甘エビの栄養と効果効能・調理法・保存法
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甘エビの旬や原産地、主要な品種などの基本情報、似た食品との違い、甘エビに含まれる栄養とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法などを紹介します。
甘エビとは
甘エビは、タラバエビ科のエビの一種です。体長15~20cm程度の細身のエビで、火を通さなくても鮮やかな赤い色をしています。
一般には甘エビという名称で流通していますが、標準和名は「ホッコクアカエビ」(北国赤海老)です。
甘エビと呼ばれるようになったのは、生で食べると強い甘みを感じられるためです。新潟県などの日本海川沿岸では、とうがらし(南蛮)に似ていることから「ナンバンエビ」とも呼ばれます。
甘エビは、食用とされるエビ類のなかでも特に身が柔らかく、濃厚な甘みを持っています。このため、刺身や寿司ネタとして生で食べられることがほとんどです。
甘エビの主産地は北海道で、新潟・富山・石川県などの北陸地方でも水揚げされます。ほぼ1年中出回っている甘エビですが、北海道の甘エビは3月~5月、北陸地方の甘エビは9月~10月に旬を迎えます。
卵をつけた子持ちの甘エビは、甘エビのなかで最も高値で扱われる高級品です。甘エビの卵は直径1mm程度の小さな青い粒で、珍味として食べられています。
甘エビは、性転換しながら成長していく性質を持っています。産まれて5年目くらいにオスからメスに性転換するころが、最も美味しく食べられる旬の時期です。
甘エビに含まれる成分・栄養素
甘エビ100gに含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。
食品名 | 単位 | あまえび 生 |
廃 棄 率 | % | 65 |
エネルギー(kcal) | kcal/100 g | 87 |
エネルギー(kJ) | kJ/100 g | 364 |
水 分 | g/100 g | 78.2 |
たんぱく質 | g/100 g | 19.8 |
アミノ酸組成によるたんぱく質 | g/100 g | -16.3 |
脂 質 | g/100 g | 0.3 |
トリアシルグリセロール当量 | g/100 g | 0.1 |
飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.03 |
一価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.05 |
多価不飽和脂肪酸 | g/100 g | 0.06 |
コレステロール | mg/100 g | 130 |
炭水化物 | g/100 g | 0.1 |
利用可能炭水化物(単糖当量) | g/100 g | - |
水溶性食物繊維 | g/100 g | 0 |
不溶性食物繊維 | g/100 g | 0 |
食物繊維総量 | g/100 g | 0 |
灰 分 | g/100 g | 1.6 |
ナトリウム | mg/100 g | 300 |
カリウム | mg/100 g | 310 |
カルシウム | mg/100 g | 50 |
マグネシウム | mg/100 g | 42 |
リン | mg/100 g | 240 |
鉄 | mg/100 g | 0.1 |
亜鉛 | mg/100 g | 1 |
銅 | mg/100 g | 0.44 |
マンガン | mg/100 g | 0.02 |
ヨウ素 | µg/100 g | - |
セレン | µg/100 g | - |
クロム | µg/100 g | - |
モリブデン | µg/100 g | - |
レチノール | µg/100 g | 3 |
α-カロテン | µg/100 g | 0 |
β-カロテン | µg/100 g | 0 |
β-クリプトキサンチン | µg/100 g | 0 |
β-カロテン当量 | µg/100 g | 0 |
レチノール活性当量 | µg/100 g | 3 |
ビタミンD | µg/100 g | 0 |
α-トコフェロール | mg/100 g | 3.4 |
β-トコフェロール | mg/100 g | 0 |
γ-トコフェロール | mg/100 g | 0 |
δ-トコフェロール | mg/100 g | 0 |
ビタミンK | µg/100 g | 0 |
ビタミンB1 | mg/100 g | 0.02 |
ビタミンB2 | mg/100 g | 0.03 |
ナイアシン | mg/100 g | 1.1 |
ビタミンB6 | mg/100 g | 0.04 |
ビタミンB12 | µg/100 g | 2.4 |
葉酸 | µg/100 g | 25 |
パントテン酸 | mg/100 g | 0.21 |
ビオチン | µg/100 g | - |
ビタミンC | mg/100 g | Tr |
食塩相当量 | g/100 g | 0.8 |
アルコール | g/100 g | - |
硝酸イオン | g/100 g | - |
テオブロミン | g/100 g | - |
カフェイン | g/100 g | - |
タンニン | g/100 g | - |
ポリフェノール | g/100 g | - |
酢酸 | g/100 g | - |
調理油 | g/100 g | - |
有機酸 | g/100 g | - |
重量変化率 | % | - |
レチノール当量(μg)=レチノール(μg)+1/12β-カロテン当量(μg)
Tr(trace) :微量含まれているが、成分の記載限度に達していないもの。
(0):測定されていないが、文献等により含まれていないと推定されるもの。
