チアシードの栄養と効果効能・調理法・保存法

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チアシード

チアシードの原産地やブラックチアシードとホワイトチアシードの違いといった基本情報から、チアシードが持つ栄養素とその効果効能、栄養素を損なわない調理法や保存法までを解説します。

チアシードとは

チアシードとは、メキシコ南部原産の植物「チア」の種のこと。

チアという名前は、メキシコなどで用いられるナワトル語の「chian(油っぽい)」に由来します。

マヤ語では力や強さといった意味もあり、チアシードは古代マヤ・アステカの時代から栄養源として重宝されていました。

大きさは直径約1mmの楕円形をしており、非常に吸水性が高いのが特徴。10倍量の水で戻して食べることで満腹感を得られますが、そのままサラダなどに振りかけてゴマのように食べることも可能です。

チアシードは、必須アミノ酸・オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)・食物繊維などの、体内で合成できない必須栄養素を豊富に含むスーパーフードのひとつ。

さらに満腹感が得られることから、置き換えダイエット食品としても注目されています。

ブラックチアシードとホワイトチアシードの比較

チアシードは白と黒の斑点がついた灰色をしていますが、全体が黒っぽいブラックチアシードと、全体が白っぽいホワイトチアシード(サルバチアシード)に分かれます。

古代から食べられてきたチアシードは元々黒いチアシードだったのですが、この中に微量に含まれる白いチアシードを選別・栽培して増やしたものがホワイトチアシードです。

ホワイトチアシードはブラックチアシードに比べて、より吸水性が高く大きく膨張します。

ブラックチアシードが約10倍量の水を吸収するのに対して、ホワイトチアシードはおよそ14倍量の水を吸収するため、より腹持ちがよくダイエットに効果的です。

また、ホワイトチアシードはα-リノレン酸・食物繊維をブラックチアシードよりも豊富に含むのに対して、ブラックチアシードは鉄・カルシウム・カリウムなどのミネラルを豊富に含んでいます。

チアシードに含まれる成分・栄養素

チアシード100g(水を吸収する前の乾燥状態)に含まれる成分・栄養素は下記表の通りです。

α-リノレン酸含有量は自然界でもトップクラスとなっており、大さじ1杯(約10g)でおよそ1.8gのオメガ3脂肪酸が摂取できます。

オメガ3脂肪酸の1日の摂取基準は、成人男性で2~2.4g、成人女性で1.6~2.0gですので、大さじ1杯のチアシードでほぼ必要量のオメガ3脂肪酸を摂取することができると考えてよいでしょう。

その他に、タンパク質、カルシウム・カリウム・鉄・亜鉛などのミネラル、ビタミンB群、食物繊維なども豊富に含んでいます。

食品名単位チアシード(乾燥)
エネルギー(kcal)kcal/100 g494
水 分g/100 g6.5
たんぱく質g/100 g20
アミノ酸組成によるたんぱく質g/100 g18.2
脂 質g/100 g33.9
トリアシルグリセロール当量g/100 g32.7
飽和脂肪酸g/100 g3.51
一価不飽和脂肪酸g/100 g2.26
多価不飽和脂肪酸g/100 g25.52
コレステロールmg/100 g1
炭水化物g/100 g34.5
利用可能炭水化物(単糖当量)g/100 g0.9
低分子量水溶性食物繊維g/100 g1.9
高分子量水溶性食物繊維g/100 g3.8
不溶性食物繊維g/100 g31.2
食物繊維総量g/100 g36.9
カリウムmg/100 g760
カルシウムmg/100 g570
マグネシウムmg/100 g360
リンmg/100 g820
mg/100 g7.6
亜鉛mg/100 g5.9
mg/100 g1.79
マンガンmg/100 g4.8
セレンµg/100 g11
クロムµg/100 g8
モリブデンµg/100 g44
α-トコフェロール(ビタミンE)mg/100 g0.3
β-トコフェロール(ビタミンE)mg/100 g0
γ-トコフェロール(ビタミンE)mg/100 g13.8
δ-トコフェロール(ビタミンE)mg/100 g0.5
ビタミンKµg/100 g1
ビタミンB1mg/100 g0.97
ビタミンB2mg/100 g0.25
ナイアシンmg/100 g9.8
ナイアシン当量mg/100 g14.7
ビタミンB6mg/100 g0.42
葉酸µg/100 g84
パントテン酸mg/100 g0.53
ビオチンµg/100 g23.7
ポリフェノールg/100 g0.4
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

チアシードの効果・効能

チアシードが持つ栄養について、効果・効能を解説します。

オメガ3脂肪酸が老化防止&皮膚の健康維持などに活躍

αリノレン酸をふくむn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)には、細胞膜の構成成分になるという働きがあります。

