里芋(さといも)の栄養と効果効能・調理法・保存法
9897views
里芋の旬や原産地、主要な品種などの基本情報、里芋に含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
里芋とは
里芋(Taro)は、東南アジア原産のサトイモ科の野菜です。地中にできる塊茎が可食部で、品種によっては葉・茎を「芋茎(ずいき)」として食べることができます。
主に種芋を使って栽培しますが、種芋から親芋ができ、その周りに子芋・孫芋が発生します。子芋・孫芋を食用とすることの多い野菜ですが、親芋を食べる品種もあります。
一つの芋から多くの子芋・孫芋ができる様子が子宝に恵まれることを連想させるため、子孫繁栄の縁起物として、おせち料理にも使われる食材です。
保存が利くため年間を通して出回っていますが、旬の時期は9月~12月ごろ。煮物をはじめとし、炒め物や汁物の具材など幅広い料理に活用できます。
里芋には、ミネラルや食物繊維など健康を維持するうえで不可欠な栄養素が豊富なのもポイント。また、芋類のなかでもカロリーが低く水分量が多いため、ダイエット中にもおすすめの野菜です。
里芋とタロイモの違い
タロイモは個別の品種名ではなく、サトイモ科の植物の総称です。里芋もこれに含まれますが、日本でタロイモというと台湾やハワイ産のサトイモ科の仲間を指します。
海外産のタロイモは、日本の里芋と比較してぬめりが少なく、よりあっさりとした味わいが特徴です。そのため、タロイモは台湾スイーツなどにもよく使われています。
アメリカなどの諸外国で「Taro」として販売されているタロイモを、日本の里芋の代用品として煮物などの和食にアレンジすることもできます。
里芋の品種・種類
いろいろな品種・種類のある里芋ですが、日本で一般的に食べられているものをいくつか紹介します。
土垂(どだれ)
土垂は里芋のなかで最もポピュラーで、関東地方で主に栽培される品種です。子芋・孫芋を食用とします。
煮崩れしにくく、煮物料理に最適な里芋です。身は柔らかく、ねっとりとした食感が楽しめます。
石川早生(いしかわわせ)
石川早生は、土垂と並んで普及している品種です。大阪府にある南河内郡石川村(現河南町)が発祥地のため、この名前が付きました。
土垂よりも小ぶりな丸い形をしており、ねばりがあります。8~9月ごろに収穫される早生種です。
セレベス
セレベスは、インドネシアのセレベス島から伝来した品種。芽が赤くなることから、「赤芽大吉(あかめだいきち)」とも呼ばれます。
ぬめりが少なく、加熱するとホクホクした食感が楽しめます。親芋・子芋どちらも食べることができます。
八つ頭(やつがしら)
八つ頭は、親芋と子芋が結合して成長する、サイズの大きな品種です。子芋が八つの頭に見えることから「八つ頭」の名が付きました。
一般的な里芋よりねばりが少なく、食感はホクホクしています。末広がりの「八」が付くことや、里芋の子孫繁栄のイメージもあり、縁起物として関西地方のおせち料理によく使われます。
京いも
京いもは、親芋のみを食べる里芋です。たけのこに似た細長い形が特徴で、「たけのこいも」と呼ばれることもあります。
皮が剥きやすく、里芋特有のぬめりが少ないため調理が簡単です。煮崩れしにくく煮物に向いています。
海老芋(えびいも)
海老芋は、海老のように反りかえった形をした里芋。京野菜の一つとして知られていますが、現在では静岡県が主産地です。
粘りのある粉質の里芋で、ねっとりとした食感が楽しめます。加熱しても煮崩れしにくく色も変化しないため、高級食材として扱われています。
芋茎(ずいき)
芋茎は里芋の茎のことで、食べることができます。赤色の「赤ずいき」、白色の「白ずいき」、緑色の「青ずいき」などがあります。
シャキシャキした食感で、味が染みこみやすいスポンジ状をしているため、煮物などに向いた食材です。夏ごろに収穫され出回ります。
はすいも
はすいもは、葉と茎をつないでいる「葉柄」を食用とする品種で、芋茎の一種です。里芋の仲間ですが、芋は食べません。
スポンジのような空洞があり、生で食べるとシャキシャキした食感が楽しめます。煮物・炒め物・酢の物などに使われています。
里芋に含まれる成分・栄養素
里芋100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
比較のため、生食・水煮・冷凍の成分表に加え、芋茎の成分表を並記しています。
食品名 | 単位 | さといも 生 | さといも 水煮 | さといも 冷凍 | 生ずいき | 生ずいき ゆで | 干しずいき 乾 | 干しずいき ゆで |
廃 棄 率 | % | 15 | 0 | 0 | 30 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 58 | 59 | 72 | 16 | 12 | 246 | 13 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 243 | 247 | 301 | 67 | 50 | 1029 | 54 |
水 分 | g/100 g | 84.1 | 84 | 80.9 | 94.5 | 96.1 | 9.9 | 95.5 |
たんぱく質 | g/100 g | 1.5 | 1.5 | 2.2 | 0.5 | 0.4 | 6.6 | 0.5 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | 1.1 | 1.3 | 1.7 | - | - | - | - |
脂 質 | g/100 g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0 | 0 | 0.4 | 0 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 0.1 | -0.1 | 0.1 | - | - | -0.3 | - |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.01 | -0.01 | 0.02 | - | - | -0.08 | - |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | Tr | (Tr) | 0.01 | - | - | -0.03 | - |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.03 | -0.03 | 0.03 | - | - | -0.17 | - |
コレステロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物 | g/100 g | 13.1 | 13.4 | 16.1 | 4.1 | 3.1 | 63.5 | 3.4 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | 11.2 | 11.1 | 13.7 | - | - | - | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0.8 | 0.9 | 0.8 | 0.4 | 0.3 | 4.8 | 0.3 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 1.5 | 1.5 | 1.2 | 1.2 | 1.8 | 21 | 2.8 |
食物繊維総量 | g/100 g | 2.3 | 2.4 | 2 | 1.6 | 2.1 | 25.8 | 3.1 |
灰 分 | g/100 g | 1.2 | 1 | 0.7 | 0.9 | 0.4 | 18.2 | 0.6 |
ナトリウム | mg/100 g | Tr | 1 | 3 | 1 | 1 | 6 | 2 |
カリウム | mg/100 g | 640 | 560 | 340 | 390 | 76 | 10000 | 160 |
カルシウム | mg/100 g | 10 | 14 | 20 | 80 | 95 | 1200 | 130 |
マグネシウム | mg/100 g | 19 | 17 | 20 | 6 | 7 | 120 | 8 |
リン | mg/100 g | 55 | 47 | 53 | 13 | 9 | 210 | 5 |
鉄 | mg/100 g | 0.5 | 0.4 | 0.6 | 0.1 | 0.1 | 9 | 0.7 |
亜鉛 | mg/100 g | 0.3 | 0.3 | 0.4 | 1 | 0.9 | 5.4 | 0.3 |
銅 | mg/100 g | 0.15 | 0.13 | 0.13 | 0.03 | 0.02 | 0.55 | 0.05 |
マンガン | mg/100 g | 0.19 | 0.17 | 0.57 | 2.24 | 1.69 | 25 | 2.35 |
ヨウ素 | µg/100 g | Tr | 0 | - | - | - | - | - |
セレン | µg/100 g | 1 | Tr | - | - | - | - | - |
クロム | µg/100 g | 0 | 0 | - | - | - | - | - |
モリブデン | µg/100 g | 8 | 7 | - | - | - | - | - |
レチノール | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 5 | 4 | 5 | 110 | 110 | 15 | 0 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 5 | 4 | 5 | 110 | 110 | 15 | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | Tr | Tr | Tr | 9 | 9 | 1 | 0 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 0.6 | 0.5 | 0.7 | 0.4 | 0.3 | 0.4 | 0.1 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0.1 | 0.1 | 0.2 | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 9 | 14 | 19 | 3 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.07 | 0.06 | 0.07 | 0.01 | 0 | 0.15 | 0 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.02 | 0.02 | 0.01 | 0.02 | 0 | 0.3 | 0.01 |
ナイアシン | mg/100 g | 1 | 0.8 | 0.7 | 0.2 | 0 | 2.5 | 0 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.15 | 0.14 | 0.14 | 0.03 | 0.01 | 0.07 | 0 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
葉酸 | µg/100 g | 30 | 28 | 22 | 14 | 10 | 30 | 1 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.48 | 0.42 | 0.32 | 0.28 | 0.1 | 2 | 0.06 |
ビオチン | µg/100 g | 3.1 | 2.8 | - | - | - | - | - |
ビタミンC | mg/100 g | 6 | 5 | 5 | 5 | 1 | 0 | 0 |
食塩相当量 | g/100 g | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
硝酸イオン | g/100 g | - | - | - | Tr | 0 | 1.4 | Tr |
テオブロミン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
カフェイン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
タンニン | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