-:未測定
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
甘エビの効果・効能
甘エビに含まれる栄養素が持つ効果・効能・働きを解説します。
アスタキサンチンで老化やがんを予防
アスタキサンチンは、エビ・カニ・サケなど魚介類に多く含まれる赤色の天然色素です。老化やがんを引き起こす活性酸素を除去する抗酸化力が非常に強く、人体にとって有益な栄養素と言えます。
赤みの強い甘エビには多くのアスタキサンチンが含まれており、アンチエイジングや生活習慣病予防の効果が期待できます。アスタキサンチンは甘エビの殻に豊富なため、殻も捨てずに唐揚げなどに調理して食べるようにしましょう。
アンチエイジングに効果的なビタミンE
甘エビは、ビタミンE(αトコフェロール)をエビ類のなかでも多く含んでいます。ビタミンEとは脂溶性ビタミンの一種で、体の酸化を防ぐ抗酸化作用を持っています。
ビタミンEは、「若返りのビタミン」とも呼ばれ、若々しい体を保つのに欠かせない栄養素です。抗酸化作用のほか、免疫機能を維持する働きや血行を促進する効果もあります。
快適な眠りを助けるグリシン
甘エビ特有の甘みは、グリシンやアラニンなどのアミノ酸によるものです。グリシンは、必須アミノ酸の一種で、睡眠の質を向上させる機能があります。
グリシンは、快眠の鍵となる深部体温に作用し、深く十分な眠りにつくことを助けます。甘エビは、不眠や寝つきの悪さにお悩みの方にもおすすめの食材です。
疲労回復をサポートするタウリン
甘エビには多くのタウリンが含まれています。タウリンは、エビやカニなどの魚介類に豊富なアミノ酸で、疲労回復・肝機能の向上・コレステロールを減らす・高血圧の予防など多くの効能を持ちます。
タウリンには筋肉細胞へのダメージを抑える効果があり、疲労感の改善に効果的です。また、タウリンは肝臓で分泌される胆汁の成分なので、アルコールの代謝を助けて二日酔いや悪酔いを予防する効果もあります。
キチン質(キチン・キトサン)
甘エビをはじめとするエビの殻や尾には、コレステロールに作用するキチン質(キチン・キトサン)が含まれています。キチン質には体内でコレステロールを吸着する作用があり、悪玉コレステロールの抑制や脂質異常症の予防に効果的です。
キチン・キトサンは甘エビの殻に多く含まれているため、殻ごと食べられる唐揚げなどの料理から摂取しましょう。
甘エビの食べ方
甘エビの栄養素を損なわない洗い方・調理方法・食べ方などを解説します。
甘エビは殻ごと洗ってから食べる
生の甘エビには汚れや菌などが付着している可能性があるため、必ず殻付きのまま洗ってから食べるようにしましょう。殻ごと洗うのは、甘エビのむき身は柔らかく崩れやすいためです。
殻付きの甘エビは、塩分濃度3%程度の塩水に漬けて洗い、ザルにあげて流水で流してください。洗い終わった甘エビは、水気をよくふき取ってから、頭を取って殻を剥きます。塩水で洗うことで、汚れを除去するだけでなく臭みを取る効果も期待できます。
甘エビの頭・殻の食べ方
甘エビの頭と殻には、カルシウム・アスタキサンチン・キチン質など体に嬉しい効能のある栄養素が豊富です。甘エビをむき身にして食べる場合も、残った頭と殻は捨てずに料理に活用しましょう。
甘エビの頭と殻は、油で軽く揚げるとサクサクした食感が楽しめる唐揚げ・素揚げになります。また、甘エビの頭を味噌汁に入れて、旨味のある出汁をとることもできます。
甘エビの青い卵の食べ方
子持ちの甘エビを入手した場合の卵の取り方と食べ方を紹介します。
甘エビの卵は、甘エビの殻を剥く際に、スプーンを使って尾のほうからすくうように取り出します。甘エビの卵は殻や身に密着していないため、腹を指で押すだけでも取り出せることがあります。
甘エビの卵は、むき身と共に食べるか、醤油や三杯酢に漬けても美味しく食べることができます。甘エビの卵には栄養素が濃縮されているため、捨てずに食べるようにしましょう。
妊娠中は生の甘エビを食べない
生で食べる機会の多い甘エビですが、生のエビにはトキソプラズマやリステリア菌といった食中毒の原因菌や寄生虫が付着している恐れがあります。
通常時よりも食中毒になりやすいと言われている妊娠中は、生の甘エビを食べないようにしましょう。妊婦がトキソプラズマ症やリステリア症にかかると、胎盤を通して胎児に感染し、最悪の場合は流産してしまうケースも考えられます。
その一方で、エビにはカルシウム・タウリン・鉄・葉酸など妊娠中に摂っておきたい栄養素が多く含まれています。妊娠中には十分に加熱した甘エビを食べるようにしてください。
子持ち甘エビのプリン体に注意
甘エビに限らず、エビはプリン体の多い食材です。プリン体を過剰に摂取すると尿酸値が高くなり、尿酸値が高い状態が続くと痛風を発症することがあります。
尿酸値が高いと診断された方は、甘エビを大量に食べ過ぎないようにしましょう。また、プリン体は魚卵に多く含まれているため、子持ちの甘エビには特に気を付けてください。
甘エビの保存方法
甘エビの栄養素を損なわない保存方法を解説します。
冷蔵保存
甘エビは、頭が付いていると傷みが早くなります。甘エビを冷蔵保存する場合は、まず頭を落とし、臭みの原因となる背ワタを取り除きましょう。殻は付けたままで、細菌の繁殖を防ぐために塩をまぶしておくとより安心です。
冷蔵保存の甘エビは、1~2日以内に食べきるようにしましょう。
冷凍保存
甘エビは日持ちしない食材なので、すぐに食べられない場合は冷凍保存がおすすめです。甘エビを冷凍する場合、頭と背ワタを取り除き、殻付きのまま冷凍用保存袋に入れて凍らせてください。
殻を付けたままにすると身が乾燥するのを防ぐことができます。甘エビの冷凍保存期間は2週間~3週間程度が目安です。
冷凍の甘エビは、冷蔵庫で時間をかけて解凍するか、流水解凍で解凍しましょう。