イカの栄養と効果効能・調理法・保存法
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イカの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、イカに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
イカとは
イカ(squid)はタコと同じ軟体動物の仲間です。世界中で約450種類の品種があるとされ、日本の近海だけでも約130種類以上のイカが生息しています。旬の時期は品種によって異なるため、イカはほぼ1年を通して楽しむことができる食材です。
日本でイカを食べる文化は古く、縄文時代にはすでに食されていたという説もあります。平安時代には朝廷へ献上された歴史を持ちますが、江戸時代には刺身やなます、煮物などさまざまな料理に使われ庶民の食生活にも根づきました。
昔はイカの胴体のみを食しており、触手部分は捨てていたそうです。捨てられた触手が脱ぎ捨てられた履物に似ていたことから「ゲソ」と呼ばれるようになったと言われています。ゲソは「下足」の略で「脱ぎ捨てた履物」という意味です。
イカの品種・種類
ここでは、日本近海で獲れるイカのなかでも代表的な品種をご紹介します。
スルメイカ
日本で食されているイカのほとんどがスルメイカです。代表的な産地は北海道や東北など。スルメをはじめとした加工品の原料にもなります。
スルメイカは群れが3系統に分かれ産卵時期がそれぞれ異なるため、ほぼ1年中食べることができます。
アカイカ
アカイカはスルメイカの次に漁獲量の多い品種です。ムラサキイカとも呼ばれることもあります。旬は夏時期です。
加熱調理しても身が硬くならないため、サキイカの原料として使われるほか、外食産業における食材としてもよく使われます。
ホタルイカ
ホタルイカは暗闇で蛍のように光るイカです。体長は約6cmと小さく、内臓も丸ごと食せます。酢味噌和えや、煮つけなどの料理が代表的です。
富山ブランドのホタルイカは有名で、3月から6月にかけて漁獲されます。
ケンサキイカ
ケンサキイカは、剣のようにとがった見た目をしています。九州の玄界灘が有名な産地で、特に佐賀県で獲れるケンサキイカは人気が高い品種です。
味は濃厚でイカそうめんにも向いています。加熱調理をしてもやわらかいのでさまざまな料理に使われています。
アオリイカ
イカの王様として名高いアオリイカは漁獲量が少なく高級品です。肉厚な身と甘みが特徴で、刺身や寿司などで食されます。
日本近海に幅広く生息していますが、名産地は福井県と関東です。春から初夏にかけて旬を迎えます。
イカに含まれる成分・栄養素
イカ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
イカはビタミンやミネラル、タンパク質など多くの栄養素を含んでいます。特に豊富なのはビタミン類です。ビタミンDとビタミンK以外のビタミンがバランスよく含まれていることから栄養価の高さがうかがえます。
さらに、高タンパク質でありながらカロリーが低いため、イカはダイエットや身体を鍛えている人にも重宝する食品です。
タウリンが多く含まれているので、肝臓への作用も期待されています。
食品名 | 単位 | するめいか 生 | やりいか 生 | こういか 生 | あかいか 生 | けんさきいか 生 | ほたるいか 生 | するめいか 焼き | するめ(加工品) | さきいか(加工品) |
廃 棄 率 | % | 30 | 25 | 35 | 25 | 20 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 83 | 85 | 66 | 89 | 84 | 84 | 109 | 334 | 279 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 348 | 356 | 276 | 372 | 351 | 351 | 458 | 1397 | 1167 |
水 分 | g/100 g | 80.2 | 79.7 | 83.4 | 79.3 | 80 | 83 | 71.8 | 20.2 | 26.4 |
たんぱく質 | g/100 g | 17.9 | 17.6 | 14.9 | 17.9 | 17.5 | 11.8 | 23.6 | 69.2 | 45.5 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 13.1 | 12.8 | 10.4 | -13 | -12.7 | 7.6 | -17.3 | -50.1 | - |
脂 質 | g/100 g | 0.8 | 1 | 0.3 | 1.4 | 1 | 3.5 | 1 | 4.3 | 3.1 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 0.3 | 0.5 | - | 0.7 | 0.4 | 2.3 | 0.4 | 1.7 | 0.8 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.11 | 0.18 | - | 0.25 | 0.16 | 0.58 | 0.12 | 0.6 | 0.25 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.03 | 0.05 | - | 0.07 | 0.04 | 0.69 | 0.04 | 0.12 | 0.08 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.19 | 0.26 | - | 0.31 | 0.22 | 0.94 | 0.22 | 0.89 | 0.43 |
コレステロール | mg/100 g | 250 | 320 | 210 | 280 | 350 | 240 | 350 | 980 | 370 |