不足しがちなオメガ3脂肪酸をしっかり摂ることで、全身の細胞膜の柔軟性を高めて、老化を予防して正常な機能を維持します。

オメガ3脂肪酸が不足すると、皮膚が乾燥して肌トラブルも起きやすくなる傾向が。そのためオメガ3脂肪酸は、栄養機能食品制度において「皮膚の健康維持を助ける栄養素」とされています。

また現代の食生活で問題視されているアレルギー原因のひとつが、n-6系脂肪酸のひとつであるリノール酸の過剰摂取です。

これに対してリノレン酸は、リノール酸と競合的に働くことでアレルギー抑制にも効果を発揮します。

α-リノレン酸が血液をサラサラにして生活習慣病を予防

α-リノレン酸には、オメガ3脂肪酸としての共通の働き以外にも、体内に摂取されると青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に変換されて、中性脂肪や悪玉コレステロールを低下させて血液をサラサラにするといった独自の働きがあります。

これによって循環器や呼吸器、心血管疾患の初期予防ができるほか、高血圧も抑制。さらに美容面では、皮膚のしわやたるみ予防も期待できるでしょう。

食物繊維が便秘解消・予防に効果

食物繊維には水に溶ける水溶性食物繊維と水に溶けない不溶性食物繊維とがあり、チアシードに含まれる食物繊維は、比較的摂取しづらい水溶性食物繊維「グルコマンナン」です。

水溶性食物繊維は糖質の吸収を抑えて血糖値の上昇を抑制するほか、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌のエサとなって腸を整えます。

高い膨張率で満腹感が得られるため食べ過ぎ防止にも

チアシードは水を吸収しておよそ10~14倍ほどに膨張するため、カロリー量などに対して満腹感が得やすく食べすぎ防止にも活躍します。

オメガ3脂肪酸にうつ症状を軽減する効果も?

研究(※)によれば、健常者とうつ病患者のα-リノレン酸・EPA・DHAなどのオメガ3(n-3系)脂肪酸の蓄積量を比べたところ、うつ病患者のほうが低かったとの報告がありました。

オメガ3脂肪酸がどのように影響しているのか因果関係は不明ですが、こうした研究から、オメガ3脂肪酸にはうつ症状を軽減させる効果があると考えられています。

特に妊娠・出産期はオメガ3脂肪酸が不足しやすいため、産後うつのリスク低下のためにサプリメントなどによりオメガ3脂肪酸の摂取を呼び掛ける声もあります。

チアシードの食べ方

チアシードの特徴を生かした食べ方を解説します。

乾燥状態でそのまま食べる

チアシードは水に浸して食べる方法が人気ですが、乾燥状態のままゴマのように料理などに振りかけて食べても独特の食感が楽しめます。

α-リノレン酸はすぐに酸化してしまうため、加熱して炒め物などにするよりも生で摂取したほうが効率的です。また酸化を防ぐため、ビタミンC、E、βカロチンと一緒に摂るといいでしょう。

ただし水で戻さずに食べる場合は少し注意が必要で、乾燥状態のチアシードを大量に摂取して、消化器内で膨張して喉を詰まらせた事例もあります。

これは極端な例ですが、1日大さじ1杯という目安を守るようにしましょう。

すりつぶして食べる

ゴマのようにそのまま振りかけてもぷちっとした食感が楽しめておいしいですが、同じくゴマのようにすりつぶしてドレッシングなどに混ぜることでより吸収率がよくなるという報告もあります。

チアシードはゴマと違いそのままでも十分に栄養を吸収できますが、いろいろな食べ方を試してみたい方や、より効率的に栄養を吸収したいという方は、ぜひすりつぶして食べてみてください。

水に浸けて食べる

チアシードは、水に浸すことでとろみが出てプルっとした独特の食感になり、より食べやすくなります。

常温の水で10分ほど浸すと10倍ほどに膨らみますので、膨らんだチアシードはドリンクに入れたり、ヨーグルトやスムージーと混ぜたりして食べましょう。

チアシードの保存方法

チアシードは、乾燥したままなら冷蔵は不要で、常温のまま長期間保存が可能です。ただし直射日光に当たると酸化してしまうため、遮光性のある密閉容器に入れて高温多湿を避けた場所に置けるといいでしょう。

水に浸けたあとのチアシードはあまり日持ちしませんが、冷蔵すれば2~3日程度なら保存が可能です。

さらに長く保存したい場合には、製氷皿などに入れて冷凍庫で保存しましょう。

ただし、プルっとした食感のもとであるグルコマンナンが基本的に冷凍に向かないため、できるだけ冷凍の必要がない量を、都度水に浸けて食べるのがおすすめです。

参考文献

必須脂肪酸|Linus Pauling Institute|Oregon State University

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