タラの芽の栄養と効果効能・調理法・保存法
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タラの芽の旬や主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、タラの芽に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
タラの芽とは
タラの芽(Aralia elata buds)とはタラの木の新芽で、山菜の一種です。希少な山菜のため、古くから高級品として扱われてきました。そのため「山菜の王様」と称されます。
タラの芽はほろ苦い風味と豊かな香りが特徴で、天ぷらや和え物にして食べられます。全国各地の山に自生していますが、近年では人工栽培も進むようになりました。春が旬の天然物は4月から5月くらいに収穫されますが、栽培されたタラの芽は12月から3月にかけてスーパーに並びます。
代表的な栽培地は山形県・群馬県・愛媛県などです。農林水産省の「令和元年特用林産基礎資料」によれば、もっとも生産量が多いのは山形県で全体生産量の約46%を占めています。
タラの芽の種類
タラの木には2種類あり、それぞれからタラの芽が採取できます。違いを以下で説明します。
オンダラ
オンダラは「男ダラ」と書き、表面が硬く幹や枝に多くの棘があります。現在では天然物のほとんどがオンダラの新芽です。
オンダラのタラの芽には棘とポツポツとした赤い模様が見られるので、山菜採りをするときの目印にもなります。また、タラの芽とよく似たウルシと区別するためにもこの棘は役に立つそうです。
メダラ
メダラは「女ダラ」と書き、オンダラと違い棘がありません。比較的栽培しやすいので、人工栽培のときはメダラを利用します。
スーパーで市販されているタラの芽はほとんどが栽培物なので、メダラは身近な品種と言えるでしょう。また、栽培物は天然物に比べて風味は弱いですが、苦味やえぐみは穏やかな傾向にあります。
タラの芽に含まれる成分・栄養素
タラの芽100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
タラの芽はカリウムをはじめとしたミネラルが豊富です。葉酸やビオチンなどのビタミン類の含有量も多く、葉酸に至っては100g中160μgも含まれています。
ビタミンCや、ビタミンAと同じ働きをするβ‐カロテンが含まれることから、タラの芽は栄養価の高い食品と言えるでしょう。
食 品 名 | 単位 | タラの芽 若芽 生 | タラの芽 若芽 ゆで | |
廃 棄 率 | % | 30 | 0 | |
エネルギー | kJ | 114 | 113 | |
kcal | 27 | 27 | ||
水 分 | g | 90.2 | 90.8 | |
タンパク質 | アミノ酸組成によるタンパク質 | g | - | - |
タンパク質 | g | 4.2 | 4 | |
脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | g | - | - |
コレステロール | mg | 0 | 0 | |
脂質 | g | 0.2 | 0.2 | |
炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | g | - | - |
g | ||||
利用可能炭水化物(質量計) | g | - | - | |
差引き法による利用可能炭水化物 | g | 0.1 | 0.5 | |
* | * | |||
食物繊維総量 | g | 4.2 | 3.6 | |
糖アルコール | g | - | - | |
炭水化物 | g | 4.3 | 4.1 | |
有機酸 | g | - | - | |
灰分 | g | 1.1 | 0.9 | |
無機質 | ナトリウム | mg | 1 | 1 |
カリウム | mg | 460 | 260 | |
カルシウム | mg | 16 | 19 | |
マグネシウム | mg | 33 | 28 | |
リン | mg | 120 | 92 | |
鉄 | mg | 0.9 | 0.9 | |
亜鉛 | mg | 0.8 | 0.7 | |
銅 | mg | 0.35 | 0.3 | |
マンガン | mg | 0.47 | 0.44 | |
ヨウ素 | μg | 0 | - | |
セレン | μg | 1 | - | |
クロム | μg | 0 | - | |
モリブデン | μg | 1 | - | |
ビ タ ミ ン | レチノール(ビタミンA) | μg | 0 | 0 |
α|カロテン | μg | 0 | 0 | |
β|カロテン | μg | 570 | 600 | |
β|クリプトキサンチン | μg | 0 | 6 | |
β|カロテン当量 | μg | 570 | 600 | |
レチノール活性当量 | μg | 48 | 50 | |
ビタミンD | μg | 0 | 0 | |
α-トコフェロール | mg | 2.4 | 2 | |
β-トコフェロール | mg | 0.1 | 0.1 | |
γ-トコフェロール | mg | 1.6 | 1.2 | |
δ-トコフェロール | mg | 0.2 | 0.1 | |
ビタミンK | μg | 99 | 97 | |
ビタミンB1 | mg | 0.15 | 0.07 | |
ビタミンB2 | mg | 0.2 | 0.11 | |
ナイアシン | mg | 2.5 | 1.3 | |
ナイアシン当量 | mg | 3.2 | 2 | |
ビタミンB6 | mg | 0.22 | 0.11 | |
ビタミンB12 | μg | 0 | 0 | |
葉 酸 | μg | 160 | 83 | |
パントテン酸 | mg | 0.53 | 0.23 | |
ビ オ チ ン | μg | 6.7 | - | |
ビタミンC | mg | 7 | 3 | |
アルコール | g | - | - | |
食塩相当量 | g | 0 | 0 | |