炭水化物 | g/100 g | 0.1 | 0.4 | 0.1 | Tr | 0.1 | 0.2 | 0.1 | 0.4 | 17.3 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
食物繊維総量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
灰 分 | g/100 g | 1.3 | 1.3 | 1.3 | 1.4 | 1.4 | 1.5 | 1.6 | 5.9 | 7.7 |
ナトリウム | mg/100 g | 210 | 170 | 280 | 200 | 210 | 270 | 330 | 890 | 2700 |
カリウム | mg/100 g | 300 | 300 | 220 | 330 | 330 | 290 | 360 | 1100 | 230 |
カルシウム | mg/100 g | 11 | 10 | 17 | 12 | 12 | 14 | 14 | 43 | 23 |
マグネシウム | mg/100 g | 46 | 42 | 48 | 46 | 46 | 39 | 57 | 170 | 82 |
リン | mg/100 g | 250 | 280 | 170 | 280 | 260 | 170 | 300 | 1100 | 430 |
鉄 | mg/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.8 | 0.2 | 0.8 | 1.6 |
亜鉛 | mg/100 g | 1.5 | 1.2 | 1.5 | 1.2 | 1.3 | 1.3 | 1.9 | 5.4 | 2.8 |
銅 | mg/100 g | 0.29 | 0.25 | 0.45 | 0.21 | 0.16 | 3.42 | 0.41 | 0.99 | 0.27 |
マンガン | mg/100 g | Tr | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.05 | Tr | 0.06 | 0.07 |
ヨウ素 | µg/100 g | 7 | - | 4 | 5 | - | - | 10 | - | - |
セレン | µg/100 g | 41 | - | 23 | 28 | - | - | 46 | - | - |
クロム | µg/100 g | Tr | - | 0 | 1 | - | - | 0 | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 1 | - | 0 | 1 | - | - | Tr | - | - |
レチノール | µg/100 g | 13 | 8 | 5 | 4 | 7 | 1500 | 22 | 22 | 3 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | - | 0 | 0 | - |
β-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | - | 0 | 0 | - |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 | 0 | - | 0 | 0 | - | 0 | 0 | - |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 13 | 8 | 5 | 4 | 7 | 1500 | 22 | 22 | 3 |
ビタミンD | µg/100 g | 0.3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 2.1 | 1.4 | 2.2 | 2.2 | 1.6 | 4.3 | 2.5 | 4.4 | 1.7 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | Tr | 0 | Tr | 0 | 0 | 0.1 | Tr | Tr | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | Tr | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | - | 0 | 0 | 0 | 0 | Tr | - | 0 | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.07 | 0.04 | 0.03 | 0.01 | 0.01 | 0.19 | 0.09 | 0.1 | 0.06 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.05 | 0.03 | 0.05 | 0.02 | 0.02 | 0.27 | 0.07 | 0.1 | 0.09 |
ナイアシン | mg/100 g | 4 | 3.5 | 1.3 | 2.1 | 2.5 | 2.6 | 5.8 | 14.1 | 8.9 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.21 | 0.1 | 0.06 | 0.1 | 0.11 | 0.15 | 0.26 | 0.34 | 0.32 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 4.9 | 1.1 | 1.4 | 2.3 | 2.5 | 14 | 5.4 | 12.3 | 6.9 |
葉酸 | µg/100 g | 5 | 5 | 3 | 2 | 4 | 34 | 7 | 11 | 1 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.34 | 0.27 | 0.52 | 0.31 | 0.28 | 1.09 | 0.44 | 1.57 | 0.47 |