ポリフェノール | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
酢酸 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
調理油 | g/100 g | - | - | - | - | - | - | - |
有機酸 | g/100 g | 0.6 | - | 0.6 | - | - | - | - |
重量変化率 | % | - | 95 | - | - | 60 | - | 760 |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
里芋の効果・効能
里芋に含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
免疫力向上に役立つガラクタン・ムチン
里芋特有のぬめりの正体は、糖質とたんぱく質が結合した「ガラクタン」と「ムチン」です。2つの成分は、病気に負けない健康な体を維持するのに役立ちます。
ガラクタンは水溶性食物繊維の一種で、免疫力を上げる効果やガンの抑制作用が期待できます。
ムチンは人体の粘膜に含まれている成分で、胃や呼吸器の粘膜を守り、外部からのウイルスや菌の侵入を防ぎます。
動脈硬化など生活習慣病を予防
里芋は、生活習慣病の予防効果が望める食材です。
高コレステロールや高血圧は、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞のリスクを高めます。里芋に含まれる成分に、コレステロール生成を抑制する効果があることが研究でも示唆されています。
また里芋には、塩分の排出を促して血圧を下げるカリウムが豊富に含まれている点もポイントです。カリウムはミネラルの一種で、ナトリウムを体外に出す働きがあります。
妊婦と胎児の健康を維持するビタミンB6や葉酸
里芋には、妊娠中に摂取したいビタミンB6・葉酸・鉄・亜鉛などの栄養素が含まれています。これらの成分は健康な胎児の発育を助けるため、妊娠前から授乳期にかけて、推奨摂取量も多く設定される傾向にあります。
特に、里芋に含まれるビタミンB6は妊娠初期の悪心嘔吐を治療するために用いられている栄養素でもあります。
食物繊維が豊富でダイエットに効果的
里芋のカロリーはじゃがいもの4分の3程度と芋類としてはヘルシーで、ダイエット中にも最適な食材です。
また、里芋に多く含まれる食物繊維には便秘を改善する効果も期待できます。体型や便通が気になる方は、里芋をすっきりとした体づくりに役立ててみてください。
里芋の食べ方
里芋の栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
里芋の洗い方
泥付きの里芋を手に入れた場合、表面の土を水でよく洗い流してください。こびりついた土は、たわしなどで擦ってしっかり落としましょう。
なお、里芋は水で濡れるとぬめりが出る性質を持っています。調理する際にすべると危ないので、洗った後はキッチンペーパーなどで水気をよく拭き取ってください。
里芋の皮の剥き方
包丁で里芋の皮を剥く場合、まず芋の上部と下部を切り落とします。切り落としたら皮を剥きますが、上から下に向かって縦方向に剥くのがポイントです。
ただし、このとき皮を厚く剥きすぎると、栄養素や旨味成分まで取り除いてしまう可能性があるので注意してください。
栄養素を逃がさないためには、皮剥きにアルミホイルを活用するのも手です。くしゃくしゃに丸めたアルミホイルで芋の表面を擦ると、表面の皮だけ薄く剥くことができます。
里芋のぬめりの取り方
ぬめりが残ったまま茹で・煮るなどの調理をすると、吹きこぼれてしまったり、味が染みこみにくくなってしまったりすることがあります。
里芋のぬめりを取る手順は次の通りです。
里芋のぬめり取りには塩を使います。皮を剥いた里芋を、塩で揉んでから水洗いすると表面のぬめりが取れます。
さらにしっかりとぬめりを取りたい場合は、塩揉みした里芋を鍋に入れて沸騰させ、5分ほど茹でましょう。ザルにあげて水気をきったら完了です。
里芋の食べ方
里芋は、煮る・焼くなど加熱して食べるのが基本です。ここでは、定番レシピである里芋の煮物の作り方を紹介します。
下処理した里芋を、だし・醤油・みりん・砂糖などを合わせただし汁と共に鍋に入れ、沸騰するまで中火にかけましょう。
沸騰したら落し蓋をし、火を弱めて10分ほど煮ます。落し蓋を外して、煮汁が少なくなるまで煮詰めたら完成です。
里芋単体でもおいしい煮物ができあがりますが、こんにゃく・にんじん・鶏肉などを加えてもおいしくいただけます。
里芋を調理する際の注意点
生の里芋に含まれる「シュウ酸カルシウム」という物質により、調理する際に手がかゆくなることがあります。
シュウ酸カルシウムは、針のような形をした結晶で、皮膚に刺さると痛みやかゆみを引き起こします。
酸と結合すると分解されやすくなる物質なので、酢やレモン汁を薄めた酸性水に手を漬けながら調理するとかゆみを感じにくくなります。手袋をして調理してもよいでしょう。
かゆみが出てしまった場合は、ぬめりを素早く取るため粗めの塩で手を洗うか、酢水に手を漬けてください。
里芋を食べる際の注意点
里芋と見た目がよく似た「クワズイモ」という植物は、食べると食中毒になるため混同しないよう注意が必要です。
クワズイモに含まれる不溶性のシュウ酸カルシウムが、嘔吐・下痢・麻痺などの中毒症状を引き起こします。
実際にスーパーなどで売られていた里芋に、クワズイモが紛れ込んでいた事例もあります。クワズイモは口に含むと強い刺激があるため、違和感を覚えた場合は速やかに吐き出して、口をゆすいでください。
里芋の保存方法
里芋の栄養素を損なわない保存方法を解説します。
常温保存
泥つきの里芋は、常温で1ヶ月ほど保存できます。乾燥を防ぐため、濡らしたキッチンペーパーや新聞紙で包んで冷暗所に置いておきましょう。
一方、洗って泥を落とした里芋は、傷みやすくなるので早めに食べきります。泥つきの里芋と同じように濡れた紙にくるみ、冷蔵庫に入れて1週間ほどで使い切ってください。
冷凍保存
長期保存したい場合は、皮を剥いて下茹でしてから冷凍するのがおすすめです。茹でた里芋の水気を拭き取り、ジップ付き保存袋などに入れて冷凍庫で保存します。
このとき、袋の上から手で押しつぶしてペースト状にしてから冷凍することもできます。冷凍した里芋は、3~4週間を目安に食べきってください。