アンコウの栄養と効果効能・調理法・保存法

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あんこう

アンコウの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、アンコウに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。

アンコウとは

アンコウは深海魚の一種です。水深200mほどの海域に生息し、頭にある「誘引突起」というアンテナのような器官で小魚をおびき寄せて捕食します。そのため英語では、「釣りをする魚」を意味する「angler fish」の名称で呼ばれます。漢字では「鮟鱇」です。

アンコウは骨以外捨てるところがない魚で、主な可食部は身・皮・肝臓・胃・ヒレ・卵巣・エラの7部位です。これらは「アンコウの七つ道具」と称され、それぞれ食感や味わいが異なります。

特に淡白でやわらかい身は上品な味わいで、「東のアンコウ、西のフグ」と称されるほど人気です。また、アンコウの肝は「あん肝」と呼ばれ、フォアグラに並ぶ珍味として親しまれています。

旬の時期は12月から2月にかけて。食用とされるのは主にメスで、旬の時期は鍋として楽しむのが一般的です。

アンコウの品種・種類

日本で主に食用とされるアンコウの品種を紹介します。

ホンアンコウ

ホンアンコウは、キアンコウとも呼ばれる品種です。東北地方から北海道、東シナ海など寒い地域に生息します。後に紹介するクツアンコウよりサイズが大きく、全長は約1.5mほどです。口の中が黒っぽく、黄白色の斑紋が見られます。

クツアンコウ

クツアンコウは、主に太平洋とインド洋などの温かい海に生息する品種です。水深200mより浅い海底に生息し、全長は1mほど。ホンアンコウとの見分け方は口内の色で、白っぽい色をしています。

アンコウに含まれる成分・栄養素

アンコウ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

アンコウは部位によって含まれる栄養素が異なります。身は高タンパク質で低カロリー。ゼラチン質の皮とヒレにはコラーゲンが多く含まれています。

特に栄養価が高いのは、あん肝とも呼ばれる肝臓です。エサの少ない深海に住んでいるアンコウは、栄養を肝臓に蓄える性質があります。あん肝にはビタミンA(レチノール)やビタミンDなどの脂溶性ビタミン、EPAやDHAなどの不飽和脂肪酸が豊富です。特にビタミンAは全食品の中でもトップクラスの含有量を誇ります。ただし約40%が脂質なのでカロリーは高めです。

食 品 名単位<魚類> あんこう 生<魚類> あんこう きも 生
廃 棄 率%00
エネルギーkJ2311657
kcal54401
水 分g85.445.1
タンパク質アミノ酸組成によるタンパク質g-10.77.9
タンパク質g1310
脂質脂肪酸のトリアシルグリセロール当量g0.136.9
コレステロールmg78560
脂質g0.241.9
炭水化物利用可能炭水化物(単糖当量)g-0.3-2.2
g
利用可能炭水化物(質量計)g-0.3-2
差引き法による利用可能炭水化物g2.79.3
**
食物繊維総量g00
糖アルコールg--
炭水化物g0.32.2
有機酸g--
灰分g1.10.8
無機質ナトリウムmg130110
カリウムmg210220
カルシウムmg86
マグネシウムmg199
リンmg140140
mg0.21.2
亜鉛mg0.62.2
mg0.041
マンガンmgTr-
ヨウ素μg-96
セレンμg-200
クロムμg-Tr
モリブデンμg-5
ビ タ ミ ンレチノール(ビタミンA)μg138300
α|カロテンμg00
β|カロテンμg00
β|クリプトキサンチンμg00
β|カロテン当量μg00
レチノール活性当量μg138300
ビタミンDμg1110
α-トコフェロールmg0.714
β-トコフェロールmg00
γ-トコフェロールmg00.1
δ-トコフェロールmg00
ビタミンKμg00
ビタミンB1mg0.040.14
ビタミンB2mg0.160.35
ナイアシンmg1.71.5
ナイアシン当量mg-4.13.8
ビタミンB6mg0.110.11
ビタミンB12μg1.239
葉 酸μg588
パントテン酸mg0.210.89
ビ オ チ ンμg-13
ビタミンCmg11
アルコールg--
食塩相当量g0.30.3
備 考試料: きあんこう切り身(魚体全体から調理する場合、廃棄率: 65 %、廃棄部位: 頭部、内臓、骨、ひれ等)試料: きあんこう肝臓
β-カロテン当量(μg)=β-カロテン(μg)+1/2α-カロテン(μg)+1/2クリプトキサンチン(μg)
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
 Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
 (0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

アンコウの効果・効能

アンコウに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。

タンパク質が健康維持に

アンコウにはタンパク質が多く含まれます。タンパク質は人間の体を健康に保つために欠かせない栄養素で、筋肉や皮膚、臓器を構成するだけでなく、ホルモン・抗体・酵素などの材料となる物質です。

特に身の部分は脂質が少なくカロリーが低い上に、タンパク質が豊富。体作りやダイエットにも役立ちそうです。

タンパク質の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品 | NANIWA SUPLI MEDIA

ビタミンAは目や皮膚を正常に保つ

アンコウの肝には脂溶性ビタミンが豊富に含まれますが、その中でもビタミンAの含有量はトップクラスです。

ビタミンAは上皮細胞の生成に関わり、目の粘膜や皮膚の健康を維持する働きがあります。また、視機能の改善にも役立ったり、免疫機能を正常に働かせたりなど私たちの健康を支えている大事な栄養素です。