ビオチン | µg/100 g | 4.9 | - | 1.6 | 4 | - | - | 6.3 | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 | 5 | 1 | 0 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0.5 | 0.4 | 0.7 | 0.5 | 0.5 | 0.7 | 0.8 | 2.3 | 6.9 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | - | - | - | - | - | 70 | - | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
イカの効果・効能
イカに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
良質なタンパク質で健康的な身体へ
体内でタンパク質を効率よく利用するには、アミノ酸の含有量が重要です。イカのタンパク質はアミノ酸の含有量が高く、9種類の必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。バリンの値は基準値より若干低いですが、白米と一緒に食べ合わせれば十分に補える量です。
毎日の食生活に取り入れれば、健康的な身体作りに役立つでしょう。
タウリンのコレステロール低下作用
イカにはタウリンが多く含まれます。タウリンは栄養ドリンクなどではお馴染みの成分ですが、疲労回復作用だけでなくコレステロールの低下作用が注目されています。
タウリンは胆汁酸と結びつきコレステロールを消費することで、血漿コレステロールの低下に役立つ栄養素です。積極的に摂取すれば生活習慣病の予防にもつながるでしょう。
さらにLDLコレステロール低下作用や中性脂肪低下作用を持つEPA(イコサペンタエン酸)も含まれるため、相乗効果が期待されます。
DHAで認知症予防
イカには必須脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)が含まれます。オメガ3脂肪酸とも呼ばれるDHAは、脳に取り込まれる性質を持つ栄養素です。
脳を活性化する作用を持ち、認知機能の改善効果も報告されています。
ビタミンの抗酸化作用や代謝サポート
イカには抗酸化作用を持つビタミンCや、代謝に関わるビタミンB群などがバランスよく含まれています。ビタミンは体内で合成できないため、食品から補う必要がある栄養素です。
イカに含まれる水溶性ビタミンは、不要な分が体外に排出されるため摂りすぎの心配はありません。積極的に食生活へ取り入れていきましょう。
イカの食べ方
イカの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
新鮮なイカの選び方
新鮮でおいしいイカを選ぶには、目に注目しましょう。目が黒々としているイカは鮮度が高い証拠です。表皮の色がはっきりとし、透明感のあるイカも新鮮です。
全体がツヤのない乳白色になったイカは鮮度が落ちている証拠。さらに古くなると、茶色く焦げたような色合いになり、茶色の斑点が出てきます。こうなったイカは避けた方が良いでしょう。
イカの捌き方
丸々1杯のイカを購入したら、ご家庭で捌いてみましょう。
まずイカの胴体に指を差し入れ足や頭の接合部分を外したら、静かに引っ張って内臓を引き出せます。胴のなかに内臓が残っている場合があるので流水で軽く洗い流しましょう。
ゲソ部分は内臓を切り離したら、目とくちばしを取り除きます。包丁で切り込みを入れると取りやすいです。長い2本の足の先端は料理に向かないため、切り落としましょう。塩を振ってゲソの吸盤を取り除けば完成です。
イカの加工品でもタウリンを摂取可能
イカの加工品であるサキイカやあたりめは、表面に白っぽい粉がついています。この白い粉はタウリンのエキスが乾燥したものです。そのまま食べれば、タウリンを摂取できます。
サキイカやあたりめは噛み応えもあり、満腹中枢を刺激してくれるのでダイエット中でも重宝します。
アニサキスに注意
イカにはアニサキスと呼ばれる寄生虫がついている可能性があります。アニサキスが体内に入ってもそのまま消化される可能性が高いですが、場合によっては腹痛を引き起こすことがあるので注意が必要です。
アニサキスはマイナス20度以下で24時間以上冷凍すると死滅しますが、家庭用の冷凍庫はマイナス18度程度。ご自宅で処理するなら加熱処理がおすすめです。60度以上の温度で1分以上加熱してみてください。
イカはプリン体が多い食材
魚卵に多く含まれているイメージのあるプリン体ですが、じつはイカにも多く含まれています。痛風を患っている人や尿酸値が上がりやすい人は摂取を控えたほうが良いでしょう。
イカのプリン体が気になる人は、尿酸値の低下をサポートしてくれる乳製品と合わせてみてください。牛乳を使ってクリームスープにしたり、イカのおつまみと一緒にチーズを食べたりする方法があります。
イカの保存方法
イカの栄養素を損なわない保存方法を解説します。イカは傷みやすい食品のため、なるべく早めに食べきるようにしましょう。
冷蔵保存
イカの内臓は傷む原因になるため、必ず取り除きましょう。適当な大きさに切ったら、それぞれラップで包んでから冷蔵庫へ入れます。イカの冷蔵保存期間は3日程度が目安です。
醤油ベースのタレに漬け込んで保存すれば、すぐに調理で使えて便利ですよ。
冷凍保存
冷蔵保存と同じく内臓は取り除きます。水気はしっかり拭き取り、空気に触れないようラップで包んでから冷凍保存しましょう。下処理を丁寧におこなうことで臭みも出にくくなります。
冷凍保存なら保存期間は約1ヶ月ほどです。調理に使う際は流水か冷蔵庫で半解凍してからがおすすめ。完全に解凍してしまうと臭みが出てしまうので注意してください。