備 考 | 廃棄部位: 木質部及びりん片硝酸イオン: 0 g | 木質部及びりん片を除いたものゆでた後水冷し、手搾りしたもの硝酸イオン: 0 g |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
タラの芽の効果・効能
タラの芽に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
カリウムで高血圧症予防
タラの芽は、ミネラルの一種であるカリウムが豊富です。人体の細胞内に存在するカリウムは、細胞内液の浸透圧を調節する際にナトリウム(塩分)の排出を促す作用が知られています。
ナトリウムは過剰摂取すると高血圧症の原因となる成分です。塩分の摂り過ぎを抑制したい人は、カリウムが多く含まれる食品を積極的に摂取すると良いでしょう。
カリウムの効果効能・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
妊婦の葉酸摂取は胎児の健康を守る
タラの芽には、水溶性ビタミンの葉酸が多く含まれています。葉酸はDNAの合成にかかわる栄養素で、細胞増殖には欠かせません。
とくに妊娠初期は胎児の細胞増殖が活発に行なわれるため、葉酸の摂取が重要と言われています。妊娠時期は通常より200μg多く葉酸を摂取する必要がありますが、タラの芽は100gあたり160μgの葉酸が含まれ、効率的な摂取に向いています。
葉酸の効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
ビオチンで健康的な肌へ
ビオチンは水溶性ビタミンの一種で、皮膚の治療薬としても活用されている栄養素です。体内で糖質・脂質・アミノ酸などの代謝を促す作用があります。
糖質や脂質がうまく体内でエネルギー化されないと、肌荒れを招く要因にも。ビオチンは美容のためにも必要な栄養素と言えるでしょう。
β‐カロテンの抗酸化作用
β‐カロテンは色素成分のひとつです。体内でビタミンAと同じ働きをするため、目や肌の健康維持に役立ちます。
さらにβ‐カロテンは強力な抗酸化作用を持つ抗酸化物質でもあります。抗酸化作用とは、体内で過剰発生した活性酸素の働きを抑制する作用のこと。活性酸素は増えすぎるとガンや老化などを引き起こします。
また、抗酸化力の高いビタミンCが含まれていることからも、タラの芽は抗酸化作用の高い食品といえるでしょう。
β-カロテンの効果・1日の摂取目安量・多く含む食品・効率よく摂取する方法
エラトサイドで糖尿病予防
エラトサイドはタラの芽の苦みを作り出す成分で、ポリフェノールの一種です。糖の代謝作用が知られており、血糖値の上昇を抑える働きがあります。近年では糖尿病予防として注目されている栄養素です。
タラの芽の食べ方や注意点
タラの芽の栄養素を損なわない選び方・調理方法・食べ方などを解説します。
タラの芽の選び方
おいしいタラの芽を選ぶには、大きすぎないものがよいとされています。成長しすぎたものは苦味やえぐみが増すので、あまりおすすめできません。ただし小さすぎても風味が物足りない場合があるため、葉が少し開きかけたタラの芽を選ぶとよいでしょう。
また、穂先の葉が青々とした緑色のものは新鮮な証拠です。一方、葉の色が悪かったり、切り口が黒ずんでいたりするタラの芽は鮮度が落ちている可能性があります。
タラの芽の下ごしらえ方法
タラの芽はほかの山菜に比べてあくが少ないため、天ぷらで食す場合はあく抜きが不要です。しかし、和え物やおひたしなどの料理にする場合は、簡単にあく抜きをしたほうがおいしく食べられます。
まずタラの芽を洗ったら、茎の部分を覆っている「はかま」という皮を取りましょう。根元の茶色い部分を削ぐように切り落とすと自然に剥がれます。
その後はよく洗って汚れを落としてから、塩を加えてお湯へ。1分から2分ほど茹でてから冷水に移すと、えぐみがやわらぎます。
また、いずれの料理に使う場合も、茎が太い場合は火を通りやすくするために十字の切れ込みを入れておきましょう。
水溶性の栄養素を損なわないコツ
タラの芽にはビタミンCやカリウムなどの水溶性の栄養素が多く含まれているので、水を使用する際は注意しましょう。長時間茹でたり、水に浸けたりすると水溶性の栄養素が失われてしまいます。
茹でるときは1分から2分くらいを目安に。また、水に浸けるときも数分に留めましょう。タラの芽はあくが強くない分、短時間の下処理でもおいしく食べられるのがいいところです。
油と合わせて脂溶性の栄養素を摂取
タラの芽に含まれるβ‐カロテンは油に溶けやすい性質を持っているので、油を使った料理と相性が良い栄養素です。タラの芽の天ぷらなら、脂溶性の栄養素を効率よく摂取できます。
しかし、いくら吸収効率がアップするからと言って、長時間揚げるのは避けましょう。衣が油を吸ってしまい、高カロリーになってしまいます。揚げ時間の目安は、高温の油で約1分30秒から2分ほどです。
タラの芽の保存方法
タラの芽の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
常温保存は向かない
タラの芽は香りが特徴なので、購入後はなるべく早く食べきりましょう。乾燥すると香りが損なわれやすく、常温での保存は向きません。長期間保存したい場合は以下の方法をおすすめします。
冷蔵保存
タラの芽は乾燥が大敵なので保存する際は注意が必要です。新聞紙に包み、穴を開けた保存袋に入れて保存しましょう。
その状態で冷蔵庫の野菜室で2日から3日ほど日持ちしますが、風味が落ちる前に食べきるようにしてください。
冷凍保存
さらに長く保存したい場合は冷凍保存がおすすめです。はかまを取る下処理を施したら、数本まとめてラップにくるみましょう。保存袋に入れ、空気をしっかり抜いて冷凍保存すれば2週間から3週間は日持ちします。
この場合は生のまま冷凍しているので、天ぷらにも利用できます。いずれの調理方法でも、凍ったまま加熱調理に使えるので便利です。
または茹でてから保存する方法も。事前に軽く塩を入れたお湯で硬めに茹でてから、冷凍保存します。天ぷらには向きませんが、加熱時間を短縮できるので時短調理に役立つでしょう。