COPD患者の90%以上が喫煙者で、喫煙者の15~20%がCOPDを発症すると言われています。
タバコの煙には、ニコチン・タール・一酸化炭素をはじめとした200種類以上の有害物質が含まれています。これらの有害物質を長期的に吸い込み続けると、肺や気管支に炎症が起こり、肺気腫や慢性気管支炎を発症します。
喫煙の年数が長く、喫煙する量が多いほどCOPDのリスクは上昇します。また、人が吸ったタバコの煙を吸い込む受動喫煙でもCOPDを発症することがあります。
汚染された大気中の有害物質
自動車の排気ガス・工場の煙・黄砂・PM2.5や、職業性の粉塵や化学物質への曝露もCOPDの原因となります。
大気中の有害物質を長期間にわたり多量に吸入することで肺や気管支へダメージが蓄積され、喫煙者でなくてもCOPDを発症する場合があります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・改善に効果的な栄養素
COPDの予防・改善に効果的な栄養素について説明します。
イソフラボン
イソフラボンは、大豆などに含まれるポリフェノールの一種で、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きがあります。大阪市立大学の研究で、イソフラボンにCOPDの予防効果があることが発見されました。
同研究では、受動喫煙でCOPDを発症したマウスにイソフラボンを投与したところ、炎症細胞の減少や肺気腫の抑制効果が確認されたほか、炎症反応を促進するサイトカインの上昇を抑える効果が認められています。
イソフラボンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
ビタミンC
ビタミンCがCOPDの治療に有効である可能性が、東京都健康長寿医療センター研究所と順天堂大学医学部の共同研究で示されています。
研究では、人と同じように体内でビタミンCを合成できなくした特殊なマウスを使用。受動喫煙によりCOPDを発症したマウスに十分なビタミンCを与えると、壊れた肺胞が修復することが確認されました。
また、肺や気管支が弱っていると、風邪やインフルエンザなどの感染症にも罹患しやすくなります。ビタミンCには免疫機能をサポートする作用もあり、感染症から体を守る効果も期待できます。
ビタミンCの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
タンパク質
COPDを発症すると、食欲が無くなり体重が減ってしまうケースも少なくありません。胃が膨らむと肺呼吸に関わる筋肉の横隔膜の動きが悪くなったり、息切れしたりして、食事をとるのが大変に感じるためです。呼吸に多大なエネルギーを消費することも一因です。
エネルギーが不足すると呼吸に必要な筋肉が減り、さらに息苦しくなるという悪循環に陥ることも。COPDによる体重減少を予防するためには、筋肉や血液の材料となるタンパク質を多く含む食品を摂取し、栄養が不足しないよう心がけましょう。
動物性タンパク質は肉・魚・乳製品・たまごなどに、植物性タンパク質は大豆などの豆類に豊富です。
タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品|NANIWA SUPLI MEDIA
カルシウム
骨粗しょう症は、COPDの重大な合併症であり、骨が脆くなって骨折しやすくなる疾患です。骨の健康は、女性ホルモンのエストロゲンによって守られていますが、タバコの煙にはエストロゲンを低下させる成分も含まれています。
骨粗しょう症の予防には、骨の主成分であるカルシウムの摂取が大切です。合わせて、カルシウムの吸収効率を高めるビタミンDや、カルシウムの骨への定着を促すクエン酸も摂取できるとなお良いでしょう。
ビタミンDは、日光に当たることで生成されるほか、鮭やうなぎなどの魚介類、きくらげなどのきのこ類からも摂取できます。クエン酸は、梅干し・酢・柑橘類など酸味の強い食材に豊富な有機酸の一種です。
カルシウムの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法|NANIWA SUPLI MEDIA
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・改善におすすめの食べ物・飲み物
以上の栄養素を豊富に含んだ、COPDの予防・改善に効果的な食べ物や飲み物について解説します。
大豆・大豆食品:COPD予防に役立つイソフラボンが摂取できる
COPDの予防に効果的なイソフラボンは、大豆や大豆を原料とする豆乳・豆腐・納豆・油揚げ・醤油・味噌などに多く含まれています。
また、大豆には植物性タンパク質が豊富で、息切れなどで食欲が低下しているときにも効率良くエネルギーを摂取できる食材と言えるでしょう。
さらに、大豆イソフラボンには女性ホルモンのエストロゲン様作用があり、COPDが誘発することの多い骨粗しょう症の予防にも効果的です。
大豆の栄養と効果効能・食べ方・注意点・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
野菜・果物:十分に摂取すると喫煙者・元喫煙者のCOPDリスクが低下
野菜や果物には、体に有害な活性酸素を抑えるビタミンやポリフェノールなどの抗酸化物質が豊富です。
抗酸化物質を多く含む野菜や果物を多く食べている喫煙者および元喫煙者は、摂取量が少ない人と比べてCOPDの発症リスクが低い傾向にあることが、スウェーデン人男性を対象とした研究で明らかにされています。
ただし、喫煙経験の無い人は、野菜・果物の摂取量とCOPD発症率との関連性は認められませんでした。
乳製品:タンパク質とカルシウムが豊富
牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品には、エネルギー源である動物性タンパク質や、骨の健康を守るカルシウムが豊富です。COPDによる栄養不足や、骨粗しょう症の予防に役立ちます。
特に、牛乳の栄養素が濃縮されたチーズは、「白い肉」と称されるほどタンパク質やカルシウムが豊富。効率的にこれらの栄養を摂取したいときはチーズがおすすめです。
牛乳の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
チーズの栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