ビタミンAの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ|NANIWA SUPLI MEDIA

ビタミンDが骨を強くする

アンコウの肝に含まれるビタミンDには、カルシウムの利用効率を高める作用があります。血液中のカルシウム濃度を調節することで、骨の成長をサポートしてくれるのです。

さらにビタミンDは筋肉の機能を維持する作用もあると言われています。高齢者の場合、骨粗しょう症を防ぐだけでなく、筋力低下による転倒リスクも軽減してくれるでしょう。

ビタミンDの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・おすすめレシピ | NANIWA SUPLI MEDIA

EPAやDHAが動脈硬化や認知症予防に

アンコウの肝は非常に栄養価の高い部位で、EPAやDHAなどの不飽和脂肪酸も豊富です。EPAは中性脂肪の低下作用のほか、LDLコレステロールを減らす作用も注目されています。LDLコレステロールが低下すれば、高血圧症や動脈硬化の予防にもつながるでしょう。

DHAは脳に取り込まれる性質があり、脳機能の活性化に役立つ栄養素です。継続摂取により、認知機能の改善効果が期待されます。

オメガ3の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法 | NANIWA SUPLI MEDIA

コラーゲンで健康的な肌へ

アンコウのヒレや皮にはコラーゲンが多く含まれています。コラーゲンは骨や血管、臓器を構成する成分のひとつ。特に皮膚を構成する主要成分で、皮膚の約70%はコラーゲンが占めています。健康的な肌を保つには重要な栄養素と言えるでしょう。

ただしコラーゲンは単体で摂取しても、体内でコラーゲンの再合成がうまく行われません。ビタミンCやビタミンA、タンパク質などと一緒に摂取するのが好ましいと言われています。アンコウにはビタミンAやタンパク質が豊富なので、健やかな肌作りを後押ししてくれそうです。

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アンコウの食べ方や注意点

アンコウの栄養素を損なわない選び方・調理方法・食べ方などを解説します。

アンコウの選び方

旬の時期にアンコウを買う場合、選び方にコツがあります。丸ごと1匹の状態では、体表のヌメリが透明なものを選ぶと良いでしょう。さらに艶があり、体にハリが感じられるものも新鮮な証拠です。

ただしアンコウはさばくのに技術が必要なため、ご家庭で楽しむには切り身を買うのが手軽でしょう。切り身の場合は、身に透明感がありピンク色のアンコウを選ぶようにしてください。鮮度が落ちると、身が白っぽくなるのでよく見極めましょう。

自宅でも楽しめるアンコウ料理

アンコウの代表的な料理は鍋や唐揚げです。アンコウ鍋は醤油または味噌仕立てのスープで煮込むもので、ヒレから皮、肝まで余すことなく楽しむことができます。そのほかバターソテーや煮付けなどのレシピもおすすめ。

ただしアンコウはアニサキスという寄生虫の影響で、新鮮なものでないと生で食べられません。刺身を味わいたい場合は、専門店を訪れるようにしましょう。青森県の風間浦や茨城県の大洗には生のアンコウが食べられるお店があります。

鍋ダイエットの効果と正しいやり方・継続のコツ・注意点 | NANIWA SUPLI MEDIA

プリン体の豊富なあん肝

あん肝には、尿酸値に影響を与えるプリン体が多く含まれています。体内に摂取されたプリン体は尿酸に変化し、結晶化すると通風を招く物質です。

そのためすでに痛風を患っている人や治療中の人は摂取量に気をつけましょう。公益財団法人 痛風・尿酸財団が作成した「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」では、痛風の治療中は1日400mgを目安にプリン体の摂取を制限するよう記載されています。あん肝100gあたりのプリン体量はおおよそ400mgです。

妊婦は過剰摂取に注意

あん肝に含まれるビタミンAは、胎児の正常な発達には必要不可欠な栄養素です。ただし妊娠初期に過剰摂取すると、胎児に奇形が生じるリスクが高まるので注意しましょう。

妊娠初期におけるビタミンAの摂取量目安は1日700μgです。おおよそ生のあん肝8gあたりのビタミンA含有量が664μg。一般的に普通の食事で栄養過多になる危険性は少ないですが、食べる量と頻度は意識したほうが良いでしょう。

特にビタミンAのような脂溶性ビタミンは尿として排出されないので、体内に溜まりやすい傾向があります。妊娠中以外でもビタミンAの摂り過ぎはめまいや頭痛を起こす場合があるので気をつけましょう。

アンコウの保存方法

アンコウの栄養素を損なわない保存方法を解説します。

アンコウに限らず魚類は鮮度が重要です。長期保存したい場合は、購入したその日にすぐ冷凍保存しましょう。切り身は臭みの原因となるドリップをよく拭き取ってから、ラップに包みます。1匹丸々の場合は、傷みの早い内臓を取り除いてから保存してください。

いずれにせよ、急速冷凍が鮮度を保つ鍵です。金属製のトレイに載せて冷凍庫に入れれば、早めに凍らせることができます。なお、あん肝は生のままで冷凍できないので、必ず蒸すか茹でてから保存しましょう。

冷凍保存期間の目安は2週間ほど。食べる際は流水をあてたり、冷蔵庫に移したりする方法がおすすめです。

参考文献

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