肉類:高タンパクな赤身や鶏肉がおすすめ
呼吸をサポートする筋肉の維持には、タンパク質の摂取が欠かせません。炭水化物や野菜中心の食事に偏りがちな人は、動物性タンパク質が豊富な牛・豚・鶏・ラムなどの肉類の摂取量も増やしましょう。
特にタンパク質を効率よく摂取できるのは、牛もも肉・豚もも肉・鶏ささみ・鶏むね肉など、脂身が少なく赤身中心の部位です。
牛肉の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
豚肉の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
鶏肉の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
魚類:鮭やブリにタンパク質が豊富
魚類からも動物性タンパク質が摂取できます。魚類全般にタンパク質は含まれていますが、特に鮭・ブリ・かんぱちなどが高タンパクな魚です。
魚の脂には、エネルギー源となる必須脂肪酸の一種である不飽和脂肪酸が豊富なのもポイント。魚は、不足しがちな必須脂肪酸を補える食材でもあります。
鮭の栄養と効果効能・調理法・保存法|NANIWA SUPLI MEDIA
野菜ジュース:水やお茶でむせてしまうときにおすすめ
からみやすい痰をスムーズに排出するためには、こまめな水分補給が効果的です。水やお茶を飲むとむせてしまう場合は、野菜ジュースなど濃度の高い飲み物がおすすめです。
野菜ジュースからは、COPD予防に効果的と考えられるビタミンCをはじめ、ポリフェノール・ミネラル・食物繊維などの栄養素も摂取できます。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・改善のために避けたい食べ物・飲み物
COPDの予防・改善に効果的な食べ物・飲み物について解説します。
塩分の多い食事
COPD患者は、高血圧などの生活習慣病を併発していることも多く、塩分の多い食事には注意が必要です。
減塩の食材・調味料を選ぶ、うどんやラーメンの汁を飲み干さない、塩分の排出を助けるカリウムが豊富な野菜や果物を摂るなどの工夫をしてみてください。
香辛料
コショウやとうがらしなどの香辛料は、呼吸器への刺激となり、むせたり咳が出やすくなったりする原因になります。
ひどい咳は気管支や肺の炎症を悪化させる恐れがあるため、喉への刺激となる香辛料や辛い食べ物は控えましょう。
お腹にガスがたまりやすい食材
イモ・ゴボウなど不溶性食物繊維の多い食材や炭酸飲料を摂取すると、お腹の中でガスが発生しやすくなります。
たまったガスが横隔膜を圧迫して息苦しさが増す可能性があり、根菜類や炭酸飲料の食べ過ぎ・飲み過ぎには注意が必要です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・改善に効果的な生活習慣
COPDを予防・改善するために心がけたい食生活や生活習慣について解説します。
禁煙する
COPDの最大の原因はタバコです。喫煙歴の長さや喫煙量の多さがCOPDの発症リスクと関わっているため、現在喫煙している人でも、なるべく早く禁煙することがCOPDの予防には有効と言えます。
また、受動喫煙もCOPDの原因となるため、非喫煙者の人はタバコの煙を避けるよう心がけましょう。家族に禁煙してもらう・職場を分煙にする・喫煙可の飲食店に行かないなど、副流煙を避ける心がけも大切です。
空気のきれいな環境で過ごす
大気中の汚染物質を吸い込むこともCOPDの原因となります。
ランニングやウォーキングなどを行うときは、排気ガスの多い大通り沿いは避け、公園など空気のきれいな場所を選ぶようにしてください。
適度な運動
適度な運動は、COPDの予防・改善をはじめ、肥満改善・ストレス解消など体にとってあらゆる良い効果があります。適切な呼吸をしながら運動することで心肺機能が高められ、息苦しさが軽減される効果も期待できるでしょう。
運動時に息苦しいときは、鼻から息を吸って口をすぼめて長く息を吐く「口すぼめ呼吸」を行うと効率的に呼吸ができます。
食事の回数を増やす
栄養が不足して筋肉が落ちるとCOPDの症状にも悪影響が生じます。健康維持に必要な食事量は確保したいところですが、満腹になると横隔膜が圧迫されて息苦しさが増す恐れがあります。
息苦しくて一度にたくさんの食べ物が食べられないときは、1日3食のところを4~5食とするなど食事の回数を増やし、1回あたりの分量を減らして対策しましょう。
参考文献
- 大豆を食べると肺気腫を防げる?|大阪市立大学
- settings Open AccessArticle Isoflavone Aglycones Attenuate Cigarette Smoke-Induced Emphysema via Suppression of Neutrophilic Inflammation in a COPD Murine Model|MDPI
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療にビタミンCが有効である可能性|地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
- Fruit and vegetable consumption and risk of COPD: a prospective cohort study of men|pubmed
- 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A|食品安全委員会
- 厚生労働省eJIM | ビタミンC | サプリメント・ビタミン・ミネラル | 一般の方へ
- たんぱく質 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
記事の監修
AYA ARAHARA
ヨガインストラクター。
ホテル、外資系化粧品メーカー、美容業の広報/PRとして業務を経て、アロマテラピーや美容業界の実用書等の、編集・執筆活動のほか、ライフワークとしてヨガインストラクターとしても活動している。
近著としては、「ママになっても美しい人の食事術」(PHP研究所)編集協力、「枯れないからだ」(河出書房新社)編集協力など多数。最新作は「寝る前5分の新習慣! 極上の眠りに導く安眠ヨガ」が好評発売中!
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